かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
latchodrom.exblog.jp
(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
Top
『あの日、欲望の大地で』 The Burning Plain
2009年 10月 16日 |
渇いた大地の情景の素晴らしさ。乾いているから、よく燃える。大自然の中ほどに、人間のサガやゴウが浮き彫りになる。

『アモーレス・ペロス』、 『21グラム』、『バベル』の脚本家ギジェルモ・アリアガの初監督作。



ヨーロッパの映画を観るたびに女優たちの脱ぎっぷりのよさに感心しつつ、それにひきかえ、ハリウッド女優はもったいつけているよなぁなんてことを思っていた私。そんな心を見透かすかのように、冒頭からシャーリーズ・セロンが堂々たるヌードを披露し、ただならない空気を感じさせてくれた。恥じらいも何もなく、裸体で窓辺に立つシルヴィア。さほど魅力的にも見えない職場の既婚男性と関係を続けているシルヴィア。行きずりの男とも簡単に寝てしまうらしいシルヴィア。序盤のわずかな場面で、彼女の無気力さや投げやりな生き方が見てとれるのだった。本来ならば高嶺の花であるような美しい彼女が、何故こんなに自暴自棄になってしまったのだろう。何が彼女をそうさせてしまったのだろうかと、事件や何かが起こらなくても、忽ちサスペンスに引き込まれてしまうのだ。そんな謎と答えが、多くの言葉を必要としないまま、映像によって静かにジワジワと語られていくところがとてもいい。脚本家の手がけたものだからこその、気合いの入った画作りに魅せられる。

ところで、脚本家がメガホンをとりたいという思いを抱くのは何がきっかけなんだろう。自身が紡いだ物語が、思い描いたものとかけ離れたイメージで映像化された時にその意志を持つ?或いは逆に、生み出した巧妙なプロットがささやかなものに過ぎないと感じてしまうほどに、映像の力を目の当たりにした時に突き動かされる?虚構の物語をつくる小説家や脚本家が文章を書く時、言葉はただ言葉として次々と生まれてくるのだろうか?私ならばたぶん、その都度その光景を頭の中で思い浮かべながら、一歩遅れて言葉を探してしまうのじゃないかと思う。そう、言葉よりイメージや画がやや先で、物語が生まれる瞬間にその場面は既に映像化されているのだ。ならば、一度文章に変換して、また別の作り手がそれを映像にするという手順を踏むよりも、生み出したもののイメージそのままに映像する方が、そもそもの本質をとらえた純度の高いものになり得るといえるよね。何人もの脚本家の名前が連なって、リライトが重ねられるハリウッド大作は、果たしていつもよりよいものになっているのだろうかという疑問を思い出しながら、物語を生み出す才のある人が、意図するままにディレクションを担うというのもまたいいよねって思った。きっとアリアガは、『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』のような映画を撮ってみたいと思ったんじゃないかなって。

雄大な空と大地の映像に魅了されながら、現在と過去を行き来するお馴染みの謎めいたプロットにも飽くことなく惹きつけられる。そして、やがて見えてきたトラウマの物語に心が痛くなるのだった。母親のそんな行動を知ってしまった娘の複雑な心情もわかるし、だからといって、取り返しのつかない結果を招いてしまったことへの罪悪感が軽減されることでもなく。ただ、彼女の厭世感に合点がいくのだった。不倫母がキム・ベイシンガーだからか、『ドア・イン・ザ・フロア』に通じる何かも感じた。簡単に洗い流すことのできない人の深い悲しみ、痛みを静かに綴っているところが似ていると思えたのかな。あちらのトラウマは痣のようなカンジで、こちらのそれは、まさに火傷の跡のようなものなのだけど。過去が徐々に紐解かれるサスペンスの面白さに加え、それぞれの世代の女を体現した女優達の競演によるへヴィーな人間ドラマが味わい深くて、火傷・焼け跡の感触がオツ。
[PR]
by CaeRu_noix | 2009-10-16 23:59 | CINEMAレヴュー | Comments(2)
Commented by cinema_61 at 2009-10-28 20:23 x
こんばんはかえるさん。
忙しかったのでこの映画見られないかも?と心配してたけど、まだやっていた!(今日見てきました)
21グラムに感動したので、きっと!と期待していったけど久しぶりに見ごたえあるハリウッド映画でした。
2大女優の体当たり演技が素晴らしく、特に私のお気に入りのキム・ベイシンガーがよかった~
もうかなりのお歳なのにセクシーでファッショナブルで・・・・ただ佇んでいるだけでステキです。
時系列が交錯するなかで、ぐいぐいと引き込まれるストーリー展開に映画の醍醐味を味わいました。
Commented by CaeRu_noix at 2009-10-29 01:15
cinema_61 さん♪
劇場鑑賞できてよかったですねー。
そう、これはシネスコの醍醐味を感じられる乾いた大地の映像が素晴らしかったので、スクリーンで観られて何より。
cinema_61 さんは「21グラム」がお好きなんですね?
私はアリアガ脚本の中では、メルキアデス・エストラーダが一番で、アモペロが二番かな。
でも、やはり常にアリアガ脚本ものは面白いですよねー。そして、今回、監督としての手腕も確かなものであることがわかりましたよねー。
3人の女優の演技、存在感が素晴らしかったですよねー。
キム・ベイシンガーってどうしてこういう役がばっちりハマっちゃうんでしょう。いけない母だけど、彼女の表現する女のサガはとてもリアルで、憎めない女でした。年齢を感じさせない儚い女らしさをもっていますよねー。
サスペンスな展開も面白く、その切実な痛みには釘付けでしたよねー。
<< 10月16、17日の公開映画ち... PageTop 『アニエスの浜辺』 Les P... >>
XML | ATOM

個人情報保護
情報取得について
免責事項
Beige Shade by Sun&Moon