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デプレシャンとアマルリック、黒沢清によるトークショー&『キングス&クィーン』上映
2010年 03月 24日 |
何とも魅力的なトークショー!@東京日仏学院エスパス・イマージュ《フランコフォニー・フェスティバル》



フランス映画祭会期中、デプレシャン Arnaud Desplechin とアマルリック Mathieu Amalric の来日に際し、日仏学院の方でもステキなイベントが開催されました。

トークショーは六本木にて『クリスマス・ストーリー』の後にも体験できるとはいえ、大会場のあちらより、親密な空間が生まれる日仏エスパス・イマージュで行われるもの方がより魅力的なんだもの。大して関係もない日本人ゲストが質問者というのとは違って、我が国の輝かしきシネアスト黒沢清がお相手というのは、デプレシャンファンにとって、よりコアで充実した内容の対話を期待できるじゃないですか。

というわけで、楽しみにしていたブリュノ・デュモンの『ハデウェイヒ』鑑賞をあきらめてまで、トークショーに聞き入ってきました。(当初はトークショーが先の予定だったので、映画は観ずに六本木に移動しようと目論んでいたのだけど、トークショーが映画上映後に変更になり断腸の思いで・・) 公開の決まっていない『ハデウェイヒ』が観られなくなることを無念に思いつつも、間近でデプレシャンとアマルリックが映画の話をしてくれるなんていう機会を逃せなかったのです。ミーハー根性ともいう。

『キングス&クィーン』をスクリーンで観るのは3回目。2006年のマイベスト1映画。初めて観たのもここ日仏学院で、デプレシャンのセレクション特集上映が開かれたんだよね。そんなことを懐かしみながら、また体験した『ROIS ET REINE』は新たなる発見のある味わい深い映画でした。前日に『クリスマス・ストーリー』を観たばかりということもあって、姉エリザベトが弟を憎み迫害するという設定の共通点などにも興味深く注目。養子、甥。

映画後のトークショーは大充実。いつも何らかの役になりきっている姿ばかり見ているわけだけど、素顔のマチュー・アマルリックもホントにカッコいい。スクリーンの中の彼は役柄上、かなりコミカルな面を見せてくれることも多いのだけど、実物のマチューは落ち着いた大人の男でとってもセクシーだ。デプレシャンは話し始めると饒舌なんだけど、同時に照れ屋でシャイな感じを見せているのに対し、マチューは余裕のある態度で、話を黒沢監督の映画のことに持っていったりと、思慮深い聡明さを見せてくれるのです。『CURE』を先日観たというマチュー。忙しいに違いないのにトークショーに備えてか、対談する黒沢監督の映画を観て、そしてそのことを話題にする誠実さに感動。

黒沢監督の話の進め方もとてもツボを抑えていて大感激。私がデプレシャンの映画に感銘を受けるのは、ドラマをきれいごとでまとめず、憎悪という感情を誤魔化すことなく徹底的に描いていること。それでいて最終的に嫌な気持ちにさせられるわけでもなく、それを含めて複雑で混沌としたこの世界はなおステキだ、と思わせてくれるから素晴らしいなってことを感じていたの。だから、黒沢監督がその憎しみ/憎悪について言及して話を進めてくれたのことはスゴく嬉しかったな。

それから私は、これは感覚的な趣味・好みに過ぎないのだけど、Murderがある映画というものが心底好きにはなれないということをよく言っていた。半ば無意識なんだけど、ドラマの核に殺人がおかれているものって、どうも好きと思えないところがあり、イースドウッド映画の類はどんなに素晴らしくても、それらは私のための映画じゃないとしばしば感じていた。そうしたら、黒沢監督が、自身の作品も含め、映画ではすぐに人が殺されてしまうけれど、デプレシャンはそういうやり方をしない、簡単に人を殺さないところに言及してくれた。そうなんだよ、そこが好きなの。この世界では殺人事件は映画の定番だけど、現代日本人の自分には何らそれは身近なものではなく、私たちが怯えるのは、病気や事故死や別離や孤独、裏切りや憎悪なんかの方だと思う。デプレシャンの映画の方が圧倒的に胸に迫るというのはそういうことなんだよね。

俳優マチュー・アマルリックを好きなところは、そのでっかい目で訴えかける表情にもあるけど、めっぽう惚れているのは全身で軽やかに演技をしてくれる身体性。小柄な体で派手にすっ転び、全裸で走り回っちゃったりもするのが、えらくハマっているのが最高。『キングス&クイーン』の病院内ブレークダンスのシーンもそれはそれは大好きで。だから、黒沢監督がそういったマチューの身体的な演技についてもふれてくれたのが嬉しかったなぁ。

