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「アラン・レネ全作上映」鑑賞メモ
2010年 04月 27日 |
「フランス映画祭2010関連企画 アラン・レネ全作上映」



好きな監督の一人でありながら、なかなか多くの監督作を見る機会がなかったアラン・レネ<Alain Resnais>。
(渋谷や新宿のツタヤンでも置いてあるのは数えるほどで。)
この度の全作上映の機会はとても貴重で有意義でありました。
長年何となく抱いていたアラン・レネのイメージが変わった新発見が多々あり。
『夜と霧』、『ヒロシマモナムール』、『去年マリエンバートで』、『ミュリエル』など初期の監督作のシリアスなタッチと、『恋するシャンソン』(1997)、『巴里の恋愛協奏曲』(2003)あたりの戯れの雰囲気には大きなギャップを感じていたわけだけど、その間の歩みを知ることができたといえるかな。
そんなフィルモグラフィーを踏まえた上て、80代のアラン・レネが作り出した新作の自由さに改めて感慨ひとしお。

・『ヴァン・ゴッホ』 (1948年/18分/DVD/モノクロ/日本語字幕付)
・『ゲルニカ』 (1950年/13分/DVD/モノクロ/日本語字幕付)
・『ポール・ゴーギャン』(1950年/13分/ベータカム/モノクロ/英語字幕付)
・『彫刻もまた死す』 共同監督:クリス・マルケル (1950-53年/30分/35ミリ/モノクロ/英語字幕付)
 (黒人によるアートについての、反植民地主義、反人種主義を掲げた風刺的ドキュメンタリー。)
・『アトリエ15の秘密』 共同監督:アンドレ・ハインリッヒ (1957年/18分/ベータカム/モノクロ/無字幕)
 (産業医学についてのドキュメンタリー。)

・『夜と霧』 (1955年/30分/35mm/モノクロ/)
 (ポーランドのアウシュヴィッツ強制収容所を描いた記録映画。)
・『世界のすべての記憶』 (1956年/20分/DVD/モノクロ/日本語字幕付)
・『スチレンの唄』 (1958年/13分/DVD/モノクロ/日本語字幕付)
 (プラスティック素材の製造についてのドキュメンタリー)
・『シネ・トラクト第2部』 (1968年/5分/ベータカム/モノクロ/サイレント)

・『キューバのエステバン・ゴンザレス・ゴンザレスのために』 1991年/3分/ベータカム/カラー 
 (アムネスティー・インターナショナルが30人の映画監督に依頼した共同での企画『忘却に抗って〜命のための30通の手紙』の中の1本。政治犯の解放をフィデル・カストロに求めた映像による手紙。)
・『想像上の肖像』 1982年/11分/ベータカム/カラー
(アンジェイ・ワイダ監督の映画からの抜粋を編集した作品。ヤルゼルスキ将軍によって「戒厳令」下にあったポーランドを支援するために1982年4月9日にFR3にて放送された番組の中の1本。)
・『ギィ・ペラートとアラン・レネ:ガーシュインを巡る出会い』 監督:ジル・ナドー 出演:ギィ・ペラート、アラン・レネ 1991年/19分/ベータカム/カラー/無字幕
・『ガーシュイン』 1992年/52分/ベータカム/カラー/無字幕 
 出演: ベティ・カムデン、アドルフ・グリーン、エドワード・ジャブロンスキ、ジョン・カンダー、マーティン・スコセッシ、ベルトラン・タヴェルニエ
(ポピュラー音楽・クラシック音楽の両面で活躍し、「アメリカ音楽」を作り上げた作曲家として知られるジョージ・ガーシュインについて、様々な証言とともにアラン・レネが撮ったドキュメンタリー。)

・『去年マリエンバートで』(1960)    L'Annee Derniere a  Marienbad
 こちらの特集のフィルム版の方は観られなかったのだけど、イメージ・シアターフォーラムの方で念願のスクリーン鑑賞。
HDニューマスター版のDVDを買ったのに観に行かずにはいられなかった魅惑の映画。
字幕担当の細川さんによる耳寄り情報 onTwitterにも感謝。

