かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『3時10分、決断のとき』 3:10 TO YUMA
2009年 08月 14日 |
熱い銃撃戦、駆け引き、男のプライド。

牧場主のダン・エヴァンスは、捕まった強盗団のボス、ベン・ウェイドをユマ行き午後3時10分発の列車に乗せるという護送の仕事を引き受ける。



西部劇というのは食わず嫌いしてしまうジャンルで、他のクラシック名画は観ても、西部劇は『駅馬車』すらも後回しにしたまんま。もちろん、本作のオリジナル作品である『決断の3時10分』(1957)に興味をもったこともなかった。それがこうやって、実力あるキャスト・スタッフによってリメイクされ、話題性をもって公開されたおかげで、自分も抵抗なく上質の西部劇をスクリーンで楽しむことができるのだ。リメイク企画だらけのハリウッドには首を傾げてしまうことも多いけれど、こういうのは大歓迎。何しろこれは、メジャースタジオの企画ではなくて、西部劇好きのジェームズ・マンゴールド監督がオリジナル版に惚れ込んでリメイク権を獲得し、自らのスタジオで製作したものだとか。それほどの思い入れが見事に結実。

異色と言われる西部劇がむしろ好みだな。勧善懲悪のもとにドンパチやり合うだけの物語はあまり楽しめないのだけれど、白黒がせめぎ合うこんなドラマにはとても惹かれてしまう。牧場主が大悪党を護送するという任務は思いの外スリリングなもので、序盤からその緊迫感にしっかりと心掴まれた。圧倒的な緊迫感の中に、滲み出る男の美学がたまらない。それぞれの利害、思惑、信念のもとに、行動する男の描き方がとてもカッコいいのだ。西部劇ならではの男の世界の魅力が詰め込まれている。心理的な緊張感の持続の後に、炸裂する銃撃戦もまた迫力満点で見ごたえのあるもので。激しいアクションの合間に交わされる男同士の会話に見える人間ドラマも印象的。それぞれの要素がうまく織り合っていて素晴らしいものになっていた。

この魅力はキャスティングあってのもの。ラッセル・クロウもクリスチャン・ベイルも、2人の男の対立ドラマはお得意。百戦錬磨の暴れん坊はお手の物という感じで、ラッセルはいつだってシブくて強い男がキマる。非情で極悪な強盗犯なのに、自信と余裕いっぱいで不屈で、人間的にはとても魅力的。クリスチャン・ベイルはアメリカン・サイコからニュー・ワールドからバットマンと裕福な男に扮する機会も多いけど、ハングリーな貧乏人の方がハマる気がしてならない。長めの髪に日焼け顔というその風貌もステキで予想以上にカウボーイの似合うクリベー。ダンとベンのせめぎ合いはさすがの見せ場になっていた。他の俳優たちの存在感も皆それぞれによかったけれど、ひと際目を引いたのは強盗団のNO2、チャーリー・プリンスに扮したベン・フォスター。その眼光といい、ボスの信念を引き継いでの徹底した攻撃力といい、とても面白いキャラクターであり、感心しちゃうほどの活力あふれる存在感。彼のキャラを立たせるのに一役かっていた服のデザインも気に入っちゃった。一昔前の西部劇ではこんな衣装はなかったであろうモードなウエスタン・ルックに注目!

