かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
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『脳内ニューヨーク』 Synecdoche, New York
2009年 11月 25日 |
ニューヨークの人気劇作家も人気脚本家も遠い存在なのに、その脳内世界は案外と身近。

ニューヨークに住む人気劇作家ケイデン・コタード。妻アデルが娘を連れて家を出て行ってしまい、原因不明の体調不良にも悩まされ・・・。



お待ちかねの鬼才チャーリー・カウフマンの監督デビュー作。これまでは、『マルコヴィッチの穴』等スパイク・ジョーンズ監督作、『エターナル・サンシャイン』等ミシェル・ゴンドリー監督作を通してチャーリー・カウフマンの世界を垣間見ていたわけだけど、これが純然たるカウフマン・ワールドなのだね。ジョーンズが撮ればもっとドライにカラっと笑えるものになるし、ゴンドリーならポップなる感じなんだけど、本単独カウフマンは思いのほか、そんな軽快さがなくて、神経症的にウダウダ、ウジウジ、ウツウツとしていた。いえ、そもそも自分は勝手なイメージで、軽妙なコミカル作品だと決めつけ過ぎていただけのこと。というわけで、意外性もありつつ、ある意味では期待値未満でありつつ、ある部分では、予想外の感慨に包まれたのだった。これがカウフマン。

小学生の頃、ものを見て感じ思い考える時の自分は、言うなれば、TVのナレーターのようなポジションにいるように、この現実を上から、外側から見ることができているように錯覚していたことに、ある日ふと気づき愕然としたことを思い出す。決して、自分は外側にいるわけじゃなく、自分はその内部にいるその他大勢の1人に過ぎず、この体の中に自分の意識があって、毎日の生活を繰り返し、歳をとってやがて死んでいくんだという事実を、ある日ふと意識して、自分の意識を意識する自分をどう受け止めたらいいのか混乱してしまったことを。いつか訪れる死への恐怖というより、この世の中でまぎれもない自分が個体の人間として生きていかなくてはいけない事実から逃れられないことに怖くなった。でも、そんな不安感を子どもの自分は人に説明することなんてできなかったのだけど、カウフマンならば、例えばそういう思考についてをも、物語化し、映像化することができるのかもなんてことを思った。

この脚本ばかりは、他の監督には撮れないんじゃないかって思った。ウマく映像化できる監督は他にたくさんいるだろうけど、カウフマンが描いていることを忠実に映像表現するのは、他人ではたぶん難しい。映画の中で作り上げられる舞台演劇、役者が演技で作っている世界と、演出家の現実世界が入り乱れるなんて。似たようなアイディアがちょろっと盛り込まれたものはいくつか見た気がするけれど、ここまで徹底的にめいっぱい混乱状態を突き進み続けたものは見たことがない。わかったから、もういいよ、って根をあげそうになった。この入れ子構造はとてもイントラスティングで頭に刺激的。でも、もうこのへんでハトを出してほしいなぁって途中思ったりした。映画だから撮れる、舞台演劇なシークエンスだと思う反面、せっかく映画なんだから、演劇するシーンはもういい加減・・・と思うこともあった。わけわかんなくなる混沌が描かれているんだけど、その混沌具合が常に哲学的な印象で、意外と軸足がしっかりとしていて、同じところをグルグルしていた感が強く、『アダプテーション』的にハチャメチャにズレていってくれる方がより私好みだったかなー、とも思った。という感想も持ちつつ、この世界観には大いに共鳴。よくぞ、映画にできたものだなぁって。

