かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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「未来の巨匠たち」 瀬田なつき
2010年 01月 26日 |
瀬田なつきの名前をおぼえておいた方がよいよ。

横浜は黄金町シネマ・ジャック&ベティにて開催された特集上映「未来の巨匠たち」の初日に行ってきました。



いえ、最初はね、『ネネットとボニ』をスクリーン鑑賞することが第一の目的だったの。それがあちこちから、未来の巨匠瀬田なつき作品についての絶賛の声が聞こえてきて、これは観ないわけにはいかない、というか是非とも観たいと思ったのでした。
というわけで、23日瀬田なつきDAY1日券コース。

初日土曜日ということもあったのだけど、やっぱり評判の瀬田さんDAYゆえに、ジャック&ベティは立ち見まで観るほどに大盛況。うーん、すごい。でも、こういうフェスティバル感がまた楽しいかも。


評判の瀬田なつき監督作初体験。どのへんが評判を呼んでいるのかはよくは知らない。例えば、イーストウッドの映画が最高峰と言っている男性たちは瀬田監督作のどういうところに感銘を受けているのかなって。でも、人の評価はどうだっていい。私はただひたすら、私の感性をもって、瀬田さんの感性にキューンときた。Say HELLO!こんな風に軽やかにリズミカルにせつなくポップに映画を紡いでくれる日本の新鋭を待っていた。うん、素晴らしかった。みんな面白かったけど、私はとりわけ『あとのまつり』にやられた。

トークショーの時に井口奈巳監督が瀬田さんの映画の"軽み"がいいとおっしゃっていたのだけど、そのへんに全くもって共感。私の知る日本映画の多くにおいて、ドラマは深刻さをもって描かれるのが常で、軽さをもって表現するとなるとそのジャンルはおちゃらけたコメディに寄ってしまうと相場はきまっていた。そんなパターンからは解き放たれているのが瀬田さんの織り成す世界。自由に軽やかに駆け回り飛翔していることが何とも心地よいの。ナチュラルな空気、リアルな日常がぴょんとスキップ、ダンス、フラーイ。

瀬田さんはロケハン好きなのだそう。そうなの、ロケーションがまたステキよくて、ヌーヴェルヴァーグの躍動感がここにある。駆ける少女をとらえるカメラにときめくの。何が気に入ったかって、とにかくこのガーリーな感触。美術や衣装や会話にいかにもな乙女アイテムが現れているんじゃないんだけど、あまりにも完璧に少女の心の揺れを、複雑なオトメゴゴロをとらえているんだもん。とりわけ、『あとのまつり』の主演の女の子の素晴らしさには感嘆。こんな子を発見できたことがスゴいし、こう作り上げた演出力にもうならせられるばかり。

そのアイディア、脚本だってもちろん見事なんだけど、その物語のきらめきは活字で読むのでは伝わってこない、映像化されることで最大限の魅力を発揮したっていう手ごたえが嬉しい。観客の私たちの心が高揚するその時、絶妙のタイミングで踊りだす主人公たち。それって快感。少女のモノローグ、ダイアローグも最高によいいんだけど、あの言葉たちがごくごく自然にしかもリズミカルに少女の声として発せられるのはクラクラもの。音楽のようだよね。この気分はもちろん、全部フェスティバル。


トークショーも興味深かったなぁ。井口監督って、穏やかマイペースな作家さんというイメージだったんだけど、そんなにも徹底的な戦略のもとで人セクを作っていたんだ。とにかく、商業的に成功することは必須で、人を呼ぶためのキャスティングをしなくちゃならないと、mixiのコミュの人数チェックまでして俳優の人気度を調べみたっていう話はちょっと驚きつつおも面白かったな。ただ映画を撮る才能があればいいというものでもない厳しい世の中だけど、サラリとそんなことを話してくれる姿は頼もしい。

そんな井口さんのように、瀬田さんの映画もより大勢の人に観てもらえる環境で上映されるようになってほしいなって思った。なにしろ、才能、センスがあるんだもの。もちろん、それを活かし続けてくれることが肝心なので、商業映画志向には寄ってほしくはないけれど、どんどん羽ばたいてほしいなーって。


・『彼方からの手紙』 2007年/HD/85分
監督・脚本・編集:瀬田なつき/撮影:佐々木靖之/出演:スズキジュンペイ、朝倉あき、三村恭代
 吉永が働く不動産屋に訪れた少女。吉永は彼女の頼みで、彼女がかつて住んでいた家を一緒に訪れる。空き家には、まだ人の気配があり、そこにあったビデオテープに映っていたものを見た彼は奇想天外な出来事に飲まれていく。

