かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『オーケストラ!』 Le Concert
2010年 04月 23日 |
生きる歓び、ここにあり。

パリのシャトレ劇場からボリショイ交響楽団への出演依頼のFAXを劇場清掃員のアンドレイが見つける。



本国フランスで大ヒットしたという楽しくてハートウォーミングな感動音楽映画。日本でも客足は好調なようで観た人誰もが絶賛していると思えるほどに大好評。ミニシアター映画冬の時代とあっても、ギャガさんのマーケティング力は的確ということなのかな。その確実さがあるならば、さらに観客のことをもっと考えて、こういう音楽の素晴らしさを味わう映画は、音響のいい劇場でかけてくれればいいのになぁなんてことも思ったり。クラシック音楽ものは確かに、ルシネマやシネスイッチの客層に合っているというのはわかるんだけどね。ということを思っていた私は、これは音響のいい劇場で是非体験したいなと、フランス映画祭で鑑賞。近いうちに一般公開がきまっている映画は映画祭で観ないという選択をするのが基本なのに本作に関しては別。六本木の広いシアター7のど真ん中の席で、オーケスラをゴージャスなコンサートを聴いてる臨場感を大いに満喫したよ。

そう、フランス映画祭。ラデュ・ミヘイレアニュ監督とその監督作『約束の旅路』(行け、生きろ、生まれ変われ)に出会ったのはフランス映画祭でのことだったんだよね。だから、再会が嬉しくかった。『約束の旅路』のテーマの深さ/複雑さに比べると、本作は物語的にはずいぶんわかりやすくなっていて、それが寂しくもあったりはしたけれど、大ヒット映画を手がける監督にもなっていたこと、というよりは作風が偏らない多様性をもった柔軟な映画監督であるということを発見できたのは嬉しい限り。今回はずいぶんとコミカルなテイストなんだけど、クストリッツァのごとく、悲劇を喜劇的に描くというやり方は大好きなんだよね。深刻なことを深刻ぶらずに語ることってステキなのだ。

語り口はとても軽快でありながら、チャウシェスク独裁政権下のルーマニアから亡命したという経歴をもつユダヤ人のミヘイレアニュ監督ならではのものである物語が味わい深い。前作とはまるで異なるジャンル、ストーリーのようでいて、自らを偽って他人に"なりすます"という切り口は共通のものだというお話がとても印象的だった。嘘、偽りは悪徳だ、なんていうのは、平和な社会で安穏と暮らしているから持ち出せること。そこまでしなくちゃ、生を取り戻すことはできないかもしれないというのなら、そのチャンスに賭ける人間を応援せずにはいられない。いくつかの映画を思い出しながら、芸術を迫害してきた旧ソ連の圧政に怒りを覚えつつ、この嘘っ子オーケストラのパリの珍道中をハラハラと見守るのだ。のだめちゃんたちのパリ滞在とはまるで違う冒険旅行。

丸まるクラシック音楽の映画だと思っていたものだから、大好きなジプシー・ミュージックの登場にはそれはもう心躍っちゃった。そういう大らかな振り幅が嬉しい。迫害される流浪の民のロマの楽士がこの冒険劇で一役買うなんて、ミヘイレアニュ監督らしい気がしたな。バイオリンの気高い調べはクラシック音楽ならではのものではあるけれど、ジプシー・ミュージックの早弾きバイオリンは時に、それ以上に魅力的なのだ。著名な名曲も、名もなき音楽も素晴らしいものは素晴らしい。立派な実績を誇るオーケストラでなくたって、魂のこもった演奏はたぶんきっと人の胸を打つのだよ。のだめの落ちぶれ気味楽団の兼業楽団員の人だってもうちょっとちゃんと練習をしてたよぅ、なんてツッコみは野暮。てっきりアンヌ=マリー・ジャケの両親はギレーヌとアンドレイかと思ったよ、なんて勝手な読みのハズレっぷりもさておき。ラストのチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」はクラクラするほどに圧巻。素晴らしい演奏シーンだったよね。ブラボー。
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by CaeRu_noix | 2010-04-23 14:07 | CINEMAレヴュー | Comments(15)
Commented by 樹衣子 at 2010-04-24 10:39 x
かえるさんへ
TBありがとうございました。

