かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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「ジャック・ロジエのヴァカンス」
2010年 02月 10日 |
エリック・ロメールが亡くなったその少し後に、ヌーヴェル・ヴァーグのきらめきを再発見できるなんてホントに幸せ。



ユーロスペースにて開催中の特集「ジャック・ロジエのヴァカンス」にて上映作を全部(長編3作品、短編6作品)を観たよ。
『オルエットの方へ』は去年の日仏のカイエ特集の上映予定作で、Jさんから「これは観た方がいいよー」って言われていたのに、突如上映が差し替えになって心残りだったのだ。
それがこうやって日本語字幕付きのじっくり特集上映の機会にてまとめて見られることになって。
とっても嬉しかったよ。ユーロスペースって素晴らしい。

率直にいって、大好きです。d0029596_11342784.jpg
イオセリアーニの映画に通じるものがあったから私にはジャストにツボ。
それでいて、イオセリアーニ映画の主人公のように飄々とした感じではなくて、ロジエ映画の主人公たちはやっぱりヌーヴェルヴァーグ的。
リヴェットやロメールの映画のアレコレを思い出す。
キャピキャピという言い方は死語なのかもしれないけど、他に形容の言葉を思いつかない、そんな擬態語で表したいノリで陽気にはしゃぐ女の子たちが最高にいい、ガーリーなノリにギュッと心掴まれる。
ヴァカンスの砂浜に恋焦がれるばかり。

『アデュー・フィリピーヌ』 Adieu Philippine 1960-62

 1960年、兵役を数ヵ月後に控えたミシェルは、勤め先のテレビ局でリリアーヌとジュリエットという女の子と知り合い、ふたりの娘はミシェルに心惹かれていく。局を辞め、コルシカ島で早めのヴァカンスを楽しんでいたミシェルのところに、リリアーヌとジュリエットがやってくる。

モノクロームの風合いもとてもいい。もちろんフィリピーヌごっこがしたくなること請け合い。朝起きて一番に「ボンジュール、フィリピーヌ!」って大声を上げたくなるのだ。そもそも、なんでフィリピーヌなのかよくわからないんだけど。男の子も女の子もみんな陽気に軽やかで本当に楽しくなっちゃうの。歌やダンスにあふれていて、何度となく高揚感が訪れる。テレビ局でのCM撮影シークエンス、何度もやり直し撮影されるところなんかが面白かったなぁ。仕事もドライブもヴァカンスも全てがキラキラ。ずっと軽快にいくのかと思いきや、アンニュイな空気にも包まれちゃうから再度心を掴まれる。そうでなくても不和やヴァカンスの終りは悲しいのに、兵役につかなければならないという状況がまたたまらないのだよね。


『オルエットの方へ』 Du côté d'Orouët  1969-70

 9月初め、キャロリーヌとジョエルとカリーンは、海辺の別荘へ気ままなヴァカンスに出かける。女だけの生活を楽しむ3人は、ある日ジョエルの上司のジルベールと偶然港で出会う。

「おーーーるるるるうぇっと」っていいながらはしゃぎたくなること請け合い。モノクロの味わいもいいけれど、青い海はやっぱりカラーが魅力的。d0029596_11345549.jpg女の子たちのファッションもインテリアの色合いも隅々までステキで、そのきらめきが充満する映像に酔いしれる。明るくノリノリなヴァカンス模様。でも時折、寒々しい風景がそこにあったり。そういうものだよねーって思えるリアルさがいいの。風の音、波の音、女の子たちの笑い声。こんなに長いヴァカンスを経験したことのない自分はある種の憧れをもちながら、それでいてそこにある楽しさの断片に懐かしさを覚えながら、そのヴァカンス感の虜さ。ウナギぶち撒ける所なんておかしすぎ。本気でジルベールをからかいながら、でも最後には彼のお蔭で楽しかったって思っちゃうところがとてもよいよね。あんだけハイテンションなバカ騒ぎの後に、ヴァカンスの終りの寂しさと切なさを描いていることに再びキューン。

『メーヌ・オセアン』 Maine-Océan 1985

 ブラジル人ダンサーのデジャニラは、列車内で検札係のリュシアンに罰金を命じられる。列車はアンジェに到着し、通りすがりの女弁護士とデジュニラは漁師のプリガと合流する。やがて、女ふたりは漁師の住む島に向かう。一方、検札たちもこの島に休暇にやってきて…。

前二作が青春映画だったのに対して、こちらの年齢層が高めでよりイオセリアーニ風味。というか出だしでは、主人公はブラジル人のデジャニラだったはずなのに、主役格が増えたり、移り変わったりしていくのが面白かった。少し強引といえるような展開で進んで行くのが本当に楽しいの。そうやってあれよあれよと歌ったり踊ったりしながらヴァカンスするのだ。この流れ流れていく軽快なリズムが大好きなんだよね。ラストシーンの長回しは格別さ感慨深さがあった。


