かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
latchodrom.exblog.jp
(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
Top
『誰がため』 Flammen & Citronen
2009年 12月 29日 |
映画のクールさにしびれ、フラメン役のトゥーレ・リントハートのカッコよさにもウットリ。

1944年、ナチス・ドイツ占領下のデンマーク・コペンハーゲン。打倒ナチスを掲げる地下組織ホルガ・ダンスケに属する23歳のベント・ファウアスコウ=ヴィーズ、通称フラメンと33歳のヨーン・ホーウン・スミズ、通称シトロンの任務はナチスに協力する売国奴の暗殺だった。



今年も多くのナチス絡みの映画を観たけれど、デンマークが舞台となっているものを鑑賞するのはたぶん史上初。結局のところ、ナチスが登場する映画をくさるほど観ているようなつもりになっている私も、この世界の出来事のほんの一片しか知らずに生きてきていることを改めて思う。同時に、デンマーク本国においても長い間タブーだったこのことについて知らなかったのも当然なのかなと思いながらも、このたびの映画化によってその実在した2人のレジスタンスの物語を知り得、多くを感じる機会をもてたことは意義深い。

映画の素材としてのナチスは『イングロリアス・バスターズ』のようなエンターテイメント性のみなぎったものを作り出すことも可能であるものの、多くの犠牲者を生んだ重い史実の映画化となれば、リアリズムを重んじて誠実かつ忠実な描写をするという方法か、あるいは『シンドラーのリスト』的な感動作にまとめ上げるのが主流になるのじゃないかと思う。そんなイメージを持っていた私は、本作の予想以上のクールなタッチに魅せられてしまった。いわゆる娯楽性は前面には出ず、観客の悲しみや怒りや興奮をむやみに刺激しようとはしない抑制、それでいて厳格なリアリズムを追求しているというのでもない、フィルム・ノワールの香り漂う作り込まれたカッコよさにしびれた。

フラメンとシトロンは決して正義のヒーローとして描かれているわけでもないので、平和な時代に生きる自分は、命じられるがままに暗殺を実行する二人の男にすぐさま共感できるわけではない。けれど、ナチスに占領された戦時下、追い詰められたこの状況の中、不安と戸惑いを抱えなからも、一筋の信念のもと、行動し続けることに生きる意味を見出していたその男の生き様には、やるせない思いとともに惹きつけられてしまうのだった。むしろ明確な正義の勇者の物語ではなかったことが魅力。何を信じて行動すべきかという確信も持てない混迷の中、それでも保身に走ることなく命がけで突き進んだその姿には、その時世の不条理さも相まって、静かに心を打たれるの。

何しろ、フラメンに扮したトゥーレ・リントハートがそれはもうカッコよくて、スクリーンに目は釘付け。『青い棘』の時はこんなに大人っぽくなかったのに。赤毛も何だか魅力的で、このたびの容貌は的確に好みってカンジで、この役どころゆえの落ち着いたシブさがまたたまらない。本当のフラメンはもうちょっと若い男であるようだけど、映画的にはトゥーレ・リントハートとマッツ・ミケルセンの年代でちょうどいいバランスの魅力があった気がする。黒いコートの立ち姿、方向転換して歩き出す姿なんかがすごくカッコよくてたまりません。相手役の女性がもっと釣り合いのとれた美人女優だったらよりよかったなぁ。(ダイアン・クルーガーくらいに。)非業の死を遂げた実在した彼らのことを思うと不謹慎なほどに、目の保養にも暇なく。そんなこともあって大いに満足。
d0029596_9544974.jpg

