かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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「スペイン映画祭2009」 鑑賞メモ
2009年 12月 16日 |
3本鑑賞。



新宿バルト9にて開催された「スペイン映画祭2009」の鑑賞メモ

毎年秋口に行われている「ラテン・ビート」(スペイン・ラテンアメリカ映画祭)とは別にいきなり開催されたスペイン映画祭。
ラテン・ビートの方もスペイン映画がかかるのは定番だし、今回の映画祭の方もスペイン限定ではなくて、ラテンアメリカの作品もプログラムされていて、あえて催された事情が謎ながら、素晴らしいプログラムの映画祭は何度あってもよし。
ということで3本観に行けました。


『マップ・オブ・ザ・サウンズ・オブ・トーキョー』 MAPA DE LOS SONIDOS DE TOKIO サイト

監督:イサベル・コイシェ 
出演:菊地稟子、セルジ・ロペス、田中泯、中原丈雄
 カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品/アカデミー賞外国語映画賞スペイン候補作

~リュウは築地の魚市場で働きながら、裏で殺し屋家業に手を染めている。あるとき実業界の大物、ナガラの娘のミドリが自殺。悲嘆にくれるナガラは、娘の夫ダビ(東京でワインを商うスペイン人)を恨む。ナガラの部下で密かにミドリを愛していたイシダは、ダビの暗殺をリュウに依頼するが。
密かな愛の物語の証人となるのは、東京の街の音に取りつかれている、唖のサウンド・エンジニア。実は、彼は密かにリュウに魅せられていた。~

カンヌ・コンペ出品の大好きなイサベル・コイシェ監督作。オスカー女優として名を馳せた菊地主演ということで話題性は大いにあるはずなのに、押尾出演作であったことで日本公開の見通しのなくなった本作。一般公開は無理として、ここでお目にかかれたのは嬉しい。といっても押尾登場シーンは全面的にカット。それってこの日本じゃやむ終えないことだったのかもしれないけど、それって作り手に対して失礼だと思う。コイシェ監督が作り上げたそのものすべてを観たかった。

自分の住んでいる日本の風景なのに、外国人である監督を通して映し出されたそれは何だかエキゾチックで、それはリアル・トーキョーなのに何だか幻想的。映像や音楽によって作り上げられている空気感はとにかく好みだった。だけど、そこに描かれていたドラマにはしっくりこないものがあった。殺し屋の主人公は謎めいた非日常的な存在感をもつのだけど、身近な東京を舞台に日本人主演で物語られるとリアリティと虚構性のバランスが悪い感じでどうにも不自然なキャラクター、ドラマ運びに思えた。キャスティングがいいと思えないこともあり、登場人物にあまり好感を持てず、雰囲気だけで耽溺できるというタイプでもなかったな。

残念感は残りつつ、コイシェ監督の来日とともに劇場鑑賞できたことはホントによかった。


『瞳の奥の秘密』 EL SECRETO DE SUS OJOS サイト

監督:ファン・ホセ・カンパネラサイト
出演:リカルド・ダリン、ソレダー・ビリャミル、パブロ・ラゴ、ハビエル・ゴディノ、
 アカデミー賞外国語映画賞アルゼンチン代表作

~ベンハミン・エスポシトは、長年に渡り刑事裁判所で働いた後、退職した。彼には小説を書くという夢があった。モチーフは1974年に起きた、忘れ難い事件。当時のアルゼンチンは、暴力と死がはびこる長い夜を迎えていた。執筆を進めるうち、いつのまにか、密かに愛する女性のために、ベンハミンは書いていた。彼女もそのストーリーに関わっていたからだ。事件があった25年前、ベンハミンは、証人という特権的な立場にいた。しかし、小説家の目で事件を見直す今、思い出が呼び覚ます亡霊に翻弄される。そして、自身の過去だけでなく、未来にも立ち向かうことを余儀なくされる。~

