かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『イングロリアス・バスターズ』
2009年 11月 23日 |
クエンティン・タランティーノは燃えている。



タランティーノがナチス・ドイツを描くという本作はタイトルのイメージからして、バスターズとナチス・ドイツの戦闘がたっぷり描かれた戦争アクションなんだと想像していた。ところが、さすがのクエンティン・タランティーノはそんなに単細胞ではないわけだ。思いの外、ドラマがしっかり濃厚で味わい深く、それでいて、アクション、バイオレンスのシークエンスは容赦なくらしさ全開で切れ味抜群。痛快なエンターテインメント性にはあふれているのに、正義は勝つという安心保障は得られないままで、スリルの連続に心は釘付け。それは何ともエキサイティング。複数のジャンルの魅力にあふれていて、クエンティンの映画への愛、愛、愛に胸がいっぱいになるの。さすがのタラちゃんと歓喜せずにはいられない映画好きのための極上シネマなのだ。

戦争映画というはいつも、同じ軍服を来た多くの兵士が登場して、誰が誰だかちゃんと頭の中で整理できなくなったりするものだけど、QTの映画は、キャラクターが思いっきり濃ゆくて人間味にあふれて個性的だから、そんな混乱は無用で、ごくごく自然に彼らの圧倒的な存在感に引きこまれるの。ブラピが主演ってな感じで宣伝活動されていたけれど、蓋を開けてみたら主役という位置づけでもなくて、そのキャラも二枚目ヒーローにはほど遠いちょっと筋肉バカ風味にコミカルなバイオレンス隊長というところに微笑んでしまう。そして、噂のクリストフ・ヴァルツ扮するハンス・ランダ大佐の堂に入った極悪ぶりの素晴らしいこと。バスターズがシンプルに直情的に暴力的なのと相反するように、むやみに力を振りかざすタイプじゃなく、とことんクレバーに粘着性いっぱいに攻めていくイヤらしさが最高。誰も彼もいい味出していて、それが大いなる映画の魅力になっているのだよね。

とりわけ、大いに注目、感動せずにはいられなかったのは、女優づかいの見事さ。戦闘、バイオレンスという男臭い男の世界を描いた映画でありながら、女を添えものとして描いたりはしないタラちゃんの相変わらずのフェミニストな感じがやっぱり好きだな。こんなにも完璧に女優を毅然とした美しさを全開にカッコよく撮った映画はなかなかないよね。フランス映画ではお嬢ちゃんキャラの印象しかないメラニー・ロランちゃんがこんなに名優だなんて知らなかった。ダイアン・クルーガーにしても、クラシック映画に登場するような美しき大女優の佇まいをしていて、タラちゃんの目利きぶりと演出力の卓越ぶりには何度となく驚嘆。ひたすら美しい女に最後はあんな表情をさせるところもナイスだ。これが女優たるものだ。メラニーの赤のドレスも映画的で素晴らしくイイ。ショシャナの復讐譚が中心となっているお陰で、ググッと物語にものめり込んでしまうし、心寄り添って観ているから、彼女の危機的状況には思いっきりスリルが味わえて、緊張感も満点。

タラ映画の主人公がフランス女優だったり、脇を固めるのがドイツ俳優だったりするのがとにかく嬉しいものだったし。国が交わるところがこういう映画の楽しさなんだけど、それをしっかりと言語を忠実に扱っているところにも膝を打つ。世界各国のそれぞれの言語の存在、言葉の響きの味わいが大好きな自分は、常々、ハリウッド映画に何度となく登場する英語を話すナチス・ドイツにもどかしい思いをしてきたから、本作の言葉へのこだわりと、それをストーリー展開の重要なアイテムにするというこのスタンスには妙に感激。語学堪能な大佐がドイツ語の訛りを怪しいものを言葉の話し方で嗅ぎ分けるっていうのがエクセレント。いつも何でも英語なメジャー映画では説得力をもたないであろうエピソードなんだけど、多言語な本作ではそれらが極上の見せ場になっているからイキだよね。酒場の訛りの指摘はめちゃめちゃスリリングだったし、バスターズのイタリア語もまたラブリーだ。みすくーじ。