>クラシック音楽ものは確かに、ルシネマやシネスイッチの客層に合っている

まさに私がルシネマやシネスィッチの客層のひとりです。
特に、ルシネマは好きです。ゆったり珈琲を呑みながら、上映時間を待ちながら掲示板に掲載されている映画の批評を読んだりする時間は、多忙な中の貴重な時。

>『約束の旅路』のテーマの深さ/複雑さに比べると、本作は物語的にはずいぶんわかりやすくなっていて、それが寂しくもあったりはしたけれど

最近思うのですが、映画に限らず小説でも、本来は難解なテーマにエンターティメント性を盛り込むことによって、裾野を広げている風潮を感じます。この点については諸々考えるところがあるのですが、私はこの映画から逆に『約束の旅路』を観たいと思いましたので、一作の映画の大ヒットの効果は大きいですね。
それにしてもフランス映画祭からとは、かえるさんの映画暦はあついですね。。。
Commented by CaeRu_noix at 2010-04-24 23:59
樹衣子 さん♪
クラシックといえば、な樹衣子 さんにコメントいただけて恐縮、嬉しいです。
ルシネマはですねー、映画館としては私は不満ありなんです。
一にも二にも、前の人の頭が邪魔になってスクリーンが完全に見えないという設計がいただけません。
小綺麗なわりに座席間の狭さなどもいただけない。
でもでも、ルシネマのラインナップは大好きだし、それから私もなんだかんだいって、Bunkamuraの存在は大好きなんですよ。
映画館と美術館とコンサートホールの複合施設なんてステキ過ぎますよね。
私のTOKYOカルチャーLIFEは文化村と共にあったといっても過言ではありません。
ルシネマはもちろんミュージアムもオチャードホールも、とてもお世話になっています。
クラシック音楽な映画はルシネマが定番というのは承知の上なんですけど、自分はシネコンで鑑賞できてよかったと思ったので、他の人もそう感じられるんじゃないかって・・。
Commented by CaeRu_noix at 2010-04-25 00:05
樹衣子 さん♪
私はいわゆる娯楽映画と呼ばれるものよりも、アート映画の類がスキなので、作品がエンタメに寄ることを寂しく思いがちなんですが、やはり多くの人に支持されなくてはならないとなると、それはごく当然のことなんでしょうね。
必ずしも対立するものではないと思いつつ、常々考えてしまうことですね。
ほどよいバランスで、両立させればいんだよってことになるのかな??
そうだとしたら、皆にとても評判がいい本作は大成功と思えます。
『約束の旅路』も素晴らしいので是非ご覧下さいー
Commented by mezzotint at 2010-05-03 20:42 x
かえるさん
今晩は☆彡お久しぶりで~す!
観て来ました!ラストの12分間のチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」は音楽音痴な私にも感動ものでした♪
「約束の旅路」も大好きな作品です。
TBさせて頂きました。また宜しくです。
Commented by CaeRu_noix at 2010-05-04 01:30
mezzotint さん♪
お久しぶりです。ありがとうございます。
記事を読んでいただけるのも、その上でコメントをいただけるのも嬉しいです。
ただですね、ホントにもう、多くの人が似たようなレヴュー書いているものについて、いちいちいっぱいトラックバックを送りあうことには、あまり興味がないというか、面倒くさいというか(笑)
同じタイミングで鑑賞できたら一緒に盛り上がれることもあるんでしょうけど、私がこれを観たのはフランス映画祭で一ヶ月以上前のことで・・・。
そして、今はイタリア映画祭真っ只中ー。今日観た映画のことなら熱く語れるんですけれど。w
同時にラ・フォル・ジュルネ開催中で、そちらのテーマはショパン。
でも、チャイコフスキーも生でじっくり聴いてみたいものですー。

