かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『春風沈酔の夜』(スプリング・フィーバー)
2009年 12月 03日 |
Spring Fever - 春風沈酔的晩上
「TOKYO FILMeX 2009」 にて。
フィルメックスの審査員もつとめたロウ・イエ監督のカンヌ映画祭コンペ脚本賞受賞作が観られるなんて嬉しい。



天安門事件を題材にした『天安門、恋人たち』 を撮ったために、中国当局から5年間の映画製作禁止処分を受けているロウ・イエ監督。禁止処分中にもかかわらず、今度は中国でタブー視されているゲイが主人公の映画を作りあげたというからなんて果敢なんでしょう。処分中なので中国国内での公開はできないのだけど、海外資本でなら映画製作は可能ということらしい。それにしても、撮影自体は中国内で行っているわけだから、やっぱり勇猛なのだ。素朴で温和そうな外見をしている監督なのに、やることは肝が据わっている。それでいて、作りあげた映画は繊細なのだから、この上なく素晴らしいなって思う。

南京を舞台に5人の男女のドラマが描かれる群像劇。チャイニーズな主人公のゲイの恋愛劇というと、当然のことながら『ブエノスアイレス』を思い出さずにはいられなかった。最初に登場した2人は、トニーとレスリーに比べたら、ちょっと目の保養度が低いかなって思って、それゆえにリアルな切実さがあって、少し居心地が悪かったのだけど、みるみるうちにこの物語世界に引き込まれていった。せわしなく動くカメラが主人公たちの心情にピタリと寄り添っていて。人目を忍んで逢引し、情熱的に愛し合う二人の姿は、ヴァカンス的なブエノスアイレスよりも、追い詰められた日常の中にあって、ヒリヒリとした痛みをともなうから、不安感をもって心は釘付けになる。

ゲイの男たちの恋愛模様が物語られるだけじゃなくて、彼氏や夫がゲイで浮気をしていたというショックを目の当たりにする2人の女性についても描かれていたことが物語をより興味深いものにするとともに、ピンポイントでの感情移入度がアップした。私は工場勤めの彼女の複雑な思いに何だかせつなくなってしまった。男同士だと、表向きには普通の友達同士を装って欺くことができるから罪深いよね。異性の相手がいながらも、彼に心奪われてしまう男たち。初めはそんなにカッコよく見えなかったはずなのに、レスリー的なジゴロ風味をもち、顔立ちはチェン・チェン似のニヒルな主人公の、クールなまなざし、タバコの吸い方からその歩き方からとても魅力的に見えてきて、傷つけ合うことをやめられないままに、憂世をさまよい続けるその姿にすっかり心奪われるの。

エピソードの重なりは幾分ドラマチック過ぎるほどにアクシデンタルで痛々しいものもあったりするのだけど、ロウ・イエの語り口は繊細に詩的でとてもセンチメンタルで、観客の私の気持ちはそこにどっぷり浸りきってしまっているから、その劇的さが不相応に感じられることはなく。ひたすら切なさに打たれるばかりで、運命の皮肉にやるせなさが押し寄せる。現代の南京で暮らす若者の等身大のリアルが耽美なリリカルでもって物語られるという表現手法がたまらなく好き。もはや同性愛者ということにとらわれず、情熱と渇望と喪失の、普遍的な愛の物語に心がしめつけられるの。タイトルになっている郁達夫の小説が読み上げられるシーンもとても素晴らしく味わい深いの。音楽もよくて、ロウ・イエ映画のセンスのよさにはやっぱり今回も魅了されたのであった。
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by CaeRu_noix | 2009-12-03 01:55 | CINEMAレヴュー | Trackback(5) | Comments(8)
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Commented by かりおか at 2009-12-03 09:04 x
かえるさん、ご無沙汰してました。
私も東京フィルメックスでこの映画観ました!
「ブエノスアイレス」好きの私は胸がいっぱいになりましたよー。
さすがかえるさんの記事、「レスリー的なジゴロ風味をもち、顔立ちはチェン・チェン似のニヒルな主人公の、クールなまなざし」でしたね!彼はどんどん魅惑的に見えてきました。蓮の花のように漂いながら生きていく決意に心奪われました。工場の彼女もボロボロで切なかったけど、綺麗な心と優しさを持った人で、そういう人だからこそ傷ついて切なかったです。
TBさせてくださいね。
Commented by tomozo at 2009-12-04 00:58 x
うふ、チャン・チェンに似てるよね〜。
あの、音痴さは何??
と、ずっこけながらも、
後半のロードムービーのような絵と
彼の色っぽいまなざしと、
ときどき引用される言葉が美しくて〜。

