「ほっ」と。キャンペーン
かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
latchodrom.exblog.jp
(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
Top
『アニエスの浜辺』 Les Plages D'agnes
2009年 10月 14日 |
81歳になったフランスの女流映像作家アニエス・ヴァルダが人生を振り返る。映画と家族への愛に満ちた至福のドキュメンタリー。ヴァルダと夫ドゥミたちが創ってきた映画の輝き、この世界の美しさとそこで生きることのステキさを感じずにはいられない集大成。



「アニエス・ ヴァルダの世界」 第1部 において一足先に東京日仏学院にて鑑賞。(黒沢清&小泉今日子トークショー付)

アニエス・ヴァルダやジャック・ドゥミに、彼らが撮った映画たちに興味のない人がこのドキュメンタリーを観たら、どういう感想を抱くのかはうまく想像できない。だけど、とにかく、フランス映画と彼らの映画が大好きで、アニエス・ヴァルダその人を敬愛する私にとっては、感慨がとめどなく押し寄せる、きらめきに満ちた素晴らしき作品であった。過去の映画を振り返り、それにまつわるエピソードをなぞるだけでも楽しさはヒトシオだし、アニエスの思慕にしばしば胸を打たれながら、その思い出巡りの旅を共に味わうのだ。なんて心地よいひと時。

序盤のヌーヴェル・ヴァーグについての語りからワクワク。自分が関心を持つ好きなものが取り上げられているから楽しめるという所もあれば、ほとんど触りの部分しか知らなかったものについて、より詳しく紹介されていて、興味をそそる新発見の歓びもあった。左岸派も大好きな私としては、アラン・レネの名前なんかが出てくるのが嬉しくてたまらない。製作費安く撮ることが主旨であったとサラリと語られるヌーヴェル・ヴァーグはだからこそ魅力的。

ヴァルダファンのつもりでいたけど、何も知らなかったかもしれない私。彼女がベルギー生まれであったことも近年認識した気がするのだけど、父親がギリシャ人であるということはこのたび知った。アニエスと息子マチューの顔立ちがなるほどギリシャ人の血を引いていることに納得したりして。家族のスケッチはとても微笑ましいものだったな。そして、たぶん日本ではあえて報道されることもなかった気がするのだけど、ドゥミの死因が当初は発表された病気ではなく、AIDSであったことを知って、今更ながら驚いてしまった。

家族への愛に満ちた自分史なドキュメンタリーなんて、やり方によって、作る人によっては、その自画自賛ぶりにウンザリしてしまうこともありえそうなのに。アニエスの物語はそう感じられる厭味なところがなく、微笑ましさでいっぱいになるの。それは、彼女がもはや80歳を越えていることも一因だと思うし、彼女が賢い人であり、常にユーモアを忘れない人柄によるものだと思った。ただ過去の栄華を誇らしげに映し出すのではなくて、映像は遊び心に満ちあふれていて、随所にユーモアが散りばめられているの。かなりシニカルな表現もあったり、アニエス自身がコメディエンヌのようにカメラに向かって笑いを引き出してくれたりするの。81歳でこんなにお茶目さんでいられるなんて、本当にステキ。

自分の人生を愛で、家族を慈しむアニエスというその核が魅力的であながら、同時にちゃんと世界を見据えているからこそ、私的なものにとどまらない普遍的な味わいを有していると思えた。(これが、一般の多くの女性ならば、自分とその半径5m以内のドラマを伝えることに終始しそうなものだもの。)写真家として活動をしていた時代の、報道と芸術の合わせ技といえるようなビビッドなフォトもとても印象的で、アーティストで彼女のカッコよさに改めて惚れぼれ。写真家の嗅覚をもって世界を旅してきた経験とそこで養われたものが彼女という人物が形成されているのだなって。