サマンサ・モートンはエミリー・ワトソン系だよねってことをかねがね思っていたので、忘れた頃に登場したエミリーの役どころに嬉しくなった。フィリップ・シーモア・ホフマンはやっぱり素晴らしいし、ミシェルもよかった。笑うに笑えない痛さが広がっていたり、ウェット感が強いのでコメディな感触は薄いのだけど、お尻の登場頻度の高さはやっけにコミカルだったかも。
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by CaeRu_noix | 2009-11-25 10:36 | CINEMAレヴュー | Comments(14)
Commented by manimani at 2009-11-25 20:52 x
こんにちは。
ハチャメチャにずれるとデヴィッド・リンチになってしまうので、ワタシはこの軸足はむしろ必要だったのだと思います。というか、混沌ではなくて結構論理的?
しかし、繰り返されるたびに悲しみが深まるのはなぜかという、この映画のキモのところをワタシは説明することができませ〜ん
Commented by CaeRu_noix at 2009-11-26 00:56
manimani さん♪
むやみにハチャメチャすぎてもいけませんよねぇ。
ただ私は、アダプテーションな感じがより好きでした。
でも、そうですね。これはこれなので、この軸足ありきですよね。
おちゃらけたギャグ映画を作っているんじゃなくて、実に真摯に人生を描いているんですもんね。
迷宮な感触もありましたけど、しっかり論理的っぽかったですね。
なんかとにかく、学問的に究明、分析をちゃんとしている感じ。
この映画を見ていて、我思うゆえに我ありーという言葉がこだましました。なんとなく。
そう、説明はできないのだけど、ロンリテキなようなようなって。
繰り返すことが、抜け出せない感じが妙にリアルで、突き放せない切ない悲しみにおそわれますね。
うつうつうつ。
Commented by ひし at 2009-11-28 13:15 x
はじめまして。
TBどうもです。
Commented by mig at 2009-11-28 18:34 x
かえるさんこんばんは★

upされましたね~

今外からですが、、、、ひとこと!
>サマンサ・モートンはエミリー・ワトソン系だよねってことをかねがね思っていたので

わたしもー(笑)
やっぱり皆そう思うのかな??  かえるさんもと書かれてて嬉しくなりましたョ。

そうそう、カウフマンならではの、彼の世界観全開な映画でした。
Commented by BC at 2009-11-28 19:18 x
かえるさん、こんばんは。

確かに、ゴンドリーならばポップでメランコリックな作風になっていたでしょうね。

内面から発する脚本なので他の監督だとズレが生じるだろうから、
カウフマン本人が監督するしかなかったんだろうけど、
やはり、本業ではないので演出のテイストは少し劣る気はしましたね・・・。

サマンサ・モートンは作品選びのセンスが良いですね。
Commented by CaeRu_noix at 2009-11-29 01:43
ひしさん♪
はじめまして。
丁寧にありがとうございます。
またよろしくお願いしますー。
Commented by CaeRu_noix at 2009-11-29 02:09
mig さん♪
こういう系の思考に誘う映画は考えがまとまらないので、レヴュー書きを後回しにしちゃってました。
サマンサ・モートンとエミリー・ワトソンって存在が似てますよね。
この二人を共演させるなんてキャラかぶるじゃん・・って観る前は思っていたのですが、観てみたら似ていることを活かした役割が与えられていたので膝を打ちました。
これが純然たるカウフマン世界なんだなーと興味深かったですー
Commented by CaeRu_noix at 2009-11-29 02:26
BC さん♪
ゴンドリーはポップですよねー。
ファンタジックなイメージが色濃いです。
脚本が同タイプでも、映像の作り方が監督によって違ってきちゃう感じですよね。
映画監督というのはイメージや映像を軸にして映画を作っていく人も多いと思うのですけど、カウフマンの場合は当然のことながら、脚本ありきですからね。
理屈っぽさがちと強い感じで、映画としてはゴンドリーやジョーンズの作る映像アプローチの方が好みな感じでした。
好みを抜きにいえば、これは充分にエクセレントな映画だと思いますけどね。

