かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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第22回東京国際映画祭 鑑賞メモ ― アジアの風 ―
2009年 10月 24日 |
今年も通いましたー。
そろそろ終わりに来ているので、鑑賞記録をば。

まずは<アジアの風>部門の
『愛してる、成都』、『シーリーン』、『 チャンスをつかめ!』、『時の彼方へ』、『タレンタイム』、『夜と霧』



『愛してる、成都』 成都我爱你  Chengdu, I Love You
 監督:フルーツ・チャン、ツイ・ジエン(崔健) /中国

2008年に四川大地震の起こった成都を舞台にしたオムニバス。

これって、もとは3話から成るものだったらしいですね・・・。なのに、ホ・ジノ監督作の2008年を舞台にした「豪雨時代」編は、単独で長編化されたりしたようで。そして、そのホ・ジノ編であるチョン・ウソン主演の長編版『きみに微笑む雨』は日本でも11月に劇場公開が決まっているものだから、TIFF上映版のこちらは、まんまと2話ものに!オムニバスなのに、合わせた上映時間がずいぶん短いよなーって思っていたんだけど、そういうことかー。ヴェネチア国際映画祭なんかではたぶん3話版が上映されたのかなと。TIFFだって、一応同じ国際映画祭なんすよね?この違いは何?そりゃあ、きみ雨の配給会社やら何やらの要請によるものだったのかなぁってことは想像できなくないけれど。にしても、最初から2話のオムニバスとして成り立っているように紹介されていたところが欺かれた気分・・・。

ということが後になって残念に感じられたのではあるけれど、久しぶりにフルーツ・チャンの映画を観られて嬉しく。文革の頃の茶館の雰囲気がとてもよかった。茶芸にも見入っちゃったな。香港のフルーツ・チャンが今や大陸で毛時代の物語を撮っているとは不思議。そして、中国朝鮮族なロックスターの雀健初監督作の2029年編の方も意外と好みなタッチでした。意拳といい茶芸といい、中国らしい優雅なアクションづかいで見せてくれるのがいいなって。


『シーリーン』 Shirin
 監督:アッバス・キアロスタミ /イラン

「ホスローとシーリーン」の映画を観ている女優達。

キアロスタミ来日キャンセルは残念無念。「30分我慢してもらえば、」なんてメッセージが読まれたので、30分後には何か展開があるのかな?って開映直前に誤解しちゃったじゃない。やっぱり当初の想像通り、ずっとでしたね。いえ、案外とうんざりはしないもので、イランの女優さんはみんなキレイだなぁって、女性たちが幾分息苦しい思いをしているその国で、こうやって女たちの表情を捉える試みが何だか感慨深かったりで、楽しみどころはそれなりに。でも、やっぱりホスローとシーリーンの物語は、細密画でいいから、そのものを見たいという欲求にかられてしまうかなぁ。イランの風景が好きなのだもの。劇場の真っ暗闇は東京と一緒だもの。まぁ、とにかく、たった数秒間の台詞なし顔だけ出演であっても、こんなにたくさんの美しい女優たちが出演を快諾するんだっていう、キアロスタミの巨匠ぶりをアピールした映画なのでした。嘘。


『チャンスをつかめ!』 Luck by Chance
 監督:ゾーヤー・アクタル /インド

ボリウッド映画界をめざす若者バックステージもの。

TIFFではインド・ミュージカルを一応観なくちゃってことで。俳優を目指す若者、映画製作にかかわる人たちの物語という題材はもちろん魅力で、笑いも散りばめられたエンタメ。ストーリーはベタな定番パターンかと思いきや、都度予想外の方向にいったりするので、なかなか惹きこまれ。ミュージカル・シーンがさほど多くなかったのが残念ではあり。もっともっと群舞をー。


