かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『縞模様のパジャマの少年』 The Boy In The Striped Pyjamas
2009年 08月 27日 |
大人の作った物語。

第二次大戦下のドイツ。ナチス将校の父の昇進により、家族で田舎に引っ越した8歳のブルーノはいつも縞模様のパジャマを着ている人たちに出会う。



ドイツ人の物語が英語劇なのは、毎度のことながら残念に思っていたのだけど、冒頭の子ども達が元気にヒコーキの真似をしながら走るそのシークエンスがいい感じだったので好感触。カメラがなかなか好みで、ヨーロッパのしっとり感の中、上質な雰囲気をもってゆっくりドラマが展開していくのがよかったな。主人公のブルーノ少年の健気さに心寄り添わずにはいられないもの。

演出、映像的には心掴まれた反面、そのメインストーリー、脚本については、ストーンと落ちては来なかったな。そもそも、どこかでちらりと衝撃のラストというようなフレーズを読んでしまい、私は鑑賞前から物語の結末に予測がついてしまっていたの。この物語設定で、悲劇的な結末といったら、考えられるパターンは限られていたもの。予想がついていたので、私はさほどその顛末についてショックを受けることはなく、感情がかき乱されなかった分、冷静に考えてしまったのだよね。

子どもが主人公のホロコーストにまつわる映画はいくつもあるけれど、ナチス将校の息子が主体の物語というのはたぶん初めてで、社会のことを知らない純粋な子どもの、無邪気な言動と行動によって、強制収容所の惨たらしさがあぶり出されていくというこの切り口は、とても巧いアイディアだと思う。この原作は児童書だというから、寓話的にサラリと語られるなら、さりげなくも示唆に富んだものになっているのかなと思う。でも、全くの虚構のこんな残酷な物語を、そのままシリアスなタッチで実写映画化してしまうのは、少し悪趣味だと感じてしまうのだよね。

だけど、そう感じてしまうのは申し訳ないほどにマーク・ハーマン監督はいたって誠実な思いで、この問題作の映画化に取り組んでいたようで。このラストを描くことだけは譲れないポイントだったらしい。イギリス人監督が、21世紀にあえてこの題材を選ぶというのはあまりピンとはこないのだけど、イギリスの監督はいつも自国の労働者を主人公にすべきだと決まっているわけではないのだから、このチャレンジに拍手するべきなのかな。そんな残酷な物語を差し出さなければ、人々の心に訴えかけることはできないというならまぁ仕方ない。よくも悪くも、ドイツ人やユダヤ人にはこの物語は紡げないだろうし。

ブルーノの瞳には子どもらしいリアリティを感じるのだけど、台詞のいくつかは、子どもの無垢さから発せられるものというよりは、そういう純真さを装いながら大人が考え出した言葉にしか思えないものもあったからちょっと冷めてしまったな。ブルーノの言動・行動ばかりでなく、例えば、夕食の席で、ヨボヨボ歩きのパヴェルにワインをつがせるシーンなども意地悪過ぎてゲンナリしちゃった。医者だったパヴェルが今はイモの皮をむいているというところにはハッとしただけに残念。

予想のついた結末にいたっては、これがあえて衝撃のラストとして描かれることに、考えこんでしまった。ナチの将校の息子であり、この物語の主人公である健気な少年が、不運にもこんな運命をたどってしまうことはもちろん衝撃的な悲劇に他ならないけれど、そんな不運な少年がいようがいまいが、ホロコーストそのものがひたすら衝撃的で残酷な悲劇の塊だというのに。この物語展開の中では、その大勢のユダヤ人の運命に同情することも忘れて、可哀想な主人公の末路に心とらわれてしまう作りになっている気がするんだよね。それでいいのだっけ?もちろんそれも含めての人種差別、戦争の狂気等の普遍的なテーマに向き合うべしなのだろうけど。
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by CaeRu_noix | 2009-08-27 22:48 | CINEMAレヴュー | Comments(7)
Commented by KLY at 2009-08-27 23:42 x
観終わって暫く考えてから思い当たったんですが、この話はユダヤ教の旧約聖書的思想なのかなと。つまりイスラムにも通じる「目には目を」って考え方ですね。多くのユダヤ人の子供がブルーノと同じ目にあっているだけに、それと同じことをドイツ人一家、軍人である父だけでなく、その妻果ては、姉にまで味あわせるという、ある種神罰的エピソードをもって、逆説的名ホロコーストの悲劇を描いたのかなと。何となくなんですが、そんな事も考えてしまいました。
Commented by CaeRu_noix at 2009-08-28 22:20
KLY さん♪
そうですかー。
強いて言えば因果応報とか・・
んと 「目には目を、歯には歯を、~、打ち傷には打ち傷をもって償わなければならない」ってのは、復讐・報復の拡大を禁止なんですよね?(日常日本語では違う意味で使われがちですが)
それと、聖書には、罪はその人のものであって、父や子の罪によって死にいたらしめられてはならないという記述もあるらしく。
というわけで、聖書のことはわからないながら、親(世代)の罪で小さな子どもが死という罰をうけるというのはそういう教義とは違うものじゃないかなぁと思うのですよね。
末代まで祟るなんて言葉もあるように、子の代に不幸が及ぶのはむしろ仏教的?