"音楽音痴"っていう言葉は初めて聞きました。w
ハリウッドメジャー系映画の音楽が私はすごく苦手でして、ストーリーを過剰に盛り立てるシンフォニックな楽曲には耳を塞ぎたくなることが多いのですが、映画の中のステージ演奏シーンというのは逆に大好きで、クラクラするほどに感動させられちゃいますよねー。
Commented by mezzotint at 2010-05-04 07:20 x
おはようございます!
いやあタイミング悪くてすみませんでした(汗)
お許しくださいませ。音楽音痴という言い方はいけなかったかも、、、。
クラッシクをあまり知らないという言い方のほうが良かったですね。
またタイミングよく語れる際にTBさせて頂きますね。
Commented by CaeRu_noix at 2010-05-04 12:57
mezzotint さん♪
たびたびありがとうございます。
うう、すみませんー。
タイミングが悪いからどうこうという話でなくて。
TBの送信先の一つという感じでの訪問というのはもう今はちょっと…という感じなんです。
この映画のこういう部分について具体的に語り合いたいというんなら嬉しい限りなんですが。
gooブロガーさんにはTBをたっくさん送ることに意義を感じてる方が多いみたいですけど、私はもういつも同じブログ同士でTBを送り合うことの意味がよくわからなくてw
ですが、TB受付禁止とかじゃないので、同じ映画のレビュー記事がありましたら、ジャンジャンTBしてくださーい。
お返しは全部しないかもしれないけど、ミニシアター系の観ている人の少ないマイナー辺境映画のものならば、はりきって語りに行きますのでー。
クラシックは私も全然詳しくはないですが、映画のおかげでずいぶん興味をもつようになりましたよー。
映画も音楽もはらしょー。
Commented by ヒデヨシ at 2010-05-04 19:59 x
初めてお邪魔します。『約束の旅路』は観ていないのですが、かえるさんのコメントを読むと、もっと深く複雑なんですね~。いつか観ないとなぁ。<なりしまし>の手口は同じですか・・・。気になる監督が一人出来ました。ロマのヴァイオリニスト良かったです。あのハチャメチャ加減、誇張さは、クストリッツァにも通じるような気がしました。
Commented by mezzotint at 2010-05-04 20:01 x
かえるさん
コメントありがとうございます。また性懲りもなくやって来ました。
時間をとらせてごめんなさい。もう一度じっくり読ませて頂き(汗)
そうじゃないんですね。多分どの方もきっと初めはそうじゃなかった
と思います。続けているうちにアクセス数を少しでも多くしたいと
いう思いから、TB送信に力を注ぐ傾向になってきたのかななんて
思うんです。私も無意識にそうなっているかもしれません。
映画が好きという意味でやり始めたブログがいつのまにか、
随分目的がそれてしまったような気がします。私も初心に
戻ってやらないといけないなあと思います。
マイナー辺境作品、たくさん観て、またかえるさんのところへ
お邪魔したいと思います。これからも宜しくお願い致しますね♪

Commented by CaeRu_noix at 2010-05-04 22:34
ヒデヨシさん♪
はじめまして。いらっしゃいませ。
『約束の旅路』は本当に素晴らしい映画なので、機会ありましたら是非。
民族や宗教の問題が今も世界にいさかいを起こしているわけですけど、そういうことにこだわることに何の意味があろうかって思えるような人間にとって大切なものが描かれている深いテーマの映画なのです。
こちら『オーケストラ!』の方はずいぶん軽やかに楽しい映画になっていましたよね。
そうなんです。団員たちのドタバタ感はクストリッツァ映画に通じるものがありますよね。
全てがクリーンではないけれど、何もかもを乗り越えちゃうような人生の歓び、生命の輝きが感じられるんですよねー。
Commented by CaeRu_noix at 2010-05-04 23:03
mezzotint さん♪
再度ありがとうございます。
私もブログを始めて2,3年目の頃は一生懸命トラコメ活動していたんですけどね。
もう疲れましたw
それまで交流のなかったブログとTBを送りあうことは挨拶がわりにいいんじゃないかと思うのですが、毎回同じブログとTBを送りあうことに何の意味が?と。
「これ観たよ」「面白かったね」っていう軽いコミュニケーションが大切という人も多いのかと思いますが、私はそういう挨拶はいちいち不要なので、その代わり語らう時には、じっくり深くマニアックに話したい方なんです。
正直、TB返しは、送るだけで、相手のブログ記事を読まないことが多かったり。
アクセス数は多い方がいいと思いますけど、大事なのは自分の書いた記事をちゃんと読んでくれる人の数であって、カウンタの数自体ではないんですよね。
そもそも自分は、アクセスupできそうな映画の記事を書くより、見ている人が少ないものを取り上げるのが好きな人間だったり。
今はめっきりそういうスタンスなので、ポピュラー派?の方に同じようなテンションで訪問いただくと、戸惑ってしまう今日この頃。
そんな偏屈な私でごめんなさいなんですが、今後ともよろしくお願いしますねー
Commented by minori at 2011-02-06 18:38 x
かえるさーん。

