かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ハート・ロッカー』 The Hurt Locker
2010年 03月 12日 |
爆発シーンの音響の見事さに賞が与えられるこの世界なのだから。

2004年、イラク・バグダッド。873個もの爆弾を処理してきたエキスパートのウィリアム・ジェームズ二等軍曹が駐留米軍のブラボー中隊・爆弾処理班に派遣される。



最多ノミネートの結果、第82回アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、音響賞×2、編集賞受賞。賞取りで元夫婦対決というのも面白い話題性があったと思うけど、元夫ジェームズ・キャメロンが最先端技術で想像上の世界を作りこんで映像化したのと対照的に、キャスリン・ビグローは、徹底的にリアリティと臨場感を追求して現実の戦場を描いているというのが何とも興味深い構図だよね。

ビグロー監督のことはよく知らなくて、キャメロンと夫婦だったということも去年認識したほどだし、監督作もほとんど観ていない私。だけど昔たまたま映画館で観た『ハートブルー』は心に残る好きな1本。銃撃戦やカーレースがメインのアクションものとは一味違って、スカイダイビングやサーフィンシーンが見せ場なのがいいんだよね。キャスリンさんて、賞関連ニュースの写真で見たところ、すごく美しい人でビックリ。そうであろうとなかろうと結局のところ、ハリウッドで女性監督が大いなる成功をするのって、爆撃シーン満載の男祭り男勝り映画をもってしてのことのなんだなという現実。

私が戦争映画の類に意義を感じるのは、厭戦・反戦の思いを痛感することができるということ。現実にほど近い状況を描いた戦場映画が評価されるというのはそういう意義が見いだされたからに違いないと考えていた。ところが、先のシンポジウムで、黒沢K監督が本作を"戦意高揚映画、プロパガンタ"と表して批判的に捉えていたと知って、必ずしもそうでないのかなというあたりに興味がわく。

なるほど。結局のところ、捉え方次第なのだけど、確かにそんな側面もあると感じた。もちろん、ハリウッド製戦争映画の平均的なものと比べたなら、本作のリアリティはシンプルにして格別なものであって、評価に値することは実感できる。恐怖におおわれて緊迫した日常がジリジリと突きつけられる。現地のイラク人にむやみに銃口を向ける現実だってちゃんと描写されていて、米軍のイラク駐留が間違っていたという思いを抱くことだって可能なのだ。公平とはいえないけれど、盲目的ではない。

だけど、惨状ともいえる現実を描写することに意味ガあるなら、、デ・パルマの『リラクテッド』がもっと評価されてもよかったのにということを思い出す。そして結局、米軍の悪行を暴露するような批判的な内容というのではなく、問題意識は持たせつつも、戦う同胞を決して否定したりはしないことがアメリカ人には肝要なのかなと。そこにある酷い現実にはきちんと目を向けるのだけど、主人公の勇敢さや爆弾処理能力の完璧さはハリウッド映画お馴染みの強靭なヒーローでもあった。

序盤では駐留米軍のイラク人に対するふるまいに反感をもっていたはずの私が、後半にはすっかり主人公のストイックさに惚れ惚れしながら、彼に心寄り添って見守ってしまったのだもの。映画を楽しむ姿勢としてはそれでいいのだと思うけれど、そんな自分の単純さが少し怖くもあるし、ビグロー監督のさりげない手腕に感心。戦地の体験は麻薬に溺れるのと同じようなものであると示唆され、その魔力を痛感はするのだけど、私たちは決して麻薬に溺れたルーザーを見るようにエキスパートの彼らを見つめたりはもちろんしない。

奮闘するジェームズ軍曹を見ていて、私は『インビクタス』のマット・デイモン扮するラグビーチームのキャプテンのことを思い出した。国を背負って使命感をもって敵に挑んでいく勇敢な戦士。あるいは、テロ被害のビル倒壊現場で人命救助に奮闘する消防士などの姿も重ねることができた。有能なビジネスマンともなんら違わない。システムの方向性、組織の目的が何であれ、どっちのチームに所属することになろうが、人間は課された任務に全力投球する、順応性に優れた素晴らしくも危うい存在なんだ。

そんな風に眺めてみれば、大いに意義のあるテーマを投げかけてくれた映画であったと思う。ジェームズ軍曹ったら、スポーツ選手みたいにカッコいいな、国のために危険と背中合わせで闘う彼らをひたすら讃えなくちゃ、というところで思考が止まったとしたら、たちの悪い映画ということになるのだけれど。そういう意味では、『アバター』の野生に戻ってナヴィと暮らそう世界の方が微笑ましいのかも入れないね。それもアメリカ、これもアメリカ。

そうそう、DVDって、世界共通語なのかな。世界平和の鍵はDVDだ。
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by CaeRu_noix | 2010-03-12 14:49 | CINEMAレヴュー | Comments(8)
Commented by kimaguren at 2010-03-13 07:16 x
ご無沙汰しています~
「ハート・ロッカー」のラストのジェームズ軍曹の後姿が紛れも無く孤高のヒーローの姿に見えたこと、そのことが咽に引っかかった棘のように感じられてなりませんでした。 監督の意図は反戦映画なのだろうとは思いますが、ハリウッドの娯楽映画の部分が強過ぎて「せんそう~はん~た~い」ってふにゃっとしたものしか伝わってきませんでした。それよりも ゲーム感覚でみたであろう人々が少なからずいるのではないかと心配です。
Commented by CaeRu_noix at 2010-03-13 13:36
kimaguren さん♪ 
お久しぶりですー。
お元気でしたでしょうか?
ブログ巡回もさぼり気味な私はけじばんもめったに覗かなくなりましてすみませんっていう状況なんですが、ご訪問いただき嬉しいです。