さておき、ユダヤ人は始末して当然と思っているナチスがその残酷さに気づくためには、自身の子が同じ目にでも合うしかない、ということなんでしょうかね?
所詮他人の痛みはわからない?
それが罪に対する罰なんだとしても、人が罪を犯しちゃいけないのは、罰を避けるためじゃないはずなんですけどね。etc

ラストの衝撃だけでいいなら、連合国軍幹部の子弟が運命のいたずらで広島で黒い雲体験する物語等もアレンジできそうですね。
と考えてもやっぱり悪趣味かも・・
Commented at 2009-08-29 01:29 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by KLY at 2009-08-29 01:29 x
ごめんなさい。何故か間違えて非公開コメに^^;
別に変な意味はないので悪しからず~。
Commented by CaeRu_noix at 2009-08-29 02:37
KLY さん♪
たびたびありがとうございますー
衝撃を受けたという盛り上がりコメントが沢山のそちらに、今更私の方向性の違うコメをつけるのも何なので、再びここで呟かせてもらいます。
(別の作品でまたそちらにうかがいますねー)

平和ボケした私達はお気楽で幸せだと思いますよ。
が、当事者か否かという意味においては、私達も、71年生のアイルランド人原作者も、54年生れの英国人監督も、立場はそう大きくは違わないんじゃないかと思うんですよ。
(意識の違いはあるでしょうけどね)
なので、ユダヤ人や西欧人という括りは??
戦後生れの英国人と、ナチスに携わったドイツ人と、迫害を受けたユダヤ人とでは全然違うと思うので・・。
(欧州でも海向こうの英国と被占領国とはまた違うでしょうし。中欧はもっと複雑)
と、我々が部外者であるのと大して変わらないほどに、映画の作り手も当事者ではないと思った上で、私はこれを悪趣味ーって思っちゃったんですよ。
イギリス人なら、ケン・ローチのような方向で問題作をとる監督の方が好きなもので。
私には腑に落ちないものもありましたが、映画としては見ごたえがありましたよね。
『鬼が来た!』 の衝撃もよろしくです。
Commented by mezzotint at 2009-09-03 02:40 x
かえるさん
今晩は☆彡
先日はコメントありがとうございました。
同感です。私も冷静に観ることができました。
ホロコーストで多くのユダヤ人の命が奪われて
いる事実をもう一度見つめるべきだと思います。
Commented by CaeRu_noix at 2009-09-04 00:52
mezzotint さん♪
前半はウルっときちゃう場面があったんですが、後半は頭の中でアレコレ考えてしまいまして・・・。
彼の存在感や演技は素晴らしいと思う反面、やっぱり台本に書かれているものが見えてくる、、、リアルでナチュラルな子どもらしい子どもの言動・行動じゃなくて、物語を成立させるために、作り手の大人が考えた通りに行動させられている虚構の子ども、というふうに見えちゃったりして。
個人的には、もうちょっとファンタジー色が強い方がよかったなぁと。
それでも、なんというか、悪趣味だと思う反面、普通ならあえてその場面を撮らないと思われるガス室ショットには、映画が映画たる面白みを感じたのも事実なんですよね。
『夜と霧』なアプローチとはまた違う映像のチカラ。

ホロコーストを見つめ、ナクバを見つめ、ヒロシマも見つめたいと思うのです。
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