男の世界に女と子どもは無用とわかっている。そうは言いながら、大いに心揺さぶられるのは長男くんの登場シーンなのだった。ダンとベンだけだったなら、相手に対する2人の思いにこれほどの深みが見えてくることはなかっただろう。息子がこのスリリングな任務に関わったことで、ハラハラ感も感動も倍増。その結末は悲しいものであったけれど、ダメ親父だと思っていた父の勇敢さを目の当たりにし、父が息子の信頼を取り戻す旅となっていたことに心温まる味わいがあった。そして、息子も悪党ベン・ウェイドも観客の私たちも、誘惑になびかない、守るべき家族があって良心を貫くダン・エヴァンスの生き様に心を動かされるのだ。3時10分というその時刻がとっとと無事に去ってくれることをひたすら願うドキドキの連続。蹄の音も銃の音も汽笛の音も、音響と音楽もとてもクリアで素晴らしく、『シビラの悪戯』や『ミリオンダラー・ホテル』を撮っているカメラマンの映像の好みだったし、美学に満ちたエキサイティングな世界を満喫。
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by CaeRu_noix | 2009-08-14 15:10 | CINEMAレヴュー | Comments(12)
Commented by mezzotint at 2009-08-17 01:21 x
かえるさん
今晩は☆彡
こちらでは、8月22日から公開です。
なるほど、メジャースタジオの企画じゃなかったんだ。
シネコンで上映されるので、前売りチケット購入に行ったら
置いていませんと言われたので、どうしてなのかと思ったら、
こういうことだったんですね。良かった!!
ただただバーダ・マインホフが観られず残念(涙)
何処かで上映してくれ!!と祈るばかりです。
Commented by となひょう at 2009-08-17 20:40 x
かえるさん、こんにちは~
早々にTB&コメントありがとうございました。
そして、そして。同じような事を拾ってらしてた嬉しいー
そうそう、チャーリーというキャラクターは際立ってましたよね。
ベン・フォスターの存在感も光ってたというのもあるけど、言われてみるとあの衣装はインパクトがありました。
何があってもボスは裏切らない!その忠義と鋭さが相反する感じもして、どうしてもその姿を追いかけてしまいましたよぉ
もちろん、ダンの長男が危険な旅に加わった時点で、ストーリーの深みが増していったのだけれど。
チャーリーという存在が気になり始めた時に、またストーリーの奥行きが広がっていく感じがして楽しかったです。
チャーリーに注目した私には、ラストのウェイドの行動はどう捉えようかしらって部分もあったのですが。
文句ナシに今月ベスト1決定という感じでした。
Commented by CaeRu_noix at 2009-08-17 23:28
mezzotint さん♪
今週末ですねー。
これって、ラッソーとクリベーっていう日本でも大いに知名度の高い俳優の出演作なのに、公開がずいぶん遅かったですけど、メジャーラインな配給じゃなかったからってことなんでしょうかね。
にしても、上映されるシネコンに前売り券が置いてないというのは不思議ー
この監督はジャンルの違う作品を手掛けているので、てっきり職人タイプの雇われ監督なのかと思っていたんですが、西部劇好きだったらしいです。
日本公開もスムーズにいかなかった西部劇は、本国アメリカでもスタジオが製作費を出さないほどに、ヒットが見込めないものという位置づけなんでしょうかー?
まぁ、とにかく公開されてよかったです。
エド・ハリスの「アパルーサの決闘」も公開してほしかったー。
バーダ・マインホフも全国のみなさんに観てほしいー
Commented by CaeRu_noix at 2009-08-17 23:56
となひょう さん♪
チャーリー・プリンスったら、サイコーよかったですよねー。
クラシックの西部劇にはこういうタイプのガンマンはいなかっただろうなぁと思える現代性がいい感じでした。
そうそう、もっちろんベン・フォスターの演技の素晴らしさあってこそなんですが、このキャラクター造形・演出自体も光るものがあったと思いますー。
チャーリーの立ち姿の映し方から、目線の拾い方から。
で、私はとにかくその衣装もすこぶる気に入ったのでした。
こんな色味・光沢のレザーコート姿がめちゃめちゃカッコいいなーって思って。
ちょっとコスプレ風味だったりもするインパクトのあるイデダチでしたー。

となひょうさんがラストをどう捉えたらいいか・・・と書かれていた意味が実はよくわからなかったんですが、そうか、なるほど、チャーリーに強く惹かれたとなひょうさんは、ボス思いの彼がボスの手によって・・・という決着の付け方にスッキリしないものがあったんですね。
私は、チャーリーキャラを気に入りつつも、ドラマとしてはダンに心寄り添って観ていたので、ベンの行動は、驚きつつもしっくりきたわけなのですよ。
そんな衝撃の怒涛のラストも素晴らしかったですよねー。
Commented by ノラネコ at 2009-08-20 23:36 x
都内でたった一館とはいえ、劇場公開されただけでも良かったと言うべきでしょうか。
これほどの作品がお蔵入りしたら、嘗て本国でB級扱いされていた「駅馬車」の価値を発掘した日本の映画文化の恥ですからね。
実にしっかりと作られた、心に染みる骨太のエンターテイメントでした。
油の乗り切った二人の名優を見事に料理した演出家の手腕が見事です。
しかし食わず嫌いはいけません。西部劇いいですよ。
「駅馬車」も観てくださいよ(笑
Commented by CaeRu_noix at 2009-08-22 00:40
ノラネコ さん♪
日本でもようやく公開されてよかったですよねー。
素晴らしい映画であるし、それだけじゃなくて、しっかりと集客もしているのだから、本当に一館だけではもったいないと思うのですけどね。
最近の日本の上映映画の動向を思うと、個人的には、日本の映画文化はもはや恥の域に入っているような気がしないこともないのですが、まぁ、娯楽性のないものはそういう扱いでも仕方ないとして、本作のような大いに面白くてよくできている映画を公開しなかったら、愚かですよね。
ジェームズ・マンゴールドのお手並みはとても鮮やかでしたねー。

へぇー、『駅馬車』の評価したのは、アメリカより日本だったのですかー。もちろん、『駅馬車』は観ますとも。『荒野の決闘』も観ますとも。
『捜索者』も観ようと思っていました。そのうち、そのうちー
Commented by mezzotint at 2009-08-29 12:13 x
かえるさん
こんにちは。観てきました!
おっしゃるように、あのチャーリー・プリンスの存在に、長男ウィリアムの
の存在があるからこそ、ベンとダンの絡みに味をそえるのでしょうね。
ラストの銃撃シーンは息を呑みました。
監督曰く、往年の西部劇の模倣や、賛辞を捧げるような映画を作る
つもりはなかったそうです。現代風にアレンジしたことが、より一層に
私たちの心を捉えたのではないかなと思います。
Commented by 丞相 at 2009-08-30 11:05 x
こんにちは。TBありがとうございました。
私も、西部劇はどちらかといえば食わず嫌いになっていて、
『駅馬車』はおろか、『荒野の用心棒』もいまだに見ていません。
西部劇は玉石混淆なこともあって、どこから手をつけていいのか、
難しいところもありますね。

