かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『君を想って海をゆく』 Welcome
2009年 10月 09日 |
「第4回UNHCR難民映画祭」にて、ベルリン国際映画祭パノラマ部門で国際批評家連盟賞を受賞したフィリップ・リオレ監督の『ウェルカム』を鑑賞。

フランス北部の海辺の町に暮らす水泳インストラクターのシモン(ヴァンサン・ランドン)が、イギリス行きを目指す17歳のクルド人のビラルと出会う物語。



『パリ空港の人々』、『マドモワゼル』、『灯台守の恋』のフィリップ・リオレ監督は好きな監督の一人。フランス本国で今年3月に公開されたばかりの新作を観られる(それも無料で)ことができてとても嬉しく。それでもって、味わい深い上質な映画でありました。

サッカーが得意な17歳のクルド人のビラルは、会いたい人のいるロンドンを目指して、何とかフランスのカレーまでたどり着くのだけど、トラックの中で、警察の二酸化炭素探知機に反応が起きないようにするための、ビニール袋を頭から被って息をひそめている状態に我慢できなかったのだった。『イン・ディス・ワールド』 のことを思い出したりしながら、彼らの過酷な旅路、それも不成功に終わったことの落胆がやるせなく迫ってくる。

通過点に踏みとどまらざるを得ない不法入国者の外国人といったら、『パリ空港の人々』にも共通するものがあるといえるのだけど、あんなふうにユーモラスな雰囲気は少しもなくて、リアリティにあふれるシリアスなタッチで、ビラルたちの不安定な状況が描写されている。リオレ監督が手がけるものとしては初めて観る社会派映画な手触り。といってもガチガチではなくて、あくまでもヒューマン・ドラマの味わいが核になっていて、ケン・ローチやダルデンヌ兄弟作品などに通じるものがあるかな。ヒリヒリ切ないの。

かつては栄光のオリンピック選手であったというのに、今は離婚調停中で、仕事の後には1人で夕飯を食べることも日常的で、生きる活力を見失っているかのように淡々と毎日を送っていた男が、命がけで国境を越えることにまっしぐらな17歳のクルド人に心を動かされる。そんな出逢いの物語、隣人愛というようなテーマは大好きな私。泳いで海峡を渡るなんていうのはそれはもうこの上なく無謀だけど、まっすぐにがんばる人間を応援せずにはいられないっていう思いはとてもステキじゃない。そこにある問題は、正しさでいえば複雑なものだけど、無気力に見えたシモンがビラルを助けるくだりはとにかく嬉しくなるものなのだった。

だけど、それがどれほどに純粋な善意で、人道的に真っ当だと思える行為であっても、法律違反は法律違反なのが辛い現実。不法滞在者を直接に厳しく取り締まるばかりではなく、その手助けをしたフランス国民に対しても手厳しい処置があることに驚く。人を助けることが犯罪になってしまうなんて何だか悲しいけれど、そう定められている以上は抗うことも難しくて、せっかくの人道的な善意さえも力を失ってしまいそうになるのだ。それにしても、警察の人たちはそれが仕事なのだから、不法滞在者摘発の職務を忠実にこなすのも当然だとして、シモンの隣人の心ない告げ口には歯がゆさもひとしお。文化もまるで違う遠い国からやって来た少年に親のように接することだってできるのに、片や、本当の隣人がそんな存在になってしまうとは・・・。玄関マットの「Welcome」の文字が皮肉いっぱいにスクリーンに映し出されるのだった。

どこの国のお話も英語劇になっちゃうハリウッド映画、というのとはまるで違う次元で、会話の多くが英語である本作。フランス舞台のフランス人監督・主演によるフランス製作の映画なのに、原題までも英語の「Welcome」。片言の英会話しかできない自分にとっても、昔からとても馴染みのあるその英単語。「Welcome」な心と態度、本当は人と人の間ではとても大切なものなんだってことを思い出しながら・・・。せっかく公用語には「Welcome」という言葉があるのに、心を込めて使われないのは寂しいね。

