かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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「アニエス・ ヴァルダの世界」 第1部
2009年 09月 16日 |
今回観たアニエス・ヴァルダ(Agnes Varda)監督作品の鑑賞メモ。@日仏



世界中でひと際、女性たちの活躍が目立つフランス映画界なのだけど、中でも筆頭の敬愛すべき存在はアニエス・ヴァルダ監督でしょう。d0029596_9415590.jpg
今年81歳だなんて。
この2、3年ほどでジャック・ドゥミの作品の多くを観る機会に恵まれたので、このたびはヴァルダを振り返ることができて満足。

特別先行上映で観た新作、『アニエスの浜辺』 のレヴューはコチラ
その時の黒沢清&小泉今日子トークショーのレポートは コチラ


『ダゲール街の人々』 Daguerréotypes  1975
~『ダゲール街の人々』は、パリの14区の趣のある界隈、ダゲール街についての映画ではなく、ダゲール街のほんの一部分、70番地から90番地までの限られたある場所で商店を営む人々についてのささやかな記録、声なき多数派の人々への注意深い眼差しです。~

これは一応記録映画なのだけれど、こんなにも温かな風合いをもつドキュメンタリーというのはなかなかないよね。つつましやかに日々の暮らしを営む街の人たちの姿がほほえましくて、目線は鋭さと眼差しの優しさが同時に感じられる。さりげなくも巧妙なカメラと編集で、なんてことのない日常なのに興味深く、心地よく見つめ続けることができるの。フランスのバケットのパリっとな存在に心掴まれずにいられなくて、パン屋さんで働きたくなったし。


『イランでの愛の悦び』 Plaisir d'amour en Iran  76、6分
   出演:ヴァレリ・メレッス、アリ・ラフィ、テレーズ・リオタール
~この短編は、『歌う女、歌わない女』の主人公のポムとアリ・ダリウス(彼は、イスファハンの王のモスクのように完璧な場所にいる恋人たちの夢想でもあるかもしれない)の恋のときめき、不安についての映画である。 ~

未知のイラン。ブルーモスク、アラベスクふぇちな私としては至福の6分間。写真家ならではの興味、感性を感じる対象のとらえ方にウットリ。それでいて、これはやっぱり映画で、そこに『歌う女、歌わない女』のサイドストーリーがあるという広がりのあるアプローチに詩的な味わい。


『歌う女、歌わない女』 L'une chante, l'autre pas  1976d0029596_9422063.jpg
  出演:テレーズ・リオタール、ヴァレリ・メレッス
--1962年パリ、歌が好きな17歳の高校生ポリーヌは、写真スタジオのジェロームの撮った写真をきっかけに、かつての知人であったその妻の2人の子供をもつ22歳のシュザンヌと交流を持つようになる。事件が起こり2人ははなればなれになるが、10年後に再会をする。別々の形で女性の権利を訴える2人の物語。--

再見。スクリーン鑑賞初。
アニエス・ヴァルダという女性監督に惹かれ、一目置いたのは本作がきっかけだったと思う。風景も美しく、音楽シーンもふんだんにあるので、劇場体験できてよかったなって。まさに人生を旅しているというような感じのカメラワークが大好き。ポムの歌も奇抜なパフォーマンス・シーンも楽しくて。"ウーマン・リヴ"というテーマを真摯に追求しつつも、決して堅苦しさは感じない、朗らかにチャーミングな映画であることが素晴らしい。2人の生きる姿とその友情に、ヴァルダの思いに改めて感動。自分が『4ヶ月、3週と2日』などに多くを感じることがあったのも、全てはこの『歌う女、歌わない女』があったからなんだなってことを思い出す。


『カンフーマスター!』 Kung-fu master!  1987
  出演:ジェーン・バーキン、シャルロット・ゲンズブール、マチュー・ドゥミ
~マリ・ジェーンは、リュシーとルーという二人の子供と三人で暮らしている。ジェーンはリュシーの誕生会のパーティで、娘の同級生ジュリアンに出会う。ジュリアンが好きなTVゲーム「カンフーマスター」を通じてふたりはだんだんと親交を深めていく。本作の原案はジェーン・バーキン自身によるもの。~

初見。
去年ドワイヨン作品をいくつか観たので、ここでジェーンとシャルロットの共演が見られたのは嬉しく。マチュー・ドゥミがまだあまりにも子ども子どもしているので、彼女の思いをリアルなものとして感じ入ることはできなかったのだけど。面白い試みではあり。ロンドンの川沿いがよかった。序盤のゲーム体現も楽しく。


『百一夜』 Les cent et une nuits de Simon Cinéma 1994
  出演:ミシェル・ピコリ、マルチェロ・マストロヤンニ、マチュー・ドゥミ
~映画百年の歴史がそのまま人格と化したムッシュー・シネマはもうじき百歳になろうとしている。映画生誕百年を記念して世界中のオールキャストが次々と登場し、さらにリュミエール兄弟の『列車の到着』に始まり、無声映画、トーキー古典時代を経て現在に至る、映画百年の歴史を彩る様々な映画の抜粋映像が挿入される。 ~



