かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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第22回東京国際映画祭 鑑賞メモ ― WORLD CINEMA ― など その2
2009年 10月 28日 |
ワールドシネマ部門、前篇。+コンペ

『キング・オブ・エスケープ』、『二つのロザリオ』、『5分間の天国』、『メアリーとマックス』



ワールドの前に、"コンペティション部門"

『エイト・タイムズ・アップ』Huit fois debout /Eight Times Up
監督:シャビ・モリア

夫と離婚し、子どもと会うこともままならない一人暮らしのエルザは定職につけず、アパートからも追い出されてしまう。

コンペ部門にも観たい作品はたくさんあったのだけど、WORLD CINEMA部門だけでいっぱいいっぱいで。d0029596_130793.jpgが、主演・プロデュースのジュリー・ガイエの来日とあっては、フランス映画好きの自分には見逃せなくて、唯一これだけを鑑賞。初監督作とは感じられない仕上がりで、好みな感じ。音楽もよかった。
タイトルは日本のことわざ「七転び八起き」からとられているそうで、フランス語にはそういう表現はないらしい。何度も苦難に見舞われても、何とか起き上がる前向きな物語。といってももちろんフランス映画なので、大成功をするわけじゃなくて、さりげなくちょっとだけポジティヴに頑張ろうって気持ちをもてる。仕事探しの難しさや食いつなぐための仕事の内容なんかは切実なリアリティをもっていて、でもトホホぶりはユーモラスに描かれていたりもして、ほどよく楽しくて。
ジュリー・ガイエは好きな女優の一人なんだけど、今年彼女を劇場で観るのは三回目で、その上、本人にも会えちゃうなんてとても感激。生の彼女も映画の中の演技する彼女もチャーミングでありました。

コンペ作品は、
『ロード、ムービー』がとても好みな感じで観たかったなー。
イーサン・ホーク出演の『NYスタテンアイランド物語』もよさげだったし。
『ボリビア南方の地区にて』なんかも気になったし。
今年のコンペ作品は全体的にはそんなにレベルは高くなかったという見方もあったようなんですが、全部が面白そうだったな。
後ろ髪ひかれー。


~ WORLD CINEMA ~

『二つのロザリオ』 UZAK IHTIMAL
監督:マフムト・ファズル・ジョシュクン /トルコ
 ロッテルダム国際映画祭最高賞

イスタンブールのモスクに勤めることになったムサは、アパートの隣室に住むクララに惹かれるが、彼女はカトリック教会に勤めていた。
d0029596_1484722.jpg

『エイト・タイムズ・アップ』も同類のお隣さんものだったけど、こちらも隣に住むことで知り合った男女の物語。でも、フランス人とは違って、宗教に携わるトルコに住む2人はとても慎み深く奥ゆかしいの。異性に対する主人公の態度の慎ましさにふさわしいといえる静かさをもって描かれる映画の質感がまた見事。さりげなくも一つ一つの演出の的確さに感心したりもした映像や構成的にもとても心惹かれた作品。ムサの挙動はとても微笑ましくて。彼を教会に向かわせてしまう人間の思いっていうのが何ともステキ。それでいて、変に大逆転ハッピーには向かわない抑制がむしろいいの。ジーン。


『シングル・マン』 のレヴューは別記事にて。


『キング・オブ・エスケープ』 Le roi de l'e'vasion
監督:アラン・ギロディ /フランス

『シングル・マン』への挑戦?同じゲイの中年男性が主人公という設定なのに正反対の趣をもっていて。田舎でトラクター販売の営業を仕事にするでぶでぶ男が主人公というだけでちょっと普通じゃないのに物語の展開がそれはもうとんでもなくって面白すぎ。中年でぶりんのゲイのベッドシーンなどなどビジュアル的にもスゴすぎ画がいっぱいで、俳優さんって大変な職業だなぁってことにつくづく感心。かなり異色のドラマなんだけど、ちゃんと力強くその世界が構築されているのが素晴らしいなぁと。苦笑いと笑いにあふれたとても個性的にエネルギッシュな映画。こういうのが観られるのも映画祭のヨロコビってことで。


『5分間の天国』 Five Minutes of Heaven
監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
出演:リーアム・ニーソン、ジェームス・ネスビット
 サンダンス映画祭監督賞受賞作

北アイルランドの過激派組織UVFの元メンバーで、現在は平和活動家として活躍するアリスター・リトル氏の実話を基にした作品。17歳の時に殺人を犯したアリスター・リトルと、アリスターに兄を殺されたジョー・グリフィンが対面するTV番組が企画され・・・。

スリリングな対面物語。リーアム・ニーソンの演技はやはり素晴らしくて、終盤には感動に包まれ。こういう設定の物語は、最初に大よその着地点が予想できちゃうものなんだけど、それでもやっぱり心揺さぶられてしまう。中盤のジョーとアナマリア・マリンカ扮するAD?の彼女との会話シーンがよかったな。私には現在のジョーの人物造形が少ししっくりこないものがあったんだけど、いずれにせよ、彼の心の蟠りが溶解する瞬間を見るのは感無量。アリスター・リトルという人のことを知り得てよかったし、今なお、現代の世界に必要なテーマを描いた力作。