[PR]
by CaeRu_noix | 2009-12-29 00:40 | CINEMAレヴュー | Trackback(5) | Comments(4)
トラックバックURL : http://latchodrom.exblog.jp/tb/10606619
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from まてぃの徒然映画+雑記 at 2009-12-29 08:45
タイトル : 誰がため(試写会) FLAMMENOGCITRONEN
ナチ占領下のデンマークで、ナチやゲシュタポへの協力者とおぼしき人物を次々と暗殺していくレジスタンス組織のヨーンとベント。彼らに対する取り締まりは苛烈をきわめ、ついには懸賞金までかけられるが、消防や警察、一般市民の協力もあり、すんでのところで逃げおおせて...... more
Tracked from だらだら無気力ブログ at 2010-01-15 23:19
タイトル : 誰がため
ナチスドイツ占領下のデンマークを舞台にレジスタンスの一員としてナチス 関係者の暗殺を行ったフラメンとシトロンの実話を描いた実録ドラマ。 本国デンマークで大ヒットし、デンマークアカデミー賞で5部門を受賞。第二次世界大戦末期。ナチスドイツの占領下にあるデンマ..... more
Tracked from ヨーロッパ映画を観よう! at 2010-01-22 00:25
タイトル : 「誰がため」
「Flammen & Citronen」 ...aka「Tage des Zorns」2008 デンマーク/チェコ・リパブリック/ドイツ フラメンに「青い棘/2004」「天使と悪魔/2009」のトゥーレ·リントハート。 シトロンに「しあわせな孤独/2002」「キング・アーサー/2004」「007/カジノ・ロワイヤル/2006」「アフター・ウエディング/2006」のマッツ·ミケルセン。 ゲシュタポのトップであるホフマンに「フライト・プラン/2005」「ワルキューレ/2008」「イングロリアス・...... more
Tracked from 映画的・絵画的・音楽的 at 2010-01-30 06:15
タイトル : 誰がため
 『誰がため』を渋谷のシネマライズで見てきました。  予告編で見てこれはいい映画に違いないと思い、またこれまで見たことがないデンマーク映画でもあるので、見に行ったところです。  ヨーロッパの映画と言えば、日本では従来、イギリス映画、フランス映画、イタリア映画といったところが中心でしたが、このところ、ベルギー映画とか、前々回取り上げたハンガリー映画なども日本でも見ることができるようになりました。といっても、ポツンポツンと単発的に紹介されるだけでは、その国の映画がどのような傾向にあるのかまで知ることは難...... more
Tracked from KINTYRE窶儡DIARY at 2010-12-27 23:57
タイトル : 映画『誰がため』を観て
10-1.誰がため■原題:FlammenOgCitronen■製作年・国:2008年、デンマーク・チェコ・ドイツ■上映時間:136分■鑑賞日:1月9日、シネマライズ(渋谷)■料金:1,800円スタ...... more
Commented by KLY at 2009-12-29 02:39 x
デンマークの歴史とかには全く疎いもので、このような事実があったことも初めて知りました。そもそも占領されてたこと自体知らなかったし。こういう映画を観るたびに思うのは、その国の時代背景や歴史も含めて映画だなってことで、毎度お勉強にもなってます。(笑)
ところで何気に今日劇場予告編で気付いたんですが、来年の『シャネル&ストラヴィンスキー』のイゴール・ストラヴィンスキー役がマッツ・ミケルセンなんですね。なーんか、シトロンって最近どっかで見たなぁって思ってたんですが、予告編かよ!と自分に突込みいれました。(苦笑)
Commented by CaeRu_noix at 2009-12-29 12:11
KLY さん♪
私も初めて知りました。
ナチスドイツの占領下のドラマというとフランス舞台のものは多いのですが、デンマークもこういう状況であったとはつゆ知らず。
というわけで私もいつも映画で歴史をお勉強する機会を得ています。
そうそう、マッツとは今度またストラヴィンスキーで会えるんですよね。
マッツといえば、『しあわせの孤独』と『アフター・ウェディング』が大好きで。
国際的に活躍するマッツですが、やっぱりデンマーク語作品で会えるのが嬉しいなと。
で、今回はわたし的には、マッツ以上にトゥーレなわけです。
『青い棘』に出ていたのでてっきりドイツ人俳優だと思い込んでいたのですが、デンマークの人なんだってことをこのたび認識し・・・。
『天使と悪魔』にも出ていたのだけど、記憶がなく・・・。
トリアーの新作が配給つかなくて寂しいですが、とりあえずこのデンマーク映画を観られてよかったですー。
Commented by ぺろんぱ at 2010-01-18 19:28 x
こんばんは。

私も、決して二人を英雄視して描いたものではない、あくまで苦悩し、自問し、時には愛する人をも疑う、「生身の人間」としてその内省に肉迫したところに強く引きつけられていきました。

こういう活動をし、そして散っていった人たちがたくさんいたのだということも「知る」ことができたことをよかったと思いたいです。

そしてトゥーレ・リントハート!
造形物としての美しさに決して負けることない演技力に、すっかり引き寄せられました。(*^_^*)

Commented by CaeRu_noix at 2010-01-18 22:37
ぺろんぱさん♪
黒沢清監督の2009年ベストにも本作が入っているようで嬉しいです。

本作のトーン、描き方にはとても心掴まれました。
そう、まずは、てっきり主役の二人をカッコいいヒーローとして描いていると思いきや、そうでなかった、というところがよかったですよね。
これじゃあ、微塵も正義の行動じゃないじゃんっていう心のざわつきを感じながら見入ってしまいました。
それでいて、『カティンの森』のような厳格、冷静な語り口というのとも違って、映画としての美学の追求はなされている感じの味付けにしびれました。
人々の置かれた状況には心締めつけられつつ、うわー、カッコいい映画だなぁって陶酔しちゃう不謹慎な自分も存在して。
タランティーノなナチスの世界との大いなるテンションのギャップもいい効果だったかなと。
レジスタンスもの、オランダの『ブラックブック』もエンタメ度が高かったから、こういう抑制は意外に新鮮だったのでした。
そして、そして、トゥーレ・リントハート!
<< -2009年12月のしねまとめ- PageTop 2009年12月鑑賞作メモメモ >>
XML | ATOM

個人情報保護
情報取得について
免責事項
Beige Shade by Sun&Moon