かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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第22回東京国際映画祭 鑑賞メモ ― WORLD CINEMA ― など その1
2009年 10月 26日 |
今年も魅力的なラインナップであったワールドシネマ部門、前篇。+natural

『小さな山のまわりで』、『手を挙げろ!』、『ハポン』、『バトル・イン・ヘブン』、『イニスフリー』



ワールドの前に、"natural TIFF部門"
自然ドキュメンタリー好きの私としてはどれも興味はあるのだけど、優先順位の関係上、なかなかこの部門までは手が回らず。(牛のとか人魚のとかも興味津々)
でもでも、今回はさりげなく、あの『シルビアのいる街で』のホセ・ルイス・ゲリンのデビュー作が入っていたので、これだけは観ましたぞよ。

~ natural TIFF特別上映 ~
『イニスフリー』 INNISFREE 1990
監督:ホセ・ルイス・ゲリン

中学生の頃、「汽車に乗って~ アイルランドのような田舎へ行こう~♪」っていう合唱曲を歌ったことがあって、ずっとずっとアイルランドはどんな場所なんだろうって思っていただけど、歌われていたアイルランドというのはたぶんきっとコレなんだ。(汽車では行かれないけど。)『静かなる男』を観ていない私には、楽しみどころが少ないかもっていう不安もあったのだけどそれは杞憂。この世には幾分退屈なドキュメンタリーも多いけれど、これは限りなくフィクションに近くて、映画の魅力にあふれているのだった。美しい風景をただ漠然と見せられるだけでも私は別にかまわないのに、木漏れ日と羊の群れが見られれば充分なのに、思いの外自由に作られていて楽しかったな。アコーディオンを弾くおじいさんのショットなんかがとても好きです。ホセ・ルイス・ゲリンの感性、ステキです。PUBの賑わいがまたいいんだ。音が本当に素晴らしくて、川のせせらぎに吸い込まれてしまいそう。


~ WORLD CINEMA ~
『小さな山のまわりで』 36 Vues du Pic Saint-Loup
監督:ジャック・リヴェット
出演:ジェーン・バーキン、セルジオ・カステリット
 ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門出品

15年前にサーカスの世界から離れていたケイト一座のところへ戻ってくる。偶然に出会ったイタリア人ヴィトリオはケイトとサーカス一座に興味を持つ。

ピク・サン・ルーから見た36の眺め。Pic Saint-Loup って、ワインの産地ランドック地方にある山らしい。そんなのどかな場所の空気がよい感じ。こういう小品の場合は、個人的には若い女の子の方がいい気がして、例えば、あの姪っ子ちゃんがメインだったら、もっと可愛い映画になっていたかもって思った。ジェーン・バーキンはこないだ観た『カンフー・マスター』の時と変わらないような若さを保っているなぁと思うのだけど、ヴィトリオがそんなに惹かれるのはあまりピンとこない。ジェーンの綱渡りを本格的に見たかった、なんて。サーカスという舞台設定はとても好きなんだけど、興味深く観ちゃった反面、サーカスを使うなら、もっとマジックを展開してほしかったという思いも残り。好みの要素はありながら、終わってみると全般的には印象は薄いかも。


『手を挙げろ!』 RECE DO GORY 1967 Hands Up!
監督:イエジー・スコリモフスキ

体制批判的な内容にポーランドでは上映禁止処分なった問題作

スコリモフスキ作品はそんなに優先順位が高くはなかったのだけど、せっかくの旧作上映の機会なので、スケジュール的に鑑賞可能だったこれを。
他は『出発』と『アンナ』しか観たことのなかった私としては、この体制批判的という尖った感じも面白かった。67年のポーランドで撮られたことを思うととても前衛的で冒険的なのかな。キェシロフスキの描くポーランドよりも熱い印象。ゴダールっぽいと感じられる表現手法はとても好みな感触。でも、正直言って、主人公たちのおかれている具体的状況がよくわからないまま見ていたような・・・。ゴダールは細部がわからなくても、面白さに釘づけになっちゃうんだけど、本作鑑賞時は頭の中のハテナマークを払拭できないままだったかも。すみませーん。


魅力の監督特集はアジアの風部門だけのものではないのだって感じで、イエジー・スコリモフスキ監督作とカルロス・レイガダス監督作が特集されるなんて、素晴らしすぎー。

去年のラテンアメリカ映画祭で『静かな光』を観て、その映像美と独特の世界観に圧倒され、カルロス・レイガダスの名前をインプット。映画館で体感すべき映画と、そうでなくても遜色ない映画があって、レイガダスの映画は絶対前者だと思う。というわけで、シネコン設備のクリアで迫力のある音響に、大きなスクリーンで体験できるなんて極上。


『ハポン』 Japon 2002
監督:カルロス・レイガダス
 カンヌ国際映画祭カメラドール(特別賞)受賞

メキシコの峡谷に自殺をするためにやって来た男。

Japonという、タイトルが示す我が国で、ようやくこの映画が日の目を見ることになってよかったなぁって。メキシコから見て、最も遠い所にある国だから、その名前が使われたということらしいけど。ジパングではなくて、ヘヴンみたいだ。
荒野メキシコの峡谷の圧倒的な大自然がシネマスコープの世界一面に広がるのがたまらないの。神々しささえ感じられる聖なる大自然なのだけど、『イニスフリー』の爽やかなきらめいたそれとはまた違って、粗野にワイルドで重厚でもあるのがここにあるメキシコの荒野。この地の岩や砂がろ過装置のごとく、人間の生の不純物を取り除いていくかのようで。原始的で荒涼とした素朴な風景なのに、宗教画のような趣をもつレイガダスのつくり出す映像。自殺志願者の男が生と性を取り戻すなんてストーリーは陳腐紙一重なんだけど、この特別な光の下では、そんなマジック、いえ、奇跡も信じられるのだ。


