かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『のんちゃんのり弁』
2009年 10月 07日 |
下町情緒。海苔には日本の心がある。栄養をしっかり補給して、全力投球で生きることのすがすがしさよ。

31歳の永井小巻は、ダメ亭主に愛想を尽かし、娘ののんちゃんを連れて、実家の京島に出戻る。



奮闘する女子もの。お馴染みな題材でありつつ、シノプシスを読んで予告を見ると、何となく古めかしい設定に感じられた。原作は90年代の漫画と知って納得。というのは、オリジナル脚本だったら、あらさ女子モノに弁当屋という職業はあえて選ばれるはずはなく、食べ物を扱うとしたら、(フードスタイリストが同じ飯島さんの)『かもめ食堂』的にレストラン系に走るのが王道でしょうって思ったから。現実的にも、今どきの女性が自立して1人で何かをやっていこうという時、弁当という選択肢は限りなくゼロに近い気がした。フード系を目指す人はいるだろうけど、たぶんみんなどっちかといったら、小巻的な弁当な道よりも、カフェなお店を開きたいだとか、或いはフードスタイリストを目指せなんてことを思っちゃうんじゃないかな。実家の下町で弁当売り出しはなかなか思い切れないでしょう。そんな世代でしょう。いえ、そう感じてしまうからこそ、ダメなのじゃなくて、オサレ系にカッコよくサクセスっていうんじゃないのがむしろよかったな。すったもんだなドタバタが楽しく、しっかりと感動を呼ぶものになっていたよ。

緒方明監督作としては、『いつか読書する日』の長崎の坂の街ような美しさに魅了される映像というのがなかったことはやや残念なものの、人間ドラマ的にはその仕事の手堅さを大いに感じた。この役を小西さんにやらせたことは評価が分かれそうな感じだけど、小巻のマンガチックなキャラクターとその突っ走り方は面白いものだったな。時に考えなしな行動に走るがむしゃらな小巻は、全肯定はできない困ったちゃんな部分も持ち合わせているんだけど、それゆえにリアルで興味深いし、それを含めても応援したくなっちゃうよう強いパワーに巻きこまれるの。名前は小だけど、実態は台風のような大巻きマキ。小西さんはTVのイメージの人なんだけど、TVドラマだったら、ここまで徹底的に大人の男女の取っ組み合いのケンカのシークエンスを長々と撮らないでしょうって可笑しくなっちゃった。この活劇の温度と燃焼度はマンガ媒体では表現しきれないだろうって思う。ドタバタに体あたりなシーンこそに映画の魅力があふれるのだ。映像ならではのものといえば、おいしそうな食べ物の数々にもワクワク。のり弁侮れじ。

栄養バランスのとれたおいしい物を食べることはこの上なく幸せなことであり、それもまた生きる活力となりうるのだろう。小巻という女は時に無謀で周囲に迷惑をかけまくりなんだけど、料理上手で子どもにちゃんと愛情を注いでいる点が素晴らしい。仕事がうまくいかなくても、愛娘のんちゃんに冷たくしたりはしないし、時間に追われていても、のんちゃんには無敵の特製のり弁当を持参させるのだ。自分の得意なものを活かして、生計を立てる。おいしいものをみんなに食べてもらう幸せを分け与える。そんなテーマにはやっぱり心温まるの。本作を 『空気人形』と同じ日に鑑賞した私は、その舞台となっている東京の街の二つがそう遠くはないというのに、街の佇まいや人間模様が全く異なっていることがとても興味深かった。おせっかいやいざこざや、下町的なコミュニケーションは煩わしさと紙一重ではあるけれど、それは本来の人間社会の望ましいカタチなのかもしれない。主人公に共感することが全てではなくて、監督世代・岸部さん世代が小巻世代を叱りつける目線もまじえているっていうところが味わい深いの。不景気な世に明るく響く応援歌なり。
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by CaeRu_noix | 2009-10-07 12:30 | CINEMAレヴュー | Comments(2)
Commented by de-nory at 2009-10-15 12:32 x
こんにちは。TBをいただきましてありがとうございます。
はじめましてですよね。
墨映画(BOKUEIGA)のde-noryと申します。
墨彩画で映画レビューを描いています。

元気をもらえる映画でした。
破天荒なところもありで、楽しめました。
あまりに強すぎて、これでは引かれてしまうなー。と思ってたら案の定。
しかし、男につかないで生きる生き方を選んだ姿は好感が持てました。

たくさん、ご覧になってますね。
また寄らせてもらいます。
Commented by CaeRu_noix at 2009-10-17 01:50
de-nory さん♪
はじめまして。お返事遅れてごめんなさい。
丁寧なご挨拶をどうもありがとうございます。
墨彩画とは素晴らしいですね。

本作はとても面白かったし、かなり感動しましたです。
世間一般的には、普通な評価みたいなんですが・・・。

そうなんです。彼女の生きる道にはとても好感がもてましたよね。
一昔前の(今もかな?)ハリウッドラブコメとそれにならったような日本のTVドラマ寄りなシロモノは、大概欲張りなハッピーエンドで、恋も仕事もどっちもうまくいくっていうパターンだったと思うのですが、これはあえて、新しい恋が始まるわけでもなく、モトサヤにおさまるわけでもなく、っていう着地だったのがむしろ出来すぎじゃなくてよかったなって。
そういう潔さがとても気持ちよかったですよねー。

今後ともよろしくお願いします。
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