かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『サマーウォーズ』
2009年 08月 21日 |
スクリーンでのOZ体験は格別。でも、花札はリアル空間がいいかな。

数学の得意な高校生小磯健二は、憧れの夏希先輩の頼みで、彼女の親戚が集う故郷のおばあちゃんの家に付き添うというバイトを引き受ける。



巷で評判のよかった『時をかける少女』を観てみようと何度か思いつつ、結局観ないままきてしまった。だって、ジャパニメーションは人物の絵が嫌いなんだもん。だから、食指が動かない。輪郭線のクッキリした漫画絵な人物が映像になったものはどうしても苦手。宮崎アニメでさえも人間キャラの絵があまり好みではないのだけど、非人間キャラの造形や背景のイラストが魅力的なので何とか。でも、物語世界に魅せられれば、絵が好みじゃないことは得てして気にならなくなるものだよね。そうそう、食わず嫌いはよくありません。評判の細田守監督作を劇場で観るべし。

そんな私なので、冒頭の“OZ”世界には思いきりワクワク感動。きゃー、素晴らしいじゃないですか。日本のアニメならではのバーチャルな世界の映像化があまりにも魅力的。実写やCGアニメの中で再現されるバーチャル空間は、もっと無機質でシャープで金属的なものになると思うのだけど、ここに広がる仮想世界は色づかいが明るくて、アバターなキャラクターがココロモチ女の子向けな感じのラブリーな風貌で、とってもソフトでポップなんだもん。物語内では、人々がその“OZ”にアクセスのは、ケイタイの小さな画面であるというのに、映画の観客の私たちは、大スクリーンでめくるめく魅惑の“OZ”映像を味わうことができちゃうのだ。

片や、リアルワールドの登場人物たちの姿ばかりが映る場面では、やっぱり少し居心地がよくなくて、100%ドラマにハマれたとは言い難い。だって、やり取りがちょっとこっぱずかしいんだもん。アニメのヒロインちゃんはどうしていつもいつも、南ちゃんの日高のり子系のわざとらしいほどに溌剌と健気なしゃべり方なんだろう、ってことが気にならずにはいられないしね。それでも、とにかく、“OZ”ワールドのトラブルを解決すべく、健二くんたちが知恵を振り絞って、団結して立ち向かっていくというドラマ展開、及びその映像はとてもエキサイティングで面白いものであった。

ハリウッドアニメに負けないくらいの現代性をもった大いなるエンターテイメント。それが日本の田舎の懐かしい風景と近未来的バーチャル空間というギャップのある二つの世界で展開していくというのが見事。うまく伏線がはられていて、実によく練られているなぁと感心させられる、巧みな盛り上げ方・まとめ方。夏休みにこんなに楽しくて心も温まるスケール感のあるアニメが全国で見られるなんて素晴らしいことだねぇ。幅広く子どもから大人まで楽しめちゃうタイプゆえ、個人的には、自分の心の琴線をJUSTに激しく揺さぶるものとは若干違っていた気はしたけれど、大いに感心。さすがのじゃぱにめーしょん。エンタメ、バンザイ。

好みでいったら、テーマに哲学が感じられる宮崎アニメなんかの方がより感銘はあるかなぁ。これは結局、男の子向けな戦いを描いたドラマなんだもん。諦めないで戦うことを美徳として肝とするのはいいけど、ここにあるサマーウォーズたる戦いがテーマになることにはピンと響いてはこなかった。何しろ、今の私は、村上春樹の「1Q84」を読んでいる最中ゆえに、赦すまじき悪と戦うという姿勢に気持ちが傾いていたもので。敵は暴走した人工知能なんていう物語設定じゃ、目新しくはないのはもちろん、体裁はいいようで真の世界と対峙していないじゃないかと思ってしまったの。エンタメアニメにそんなことを思う必要もないのだろうけれど・・・。でも、せっかく、物語というのは無限の可能性をもっているのに、PCやケータイ操作のゲームで勝つことで世界が救われるなんて、よくあるストーリーとはいえ、少し寂しい気がしちゃった。