戦闘映画の舞台だから屋外が多めなのかと思いこんでいたら、そういう概念をもサラリと打ち崩してくれた。レザボアのタラっちだもんね。地下の酒場のシークエンスはそれはもう素晴らしかったよね。バレてしまうのかっていう最高級のスリルの末にあまりにも圧巻な撃ち合いに惚れぼれ。そして、クライマックスを劇場でっていうのが涙もの。生き延びたショシャナが劇場主なんていう設定からしてウキウキしちゃったわけだけど、それゆえに大切な劇場、大切なフィルムをふいにしてまで、やり遂げるべき復讐というものにグッとくる。というか、そんなふうにフィルムが使われるっていうことに、そんな手段に出たタランティーノならではの発想に感銘。映画というかけがえのないものをプロパガンダに利用する奴らに容赦は無用。ああ、フィルムは燃える。シネマは熱く燃え続けるのだ。二重、三重の意味あいでその熱い思いに打たれるばかり。先人たちが作り上げた映画の歴史にリスペクトを捧げつつ、21世紀の成熟したタランティーノにしかできないことをやってのけたわけだ。カッコいいー。
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by CaeRu_noix | 2009-11-23 09:40 | CINEMAレヴュー | Comments(12)
Commented by tomozo at 2009-11-23 15:37 x
かえるさぁ〜ん(涙)。
やっぱりタラちゃんですから、
ダメな人も多いみたいで
かえるさんみたいに、痛快にタラちゃんの魅力を語ってくれると
ほんと嬉しいです!

タラちゃんの真骨頂ってやっぱり会話なので、
たわいのない会話がスリリングに展開して、
そうそう、会話っていろんな人が絡むと
思い通りに行かないもんだよなぁ〜って
あの酒場のシーンで思ったもんです。

ショシャナのチークを塗るシーンとかも
かっこよかったですよね〜。
ほんとに、極上でした♪

Commented by アイマック at 2009-11-23 18:21 x
こんばんは!
戦争映画もこういう切り口があるんだと感心してしまいました。
クリストフ・ヴァルツはすばらしくて、この人が画面にでてくると、ワクワクしてしまいました。
各国の言語が飛び交うのがよかったですね。
会話劇、スリリングで楽しかったです!
Commented by cinema_61 at 2009-11-23 21:15 x
私も見てきました!
もっとハチャメチャな映画かと思っていたけど、かなりシリアスで「ナチ対ユダ」の構図がはっきりしていて・・・とてもおもしろかったです。
それに音楽と映像には感動!クリストフ・ヴァルツの演技もさることながら、ブラピも楽しそうに力を抜いて演じているのが良かったです。
Commented by mezzotint at 2009-11-23 23:51 x
かえるさん
今晩は☆彡
ハンス・ランダ大佐が農場主を追いこむシーンは冷や汗もの。
最初からクリストフ・ヴァルツはインパクト大でしたね。
もう一度鑑賞したいなあと思いました。
Commented by CaeRu_noix at 2009-11-24 23:33
tomozo さん♪
タラちゃんはタラちゃんでしたねー。
生タラ体験もうらやましー。

えええ??ダメな人も多いんですか??!
私はそんなに多くの人の感想を読み聞きしたわけじゃないんですが、自分の知る限りでは、みんなが大絶賛っていう印象でした!
あらら、そうでもないんですか?
そんな人たちはさよーならー (^^)/~~~

そうなんですよねー、会話劇。
戦争ものだから、バイオレンスシーンが多いのかと思いきや、銃で撃ち合うシーンだのは少なめで、例によって、会話によるスリリングな闘いが見せ場でしたねー。
で、酒場のシークエンスはスペシャルに素晴らしかったですよね。

そうそう、ショシャナのメイクシーンも印象的でした。
チークはアパッチ風に?
メラニーちゃんがこんなにクールだとはビックリで感無量。
大満足でっす。
Commented by CaeRu_noix at 2009-11-24 23:38
アイマック さん♪
そうですね。
ナチス・ドイツが登場する映画というならば、実にいろんなジャンル、タイプの映画が存在するわけですが、タランティーノの監督作っていうから、てっきり戦争アクションだと思い込んでいたので、こーんな切り口なのかー!と私も感激でしたー。