≪短編≫

『ブルー・ジーンズ』 1958/22分

 Tシャツにジーンズ姿の二人組み、ルネとダニィは、カンヌの海岸どおりをヴェスパで流し、今日もナンパに励んでいる。

夏、海、車といばナンパ。軽すぎてもOK.弾ける若さ嬉し楽し。海沿いをずっと歩く姿を捉えるカメラにはワクワク。ゴキゲンな音楽。

『バルドー/ゴダール』 1963/10分
『パパラッツィ』 1963/20分

 ゴダールの『軽蔑』の後半1/3を占めるカプリ島でのシーンの撮影現場に取材したドキュメンタリー。

こないだ『軽蔑』を再見したので、ググッと興味深かった。ドキュメタリーではシリアスなタッチなのが面白い。パパラッチという言葉が日本でポピュラーになったのはそんなに昔じゃないけど、ロジエは60年代前半からそれに注目していたんだね。


というわけで、わたし的にはチョーお気に入り印な至福映画でありました。
ジャック・ロジエに逢えてよかった。

まだ体験していない人はユーロスペースへ向かうべし!
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by CaeRu_noix | 2010-02-10 11:40 | CINEMAレヴュー | Trackback(5) | Comments(8)
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Tracked from Mani_Mani at 2010-02-10 22:47
タイトル : 「アデュー・フィリピーヌ」ジャック・ロジエ
アデュー・フィリピーヌ [DVD]紀伊國屋書店このアイテムの詳細を見る アデュー・フィリピーヌADIEU PHILIPPINE 1960−62フランス/イタリア 監督:ジャック・ロジエ 脚本:ジャック・ロジエ、ミシェル・オグロール 出演:ジャン=クロード・エミニ、ステファニア・サバティーニ、イヴェリーヌ・セリー 冒頭いきなりカウントから入る映画。カウントに続きジャズの演奏。なんとも小気味よい。冒頭音でぐっと引きこむのは『オルエットの方へ』のタイプライター乱打音(台詞が聴こえないくらいだ!)...... more
Tracked from Mani_Mani at 2010-02-10 22:48
タイトル : 「オルエットの方へ」ジャック・ロジエ
オルエットの方へDu côté d'Orouët 1969−71フランス 監督・脚本:ジャック・ロジエ 編集:ジャック・ロジエ、オディール・ファイヨ 音楽:ゴング/デイヴィッド・アレン、ジリ・スマイス 出演:ベルナール・メネズ(ジルベール)、ダニエル・クロワジ(ジョエル)、フランソワーズ・ゲガン(カリーン)、キャロリーヌ・カルティエ(キャロリーヌ)他 ユーロスペースで観てきましたよ。 ジャック・ロジエ ほとんど事前に得た先入観を裏切らず、 パリで働く都会の3人娘が海辺でまったりすごすバカンスを ...... more
Tracked from Mani_Mani at 2010-02-10 22:48
タイトル : 「メーヌ・オセアン」ジャック・ロジエ
メーヌ・オセアンMaine Ocean 1986フランス 監督:ジャック・ロジエ 脚本:ジャック・ロジエ、リディア・フェルド 出演:ベルナール・メネズ(検札長)ルイス・レゴ(リュシアン)イヴ・アフォンソ(プティガ)リディア・フェルド(女弁護士)ロザ=マリア・ゴメス(デジャネラ) いや〜面白かったですよ。 ジャック・ロジエ85年の長編 めちゃめちゃ面白かったですよ〜。 135分もあるのに長くないし。 コメディタッチでそれなりにストーリーというか それぞれモチーフにストーリー性があって 「オルエット...... more
Tracked from ヒデヨシ映画日記 at 2010-07-27 19:04
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タルコフスキーやテオ・アンゲロプロスやビクトル・エリセのような完璧な映像世界、宇宙、映像詩を作る監督たちがいる。そこには一分の隙もない計算されつくした世界がある。我々はひたすらその世界にひれ伏ぎ..... more
Commented by にいな at 2010-02-10 16:12 x
おお、私昨日「メーヌ・オセアン」を見てきたばかり。
まったくもって私の好みです!!