~ Commented by うーん at 2009-08-25 01:44 ~へのレス
そうですね。主題は家族の絆なんでしょうね。
本作の正しきテーマを掴むことができなくて申し訳ありません。
私には細田監督作や諸々の皆に愛される日本のアニメを主題に沿って正しく読み取る読解力はないようです。
でも、自分がそう思い、感じてしまうことは変えようはないのです。
今回に関しては、たまたま村上春樹の「1Q84」を読書中であったことが、変に影響してしまいました。村上文学の中で掘り下げられているテーマを、主題の異なるエンタメアニメ映画に照らし合わせてしまうのが、そもそも間違っているとは思うのですが、本作は村上ワールドの対極にあるなぁって思ったのですよ。
村上ワールドには、血のつながりのある家族間の愛情や絆なんてものは全く欠落していて、主人公たちは孤独を抱えて生きてきた。そして、局面において、傷をもった人と人が、血のつながりも何もないところに、不思議な絆や連帯感をもつ。そして、村上ワールドの住人は、親戚連中が協力し合って周囲に応援されながら大奮闘するのは正反対で、ひっそりと人知れずに強く長い腕を持った敵と戦うのですよね。
そんな世界に傾倒していた最中に本作を鑑賞したもので、親戚連中が集まって、皆が熱く一丸となって奮闘するこの物語のクライマックスには、エンタメ映画定番の浅はかなものを感じてしまったのですよ。
むしろそういった村上ワールド的個人主義が蔓延しちゃっている現代社会を考え直すために、こういう血のつながった温かな共同体の素晴らしさが核になったのだろうと思うのですが、そこに多くのリアル(共同体にはつきものの人間関係のしがらみ等)を投影させず、家族の団結は感動的だなーってまとめちゃっているところに引っかかりがありました。
リンク元のdenkihanabi さんが『ミュンヘン』を引き合いに出されていましたが、ミュンヘンで描かれたものは私にはしっくりと来ました。仕事/任務のもとで、社会/世界で戦った男たちは、個人の健やかな生活・家庭を犠牲にせざるを得なかったということに関して。
この世界では戦いはもちろん避けられないものであると思います。でも、それを描くなら、そこに伴う犠牲、傷つき壊れてしまうものがあることをきちんと描いてほしいと、個人的には感じたのです。
誰も傷つかず、犠牲もなく、一致団結した勇敢な戦いによって、地球は救われ、大成功めでたしめでたしな物語というのは、腑に落ちないものがあるんですよ。
「戦わないことを美徳とする物語が好き」というのは、私が長年たくさんの映画を観てきて培った好み・価値観なので、貴方のコメント一つでそれが180度かわるはずはありません。好みの話をしているのですから。
好みでいったら、戦わない方が好きだし、戦いを描くなら、そこにある暗部も描いてほしいと私は思うのですが、それはあくまでもあくまでも私個人の考えに過ぎず、見ず知らずの本作のファンの人たちに対して、声高に本作を否定するつもりは毛頭ありません。
本当に、本作の主題を正しく受け止めることができなくて、申し訳なかったとは思いますが、個人的にピンとこないものはピンとこないのです。
でも、自分の好みは別にすると、とても面白くて出来のいい作品だったと思いますよ。
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by CaeRu_noix | 2009-08-21 23:59 | CINEMAレヴュー | Comments(8)
Commented by mi10kuma at 2009-08-22 07:01
シリキです。このアニメは観てないんだけど(実は私も宮崎アニメを初め映画公開されているものは余り好きになれません)、ぜひお勧めの作品があるのですよー。テレビアニメですが、深夜帯に放映されていた事もあり大人向けです。何より設定がユニークでキャラが本当に魅力的。レンタル出てます。「ノエイン」http://www.noein.jp/index.html
Commented by CaeRu_noix at 2009-08-22 21:54
シリキさん♪
アニメーションの世界って、素晴らしいんだけど、日本のものは概して、子ども向けだったり、オタク向けだったり、大人女性が惹かれるテイストではないんですよねぇ。
私はしょっちゅう言っている通り、アニメは断然、チェコものやロシアもの、フランス等々ヨーロッパのアートアニメ系が好きなんですよね。
でも、日本のものも芸術性が高めのものは結構好きです。
最近の宮崎アニメはツボにはまってますし、山村アニメーションなんかも好きです。
なんだかんだいって、「パプリカ」も「鉄コン筋クリート」も「スカイ・クロラ」も面白かったし、そのへんのならOKなんだけど、夏休み系のマンガマンガしたジャパニメまではなかなか・・・。
そして、おススメですかー。ちょろっと拝見したところ、やっぱりキャラが好みじゃないのですが・・・。
でも、ストーリー、テーマは面白そうですね。