観客の私は、アニエスに導かれるままに視野と焦点を自在に変えて、アニエスの人生を振り返り、映画史を見つめ、この世界と人生についてに思いを馳せる。何とも心地よい漂流、感銘いっぱいの浜辺の旅の時間。
[PR]
by CaeRu_noix | 2009-10-14 12:08 | CINEMAレヴュー | Trackback(4) | Comments(4)
トラックバックURL : http://latchodrom.exblog.jp/tb/10338111
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from ヨーロッパ映画を観よう! at 2009-10-26 00:48
タイトル : 「アニエスの浜辺」
「Les plages d'Agnès」...aka「The Beaches of Agnès 」2008 フランス 監督/脚本/出演に「5時から7時までのクレオ/1961」「幸福(しあわせ)/1964」のアニエス·ヴァルダ。 自分の人生を振り返るアニエス·ヴァルダが、映画の中に映画人と彼女の家族を登場させ、追想シーン(過去に撮影された映像)を織り込みながら描くドキュメンタリー·ドラマ。 夫は「シェルブールの雨傘/1964」「ロシュフォールの恋人たち/1966」「ロバと王女/1970...... more
Tracked from 〜青いそよ風が吹く街角〜 at 2009-11-06 20:46
タイトル : 〜『アニエスの浜辺』〜 ※ネタバレ有
2008年:フランス映画、アニエス・ヴァルダ監督&脚本、アニエス・ヴァルダ、ジャック・ドゥミ、マチュー・ドゥミ出演。... more
Tracked from Mani_Mani at 2009-11-17 00:35
タイトル : 「アニエスの浜辺」アニエス・ヴァルダ
公式サイト アニエスの浜辺LES PLAGES D'AGNES 2008フランス 監督・脚本:アニエス・ヴァルダ 最近twitter中毒になってしまい、 ここの更新が追いつきません。 映画ネタもすっかり世間からは遅れ・・・ と思ったけど、もともとそんなに世間についていっていることもないので、 まあいいのか・・ **** さて、『アニエスの浜辺』 素敵な映画でありました。 最近観た映画の中では一番気に入ったように思います。 この作品では過去がテーマとなっていると思う。 テーマというより対...... more
Tracked from シネマな時間に考察を。 at 2010-09-07 10:42
タイトル : 『アニエスの浜辺』
記憶、追悼、未来への想い。 コラージュ的な映像言語で紡がれた、 アニエスの心の旅路に同行して。 『アニエスの浜辺』 2008年/フランス/108min 監督・脚本・出演:アニエス・ヴァルダ アニエスにとっての心象風景、 それは3つの浜辺だった。 子供の頃を過ご... more
Commented by BC at 2009-11-06 20:57 x
かえるさん、こんばんは。

知っている映画・映画人・スターが登場すると嬉しい気持ちになりました♪

芸術的な監督と言えば、気難しそうな監督が多そうなイメージを持っていた私だけど、
アニエス・ヴァルダはお茶目で親しみやすい人柄で
周囲からも信頼されている様子が伝わってきました。(*^-^*
Commented by CaeRu_noix at 2009-11-08 01:49
BC さん♪
映画にまつわるお話から、引用映像、盛りだくさんの楽しさでしたよねー。
懐かしかったり、新発見だったり、興味深いポイントがいっぱい。
そして、アニエスはホントにお茶目でかわいい人でしたよねー。
気難しい一面も持っている方なのかもしれないけど、こだわりはあっても気取りはないって感じで。
年をとって頑固になる人もいるのでしょうけど、アニエスの場合は80を超えて、知的な鋭さと同時に、ユーモラスなやわらかさを体現してくれるから素晴らしいですよね。
体をはって笑いをとってくれたりなんて。
信頼/敬愛せずにはいられませんともー。
女性の映画監督が80まで活動できるフランスという国がまたいいなぁって。
Commented by manimani at 2009-11-17 00:30 x
かえるさんこんばんは。
この映画をみるのに、アニエスやジャックのことを知っている必要はないと思いました。アニエスは過去を振り返るという題材をもっともよく表現できる素材として自分自身の歴史を選んだのであって、その結果でてきた表現はそれはそれ自体で成立しているものだと思いました。

で、フランス。カネフスキーやクストリッツァの作品がフランス資本で撮られていることなども考えると、フランスというところが映画に貢献している度合いは我々の想像以上なのですよね〜きっと。
Commented by CaeRu_noix at 2009-11-17 01:27
manimani さん♪
そうですねー。私の場合、アニエス&ジャックに多少なりとも思い入れがあって、彼らの映画が大好きーっていうのがあって、結果、感銘がより深まったというのは実際あるのですが、確かに必ずしも必要な条件ではないですね。
知らなければしっかり味わえない、存分に楽しめないなんてものではなく、自分史という特定のものを描いているのに、普遍的なものとして響いてくるんですよね。
私たちの思いも映像と一緒に、実に軽やかに飛びまわり、時間と空間を旅することができちゃうんですよね。
とても素敵な映画体験でした。

そうなんですよね。世界各国の才能を埋もれさせずに、映画を作らせてくれるフランスには感謝、感謝。
カネフスキーのもフランスなんですか。
セザール賞受賞作もカンヌパルムドール作もなかなか公開されない日本がかなすぃー
<< 『あの日、欲望の大地で』 Th... PageTop 『正義のゆくえ I.C.E.特... >>
XML | ATOM

個人情報保護
情報取得について
免責事項
Beige Shade by Sun&Moon