その当時のアルゼンチンがどうのような情勢だったかを詳しく知らない自分にとっては最初、あえて25年後にその当時を振り返るというプロットで構成されていることにあまり意義を感じなくて回りくどさを感じた。だけど、後半になって一つのサスペンスが紐解かれて、25年の重みが描かれることの面白みをようやく実感。犯人があがるシークエンスと、その後の彼の行く末が明らかになったところは衝撃的なものがあり。なかなか過去の呪縛から逃れられない主人公の苦悩の姿を通じて、アルゼンチンの歩みにも心寄りそうことができた感じ。前半はうとうとしちゃったけど終盤には手応えを感じ。


『デブたち』 GORDOS  サイト

監督:ダニエル・サンチェス・アレバロ
出演:アントニオ・デ・ラ・トーレ、ロベルト・エンリケス、ベロニカ・サンチェス、ラウル・アレバロ
アカデミー賞外国語映画賞スペイン候補作

~ドラマチック・コメディ。肥満をめぐる5つのストーリーが、"グループセラピー"の場で交錯する。参加者はセラピーを通して、痩せることよりも、なぜ太っているのか?どうして自分の身体が好きになれないのか?その理由を探る。体重や体形は二次的な問題に過ぎない。肥満とは、日々の暮らしのなかで我慢して受け入れるうち溜まっていき、仕舞いには表現したり、対処したり、引き受けるのが困難になってしまった事について話すためのメタファーなのだ。~

肥満に悩む人々の群像劇。かなりブラックなネタも満載の濃厚なコメディ。こういうのが作れちゃうラテンの大胆な明るさが素晴らしいなぁって思う。シュールにブラックなんだけど、決して主人公たちをばかにしているような目線じゃなくて、滑稽に描きながらも、普遍的な人間のサガ/ゴウに真摯に迫っている感じ。おデブ限定の問題というんでもなく、繰り返し悩む堂々巡りな感じは、実に共感度の高いものだった。濃厚に面白おかしく、こういうシビアなテーマを描き出せるっていいなぁって。どっと疲れちゃうほどに見ごたえ満点の面白映画。


来年はアルモドバルの評判の新作も観られるし。ガエル×ディエゴも見られるし。
スペイン語圏の映画の魅力は尽きませーん。
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by CaeRu_noix | 2009-12-16 10:45 | CINEMAレヴュー | Trackback | Comments(2)
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Commented by Nyaggy at 2009-12-17 12:51 x
スペイン映画祭、おつかれさまでした。
コイシェ監督の『マップ・オブ・ザ・サウンズ・オブ・トーキョー』 も上映されたなんて…!
出来は多少期待外れだったみたいですが、日本での一般公開はない作品だけに
映画祭で見られるのは貴重ですよね。
それでも、ノーカットでの上映はやっぱり無理なんですね…。
なんだか悔しいなぁ。

最後の『デブたち』っていうストレートなタイトルが面白いです(笑)
暗いニュースばかりの中で、ラテンの明るさは貴重。
Commented by CaeRu_noix at 2009-12-18 07:21
Nyaggy さん♪
ありがとうございますー。
何だかいきなり開催された感じの今回の映画祭でしたが、日本では公開が難しそうなあの作品が上映されてホントになによりでしたー。
菊地さんのラブホテル内シーンなんかはカットはされないんだけど、やはり世間を騒がせて犯罪者となった芸能人を出演しているのはダメっていうことらしいです。
カットしちゃったら、物語的に成り立たない部分がでてこないのかなぁと思いつつ。
残念ですが、せっかく日本を舞台にしたのだから上映されてよかったです。

『デブたち』って邦題から強烈ですよねー。
内容もそれに合わせて強烈で笑えました。
いかにもラテンな映画なので、是非ご覧頂きたいですよー。
この題材を映画にできるなら、お塩出演なんて不謹慎じゃないのじゃ?って感じで。
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