(今回観ていないもの)
・『ヒロシマモナムール』(1959)
・『ミュリエル』(1963)
・『戦争は終った』(1965) La Guerre est finie
・『ベトナムから遠く離れて』(1967)(オムニバス)
・『ジュ・テーム、ジュ・テーム』(1968)
 ・『西暦01年』 (1972)(オムニバス)
・『薔薇のスタビスキー』(1973)
・『プロビデンス』 (1977)
・『人生は小説なり』(1983)
・『お家に帰りたい』 (1989)
・『恋するシャンソン』 (1997)
・『巴里の恋愛協奏曲』(コンチェルト) 
〜 レンタルソフトも出ていない『戦争は〜』 を観られなかったのは残念。一連の作品を観て、『恋する〜』や『巴里〜』という音楽ものが再見したくなり。

Ou bien ? アラン・レネのための10章 /netz-haut/海老根剛


『アメリカの伯父さん』 (1980)
出演: ジェラール・ドパルデュー、ニコール・ガルシア、ロジェ=ピエール、マリー・デュボワ、ピエール・アルディティ
二人の男性と一人の女性、ルネ、ジャニーヌ、ジャン行動や心理の動きをマウスによる実験をふまえて生物学者のラボリ教授が観察。臨床心理学的な視点から分析しながら人間の心理と病理、記憶と行動との関係等が描かれる。
「『アメリカの伯父さん』は、おそらく科学的な理論をもっともよく提示している作品、あるいは科学的な理論を登場人物について語るもっともよい方法なのだということを示した作品でしょう」(アルノー・デプレシャン)。

「ぼくの伯父さん」のような映画だと思っていたわけではないはずなのだけど、タイトルからイメージしえないタイプの映画だったのでとても興味深かった。マウスの実験とともに人間の行動が分析されてしまうとは。ルネ=ドパルデューたち三者は自身の生の中で深刻に悩みもがいているのに、分析者ラボリ教授はいたってクールに理論を語るという構図。人間とは滑稽な生き物なのだよなと思わされつつ、でも当人たちにとっては一大事はやっぱり一大事というのもわかるしね。レネの目線の面白さに引き込まれてしまった。


『死に至る愛』 (1984)L'amour à mort 
出演: サビーヌ・アゼマ、ファニー・アルダン、ピエール・アルディティ、アンドレ・デュソリエ
二組のカップルが人里離れた村にそれぞれ暮らしている。片方のカップルは宗教を信仰していて、もう一方のカップルは学問や科学に携わっている。彼らの中の一人が死を「体験し」、四人は愛と死について向かい合うことになる。
「シンプルで、余計なものが取り除かれた洗練さを持つこのドラマは、同じくジャン・グリュオーが脚本を手掛けたトリュフォーの『緑の部屋』のテーマを再び取り上げている」(「レ・ザンロキュプティーブル」)。

allcinema online にもデータのないデプレシャンも気に入っている本作を日本語字幕付で鑑賞できて嬉しかった。同じジャン・グリュオー脚本でもトリュフォーの『恋のエチュード』のように
心かき乱されてしまう情熱の恋愛映画ではなくて、『アメリカの伯父さん』につながるような登場人物に対するクールな目線をもってしまう。でもこちらにはラボリ教授がいないので受け止め方に戸惑うところもあった。出会って数ヶ月の熱情と思慕が死に至る愛だといわれたら、信仰のない私でも踏みとどめたくなるよってテーマは興味深いのだけど。


『メロ』(1986)
ヴァイオリニストの妻は、家に訪れた国際的なキャリアを持つ夫の親友に魅了される。
原作は1929年のアンリ・ベルンシュタインの戯曲。かつての恋人の不義を語るアンドレ・デュソリエを、気づかないほどの微細な動きでカメラが近づくワンシーン・ワンショットの演出は圧巻。「私の関心は、スタイルのある音楽だった。(…)ベルンシュタインの言葉の響きやリズム、彼の強迫的主題や極度なノイローゼにかかった人物たちだ。(…)ベルンシュタインは観客に能動的になるのを求めている」(アラン・レネ)。

メロドラマのメロ。そんなタイトルがつけられてしまうことからして、観察者の存在を意識してしまうことはあるけれど、『死に至る愛』よりはそこにあるドラマそのものに心よりそってしまうメロドラマ。映画には、ビジュアル的にも映画ならではのものを求めがちな私なので、会話が中心の戯曲原作ものはそれほどに好みではないのだけど、ドキドキハラハラと見入ってしまう緊張感がよかった。