各国語が飛び交い、その言語、会話力、訛りがエピソードのキーになるっていうのがいいですよねー。
ドイツ人が英語をしゃべっちゃうハリウッド映画ではできないネタ。
冒頭の英語会話から、酒場の疑惑、イタリアの映画人作戦、みーんなすりりんぐでしたねー。
Commented by CaeRu_noix at 2009-11-24 23:45
cinema_61 さん♪
やはりやはりタランティーノはマストですよねー。
そうなんですよ。観る前の印象だと、バスターズの面々がちょっとマンガチックな雰囲気で、ひたすらバイオレンス炸裂の悪ノリ映画かと思ってました。
それが実際は、結構シリアス・ドラマな味わいで、のめり込んじゃいましたよねー。
相変わらず、タラちゃんの音楽センスは抜群ですしねー。
映像は、キル・ビルあたりはそんなにエクセレントだと思えなかった私なんですが、今回は画がキマっていたなーって。
全ての俳優たちが活き活きとしていて、ブラピはホーント楽しげでしたよねー。
Commented by CaeRu_noix at 2009-11-24 23:48
mezzotint さん♪
ファーストシークエンスからドッキドキでしたよねー。
一番最初、あのご主人はウマく大佐を騙してくれそうって思ったのに、みるみるうちに劣勢になっていったのが印象深いです。
カンヌで男優賞も納得のスゴすぎなヴァルツさんでしたねー
Commented by kazupon at 2009-11-30 19:53 x
かえるさん

こちらにも!
ほんといろいろ同感です。かえるさんのレビューはやっぱりいいやー。^^
最近映画でゾクゾクすることが残念ながら少なかったんで、久々に
きたーって感じでした。
権力と人気をたてに近寄ってくる男を微塵にも相手にしない(男性の
アプローチとしてはいたって全うなんですけど微妙に
ムカツク感じに描かれててそこはさすがタラちゃん)
メラニーロランのあのクールな感じもたまらんかったです。
ヴァルツさん、この映画までは世界的にはあんまり知られてなかった
そうなんですけど、いやいやいい意味でいい役を引いちゃいましたね。
この映画の影響でハリウッドの人たちがもうちょいなんちゃって外人映画
を字幕で・・みたいには絶対ならないだろうなとそれでも思います。
そうしないタラティーノはやっぱりかっこいい。
Commented by CaeRu_noix at 2009-12-02 00:58
kazupon さん♪
ありがとうございますー。同感ポイントがいっぱいあって嬉しいですー。
そうですかー。kazupon さんはいつもは何にゾクゾクしているのでしょうー。
うーん、でも確かに、面白い映画や感動する映画はいっぱいあるけど、こんなにドキドキワクワクハラハラゾクゾクしちゃうものは少ないですよねー。
めちゃめちゃ楽しくて至福のひとときでした。
エンタメ映画なのになんでこんなにキャラクター造形に深みがあるのでしょう。
こないだ教えてもらったんですが、男性が戦争映画を描くともっと軍事オタクなものになるものだけど、タラちゃんの場合は戦車だの何だのには全然興味がないんですよね。つまり女っぽい趣味なのだそう。
というわけで、バイオレンス系の割いつもえらく自分好みなんですよね。
フランス映画好きの私も、メラニー・ロランのこの素晴らしさを見たら、フランス女優がアメリカの大作に出るのも推進されるべきことかもって思いました。
ヴァルツさんはもうスゴすぎだし。
いつも同じ人気者俳優を使いまわすばかりの業界において、こういう人知れず活躍していたスゴ俳優の素晴らしさを世の中に見せつけたタランティーノは映画人のカガミ!
Commented by kenko at 2009-12-06 20:38 x
こんばんは♪

燃えてましたね〜 すごーく面白かったです!
タランティーノらしい極上エンタメムービーでした♪

メラニー・ロランはフランス映画ではお嬢ちゃんな感じだったんですね。
そこに目をつけてこんなにも気高くクールな役を持ってくるとはさすがタラちゃん。

あとやっぱりみんな言ってるけどヴァルツさんが凄すぎでした!
悪者だけど、キャラクターが魅力的すぎて好きにならずにはいられません。
と言いつつ、ラストはザマーミロ!って思っちゃったけど(笑)
Commented by CaeRu_noix at 2009-12-08 08:45
kenkoさん♪
燃えてました。メラメラと。メラメラメラニー・ロランー
彼女はですね、サスペンスなどにも出ているみたいなんですが、私が観たことあるのはフランス映画たる家族ものや群像劇だったので、お嬢ちゃんな役のイメージなんですよ。
それがクールな復讐の戦士ですからね。
フランス映画好きとしてこの登用には大きな感銘を受けました。
そして、1にも2にもヴァルツさんですよね。
こんなに狡猾で恐ろしく小憎らしい悪役ってなかなかいません。脅威的で魅力的。
憎らしい奴だからこそ、ラストも爽快。
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