かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『シャネル&ストラヴィンスキー』 Coco Chanel & Igor Stravinsky
2010年 01月 22日 |
ビターなオトナ感に惚れ惚れ。映像と音楽とが表現するパッションとエモーション。

1913年のパリ。ココ・シャネルは、酷評をあびたロシア・バレエ団の「春の祭典」初演に心を動かされ、7年後にその亡命した作曲家イゴール・ストラヴィンスキーに再会する。



カール・ラガーフェルドとシャネルのメゾンが全面的にバックアップしたのは結局のところ、『ココ・アヴァン・シャネル』 ではなくて本作の方だったのだよね。シャネルのミューズである美しきアナ・ムグラリスがココ・シャネルの役を演じることは、ラガーフェルド自らがドレスをデザインするほどに、シャネルの美の世界を表現するのにふさわしいものであったのだ。『そして、デブノーの森へ』で観たアナ・ムグラリスは、細くて透明感があって浮世離れしたイメージが強過ぎる女優だったから、シャネルを演じるには凄みが足りないのじゃないかと思う部分も観る前にはあったのだけど。そんなささやかな危惧はすぐに消滅し、シャネルの衣装を完璧に着こなすアナの色香とカッコよさにはすっかり魅入ってしまった。

ストラヴィンスキーをマッツ・ミケルセンが演じるというのも素晴らしい。『誰がため』の時はつい、もう一方の若手俳優(トゥーレ・リントハート)に目がいってしまったのだけど、このたびはマッツのステキさを思いきり堪能。際立つ才能をもつ大作曲家で妻子持ちの神経質そうな彼が、シャネルとの情事にハマって不甲斐ない情けなさを垣間見せてくれる、それがマッツだからたまらなくいい。ストラヴィンスキーに肩入れする側から見たら、支持しにくい人物描写ともいえるのかもしれないけれど、真実がどうであれ、そんな一面と関係性、ありふれたロマンスとはまるで異なるこの二人の物語には、興味深く惹かれるものがあった。絵になる大人の男と女の姿に魅せられるばかり。

シャネルの衣装を気高くカッコよく着こなす彼女が、時には一糸まとわぬ姿を見せてくれるというビジュアルのギャップがまた印象的。全裸も絵になる二人なのだ。甘い愛の囁きもなしに床の上で、ピアノ演奏の途中で、R18指定ならではの展開にドキドキとさせられながら、あえてロマンチックに描くことを選択しなかったこのクールな大人感がいいなって思った。大河ロマン風味に味付けされた『ココ・シャネル』がより一層陳腐に思い出されるほどに、徹底的に甘さを排除しているのが本作の魅力だよね。シャネルのシックなスタイルそのままの、クールさがいいんだよ。巷では主人公に共感できないとか、物語描写が浅いとか言われそうなタイプなんだけど、違うのだよ、そこがいいの。大人の映画の極み。

主人公を道徳的に美化することなんて必要ないのだ。ストラヴィンスキーの妻がシャネルにモラルの問題を突きつけるというアプローチも肝要。ともすれば、二人は愛し合っていたというよりは、ただ欲情しただけなんじゃないかと思えるような、言葉少ない性描写が重ねられ、避難の目にも晒される。そんな危なげなところにこそ魅力があるの。惹かれあい求めあい共振する二つの魂と肉体。「春の祭典」をめぐってこんなドラマがあったこと、異なる世界に生きる二つの才が出逢ったこと、こうしてNo5の香りが生まれたことに、静かな感慨を覚える。気高いビターな味わいにむしろクラクラ。

ヤン・クーネンとシャネルというのは異色の組み合わせと思えたけれど、このスタイリッシュかつクールに潔い表現はとても気にいったな。ファッションはもちろん、その住まいアールヌーヴォー→アールデコのインテリアがそれはもうステキで、一つ一つのショットにウットリ。美的映像をより雅びやかなものにするガブリエル•ヤレドの手がけた音楽も、ストラヴィンスキーの「春の祭典」そのものも何度となく心に染み入るの。芸術の結実には春の訪れの歓びがある。ファゴットの音色と共にココロは森を駆け巡る。恋が終りを迎えても、その香りと音楽はいつまでも。
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by CaeRu_noix | 2010-01-22 12:54 | CINEMAレヴュー | Comments(4)
Commented by rose_chocolat at 2010-01-23 08:04 x
かえるさーん。 TBどもです^^
こういう作品は本当にその人の感性で大きく捉え方分かれちゃうんですが、私これに酔いました^^
この世界に酔わされちゃったといいますか。。。

別荘とお洋服が同じモノトーンなのももうツボでしたし。
終わってからの2人が、そこからつかんでいくものがあるところがもうドラマですし、そこに流れる優しさと厳しさも遠慮なく描いてて、よかった。 
大河ドラマはおよそで観ればいいですし、シャネルものに1つくらい辛口がないとと思ってましたので、これは大満足でしたー♪
Commented by CaeRu_noix at 2010-01-24 12:15
rose_chocolat さん♪
感性に響く映画というのがなんといっても好きです。
世の中はわりとTVドラマみたいな説明過剰映画に慣れちゃっているむきもあって、こういうのはホント、皆には評価してもらえないのだろうけれど。
rose_chocolat さんには酔っていただけたのでよかった。
衣装はもちろん、あのおうちのデザインにも魅入っちゃいましたよねー。
すごくステキでした。見学したい。およばれしたーい。
あのインテリアを背景にシックにシャネルを着こなすアナが映るショットがそれはもうカッコよくて。
キリリとビターなんだけど、春の訪れのような優しさも同時に漂っていましたよね。
ベタベタにこれみよがしな感じではなく、遠まわしに聡明な思いやりって感じなのがカッコいい。
『ココ・アヴァン・シャネル』もわりとクールだったので私は気に入っているんですが、本作はそれ以上にシンプルに甘さ抑えめなのがよかったですー。
Commented by 風子 at 2010-01-26 08:32 x
TBありがとうございました。
この映画の雰囲気は好きです。
映画の雰囲気と、シャネルのヴィラの内装の感じがぴったりだと思いました。大人の恋愛(?)ドラマでしたね。
フランス映画はアメリカ映画のように、登場人物に感情移入するというより、客観的に眺める感じの映画が多いように思います。
Commented by CaeRu_noix at 2010-01-27 01:38
風子さん♪
訪問ありがとうございます。
雰囲気がとってもよかったですよねー。
とても芸術的でありました。
そうですね、映画全体の質感と、シャネルのおうちのインテリアデザインのテイストがマッチしてたって感じでしたよねー。
衣装にインテリアに、すべてのトーンが気持ちよく統一されてました。
これは本当に、オトナ向けならではの語り口・物語内容だったと思います。
アメリカものだとどうしても恋愛ものは、ラブコメ寄りのものになっちゃう感じで、やたらに楽しいトーンで健全で共感されることを狙って作られているんですよね。
フランス映画は必ずしも共感しないで観るものってわけじゃないんですが、ハリウッドラブコメの高感度満点の共感できる主人公に慣れちゃった人には、フランス映画の主人公は共感できなーい、だから映画もいまいちーみたいなことを言われがちかもしれません。w
美化しないところが私はいいなと思うのですけれどね。
カッコいいシャネルでしたー。
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