『スモーキング/ノースモーキング』 (1993)
 出演: サビーヌ・アゼマ、ピエール・アルディティ
タバコに火をつけるかつけないかで、6人の人生が徐々に変わってくる。サビーヌ・アゼマとピエール・アルディティが何役もの登場人物を見事に演じている。原作はアラン・アイクボーンの戯曲。

これは前から観たかった作品なので、英語字幕でも、日常の会話劇なので、そんなに置いてきぼりになることなく愉快な喜劇・悲劇を楽しめた。二人の俳優が複数の人物を演じて、同じシチュエーションで多様に展開する場面を演じるなんて、その構造が面白すぎる。やっていることはコントみたいなのに、サビーヌ・アゼマとピエール・アルディティの挙動、表現力があまりにも素晴らしいから、滑稽なのにただ笑い飛ばすのではなく、読み解きたいと前のめりで見てしまった。箱庭的な空間がとても深遠に。


『六つの心』 2006 Coeurs
出演: サビーヌ・アゼマ、ピエール・アルディティ、アンドレ・デュソリエ、ランベール・ウィルソン
6人はそれぞれ他者を拒絶している。しかし、4日間の間に彼らの人生が交差していく。「私はアラン・アイクボーンの舞台がとても好きだ。滑稽で、風変わりで、時には残忍な側面があり、もう一方では人間の弱さへの同情、愛情がある」(アラン・レネ)。

群像劇は大好き。基本設定としては80年代戯曲ものの流れにあるようでいて、映画的な魅力が大いに加わっているように感じられた。雪の魔法にしてもそうだけど。箱庭を外側から眺めているという感触ではなく、その物語世界に入り込む。ユーモアも織り交ぜられつつのいい塩梅の人間ドラマ。


『風にそよぐ草』 2008 Les Herbes follesd0029596_23445265.jpg
出演: サビーヌ・アゼマ、アンドレ・デュソリエ、アンヌ・コンシニ、エマニュエル・ドゥボス、マチュー・アマルリック
マルゲリットはお店を出るときに鞄を盗まれることを予期していなかった。さらにその強盗が鞄の中の財布だけ駐車場に投げ捨てていくなんてまったく予想していなかった。その赤い財布、マルグリットのパイロット免許の入った財布を何気なく拾ったのがジョルジュだった。「プロの俳優ばかり使う、という批判があるかもしれないが、私には、プロの俳優たちとの方が、それも偉大な俳優たちが出会ったときの方が、何かが起こるチャンスが大きいと思われる」(アラン・レネ)。

これはもう素晴らしく面白くて大感激。デプレシャン映画的にキャストが豪華なのも嬉しい。そして、デプレシャン映画のようにカメラはエリック・ゴーティエ。色彩、ライティングの美しさに惚れ惚れ。とても美しい映画なのに意外性のあるコミカルな展開にあふれていて楽しくて仕方ない。男と女の押したり引いたり等の題材は一貫して描かれてきたものという気がするのだけど、この展開/この軽快で自由な語り口は、『夜と霧』のアラン・レネがと思うと感動もの。その飛翔っぷりが最高です。


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本当は製作年順に鑑賞できたらよりよかったのだけど。そうでなくても、一人の作家の映画を同時期にまとめて見られることはとても魅力的な体験なのですよね。体系的に捉えることなんてできていないのかもしれないけれど、こうやってアラン・レネのフィルモグラフィーを追うことができたのは、全体を見つめることができたのはとても意義深いものでした。
レネって、観念的な映画のイメージが強かったので、わりとクールにコントロールする立場をとっている感じで、ドキュメンタリーを手がけていることもあって、それほど俳優の力に頼っていない監督なのかとなんとなく思っていましたが。このたびはサビーヌ・アゼマの素晴らしさに感動することしきりでした。日本の一般公開作ではあまりお目にかかる機会がないのですが、本当にウマくてステキな女優さん。ピエール・アルディティもウマすぎる。それと、前から好きだったアンドレ・デュソリエの若い頃から最新のものまで多様な姿を見ることができたのも嬉しく。
アラン・レネ映画の多彩な魅力を満喫できた全作上映特集に感謝。
レネ監督がまだまだ映画を撮り続けてくれると嬉しいな。
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by CaeRu_noix | 2010-04-27 12:57 | CINEMAレヴュー | Trackback(1) | Comments(0)
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