ともあれ、『3時10分、決断のとき』は、かなり見応えのある作品でした。
私はラッセル・クロウ演じるウェイドは『アメリカン・ギャングスター』のときと
近いものがあったので、それだけでも良かったです。
心理描写もさることながら、アクションシーンの撮影も良かったですね。

今年の夏は『バーダー・マインホフ』など、振り返ってみれば
良い作品が多かったですね。アサイヤスの『クリーン』もようやく
劇場公開となったのが何よりです。
秋はシネマライズ公開作品がどれも私のストライクゾーンに
入るものなので、かなり楽しみにしています。
Commented by CaeRu_noix at 2009-08-30 21:26
mezzotint さん♪
長男ウィリアムが物語に絡むことで俄然、心揺さぶる映画になりましたー。
ダンがベンを護送するというドラマだけでも十分にハラハラ見ごたえがありましたが、そこに父と息子の確執が関わって、人間ドラマとしての面白みが倍増。
個人的には、ドンパチアクション映画にはそれほどに興味がないもので、父が息子の信頼を取り戻す旅が描かれていたことに満足です。
そして、チャーリー・プリンスの存在がまた映画全体を魅力的なものにしていましたよねー。
早撃ちな瞬間やら、大乱闘の銃撃戦シーンもカッコよかったですよねー。
そうなんですか。監督は西部劇好きながら、同じようなものを作ろうという気はなかったんですね。
オリジナル映画とどう違うのかはわかりませんが、とにかくこのリメイクは大成功って思いますー。
Commented by CaeRu_noix at 2009-08-30 21:46
丞相 さん♪
コメントありがとうございます。
西部劇、食わず嫌いしちゃいますよねー。
男性でもそうなのだったら、自分がそうでも当然だなーって思えます。w
私も『荒野の用心棒』も未見ですー。
基本的に、そんなに興味はないので沢山観ようとは思わないものの、映画ファンとして、超名作だけは押さえておこうと思っていました。
なのに、なのに、西部劇は後回しにし続けてしまってました・・・。
ヴェンダースの映画を観た時に、『シェーン』を観ようって思ったはずなのに。

ラッセルはそう、アメギャンに通じるものがありましたよねー。
あちらではシブいカッコよさを見せてくれながら、体型がややトドじょうたいだったのが残念でしたが、こちらはメタボと呼ばれる現代病には遠い時代のドラマというだけあって、細めだったのもよかったです。
しょっちゅう見ているのに、常に別人に見えるから本当に素晴らしいなぁと。

そうですね。この夏はファミリー向けにおされることなく秀作映画がありましたね。
秋以降も楽しみなものがあれこれありますよねー。
ライズのラインナップは当然に魅力的♪
いよいよ、ペ・ドゥナちゃんですねー
Commented by ぺろんぱ at 2009-09-14 19:55 x
こんばんは、ご無沙汰しておりました。

私も西部劇は不得意分野ながら、本作は忘れ難い一作となりました。
そして、私も不思議とチャーリーの印象が尾を引いております。
彼の死こそある意味非業のものではなかったか、と。死に際のボスとの一瞬の“攻防”は印象深かったです。“美”が漂うものでした。

服のデザイン!
なるほど、仰る通り彼のキャラと魅力を際立たせていましたね。

久々に鳥肌の立つ思いを味わえた映画でした。
Commented by CaeRu_noix at 2009-09-15 00:45
ぺろんぱ さん♪
ちょっとお久しぶりですー。ゴキゲンようよう。
西部劇って、やはりやはり敬遠してしまい気味なジャンルですよねー。
だけど、本当に本作の手ごたえは格別なものでしたよねー。
その当時の王道西部劇は今観てそんなに気に入りそうな気はしないのですが、近年の異色西部劇とはなかなかよいのでした。
『ジェシー・ジェームズの暗殺』もとても気に入っていたし。

そうですね。チャーリーの死は、非業のものといえますよね。
あれほどのまっすぐな意志をもち、ボスにも忠誠心をもち、強靭に見事な戦いぶりを発揮した完璧な闘士であったのに、それが裏切られる格好になったんですもんね。
彼にとってはこの上なく理不尽であっただろう最期の戦いぶりもまた鮮烈でしたねー。
衣装を含めて、チャーリーのキャラばかりは古き西部劇とは一味違うSF風味の近頃アクション映画のノリをもっていたのが楽しかったのでした。
とてもいい味付けの現代アレンジだったと思いますー。
男の世界を描いた映画は美学が感じられるものがやっぱり魅力的ですよねー
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