・『とどまるか なくなるか』 2002年/DV/36分
監督・脚本・編集:瀬田なつき/撮影:松本岳大/出演:嶺野あいか、洞口依子、桐本琢也
 1995年初夏。小川里佳は都内に住む中学生。兄が消え、父は転勤が決まり、母は入院。“家”からは家族の記憶が徐々に薄れていく……。

・『港の話』 2006年/DV/18分
監督・脚本・編集:瀬田なつき/撮影:佐々木靖之/出演:岡部尚、木下美紗都
“今、そこにある差別”という黒沢清教授に与えられたテーマのもと、東京藝術大学で作った初期実習作品。

・『むすめごころ』 2007年/HD/25分
監督:瀬田なつき/脚本:菅野あゆみ/撮影:山本大輔/出演:山田麻衣子、高橋真唯、柏原収史
 複雑な“むすめごころ”を浮遊したカメラワークと演出でまとめた水玉模様の作品。川端康成の原作を映画化したオムニバス『夕映え少女』の一篇。

・『あとのまつり』 2009年/HD/19分
監督・脚本・編集:瀬田なつき/撮影:佐々木靖之/出演:中山絵梨奈、福田佑亮、太賀
 その街では忘れてしまうことが日常となっていた。だから13歳のノリコたちは、忘れられることも忘れることも恐れないように、挨拶は「はじめまして」にしている。

(瀬田なつきの選ぶこの一本)
・『ネネットとボニ』 1996年/35ミリ/103分
監督・脚本:クレール・ドゥニ/脚本:ジャン=ポール・ファルジョー/撮影:アニエス・ゴダール/出演:グレゴワール・コラン、アリス・ウーリ、ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ、ヴィンセント・ギャロ、ジャック・ノロ
 両親の別居によって離れていた兄妹が、妹の妊娠をきっかけに再会し、反発し合いながらも求め合い、新しい命を迎えるまでを繊細に描く。
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by CaeRu_noix | 2010-01-26 20:54 | CINEMAレヴュー | Trackback(1) | Comments(2)
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Tracked from 〜青いそよ風が吹く街角〜 at 2010-01-27 00:52
タイトル : □『彼方からの手紙』□ ※ネタバレ含
2008年:日本映画、瀬田なつき監督・脚本・編集、スズキジュンペイ、朝倉あき共演(映画祭世界初上映) ≪【大阪アジアン映画祭2009】にて鑑賞、瀬田なつき監督の質疑応答≫... more
Commented by BC at 2010-01-27 00:50 x
かえるさん、こんばんは。
私も瀬田なつき監督に注目しています。

私が瀬田なつき監督作で観たのは
昨年の【大阪アジアン映画祭】で上映された『彼方からの手紙』だけなのですが、
ビターなようでファンタジック。
メルヘンな暖色系の色彩にも惹かれました。

メジャーじゃない今だからこそ
創意工夫によるハンドメイドな映画を作れるとは思うけど、
予算をかけられる環境で彼女の感性をフルに活かせる映画も観たい気もします。
瀬田なつき監督の映画が上映される機会が増えて、
彼女の映画の魅力が伝わっていくようになると良いですね。
Commented by CaeRu_noix at 2010-01-27 01:54
BCさん♪
瀬田さんは大阪にもいらっしゃってたとリーチェンさんが教えてくれたんですが、そうか、去年の大阪アジアン映画祭だったんですねー。
BCさんもご覧になっていたとはステキです。
『彼方から~』は最初は、リアルな日常っぽい描写で始まったのに、徐々にSFめいたファンタジーが入り交じって、不思議な魅力をもっていましたよね。
映像内映像づかいがまた面白くて。
デジタルなカメラだからこそ、街へ出かけての軽やかな撮影ができるというよさがある反面、やっぱりスクリーンで見ると、映像の奥行きのなさなんかを感じたりするのが残念でもあって。
せっかくセンスがあるんだから、もっといい機材を使って、撮りたいものが自由に撮れるくらいの製作費をもって、ぜひ映画づくりをしてほしいなって思いますよねー。
今はこういう特集上映の時にかかるのみらしいですけど、ステップアップの機会があってしかるべきと思いました。
なんだかんだいって、日本ではまだまだ活躍する女性監督というのは少ないので、ホントに活躍を期待したいですー。
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