あの、引用された一節を検索しまくっているんですが、
みつかりません。
やっぱり、郁達夫の本を読むしかないかしら。
私、「2046」の時も太宰読んじゃったからなぁ〜(苦笑)。
Commented by CaeRu_noix at 2009-12-05 00:35
かりおか さん♪
お久しぶりです。
わーい、かりおかさんもご覧になったんですねー。
この魅力ある映画を観た歓びを共有できるなんて嬉しいです。
最初は、センセーショナルなゲイ映画の主人公にしてはちょっとこの俳優さんたち地味じゃないかなーって思ったんですけどね、次第に魅力的に見えてくるから不思議なものですよね。
整ったイケメンでもないところが、むしろ切ないリアリティとスリルをもたらしてくれた感じで。
蓮の花のごとき、浮世を漂う感じがよかったなぁって。
そうそう、蓮の花も印象的でした。
スクリーンに縦書きで登場する漢字もやけに味わい深く。
彼の生き様にも、彼女の思いにも、それぞれに心うたれましたよね。
それぞれの傷がたまらないー。
Commented by CaeRu_noix at 2009-12-05 00:45
tomozo さん♪
チャン・チェン似でしたよねぇ。
キリリな目元がセクシーでした。
そうそう、あのステージのシーンは直前まですごく期待したのに、意外な展開でした。w
歌のヘタッピさをあえて映し出したその意図は少し謎ではありますが、喧騒のクラブシーンもまたよかったですよねー。
ロウ・イエの映画は躍動感いっぱいに街で生きる主人公を映し出しているから好きなんです。
そして、そうそう、引用文がまた素晴らしかったですよねー。
英語字幕が入る一方で縦書きの漢字がやたらにいい感じだったし。
郁達夫の本、私も読みたくなりましたよ。
そうか、検索しても見つからないんですね。では、ぜひ読みませうー
文学的なアプローチもステキなのがポイント。
Commented by rose_chocolat at 2010-11-28 20:12 x
去年のフィルメックスではこういうタイトルだったんですねー。
昨日の園監督映画の時にも、ロビーで盛んにチケット売ってました。
1年くらい経って公開される作品が多いのかしら。

さて本作。
すごくじんわりと、後から考えると、あーあれはそうだったのか・・・
と思わせる作品でした。
ロウ・イエ監督作品としては、前作の方が自分は好みだったんだけど、
これも、やりきれない境遇っていうのがベースなのでしょうか。
もっとこの監督には映画作っていただきたいですよね。
Commented by CaeRu_noix at 2010-11-29 23:43
rose_chocolat さん♪
そうなんですー。「春風沈酔の夜」の方がよかったような。
一般公開は映画祭での上映からに半年以上先というのはザラですよね・・・
本作の場合は、フィルメックスでやった時にはまだ配給ついていなかったりで。
アップリンクのあさいさんのアカウントはフォローされてますか?
本作の関西での上映もひと騒動あったりと、ハラハラしたりしましたが、この熱さは貴重だなって思いますー。

私は本当に『天安門』が大好きで、年間ベストの結構上の方にランクインさせちゃったクチなので(そんな人は他には見かけていない)、そんな自分的にも前作の方がよりよかったわけですが、これもとてもしびれました。
愚かさゆえ、物語は魅惑的に。
中国当局の規制に屈せず、今後もがんばってほしいですー。
Commented by 真紅 at 2010-12-08 19:52 x
かえるさん、こんばんは~。
お騒がせいたしました『スプリング・フィーバー』、本日無事鑑賞できました!
で、自分的には物凄~く気に入りましたです。今年のベストに入れたいです。
当局から5年間の撮影禁止をくらったのに、更に上を行く作品を撮り切ってしまうロウ・イエ監督、本当に素晴らしいですね。
チン・ハオくん、リウ・イエくんと同期なんですね~。素敵な俳優さんでした。
(私はチャン・チェンくん似とは思わなかったんですが)
この映画を配給して下さったアップリンクにも感謝です。もちろん、シネマートにも。。色々ありましたが。
Commented by CaeRu_noix at 2010-12-09 21:52
真紅 さん♪
なんやかんやありましたが、夕方の上映回も設けられ、真紅さんも無事に劇場鑑賞できてよかったですねー。
そして、堂々ベスト入りとは嬉しいー。
アクションもの以外の中国映画があんまり公開されないので、こういうのは絶対的に貴重ですものー。
実は私もこないだまた観に行っちゃったのです。
去年の映画祭上映したのは最上のやり方ではなく、このデジタル素材をちゃんと映し出せるのは、今の劇場シネマライズということで。
チン・ハオくんのキリリな目元はホントにセクシー。女装がちぐはぐなほどに胸板あついしー。
このご時世、アップリンクの情熱はかけがえないです、ほんと。
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