この映画のストーリーを語ったところでいったいどういうこと?と混乱するばかりですね。何の前触れも説明もなく不意に人が加わり、事が起こっていく楽しさを是非映画館で体験して欲しいですね。

オープニングの走って追っかけるカメラからぐいぐい引き込まれ、そしてラストの長回しもそれはそれは素晴らしかったです。
サンバはシコ・ブアルキによるものだったんですね。車掌さんが弾くギターには驚いたけれど、彼はもともとポルトガルの歌手だとか。

もう一度見に行くかも。
もちろん『アデュー・フィリピーヌ』、 『オルエットの方へ』も見なきゃ。
Commented by manimani at 2010-02-10 23:06 x
すみません。3つ一挙にTBしちゃいました。
どこで読んだのかわからなくなっちゃったのですが、“フィリピーヌ”はフィリピン人ではなく、巴旦杏(はたんきょう)という果実のことで、二つある巴旦杏の種の片方を相手に渡して、次に会ったとき先に“ボンジュール・フィリピーヌ!”と言った方が勝ち〜みたいな遊びがあるそうですね〜
それを「アデュー」に置き換えてタイトルにするあたりがセンスいいですよねえ。
Commented by CaeRu_noix at 2010-02-11 01:01
にいな さん♪
わーい、タイムリー!
もしも、にいなさんがロジエを観に行く予定にしていなかったら、是非見てくださいと勧誘しようと思っていたところです。
そんな必要もなく、しっかりチェック済で嬉しいですー。
そう、もちろんにいなさんの好みにもジャストミートだと思ってました。
確かに、このストーリーを簡単に説明するのは難しいかも。
あらすじというのをまず知りたがる人はいそうですけど、そういうのは問題じゃないんですよねー。
あれよあれよと移り、流れていく感じがホントにステキ。
その流れに身をまかせれば、ひたすら豊かで楽しい時間が過ごせるんですよねー。
おお、ポルトガルのミュージシャンなんですか?!
で、今更私も「OUTSIDE IN TOKYO」の記事などを確認。
"ポルトガル出身のミュージシャンであるルイス・レゴが検札係"なんですね。
セッションが演奏が極上だったのも納得。
サンバはサイコーよかったです。
オープニングはシコ・ブアルキとフランシス・ハイミのスコアとよ。
ぜひぜひ、もう一度。他の二作もお見逃しなくー。
今日はビールは美味いのでwとっておきのORVARをあけちゃいましたわん。
にいなさんへのお返事をするのにふさわしくー。
Commented by CaeRu_noix at 2010-02-11 01:04
manimani さん♪
こちらはまとめ記事ですみませんー。
一つ一つちゃんとレヴューが書けるって素晴らしいです。
おお、そうだったんですか。
今の今まで、フィリピン人のことだと思ってました。
何故にフィリピン人?と思いつつも、ワケ分かんないところがまた可笑しく。
巴旦杏っていう果実の遊びがフランスにあるんですね。
教えてくださってありがとうございます。
さすが、manimaniさん!
一生、フィリピン人のことだと思い続けるところでしたわ。
そう、そんなタイトルがまたステキなんですよねー。
Commented by でぃんぶら at 2010-02-11 01:55 x
うわー、もう全部観たんですか!?
僕はまだ「メーヌ・オセアン」だけです。明日、「オルエットの方へ」観ようかな。やっぱり一番ステキそうな映画ですよね。
パンフレットに掲載されていた山田宏一さんのエピソードが面白かったです。アンナ・カリーナとの不和が結果的に短編映画を撮るきっかけになったとかね。
残りが楽しみ!!
Commented by CaeRu_noix at 2010-02-11 02:19
でぃんぶら さん♪
ふっふっふ。コンプリーーーート!
だって、タルコフスキー映画祭もあるし、恵比寿映像祭もあるし。
後半は新作公開もラッシュだし、と善は急げという感じなのです。
そうですね。好みによると思いますし、上のmanimaniさんなどは『メーヌ・オセアン』が一番お好きということですけど、私はやっぱり『オルエット』が最も好みでした。
女の子たちがかわいくてオシャレさんなのでそれだけでもかなり高得点。
この三人娘にはアンナ・カリーナを思い出すものがありました。
おお、そういえば、パンフも興味深い内容だというつぶやきがありましたね。
そんなキッカケが紹介されていたとは気になります。
そうやって、映画にまつわる物語に興味をもつと、また世界は広がり、更に映画の魅力にはまっていくのですよねー。
Commented by ヒデヨシ at 2010-07-27 19:03 x
観ましたよ!観ましたよ!ジャック・ロジェ。「アデュー・フィリピーヌ」を昨夜観ましたよ。最高ですね~。フィルムから女の子たちが立ち上がってくるような存在感。映画は、物語を描くためにあるのではなく、存在そのものを、その運動を描くものだということを、思い出させてくる幸福な映画です。明日、「オルエットの方へ」を観なくちゃ。
Commented by CaeRu_noix at 2010-07-29 00:59
ヒデヨシ さん♪
夏のロジエ体験、サイコーですねぇー。
ああ、そうですよねぇ。物語を描くためのものなんかじゃなく。
目的でもないし、必要条件でもないんですよね。
そこに夏のきらめきがあれば、活き活きとしたチャーミングな女の子たちがいれば、それだけで映画だったりするんですよねー。
幸福感いっぱい。お楽しみあれー。
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