『時の彼方へ』 The Time That Remains
 監督:エリア・スレイマン

家族の記憶とパレスチナ史。

観るのは『D.I.』以来の長編。『D.I.』を観た時は、パレスチナのことをほとんど知らなくて趣旨がよくわからなかったにもかかわらず、その映画はとても気に入った。悲惨な状況をサラリと笑いに変えてしまう飄々とした感じがたまらなく好き。そして今回も、以前よりもいくらかパレスチナについて学んだはずなのに、そこにある本意はやっぱりわかっていない気がする自分。だけど、相変わらずスレイマンのユーモアと悲哀のこの乾いた感触は好きだなぁって思った。複雑で苦難に満ちた境遇なのに、深刻ぶって直接的に声高に何かを訴えることもなく、常にこの調子でクスリと笑わせてくれる。寓話的世界の中に、パレスチナ史スレイマン自身の経験、家族の思い出話が溶け合っているというのがよかったな。画の質感も好き。スレイマンの容貌も映画的に好きだな。棒高跳びバンザイ。



『タレンタイム』 Talentime
 監督:ヤスミン・アフマド /マレーシア

タレント・オーディションをめざす高校生とその家族の群像劇。

TIFFといえばヤスミン・アフマド。ケン・ローチを諦めてでも、7月に急逝された監督を偲んで、この遺作はここで観なくちゃなのでした。テーマは基本的にはそう変わらないのだけど、今回もまた新たなる感銘をもたらしてくれました。冒頭から、音楽と笑いにあふれていて、すぐさまその世界の虜に。青春ものにして、音楽ものだなんてサイコー。いつもと同じ憎まれ口も絶好調のコミカルな賑やか家族。片や、病に苦しむ母と健気に看病する息子。それぞれが懸命に生きる姿の輝やいているの。人種も境遇も多様な人々が交差して。ロミジュリな恋も友情もせつなく微笑ましい。エピソードの個体はベタともいえるのに、その積み重ね方が絶妙。ユーモラスにリズミカルな語り口が心地よくて、多彩に感情が揺さぶられちゃうの。とてもとてもいい映画。本当にその死が悔やまれてならないのだけど、とにかくステキな映画をありがとうございます。ギター演奏も心に染みるものでした。


『夜と霧』 天水圍的夜與霧 Night and Fog
 監督:アン・ホイ /香港

天水圍2部作その2。天水圍一家惨殺事件という実事件がベースになっている香港の貧困問題を捉えたサイモン・ヤム主演作。

驚嘆してしまう酷い事件。でも、それ以上に、初めて観たこのアン・ホイ監督作の見せ方があまりにも上手くてびっくり。上映後トークショーで宇田川氏が開口一番に「完璧な演出」と表していたのだけど、全くもってその通り。全てのシーンが理想的なショットにおさめられていて、かつその物語展開が隙なく目の離せない面白さ。サイモン・ヤム扮するDV夫は本当に酷い野郎で、終始とてもスリリング。酷く悲しいドラマ内容ゆえ、好きな映画と表現したいタイプじゃないんだけど、その秀逸さにはガッツリ心を掴まれてしまった。俳優も見事だし、その演出、撮り方、紡ぎ方もほぼ完璧。私はゆるめの映画も嫌いじゃないんだけど、今回はこのキメキメの隙のなさが気持ちよくて。
そして、トークショーの内容も興味深かったな。そこそこに映画を観てきたつもりの自分なのに、支持層が濃くて実績あるTIFF「アジアの風」部門においては、肝心なことを何も知らなかったことを思い知り。ああ、香港ニューウェイヴかぁ。ウォン・カーウァイ大好きなのに、パトリック・タムを観てなくてすみません。


バラエティに富んだ充実の「アジアの風」でありました。ラインナップ的にはワールドの方が自分の必修部門っていう感じなんだけど、一般公開作のアジア映画とは全く違うコアな魅力がTIFF「アジアの風」にはあるので、手を出さないのはもったいないということをまた実感。レトロスペクティヴをいくらでもしたくなっちゃう。ぱとりっくー
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by CaeRu_noix | 2009-10-24 08:04 | CINEMAレヴュー | Trackback | Comments(0)
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