そうそう、サマンサ・モートンはフィルモグラフィーってすばらしくセンスいいと思います♪
モーヴァン 大好き。
Commented by kazupon at 2009-11-30 13:53 x
かえるさん
おひさしぶりでーす。細々まだ続けてますがご無沙汰かも!
これ、賛否あるようですねー。個人的には期待してなかった?分
かなり残ってしまう映画でした。
確かにゴンドリーがこれやったら、あの演劇で凝ったしかけ作り
まくるでしょうし、ジョーンズならもっと笑いの方に向けたような・・。
カウフマンって脚本しかできない印象あったんですけど、
意外や映画撮れるじゃんっていう感想をもちましたけど間違ってる
のかなぁ。あんまり想像していたひとりよがりさは感じなかったです。
サマンサモートンっていいですね。最初いいと思わせない役なのも
良かったです。
あの舞台の全貌が結局わからないまま終わったのが残念。客は
どうやって入れるつもりだったんでしょうか^
Commented by CaeRu_noix at 2009-12-02 00:46
kazupon さん♪
ご無沙汰です。お忙しくされているようで。
ブログはゆっくりペースで続けていってくださーい。
これって、ずいぶん前から配給が決まっていたのに、実際に公開される日がやや後送りになっていた印象でした。
つまり蓋をあけてみたら、そんなに広くヒットしそうなタイプじゃなかったんだろうなって。
そんなこともありつつ、いろんな意味で納得のカウフマン映画でしたよねー。
以前どこかで、面白いのは、ジョーンズの演出なのか、カウフマンの脚本なのかっていう問いがあったのを記憶しているんですが、これでそれぞれの持ち味の違いがよくわかった感じです。
脳内な映画という意味ではひとりよがりなものを描いているともいえるんだけど、そのテーマは人間誰しもに多かれ少なかれ共通のもので、全く個人的なことを人の理解や共感を度外視して突っ走っているっていうのではないんですよね。
独創的なやり方だけど、普遍性があって、心寄り添えました。
サマンサ・モートンはよいですよー。メランコリックな哀しみが似合う女優。
何事も、全貌なんてわからないものなのですー。^^
Commented by 真紅 at 2009-12-03 22:16 x
かえるさん、こんにちは~。
この映画、映画そのものよりみなさんの感想読ませていただくほうが数倍面白いです。
私も、子どものとき「肉体的な」死はイメージできるんですが、自分のこの「意識」はどこに行くんだろう、と思ってすっごく怖くなったことがありました。
今でも実は考えると怖いんですが、考えないようにしてます。。
カウフマンはずっとそういうこと考えてる人なんでしょうね。
で、その「意識」を残そうと足掻いて、書き続けてる人なのかなー、なんて思いました。
Commented by CaeRu_noix at 2009-12-06 01:12
真紅 さん♪
そうですよねー。
みんながみんなおんなじような感想を書いているものはそんなに面白みがないですもんね。
同じ映画を見て、感じ方がそれぞれに異なっているものの方が興味深く感想が読めますよねー。
そういうこともあって、私はミニシアター系が好きなんです。
やはりやはり真紅さんも子どもの頃にそういうことを考えましたかー。
THINKING DAYS ですもんね♪
死ぬっていったいどういうことだろう???って私もさんざん想像しましたよ。
大人になった今は子どもの頃とは全く別な形で、テツガクな日々って感じです。
意識ばかりが蠢いている感じすらあって、そういう感覚がピーンでした。
カウフマンはもっともっとクレバーに、でもでも、ウダウダとそれらを突き詰めているんでしょうねー。
アメリカ人としてはひと味違う脚本を書き続けてほしいですー。
Commented by ぺろんぱ at 2009-12-08 18:53 x
かえるさん、こんばんは。

>混沌具合が常に哲学的な印象で

そうなのですね、だからきっと一つ一つの場にその向こう側にあるで
あろう「意味」みたいなものを嗅ぎ取ろうとしてしまって、結果的に
結構ぐったりしてしまった私なのかもしれません。

切なさ以上に何だか痛々しい感じでした。
終盤、幾つかの分岐点と思しきシーンはあったので、そこで何か
流れが変わりそうな気もしたのですが。

しかし、もやもやとはしつつも、やはり観に行ってよかったと
思える作品でした。
映画としても、或いは自分の人生に於いてでも、こういう表現の
仕方もあるんだなぁって。

サマンサ・モートンは、やっぱり不思議な魅力のある女優さんだなぁと
スクリーンでの再会に嬉しくなった私でした。



Commented by CaeRu_noix at 2009-12-10 01:25
ぺろんぱ さん♪
マルコヴィッチの穴なんかも哲学的っちゃー哲学的でしたけど、映像表現されるととにかくハチャメチャな印象が強いんですよね。
でも、カウフマンのこれは、予定外に弾けることはなく、机上じゃなくて、脳内のものを忠実に文章化し、それを忠実に映像化している感じ。
そうですね。そこにある意味をかぎとろうと真剣に向き合っちゃいましたよねー。
そのうえ、うじうじうだうだぐるぐるし続けるものだから、結構グッタリ。
痛々しさも含めて、生きるってこういうことだよねーとしみじみ。
私も終盤はひょっとしてオチみたいな転回があるのかなぁとも思いましたが、そのまんまでしたねー。
この脚本は、映画じゃなくて演劇でやるべきじゃあ?と途中思ったりしましたが、それだともっと状況がわかりにくくなるかもしれないかな。
観てよかった、作ってくれてよかった映画でありました。
私もカウフマンの神経症っぽさはウディ・アレンに似てると思ったのですが、サマンサ・モートンは『ギター弾きの恋』にも出ているんですよねー。
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