かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『母なる証明』 MOTHER
2009年 11月 09日 |
母なーる大地ーの懐にー我ら人の子ーの喜びーはあるー。ヨロコビもカナシミも。

漢方薬店で働く母が女手一つで育てた一人息子のトジュンが殺人事件の容疑者になり・・・。



私は時々、ポン・ジュノとパク・チャヌクの過去の監督作を混同しそうになる。その都度、復讐三部作がパクちんでそれ以外がポンちゃんと整理していた。筋金入りのファンに言わせたら、両者は全然違うのだろうけど、私にとってはそんな感じ。ただ、とりあえず本作は、他でもない『殺人の追憶』のポン・ジュノが撮ったものだということだけは実感できる。ポン・ジュノの世界の方が泥臭いというか、有機的なものの存在感が濃厚なんだよね。

これは、そんなイメージを象徴する大地の母の物語。“韓国の母”と称されているというベテラン女優キム・ヘジャが全身で、魂で体現する母なるものに圧倒される。偉大なる母の物語はいくつも観てきたけれど、こういう危なっかしさ紙一重の強さをもった低温燃焼の母が舞台の中央に位置する物語は意外と珍しいかもしれない。多くは、母である者が典型的な良きイメージを体現した包容力や優しさや強さで感動を呼ぶドラマに仕上がっているものだから。善悪を踏み越えるというアプローチは珍しくはないのだけど、それでも結局は大概、ドラマの主人公の行動や人間性によって温かな感動がもたらされるものであったから。ヒューマン・ドラマの枠の中にしっかりと根を張りながらも、これほどに混濁した狂気と表裏一体の逞しさをもった母に命を吹き込んだ映画の力に、不思議な感慨を覚えるのだった。

本当は、ル・シネマで『パリ・オペラ座のすべて』を観ようと思ったのに、満席続きだったので、やむなくシネマライズに変更。パリでオペラ座でバレエな気分を、ウマくこの映画にシフトできるのかと思いきや、タイトルバックで主人公の母と思しき女がだだっ広い大地でいきなり踊り出してくれたものだから、私の気持ちはすんなりとこの世界に溶け込んだ。その音楽とリズム、妖しくもある不思議な空気感が素晴らしい。観念的とも思えるこのオープニングのダンスはめちゃめちゃ私好みであった。幾分幻想的なこの雰囲気がずっと続いてほしかったと望んでしまうほどに。もちろんポン・ジュノの映画はそんな浮遊感の中をずっと漂いはせずに、痛々しい現実を私たちに突きつけるのだけど。

こういう一筋縄でいかないどす黒い衝撃ドラマは多くの人の心を掴むらしい。うん、面白かった。圧倒された。でも、先月のTIFFでアン・ホイの『夜と霧』やカルロス・レイガダスの『バトル・イン・ヘブン』を観た印象がまだ強く残っていた私には、本作がずば抜けたものという感触はなかったかもしれない。かつて『殺人の追憶』を観た時ほどに圧倒されはしなかったかも。ポン・ジュノは変わらないし、むしろ進化をしているのかもしれない。でも、私の映画の好みは、以前よりも、ポン・ジュノ的なもの、パク・チャヌク的なもの、キム・ギドク的なものから、より別方向に向いた気がするから。そうでなくても、ポン・ジュノ監督作のマイ・ベストが『ほえる犬は噛まない』 だっていうのは揺るがないしね。

犯人が誰かはあんまり重要でもなかったからいいんだけど、誰かってことは最初から予想できてしまったよね、設定的に・・・。

ともあれ、お帰りウォンビン。
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by CaeRu_noix | 2009-11-09 23:37 | CINEMAレヴュー | Comments(6)
Commented by kaka_o00o2 at 2009-11-10 10:51
そうなんですね〜(誰が犯人かの予想)
私、アホなんで一緒にゼツボウしてました。
最初はそう思ったけど途中から違うのかと思って・・・
でも、今この映画を思い出そうとすると
ダンスと薬草切りが浮かんできます。
Commented by CaeRu_noix at 2009-11-11 01:55
kaka_o00o2 さん♪
そうなんですよ~。
kakaさんは、最初はそう思ったのに、ちゃんとその真実に絶望できたのならよかったですね。
わたし的にはちょいと残念でした。
もっともっと意外な犯人を望んでいたような気が・・・。
でも、死に方はちょっと意外なおもしろさでした。
ああ、やっぱり、あなたなのね、ざんねーんって思ってしまったので、絶望度、衝撃度がさほど強くなかったかもかもっていうのはあり。
とはいえ、一つ一つの場面描写などなど、じっくり楽しめました。
そうそう、私もとにかく踊る母の姿が大好きで。
ザク!って薬草を切るシーンもドッキリするほどにめちゃめちゃよかったですよねー。
Commented by マダムS at 2009-11-17 13:43 x
動物好き、特にわんこ好きにはひんしゅく買いそうな「ほえる犬~」は私も大好きで、この監督とは相性いいんです。 で、今回も観ましたー。
良かったですよねオープニングとエンディング。 ご指摘のとおり、犯人は最初から予想通りだったけど、ウォンビンがエドワード・ノートンにいつ変身するのか?とドキドキしながら見入ってたんですが・・そういう話ではなかったみたいで残念(爆)  あの友達(と言えないかもだけど)役の子も本国ので助演男優賞など受賞してるみたいで気になるカッコ良さですね。 
ともあれウォンビン復帰 嬉しいです♪
Commented by mezzotint at 2009-11-17 23:52 x
かえるさん
今晩は☆彡ご無沙汰しております。
母のダンスシーン、インパクトありましたね。私も好きです。
ラストのバスの中でおばさんたちが踊るのも印象深いです。
Commented by CaeRu_noix at 2009-11-19 01:11
マダムS さん♪
『ほえる犬~』はブラックユーモア加減もサイコーでしたよねー。
ポン・ジュノは私も好きな監督の1人なんですが、あまりにも巷の評価が高いので(キネ旬ベストで『グエムル』がすんごい上位だったのが不思議なほどに)、あまのじゃくな私はもう、はずれようかなって感じではありますか。ホン・サンス派っす。w
やはりやはり、犯人探しに何らかのオチがあることは予想できますから、おのずと目星はつきますよね。
が、しかし、マダムは、エドワード・ノートン系な展開を心待ち?にしていたんですね。
それはそれでおもしろいかも。それって、母親をも長年欺いていたってこと?
お友達役の彼もよかったですよねー。暴力シーンも。
韓流ドラマラインで人気が出た俳優さんたちには興味をもてないのだけど、ウォンビンはいいですよねー。
今度は普通にさわやか青年役もしてほしいー
Commented by CaeRu_noix at 2009-11-19 01:13
mezzotint さん♪
ダンスな始まり、素晴らしかったですよねー。
踊ったり、歌ったりのシーンがあるだけで私の評価はアップです。
その国、その土地ならではのものを見せてくれるのも嬉しくて。
ワケありな感じの母の存在、お見事でした。
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