『メアリーとマックス』 Mary and Max
監督:アダム・エリオット
声の出演:トニ・コレット、フィリップ・シーモア・ホフマン
 アヌシー国際アニメーション映画祭最高賞受賞

メルボルンに住む8歳のメアリーと、ニューヨークに住む44歳のマックスの文通をする2人の物語。

ブラック・ユーモアにあふれたダークな大人向けの人形アニメーション。メアリーを取り巻くメルボルンの映像がセピア・カラーで、NYパートはモノクロで、基本はモノトーンながら、赤だけは彩度が表れているという映像にまずはとても惹かれて。お人形のメアリーとマックスの造形はアニメらしくシンプルながら、2人の顔立ちはどちらかといえば可愛いというよりは醜いのだけど、それがまたユーモラスで愛嬌があって。ティム・バートンっぽい世界観。とても孤独で愛に飢えていた2人。人形アニメのラブリーな雰囲気に中和されるものの、描かれているのはかなり痛々しい孤独な2人の物語。でも、それゆえに、切なさが極上で、2人の友情模様に心温まるの。エピソードがいっぱいで全てが見どころ。長い年月を描いているのが、大人にわかる味わいをもたらす。ナレーションが長かったり、台詞がずっと説明的に続くのは少し残念なポイントだったけど、それ以外は完璧な素晴らしさでとても気に入ったな。




と今年も観まくった素晴らしきTIFFでありました。今年は配給会社の倒産ニュースなども相次ぎ、まずますインディペンデント系、アート系洋画の配給状況が深刻なことになっているようで。だから本当に、こういうラインナップの映画が観られる映画祭は本当に貴重な機会であって、今年もステキな映画に出会うことができて満足。さすがに疲れた。やっぱりアレが観たかったなーとか、スケジュールの組み方をもうちょっとさーとかいまだ欲を出せばきりがないのだけどね。お疲れ様でしたっ。

「ばく大な製作費をかけてゴミのような映画が作られる裏で、優れた映画は製作費も不足し、完成しても日の目を見るチャンスがほとんどない。一番、気の毒なのはゴミみたいな映画を観せられる観客だと思う。・・・そうした危機的な状況において、国際映画祭という場は唯一のレジスタンス(抵抗運動)だと思う。」という審査委員長アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥの言葉は辛辣だけど共感できるもの。
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by CaeRu_noix | 2009-10-28 23:59 | CINEMAレヴュー | Trackback | Comments(4)
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Commented by ochiai at 2009-11-14 02:57 x
かえるさん、mixi来訪してくれたみたいでありがとう。
今年のTIFF鑑賞の感想、まだ書けてないんです、ごめんなさい。
(たぶん、それを見に来られたのかなぁ、と)

『キング・オブ・エスケープ』私も見ましたよ!これはきっと一般には
公開できないだろう(笑)と思って。いやー、色々凄い。設定もキャラも
ビジュアルもモラル的にもインパクト大!!楽しかったです(笑)
日本映画・ある視点の『君と歩こう』とある意味、対になる映画かも?
こっちも割と面白かったですよ。

そして『メアリーとマックス』は、造形からはとっつきにくい人もいると思う
けど、中身の濃い、作り手の愛情のこもった、本当に素晴らしい作品でしたよね。
アニメーションならファンタジックな世界が見たい、こんなダークで
ヘヴィで痛い世界なんか見たくない、と思う人もいるかもしれないけれど、
こういった世界をアニメーションで表現したところが、私はより素晴らしい
と思いました。
Commented by CaeRu_noix at 2009-11-14 07:25
ochiai さん♪
こちらこそ、コメントありがとうございますー。
そうなんです。TIFFの感想を書かれているかなと覗きに行ったのでした。
こちらにお越しいただき嬉しくー

ふっふっふ。『キング・オブ・エスケープ』のような映画が観られるから映画祭はやめられませんよねー。
『君と歩こう』って女教師と男子高生のかけおち物語なんですね。
私としては、『シングルマン』と対になる映画って感じでした。
同じゲイの中年なのに上品さに格段の差が・・・。

『メアリーとマックス』は私も同じ回を観ていたのですよ。
後で、とらねこさんが同じ回を観ていたこと、帰りにochiai さんにバッタリ会ったということを聞き。
これはもうもう僅差で今年のTIFF鑑賞作マイベストなんですー。
すばらしい作品でしたよね。同感です。
アニメって子ども向けがメインだから希望にあふれたいいお話である場合が多いので、こういう大人にしかわからない切実な痛さを描いているところがむしろよかったです。
普通なら、避けちゃうよな不謹慎なエピソード等も、ファンタジックな可愛さをまとっているのをいいことに、サラリと表現されていて。
それに感銘があり。痛いからこそ強く胸をうちましたよね。
Commented by ochiai at 2009-11-18 03:38 x
そです、そです。
タブーな関係の歳の差カップル・東西かけおち対決です(笑)
ある意味描かれ方が真逆で面白いです。
Commented by CaeRu_noix at 2009-11-19 01:21
ochiai さん♪
カンフーマスター!
日本映画ある視点部門は全然観てないし、ちゃんとチェックもしてなかったんですよね。
でも、なかなか面白そうなものがあるようですね。
邦画も断然、マイナー系、インディペンデント系のつくりが好みなので、あれこれ公開されたらいいなぁと。
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