『バトル・イン・ヘブン』 Batalla en el Ciello 2005
監督:カルロス・レイガダス
 カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品

大都市で運転手をしているマルコス。

大自然の絶景の2作の間に撮ったメキシコ・シティが舞台の物語。雰囲気は一転して喧騒に満ちていて、ポルノな始まりにまずビックリ。タブーにほど近い性を描くことも常にテーマにしているようで、ビジュアル的にはドキリとさせられるのは同じながら、荒野のそれは穏やかであり善性の上にあったのに比べ、こちらのセックス描写はえげつなさを感じるインパクト。夫婦の愛の営みを見るのにこんなに不謹慎さを持たせてしまうなんて。静かに心を傾けた『ハポン』とはかなり違って、重々しさと激しさが迫ってくるの。目をそむけたくなるシーンを撮る大胆さには、不快さをも忘れて心は釘付け。結局、えげつない場面も悪趣味だとは感じられなくて、それはこの運命における必然のものとして受け止められるの。強引なのに説得力を持ち、残酷さを突き詰めてそこに聖性を見出すこの感じって、キム・ギドクと同じかもしれない。映像や音の作り込みが徹底して美しいこちらレイガダス作品の方がより飛翔感がある気がするけど。

Q&Aに登場してくれた監督本人は、こういう映画を撮る鬼才には見えないような感じのいい人でした。d0029596_146220.jpg髪や髭は飾らない感じなので、顔をじっくり見つめないと気づかないんだけど、目もとがとてもチャーミングで、少年のごとくキラキラと目を輝かせて語ってくれるのです。畏まることもなく、気取りもなく、サバサバッと自然体な印象。感じるままに、自らが信じるままに映画を撮っているっていう感じで。技術に囚われ、ガチガチに計算して作っているっていう感じじゃないところに好感。
矢田部さんのブログに
「とにかく、ヌーヴェル・ヴァーグ系というか、蓮實系というかのシネフィル問答には全く興味を示さない人であり、この姿勢の清々しさには心の底から感銘を受けました。」
なんて書かれていたのが面白かったりして。


こんな風に、巨匠とかー、鬼才とかー、世界に名を馳せる映画作家の映画が観られるというのが、映画祭の最大の魅力なり。
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by CaeRu_noix | 2009-10-26 07:33 | CINEMAレヴュー | Trackback | Comments(4)
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Commented by tomozo at 2009-10-26 09:21 x
終わっちゃいましたね〜。
今年も。

今、かえるさんのイニスフリーのレビュー読んで
やっぱり無理してでも見れば良かったと
猛烈に後悔している私です(涙)。
(私はアイルランドに恋しているので)

まぁ、こうやって必死にやりくりして見たい映画を見たり、
後からあれもこれも見れば良かったと後悔するのも
映画祭の醍醐味ですかね(笑)。
Commented by Minita at 2009-10-26 14:17 x
かえるさん、映画祭おつかれさまでした~!楽しかったですね♪
私も「イニスフリー」は大好きでした。あたかも自分がそこにいるような空気の匂いが感じられるような・・・。草競馬のシーン、好きだったな~。
「シルヴィア」も見たくなりました。

レイガダス監督の「ハポン」「静かな光」は圧倒されましたよ~。
監督に思いきってサインをもらってしまったほど(笑)
かえるさんのレビュー楽しみにしてます!
(私も書かねば~・・・。)
Commented by CaeRu_noix at 2009-10-27 00:19
tomozo さん♪
お疲れ様でしたー。
すんごく疲れたけど、終わっちゃうと寂しいですよねー。

イニスフリーは素晴らしくよかったですよー。
退屈な映画であることも覚悟したのに、意外とドラマチックで楽しいひと時でありました。
私はアイルランドは行ったことがないのですが、死ぬまでに絶対行かなくちゃって思いました。
ホントに美しい場所。ビールもおいしそうだったしー。

そうなんですよね。後悔するのも映画祭のお約束。
私もチケット買った後に、また別のスケジュールを組み立てたりして、あきらめの悪いヤツでした。
去年、マイク・リーの映画が観られなかったことを未だ悔やんでいるくらいだし。
そんなふうに貪欲になれる情熱をよろこびましょうー。w
Commented by CaeRu_noix at 2009-10-27 00:29
Minita さん♪
お疲れ様でしたー。
疲れたけど、充実していて楽しかったですねー。

そう、「イニスフリー」は劇場体験できてよかったですよねー。
草競馬のシーンはエキサイティングで楽しかったですよねー。
ロバもラブリーだったし、羊の群れの撮り方も好きでした。
川のせせらぎの音のキラキラ感が素晴らしくって、ウットリするばかりだったし。
ゲリン作品をもっといろいろ観てみたくなりますよねー。
シルヴィアみたいなやつもまた撮ってほしいなー。
観る前は、『静かなる男』を観なくちゃかなと思っていたのだけど、私はそちらの方はもうどうでもよくて、ゲリンなアイルランドもえですわん。

「静かな光」もご覧になれたのですね。よかった。
レイガダス映画をシネコン環境で見られるってサイコーでしたよね。
超アート系映画はレヴュー書けない私なので、つぶやき感想程度でー。
Minita さんの感銘ポイントも気になりますー
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