とにかく、黒沢監督の話の切り出し方・進め方のほとんど全てが、自分にとって絶妙に的確なものだったのがとても嬉しかった。大会場のトークショーでは観客がハラハラしてしまうほどの、場にふさわしくないお話がふられてしまうこともあるのだけど、この日仏トークは完璧でしたね。この濃密なトークを通して、自分がデプレシャンの映画を愛してやまない理由の一つ一つを確認することができた感じ。福崎さんの同時通訳がまた素晴らしくて、エキサイティングな対話が間延びすることなく、逐一私たちの耳に届けられ、まるで自分がフランス語を解しているかのように錯覚するほど、そのお話のキラキラ感を感じることができました。黒沢監督、福崎さん、日仏学院の皆さん、どうもありがとうございます。

そして、その後更なる幸福な時間。トークショーが終了し、そのまま彼らは去っていくという展開もありえたはずなのに、サインをもらうべくマチューを引き止めてくれた方のおかげか、皆がどんどん後に続き、その場でサイン会・撮影会のはじまリー。普通だったら、スタッフがそういったことを止めに入ったりもするのだろうけど、ここではアルノーとマチュー自身がこの状況を受け入れる態勢だったので、自由な雰囲気で心ゆくまで居残りタイム。なんて、よい人たちなんだ。

サインをするためにステージに腰掛けるマチューは、『Kings & Queen』の終盤の博物館でエリアスに語りかける姿にかぶったよ。迷惑そうな感じはこれっぽっちもないので、初めはサインは昨日もらったから今日はいいやと遠慮していた私も、やっぱりせっかくだからと。前回のデプレシャン特集"人生は小説=物語(ロマン)である"の冊子にサインをしてもらったよん。この冊子はフランス語でもデプレシャンがセレクトした映画のことが書かれていたので、マチューはしばし興味深そうにページをめくっていたよ。それを傍らで見つめたのは至福の一時でした。自分がこんなに追っかけ根性をもっているとはー。そんなミーハーにはしゃいでしまう私たちを温かに受け入れてくれるアルノーとマチューに惚れ直すのであった。トレビアン。日本に来てくれて本当にアリガトウ。Merci Beaucoup!
                   La Vie est un roman.
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by CaeRu_noix | 2010-03-24 11:35 | 映画ネタあれこれ | Trackback | Comments(10)
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Commented by Yumi at 2010-03-24 21:52 x
黒沢監督のトークショーも行かれたのですね~。
私は自宅で「CURE」を見て過ごしました。(笑)
充実したトークショーに参加できるって、本当に貴重というか至福ですよね。至近距離からの撮影も羨ましいです。
お疲れ様でした(^^)
Commented by Incidents at 2010-03-25 00:40 x
こちらでは初めまして!
うへー、マチュー・アマルリック、いい人なんですねえええええ!
Commented by CaeRu_noix at 2010-03-25 00:40
Yumi さん♪
はりきって行って参りましたー。
おお、『CURE』をご覧になったとはマチューと一緒です。w
恐怖の対象、犯人が写されない手法が素晴らしいとおっしゃってましたわ。
私は基本的には映画そのものが好きなので、多くのしねふぃるさんのように批評をあれこれ読んだり、講演会に顔を出したりという勉強熱心さはないんですが、俳優ゲストのとーくしょーなんちゅうものにはわくわく出かけちゃうミーハー根性はもっています。
これが英語圏の人気俳優だったら、あえて興味を示さないんですが、他でもないまちゅー来日でしたので。
黒沢監督のお話もいつも面白くて、ホント充実してました。
どうもありがとうございまーす。
Commented by CaeRu_noix at 2010-03-25 01:19
Incidents さん♪
ようこそ、いらっしゃませ。お世話になっています。
コメントありがとうございます。
そうなんですよ、マチュー・アマルリックはファンにもあたたかで優しいよい人でしたよー。
ハリウッド映画に出ていても、大スターを気取ったりはしないところに感動しました。
デプレシャンととーても仲よいみたいで。
Commented by きゃん at 2010-03-25 02:07 x
はじめまして。SNSのほうから、辿って参りました。

私はユーロスペースのほうには行ったものの、仕事の都合などもあり日仏学院は諦めたんですが…。
即席撮影会&サイン会!何て素敵!(←指を咥えてみる)

画像、笑顔のマチューがどれも可愛くて、良い写真ですね。
特にラストの画像なんて、最高です。

私もユーロスペースで写真と握手をおねだりしたのですが、マチューはとても自然体で、とても素敵な大人の男って感じがしました。
今回、マチューの素顔にちょっとだけ触れる機会があったことで、一層ファンになっちゃいました。