孤高のヒーローでしたよね。
イラク派兵にせよ、あらゆる戦争についてにせよ、その惨さをまっすぐに描いているので、
反戦の思いは掬い取ることが可能なんですが、それが圧倒的に響いてくるわけじゃなく、ただヒーローに共感・応援モードでアクション映画を見るように楽しむこともできる作りになっているような。
反戦の思いよりも、国を背負って闘う戦士を慰労しようという思いが印象的。
主張が声高過ぎる映画も暑苦しいですが、これは腑に落ちない感じがしますよねー。
Commented by kaka_o00o2 at 2010-03-15 16:09
かえるさま、こんにちは。
昨日見てきたんですけど、そうか、確かにヒーローでした。
トム・クルーズみたいなじゃなかったんで気づきませんでしたけど。
私はあんまり戦争を舞台にした映画を見ないせいか
ものすごく「やだやだ。戦争なんてごめんだ。みんな戦争なんてやめて、家族のもとに帰れたらいいのに。」とあいかわらず単純に思いました。ので、黒沢さんがそう言ってたという話にもビックリでしたが、そういう見方もあるかあ、なるほど〜と思いました。いつも、エピソードなど、かえるさんのブログは勉強になります。
Commented by CaeRu_noix at 2010-03-16 01:52
kaka_o00o2 さん♪
ジェレミー・レナー、かなーりカッコよかったですー。
その勇敢さ・有能さに惚れ惚れしちゃって、ふと我にかえり、そういう風に見るべき映画じゃないよなぁ・・・と複雑な気持ちになったのでした。
といっても、アメリカ製戦争映画の中では、エンタメノリを抑えてのかなり誠実なつくりのものだったとは思うのですけれどね。
私は戦場映画はわりといろんな国のものを観ているので、どうしてもやっぱり、アメリカ人ってやつはぁぁ・・・と思ちゃう部分がありましたが・・。
でも、kakaさんのように感じてもらえるなら、やっぱり本作は納得のオスカー映画といえるのかもしれませんね。
黒沢監督のコトバをネット上で小耳に挟んだ時点では、私は本作を未見だったので、それってちょっと穿った見方じゃないのかぁと思ったんですよ。
でも、実際観てみたら、なるほどと思えるところもありました。
戦意高揚まではいかないけど、消防士や警察官になる意志を持つ人が本作を観て、戦地を目指す道を考える、なんてケースをうむかもっていうような。
いやいや、とんでもないですが、多様な見方をすることは大切ですよね。
私も日々勉強になりますー。
Commented by acine at 2010-03-16 20:54
かえるさん、こんばんは!
そうなんですよ。あの仕事は大変だとわかってはいても、
最初はよその国で我が物顔ににふるまう彼らに、あまりいい感触は
持ってなかったのに、自分とも闘いながら、日々過ごす彼らの
日常に段々と理解ができてくるのが不思議ですよね。
だけど、元をただせば、爆弾が仕掛けられるのは何が原因なのか?
あんなものがなければ、誰も命をおびやかされることもないし、
憎しみも生まれることがないのに・・・という思いが、堂々巡りを
してました。
それにしても、ビグローさん、本当にお美しいですよね。
そして、映画はタフ!なんともカッコいい女性ですねー!
Commented by CaeRu_noix at 2010-03-17 09:10
acine さん♪
多くの戦場舞台の映画で、軍服を着て武器を持っている者たちの、現地民間人への横柄な態度に腹立たしさを覚えるのですが、ここにおいてももちろん。
それも現地の人たちに求められて派兵したんじゃないのに、っていう部分で苛立ちも割増・・・。
なのになのに、序盤のその苛立ちを忘れて、徐々に彼らのストレスフルな日常の勇姿に見入っていったのでした。ううむ。
戦争がおこるのは、彼ら個人に直接原因があるわけでもないし、アメリカには軍隊があって、政策的に派遣され、誰かが行かなければならないのは必須なのだしたら、彼のような優秀な人が行ってくれるのはせめてもの救いなのかもしれない、しれないのだとしても、モトを絶つことを問題視することを忘れあきらめて、与えられたヒロイズムの物語を満喫してしまうのってどうなんだろう、、って引っかかりますよねぇぇ。
そこを気にしなかったら、なかなかなんだけど、そこを気にしないつくりがやっぱり怖いとも思うし。
ビグローさんはカッコいいけど、よくわからないです。
私はフランスで活躍する女性監督のマインドの方が断然しっくりくるなー。
Commented by シムウナ at 2010-03-22 19:04 x
TB有難うございました。
ドキュメンタリー風の作品なので
ストーリー性は皆無でしたが、爆弾処理班から
戦争の日常が非常にリアルでした。

今度、訪れた際には、
【評価ポイント】~と
ブログの記事の最後に、☆5つがあり
クリックすることで5段階評価ができます。
もし、見た映画があったらぽちっとお願いします!!
Commented by CaeRu_noix at 2010-03-23 01:58
シムウナ さん♪
コメントありがとうございます。
ストーリー性はなかったとも思わなかったのですが、脚本の存在を忘れるほどに、リアルな臨場感でしたよね。
ブログランキングとか拍手とかぽちっと系は基本的にやりません。ごめんなさい。
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