再見。(日本語字幕版の上映にかわって、ラッキーでありました。)
これを90年代に観た時は、私は映画の多くを知らなかったので、本作がどれほどにワクワクする内容のものであるかを実感できずにいたように思う。引用された映画にしろ、そこにあふれる映画なコネタの面白みや、出演者の豪華にさえ気づかずにいたんじゃないかなぁ。というわけで、その後、ヌーヴェルヴァーグ作品を含めたフランス映画、名作クラシックをそれなりに観てきて、再会した本映画は、隅から隅まで楽しい愛すべき作品であった。側転する小間使いからして大好きだし、ピコリの存在感もそれは愉快だし、今は亡きマストロヤンニやらの登場が感慨深く、映画製作に取り組むマチュー監督の奮闘もほほえましく、ヴァルダ作品の名場面の登場にも大いなる興奮があった。本作は、豪華な割に興行的にはコケたらしいけど、私は再見してみてとても気に入ったな。"シネマ"の魅力がふんだんに詰まった、映画愛にあふれる素晴らしき記念碑映画。


『幸福』、『5時から7時までのクレオ』は比較的よくかかる機会があったけど、このたびはそれ以外の作品もスクリーン鑑賞することができて幸せでした。
ヴァルダは、ドゥミの映画とはまた違う魅力をもった世界を大好きな女性監督であることを改めて感じた次第。
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by CaeRu_noix | 2009-09-16 09:42 | CINEMAレヴュー | Trackback | Comments(8)
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Commented by にいな at 2009-09-16 18:54 x
初期の短編映画の上映は貴重ですね。

『歌う女、歌わない女』の音楽は素晴らしく、当時サントラ盤を持っていてどれだけ聴いたことでしょう。歌詞はかなり重苦しいものだったりするのですが、かえるさんのおっしゃるとおり、パフォーマンスが楽しく軽やかな印象。
「風船になるって素敵~♪」という歌が大好きでした。

彼女は、朽ち果て枯れてしまったもの、掃き溜めやよどみに捨てられたものなど、生気を失ってかさついたものにとてもこだわっているように感じます。罅、染み、かすれ、ほつれ、そして皺でさえも驚くほどに美しく映し出し、それが魅力でもあります。写真家としての視点でしょうね。
Commented by CaeRu_noix at 2009-09-18 07:17
にいな さん♪
未公開の初期作品などもたいへん貴重でした。
しんがぽーる映画祭とかぶっていなかったら、もっと観たかったのですが、そのこともあり、日本語字幕がついてないこともあって、何本かはあきらめました。

音楽シーンは本当に楽しかったですー♪
その歌詞の内容は重くて切実で、女性たちの不遇に対する主張が込められたりしているんですよね。
でも、深刻なことを深刻ぶらずに、軽やかに歌い上げられていることこそに感動しちゃうのでした。

朽ち果て枯れてしまったものにこだわっているということ、その通りですね。
大いに納得のさすがの考察です!
思い起こせば、『落ち穂拾い』の視点も本当にそうですもんね。
ヴァルダは皺のたくさんある自身の手を映し出したりもしてたと思うけど、それにもとても風情があったりして。
寂しさを感じさせるものを好むと同時に、垣間見えるメルヘン少女趣味なところもあって、その両方の魅力をとらえているところが私は好きなんだなーって感じました。
Commented by 台湾人 at 2009-12-01 23:57 x
「百一夜」には多くのフランス人の名優が見られる豪華キャストだと聞いています。
フランスの俳優や映画が大好きな私です。
Commented by CaeRu_noix at 2009-12-02 01:01
台湾人 さん♪
はじめまして。コメントありがとうございます。
そうなんです。とても豪華なキャストで映画愛にあふれる素敵な映画でした。
機会がありましたら、是非ご覧になってください。
私もフランス俳優とフランス映画が大好きですよー。
Commented by 台湾人 at 2011-01-19 10:14 x
実は私この前「アニエスの浜辺」を見ました。彼女が歩んできた人生と歴史を知ることができたし、ファニー・アルダンやサンドリーヌ・ボネールなどの大物俳優の貴重な映像も収録されているので、大満足です。
Commented by CaeRu_noix at 2011-01-19 17:10
台湾人さん♪
お久しぶりですー。
お、ご覧になりましたかー。
アニエスの人生の軌跡を見つめることもできる素晴らしい作品ですよねー。
アニエスの映画を観てきていれば、より感慨深いですよね。
懐かしの豪華俳優の姿も見られて楽しかったですよねぇ。
私は関係のない映画を見て、たびたびドゥミとヴァルダの映画のことを考えることがありますー。
Commented by 台湾人 at 2011-03-13 23:54 x
今回の東北大震災で日本各地に多大な被害をもたらしたそうですが、そちらの方は大丈夫でしょうか?
テレビで見ていると本当に心が痛みすごく残念に思えます。
Commented by CaeRu_noix at 2011-03-14 02:10
台湾人 さん♪
ご心配ありがとうございます。感激です。
首都圏は直接的な被害は少なく、幸いに私は大した困難にも遭遇しませんでした。(電車が止まったり、停電などはあるものの。)
しかし、震源地の東北地方の被害は甚大で、今もたくさん行方不明の方がいるのですよね・・・。
一人でも多くの方が無事に見つかるとよいのですが・・・。
まだまだ大変な時期は続きそうですが、完全な復興には時間がかかるでしょうが、皆が早く平穏な日々を取り戻せるとよいです。
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