突然の書き込み、失礼しました。
また、お邪魔させていただきます。
Commented by CaeRu_noix at 2010-03-25 19:47
きゃんさん♪
はじめまして。コメントありがとうございます。
1号さんのまいみくさんですね。
私は日仏の方で1枚の写真を手がかりに1号さんにご挨拶することができました。

きゃんさんはユーロにいかれたのですね。
ユーロでもマチューはステキだったんですねー。
そうなんですよ。例えば、トークショーが終わった後に、態度がかわるっていうこともなく、ごくごく自然に話し、歩き、サインもしてくれちゃうんですよね。
舞台挨拶の時に憮然としていて観客に笑顔のひとつも見せない日本の俳優などもいたりすることを思うにつけ、ハリウッド映画にも出てるメジャーになったマチューがそんな風でいてくれることにとても感激。
何かの役を演じている時より、大人の男の色気を感じちゃったかもしれません。
ホントに益々ファンになりました。
来日してくれて、かつ何度も舞台挨拶やトークショーの機会をもってくれて、本当によかったですよねー。
これからも応援していきましょう。
ぜひまたいらしてくださいー。
Commented by イブイブ at 2010-03-25 21:04 x
はじめまして
日仏会館に行けなかったので、レポ読ませていただき感激です。
マチューは六本木の方の開会式でチラリと見ただけですので、中身の濃い日仏でのトークショーに参加されたこと、羨ましく思います。
ちなみに私は「ハデウェイヒ」の方に行ってしまったのですが、
こちらも深い映画でした。
どうもお邪魔いたしました。
Commented by CaeRu_noix at 2010-03-26 00:54
イブイブ さん♪
はじめまして。ようこそです。
イブイブさんはオープニングに行かれたのですねー。
はい、とにかく、このたびの私は、マチューにより接近できる機会、密なトークが聴けそうな機会をバッチリ狙って、スケジューリングをしたのでした。
他の所で行われる大人数イベントだと、観客はドライに扱われてしまいがちなんですけど、日仏の雰囲気はとてもよい感じで。
でもでも、欲張りながら、『ハデウェイヒ』も本当に観たかったんですよ。
ブリュノ・デュモンの映画はかなり評価しているので。
これは映像が素晴らしいと評判でしたから、劇場鑑賞したかった。
ブリュノ・デュモンの映画は一筋縄ではいかないですけど、そこはかとなく面白いですよね。
イブイブ さんはハデウェイヒを満喫できてよかったですね。
一般公開を強く希望。
またよろしくお願いしますー。
Commented by rose_chocolat at 2010-03-27 17:34 x
わーお!
心なしか、こちらの方がみなさん生き生きとしておられませんか?
私はFFFのサイン会はかなり後の番号だったんで、
マチューがかなりお疲れ気味なのがとても気になっていました。

> 大して関係もない日本人ゲストが質問者というのとは違って

そうそう。 これはTIFFでもFFFでもとても感じます。 趣向を凝らしているのはわかるけど、どうにもピント外れの方向にトークが行くと時間もったいないって思うばかり。 主賓の方にも失礼ですしね。
そこに行くとこのトークショーは当たりのようですね^^ 
こんなに嬉しそうなマチューのお顔を拝める私も、とても幸せな気分です。 レポありがとう!
Commented by CaeRu_noix at 2010-03-28 00:15
rose_chocolat さん♪
ああ、そうかもしれませんね。
前日はユーロでの舞台挨拶があって、その後に六本木でトークショーにサイン会でしたから、お疲れだったのかもしれませんね。
で、こちらの方は午後イチのイベントだったのでたっぷり元気だったんだと思われます。
六本木ではマチューはサインに"Merci"って書いてくれたんですけど、日仏の時には"Merci Beaucoup"でしたよ。
感激ー。

TIFFは最近はワールドシネマ部門はシネフィルな矢田部さんが進行役なことがほとんどだったのでかなり安心できるのですが、フランス映画祭の方は何故か、日本人のゲストを必ず無理に加えているのがむしろ傍ら痛いんですよね。
映画のスタッフ、キャストのトークをたっぷり聞く方がいいのに。
観客の質問もたまにすごくとんちんかんなものがあってハラハラしますよね。
今回はそういうのはあまりなくてよかったけど。
でもって、このイベントのお相手は聡明で映画通で話し上手な黒沢監督でしたから、まったくもって完璧でしたよー。

もうホント、マチューの笑顔で私は生きる力がわきましたー。
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