かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『幸せはシャンソニア劇場から』 Faubourg 36
2009年 09月 18日 |
パリの下町にはアコーディオンの調べがよく似合う。ノスタルジックな風合いのあたたか人情ドラマ。

1936年、パリ郊外の下町にあるミュージックホール「シャンソニア劇場」は、経営不振で閉鎖となったが、長年ここで働いてきたピゴワルは、仲間とともに劇場の再建に乗り出す。



大好きな『コーラス』 の監督作品であり、音楽賞、撮影賞、美術賞等でセザール賞にノミネートされていたこともあって楽しみにしていた本作。音楽で彩られた劇場が舞台の映画なんて、とにかくワクワクしちゃうんだけど、それだけじゃなくて、1930年代のパリの下町を描いているのが魅力。洗練された華やかな都市パリのイメージとは異なる、庶民の生きる人情あふれる温かな町が活き活きと蘇る。原題のFaubourgとは郊外のことで、架空の町の名称になっているらしい。

エッフェル塔とサクレクレール寺院が見える町がそこにあるなんて。現実の30年代のパリの街のことはもちろん知らないのだけど、クラシック映画の中で体験したかつての街の雰囲気が再現されているところが、映画好きにとってもパリ好きにとっても嬉しくなるものなのだ。時代背景や活気溢れる通りの風景や人々の息づかいはリアルでありながら、実在しない街であることを初めとして、美しい夜景やュージックホールの煌びやかさにはおとぎ話の香りがするまじわり具合がとてもいい。夢心地。

主人公に扮するのは、『コーラス』に続いて、ジェラール・ジュニョで、『バティニョールおじさん』といい、彼の主演作には、良質な感動が期待できるのだ。一見オシャレなイメージのフランス映画だけど、ルコント作品にしても何にしても、ダンディにはほど遠い、小太りのカッコよくないオジサンが主人公の映画がたびたび作られるところがむしろ素晴らしいなって思う。ヒーローを見るような安心感がない反面、まさに庶民という風情のこの不器用でひたむきな男を応援せずにはいられないの。主人公がちょっとサエナイ男たちだから、大抜擢されたというヒロイン、ドゥース役のノラちゃんのキリリと美しい存在感がひと際目を引き、その美声にウットリ。

そして、マクサンス・ペランくんがアコーディオンを弾いている姿にもそれはもう感激。『コーラス』では、ひたすらかわいいちっちゃな子どもだったのに、いつの間にやらハンサムな少年に成長し、スクリーンの中で活き活きと主人公の息子を演じているのだから。そんな彼を見守る気持ちに妙に共感できるから、父と息子の物語としても大いに感動しちゃうのだった。それから、最も心揺さぶられた大好きなエピソードは、ラジオ男がかつての音楽の才能を再び発揮することができたくだり。引きこもりの彼が賑やかな劇場でまた指揮棒を振る姿にジーン。

再建当初は笑えないモノマネが舞台のメインだったりして、盛り上がる音楽シーンがなかなか現れずに欲求不満を感じるほどだったからこそ、クライマックスのミュージカルは最高に楽しかったな。地味なリアリティを追求していたトーンがパンと弾けるように変調し、軽快な音楽に合わせて、白く光り輝く明るい画面にジーン・ケリーばりのスマイルでカメラ目線で歌うオジサンたちのクローズアップ。パリの下町にある劇場のステージが映し出されているという現実が一気に夢の世界にトリップして、スクリーンには黄金期のハリウッド・ミュージカル映画さながらの陽気な音楽シーンが登場するとはね。作り込まれた映画ならではの魅力が凝縮されていて満足。
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by CaeRu_noix | 2009-09-18 07:14 | CINEMAレヴュー | Comments(4)
Commented by Minita at 2009-09-18 12:55 x
かえるさん、こんにちは!
夢を作り出して魅せてくれる場所、劇場が舞台の映画っていいですよね。
ステージにあがる前のキャスト達の舞台裏のせわしなさを
カメラで追いかけているというシーンから、もう心がうきうきしました。
下町の佇まいもとてもとても素敵でしたし。

父と子の再会シーンは胸がいっぱいになりました~。
あのアコーディオンを抱え登場するペラン君は本当に可愛いくて。
そして最も華やかなハリウッド・ミュージカル映画のようなシーンは
自分達も劇場にいる観客のように楽しめましたね~。
ラジオ男さんは20年のブランクを感じさせないし(笑)

戻ってきたピゴワルが劇場の中にはいらず、外で佇むラストもとても好きでした。


Commented by CaeRu_noix at 2009-09-19 01:06
Minita さん♪
劇場が舞台の映画って大好きですー。
音楽とダンスにあふれ、興奮と感動をいっぱい与えてくれるんですもの。
そして、そうですね。夢もみせてくれるんですよねー。
町の風景から劇場に入り込む冒頭のカメラワークなんかもステキでしたよねー。
そこで暮らす庶民たちの日常の活気がいい感じで。
目新しくはないのに、こういうタッチのこういう時代の映画は久しぶりのような気がして、とても夢心地になれましたー。
父と息子の物語もそれほど捻りがあるわけでもないのに、彼らのひたむきさに泣かされちゃいましたよね。
手紙を渡してもらえないシーンんなんてキー。
舞台シーンはちょっと意外でした。
フレンチカンカン系のリアルな活気で見せるのかと思ったら、アメリカーンなノリで、いかにも舞台風というよりは、明らかにミュージカル映画の登場だったんですもん。
その転調がすごく面白かったんですけどね。
ラジオ男さんは、才能のある人だったんですよ。w
Commented by とらねこ at 2009-09-26 17:40 x
こちらにも♪

>原題のFaubourgとは郊外のことで、架空の町の名称になっているらしい。
あ、なるほど、そうだったんですね!シャンソニア劇場の名前が変わってしまうんだなーって思ったら、パリの下町の人情味や底力を描くこの作品にピッタリな改名だったのですね。
ピゴワルも、最初の台詞が「ファブールから来た」でしたっけ。

どこの国でも下町の持つ温かさって一緒なんでしょうか。
ホント、冴えないおじさんが主人公なところが、逆に素敵な今作でした♪
最後のミュージカル、本当に楽しめましたヨ。
Commented by CaeRu_noix at 2009-09-27 10:39
とらねこ さん♪
シャンソニア劇場って、初めの名称なのに、聞こえがいいからって、そちらを邦題にしちゃう日本の配給会社って、ホントに・・・って思いつつ。
ロケーションチェック好きな私は、下町はどのへんにあるんだろうって、探したのですが、直接的には架空の町らしいですー。
エッフェル塔とサクレ・クール寺院が眺められる場所なんてステキ。
パリの人は冷たかったりするけど、東京の現代人も無関心だったりするけど、下町には人情が感じられる気がしますよね。
パリ舞台で娘のために死闘を繰り広げるベッソン*ニーソン映画とはまるで違う、息子のために友人のために奮闘するサエナイオジサンの物語が私もやはり好きですー。
思ったよりも歌やダンスのシーンは少なかったのですが、その分、作り込まれた面白さがあのへんに凝縮されていましたねー。
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