私もロマのシーン、嬉しかったです、これ!
僕のスゥィングを思い出したり。いいですよねぇ。
久々にサントラが欲しくなりましたー。
そうそう、クストリッツァ的なところもちょっと意外で楽しめました。
もっとシリアスな作品かと思ってたー。

マイナー映画のほうが本当に語るべきところ、たくさんあるような
気がします。さっき私も1月に見た映画まとめてみたんですけど、
ブロックバスターズな大作には何かいていいのやら、止まっちゃいます。

今はさっき見た『シリアス・マン』の余韻にどっぷり。
多分まだ日本未公開につき、まだかえるさんの感想も読めず…。
シングルマン、じゃないですよ。似てるので微妙ですが、
こちらはコーエン兄弟の作品です。True Gritのほうが先に
リリースになりそうですが、その一年前の作品ですかね。
その他本命の『The Kids Are All Right』のかえるさん
コメントも期待して待っていますので、よろしくです(笑)
Commented by CaeRu_noix at 2011-02-07 10:52
minori さん♪
ロマの登場、ウキウキしたよねぇー。
そこに注目してもらえて嬉しいー。
形式的で格調高いクラシックのステージが自由な自由なフランスでは迫害され気味のロマたちの音楽と共鳴するなんてサイコー。
トニー・ガトリフの新作が公開されなくて悲しい日本だけど、こんな風にジプシー・ミュージックに会えると嬉しく。
ミニシアター系映画は危機的状況ながら、音楽ものは依然として(というよりはのだめ以後?)人気があるようで、これは日本でもヒットしていて、年始にも再上映してました。
物語はちょっと都合よく進みすぎな感じだけど、楽しいテンポが好評だったのかな。

シリアスマンは2/26、トゥルー・グリットは3/18公開ですー。
日本公開日にムラがありすぎだけど一応順番どおりに見られそう。
コーエン兄弟作品にはかつてほどには心捕まれなくなっているのですが、今度はどうかなぁ。
The kids are all rightはキッズ・オールライトという意味不明な邦題がつけられて、4/29公開。
これはテーマ的にかなり好みな感じ。
Commented by minori at 2011-02-07 18:56 x
またまたお邪魔します。
ええ、ロマには本当にウキウキしました♪
そこまでちょっとダレぎみだったんですがあれ出た瞬間に
「え?おっ?!」ってカンジで目がさめたカンジでしたよ(笑)
劇場で見たかったな…。トニー・ガトリフ、最近何か出してましたか?
しばらく見ていないような気がします。
トランシルバニアが最後かな?

おお、一応順番どおりに来るんですね、コーエンBROS。
彼らの味付けがよぉく出てるのがシリアスマン、
無難によかったのがトゥルー・グリットというのが私の感想ですが
かえるさんはどうかなぁ??感想楽しみにしていますね。
キッズ・オールライトとな、また凄い省略の仕方ですね。
これは間違いなくお勧めです。すでにトップ10候補ですねぇ。

今からかえるさんがご覧になっていた『ソウルキッチン』を
見ます。かえるさんの感想を読みにまた後でお邪魔します。
Commented by CaeRu_noix at 2011-02-08 00:38
minori さん♪
トニー・ガトリフはトランシルヴァニア以降日本公開されてないよー
2009年に『Korkoro』(Freedom)が映画祭で受賞しているのだけど、それはあまり世界各国で公開されていないみたい・・・。
私、サントラは買ったのだけどー。
ロマな映画が観たいよー。

なんだかんだいって、コーエン兄弟作品はしっかり公開されてます。
メジャーな俳優を起用することも多いせいか、シネコンで観ることも多くー。
でも私はミニシアターでかかってた『バーバー』あたりがいっとう好みだったり。
で、シリアスマンも久々ミニシアターラインな感じなので、これはちょっと期待。

キッズ・オールライトって言いやすいかもしれないけど、ホント意味不明ー。
こちらは最近業務試写があったみたいで、観た方が絶賛していますー。
アメリカの価値観は私が抱いているものと違うことが多くて、実は世間一般的な感動作も自分には響かなかったりすることもあるから不安も入り交じりつつー。
でも設定は非常に好みなかんじー。
ありがとう、また!
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