フランスがこんなに厳しく不法移民に対処するようになったのはサルコジ政権になってからのことなのだろうか?ってことを思いながら見ていたわけだけど、サルコジというパーソンはやっぱり関係なくはないみたい。後で知ったのだけど、この舞台カレーに以前あった難民収容所は2002年、サルコジ内相就任時に閉鎖されたのだそう。   パリの新聞:OVNI   
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by CaeRu_noix | 2009-10-09 23:59 | CINEMAレヴュー | Trackback(1) | Comments(4)
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Tracked from NiceOne!! at 2010-12-29 18:06
タイトル : 『君を想って海をゆく』(2009)/フランス
原題:WELCOME監督:フィリップ・リオレ出演:ヴァンサン・ランドン、フィラ・エヴェルディ、オドレイ・ダナ、パトリック・リガルド、ティエリー・ゴダール鑑賞劇場 : ヒューマン...... more
Commented by マダムS at 2009-10-10 21:59 x
ぼんそわ~ さば?
難民映画祭いらしたんですね そうですかそうですか。
うわ~ん リオレ監督のファンの一人なので私も観たかったー。  2年前の仏映画祭で観た「心配しないで」は、いつのまにかDVDになってたんですね~『マイ・ファミリー/遠い絆』なんてタイトルで。

ウエルカムだなんてタイトルは皮肉なネーミングだったんですね?
お陰さまで昨夜『西のエデン』無事鑑賞してきました! 不法入国者に対しての取り締まりがこんなにも厳しいのかー!と思ったばかり。 食い物にする奴らもいるけど、さりげなく助けてくれる人なんかもいて素敵。。なんて思ってたんですが、え~それも罪になるの? 
そうそう スカマルチョ君も泳いで渡っていたけど、ドーバー海峡は地中海とは比較にならない位に大変よねぇ。。 つい手に汗握るシーンだったでしょうね。 ラストは同じようにシビアな内容だったんでしょうか。

さて、今月は映画祭! かえるさんもかなりの本数御覧になるようね^^
私も今回はドイツとTIFFで合計7本観ます~♪ どこかで見かけたら声かけて下さいね^^
Commented by CaeRu_noix at 2009-10-11 12:54
マダムS さん♪
鰯。秋刀魚。ごきげんようようー。
そうそうそう、前作はDVDになってましたねー。
それしても、マイ・ファミリーっていうタイトルは酷過ぎー

『西のエデン』、鑑賞おめでとうございますー。
今の日本じゃ、こういうタイプはなかなか一般公開に結びつかないようですけど、せっかく日本語字幕がついたのだから、この素晴らしい映画は多くの上映の機会をもつべきと思うのでー。

不法滞在者を助けると罪になる法律のある国がどのくらいあるのかは知りませんが、少なくともフランスにはしっかりあるようです。
灯台守でも寂寥感のある荒々しい海を映し出していましたが、こちらの海もそんな感じで。
海を泳ぐシーンでは『イースト/ウェスト』のセルゲイ・ボドロフ・Jrを思い出したりー

さて、映画祭ですねー。ドイツのバルトにも行きますよー。
がんばりましょう。トルナトーレのはトッテナイのですけど。
お会いできるといいですねー
Commented by rose_chocolat at 2010-12-29 18:08 x
切なかったですね。
国として受け入れられない、けど人間として幸せになりたいから
入国したい、せめぎ合いです。

移民問題を扱った映画が近年急に増えました。
日本もそのうち・・・ という気もしなくもないし。
自分たちの目の前でこういう問題が起こったら? ということを考えざるを得ないです。
Commented by CaeRu_noix at 2010-12-31 01:51
rose_chocolat さん♪
せつなくやるせなくー。
たまたまその国に生まれたに過ぎないと思っているので、同じ人間で普通に暮らすことさえままならないという状況は本当に歯がゆいですー。
移民を描いた映画って、以前からたくさんあると思うのですが、例えばフランスだったら、前はマグレブなアラブ系移民が多かったのに、今はクルド人も登場するのかというのが興味深かったです。
TIFFで『ハンズ・アップ』を観た時に本作のことを思い出したりしたのですが、サルコジ政権になってからは本当に手厳しいようで・・・。
日本も不法入国はあるでしょうけど、やっぱり悪い業者が仲介したりして、一般市民がシモンのような立場にたつケースはあまりないのかも・・・。
シモンやハンズ・アップのテデスキママのように行動できたらいいですけどね。
ニホンジンはガイジンに手厳しい気がするけど、どうなんでしょうー
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