かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『クヒオ大佐』
2009年 11月 01日 |
人間って、バカだけど、愛おしい存在だよね、的な。

米特殊部隊ジェットパイロットのジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐と名乗る実在の結婚詐欺師をモデルにした物語。



吉田大八監督作品は、キャスティングのセンスと演出も素晴らしいよね。女優達の巧みでパワフルな熱演も見どころのひとつ。時に女たちはマンガ的なほどにキャラ立ちしていたりするのだけど、妙さの中にもリアリティがにじみ出ているの。満島ひかりちゃんの起用はさすがだし、松雪さんの存在感もとってもナチュラルで、中村優子りんのホステスっぷりは完璧過ぎ。新井っちは常によいし。イイ人系のイメージの堺雅人にこういうのやらせちゃうのもいいんじゃないかな。胡散臭さが絶妙。

嘘をつくと鼻が伸びるよ。だから、こんな不自然なお鼻になっちゃったクヒオ大佐?その人はあまりにも胡散臭くて、こんな奴には絶対騙されるわけないよー、それじゃあドラマが成立しないよーって最初はちょっと違和感を感じながら見ていたのだった。でも、やがて本質に気づいていくの。詐欺のテクニックの巧妙さなんていうものは結局は二の次で、犯罪手口としてはスキだらけでアナだらけ。それでも、騙そうとすることをやめられない、騙されることをやめられない、愚かな男と女の依存関係、人間のおかしくて哀しいサガが浮き彫りになる。

胡散臭い主人公による詐欺師劇場っていうシンプルなコメディだと思いきや、そこにあるテーマには深いものが感じられたりして、思った以上に味わい深かったな。『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』 も予想外の方向に感情が揺さぶられたのだけど、今作においても、予想した方向には進まないポイント、ポイントのズラし方がとても面白いのだ。日本とアメリカと力関係を描いたブラック・ユーモアな序章の切り口にも心掴まれた。アメリカというやつに必要以上に平身低頭してしまうニホンっていまだにあるといえるもんね。単に結婚をエサにした男と女の関係性にスポットが当たるだけじゃなく、特権的アメリカの力が作用しているというところがなるほど興味深い。

観客は誰に肩入れしながらこの映画を観るのだろう。初めはもちろん、女の純情踏みにじってお金を巻き上げちゃう非道なクヒオ大佐の味方なんてできないから、彼が松雪しのぶの新井弟にインチキだとバレバレになる場面なんかが痛快だった。それなのに、詐欺師としてはあまりにも手ぬかりのあり過ぎるクヒオのアホさがほほえましくて、その人間味に好感を持ち始めちゃうから不思議。上手のホステスを騙すことはどうしてもできなくて、ついついお弁当屋の松雪さん頼みなっちゃうところが情けなくて。こちらでも、やっぱり弟にはかなわなくて。強者の存在が歴然となると、ついついクヒオの危機にハラハラしてしまう自分がいたりするからおかしなものだなって。おまけに彼がどうしてこんな嘘つきになってしまったのかを示唆する回想シーンには切なさでいっぱいになった。だからって、詐欺師の犯罪は許されるものではないのだけど、悲しい現実から目をそらすためにホラを吹くようになったのなら、人間というものが少し愛おしかったりして。

比べたら、クヒオ大佐って何て愛すべき存在なんだろうって思ってしまう恐ろしい事件が最近のニュースにあったよね。関わった男性が次々と不審な死を遂げたというトシマクの女の件にはゾゾっとした。結婚相手と婚前旅行に行くよってウキウキしていたのに殺されちゃった男性はあまりにも可哀想。お金が目的というだけなら、別に殺さなくていいじゃんと思うのだけど。騙してお金を奪うことに達成感を得て、もはや全てがゲーム感覚になっちゃうのだろうか?そんな非道さに比べると、クヒオ大佐が体現した人間の悲哀は断然親しみのわくものだって思っちゃうよね。うん。
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by CaeRu_noix | 2009-11-01 23:58 | CINEMAレヴュー | Comments(2)
Commented by ぺろんぱ at 2009-11-02 19:32 x
かえるさん、こちらにもお邪魔します。

ちょっと愚かだな、でも愛すべき、そんな人たちのドラマでしたね。
ズルかったり、ズルいのを分かってて信じようとしてみたり・・・いつだって自分自身も紙一重のところにいる気がします。

>キャスティングのセンス

そうですね!
“胡散臭いヤツ”怪しい奴“”って匂いのしなかった堺さんをこんなにも“胡散臭さ”MAXのクヒオに充てちゃうなんて・・・!またそれに十二分に応えた堺さんも役者さんとしてのセンスがいいってことですね。(*^_^*)

ヒネリの効いた展開(冒頭部なんて、一瞬シアタールームを間違えたのかと焦っちゃいました)にも、監督なりの社会感をビシビシと感じ、是非『腑抜けども・・・』を観てみたい気になっている私です。

Commented by CaeRu_noix at 2009-11-03 02:04
ぺろんぱ さん♪
捻り方、ずらし方が面白かったですー。
単なる個人、事件を面白おかしく描いたドラマという枠にとどまらずで。
普遍的に人間を顧みちゃいますよね。
詐欺行為を働く人は多くはないだろうけど、人の好意/厚意に甘えるっていうことは誰でもあると思いますし。
それに慣れ、エスカレートしちゃったら、いくらでも人を出しぬけるものなのかもしれません。
詐欺師っていうんじゃなくても、人間関係の間には、嘘とわかっていても、わからないふりをすることってありますしね。
アレコレ、あてはめて考えることはできるのでした。

堺マサトは最近ちょっと出すぎなので、彼じゃなくてもーって思ったりはしましたけど、アメリカ人顔に遠すぎず、女をだませそうな甘いマスクで、っていうとほどよいタイプだったのでしょうかね。
胡散臭くってよかったですー。意外とちゃんとラブシーンも見どころでしたね?

序章は予想外でビックリでした。私も一瞬、違う映画が始まったのかと思っちゃいましたよ。
社会派目線っていうのは私も好きなので、このアプローチで評価はアップしましたよんー。
『腑抜けども・・・』もブラックな笑いなんですが、パワフルで面白いのでぜひー
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