が、TV放映ものということは、90分1本じゃなくて、連続ドラマなんですよね。
ううむ、それをレンタルして観る時間があるなら、私はたまっている未見DVD&VIDEOの消化をまずしなくちゃという感じです。
ごめんなさい。でも、紹介ありがとうございます!
Commented by denkihanabi at 2009-08-24 19:18
>体裁はいいようで真の世界と対峙していないじゃないかと思ってしまったの。
鋭い、確かにその通り。まあ、そこが巧いっちゃ巧いんですけどね。この映画には悪意のあるやつが出て来ないんですよね。だからのんきに見れる。戦いの映画というより、ホームドラマだと思いますよ。
Commented by CaeRu_noix at 2009-08-24 22:00
denkihanabi さん♪
夏休みのエンタメアニメですもんね。
本気で危機感や恐怖感に襲われることなく、のんきに見られてしまいました。
全体が楽しかったからいいんだけど、地球の危機を描くのなら、もうちょっとリアルなスリルと恐怖をもって、崖っぷちに追い詰めてくれてもいいのになぁっていう気がしました。
そうですね。とことん、ホームドラマですよね。
ならば、やたらめったら、「戦う」ってことを前面に出すなーって思った私です。
夏休みのアニメにそういうことを思うのは筋違いとは思うけど。
テーマとしては、戦わないことを美徳とする物語が好きです。
戦うのであれば、その善悪と正義について、護るべきものと倒すべきものを明らかにしてほしいところなのでした。
結局、ゲーム対戦っすか・・・。ゲームセンターあらし(古っ)のクライマックスと一緒じゃん、スケール感が台無しじゃん、でも、今の人たちは、ゲームが好きなのねーって、がっくりしたのでした。
テーマなんてことを考えると物足りないのですが、映像やドラマは全般的に楽しめましたですよー
でも、私はメルヘン寄りな宮崎アニメ世界の方が好き。ウォーよりアドベンチャー。滞在型より移動型が好き。
Commented by うーん at 2009-08-25 01:44 x
この映画で描いているのは家族(人々)の絆だと思うんですよ。
地球の危機の描写は、あれでまぁ解りますし。
「戦う」ことが前面に出たのは、陣内家が武家の子孫であり、その一族がその血を受け継いでいるからだと思います。
ただ、血を受け継いでいるから戦おうとしているのではありません。武人だったご先祖様に誇りを持っている人達だから、その生き方に倣おうとした結果、「戦う」ってことが前面に出たのではないかと(多分)。
ホームドラマなのは本当にそう思います。
ですが、『ホームドラマだから「戦う」ということを前面に押し出すな』というのはどうかと。
家族が一丸となって、力を合わせてひとつの目標に向かう…それは、様々な形があれど、戦いだと思います。
自分との戦いも、戦いのひとつです。それでも、「戦わないことを美徳とする物語が好き」と仰いますか?「ウォーよりアドベンチャー」とのことですが、敵とかそういうことではなく、何者とも戦わない冒険なんてありません。
この映画のテーマの核心は、戦いでも世界の危機を救うことでもなく、ただひとつ、人と人との絆だと思います。それを描くために、世界の危機を救うために戦ったのだと思います。
Commented by CaeRu_noix at 2009-08-25 07:24
うーん さん♪
うーん、って・・・。
せっかく真摯なご意見を述べてくださっているのに、その投稿者名はちょっと残念です。
それはさておき、コメントのレスが長くなってしまったので、本記事本文の方に追加して書かせていただきました。
よろしくお願いします。
Commented by SGA屋伍一 at 2009-08-31 12:32 x
おお、ご覧になってくださったんですね

大満足というほどではないにせよ、まずまず楽しまれたというとこでしょうか。ガリガリ君はおごらなくてもいいかな?

個人的にはワビスケおじさんのわかりやすいひねくれっぷりや、一番かっこいいはずの場面で鼻血だしながら「よろじぐおねがいじまーず!」というあたりがツボでした
Commented by CaeRu_noix at 2009-09-01 00:24
SGA屋伍一 さん♪
観ましたよ。おススメの一作を。
いやいや、面白かったですよー。
今日の日本のアニメのパワーを実感。
気に入らない部分やこっぱずかしさに居心地が悪くなるシーン等々はありましたが、楽しさでいえば、全般的にとてもとても楽しめましたよー。
でも、ガリガリ君はおごってください。フローズンダイキリがいいかな。

ああ、私もワビスケおじさんはわりと好きだったんですよねー。
この親戚コミュニティの中では確かにわかりやすいはみ出し者ポジションでしたが。
私はあと、日本の夏を象徴する朝顔がよかったですー。
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