かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『17歳の肖像』 An Education
2010年 04月 29日 |
あの頃だけのときめきと、今だからわかること。とびっきりの教育的女子映画。

1961年、ロンドン郊外で両親と暮らす16歳のジェニーは、オックスフォード大学入学を目指して勉強に励んでいたある日、デイヴィッドという大人の男性と出会い、音楽会や食事に誘われる。
イギリスの女性ジャーナリスト、リン・バーバーの回想録「An Education」を映画化。



青春もので女子映画で主人公の価値観が揺れ動く物語だなんてそれはもう好みの映画に決まっているんだけど。最初から最後までググッと引き込まれて、予想以上に心に沁みた。うん、これ好きだな。青春もの・学園ものはアメリカ映画には多いけど、イギリス映画ではあまり見かけないってことを『ジョージアの日記』の時にもつぶやいた覚えがあるのだけど、そんなこともあって60年代英国の雰囲気も興味深く、意外に新鮮な感銘があったのだ。現代アメリカのティーンエイジャーものだと主人公は活動的でちょっと生意気な女の子なんかが多い気がするのだけど、60年代の英国のオックスフォードを目指す優等生ジェニーは折り目の正しさを持ったチャーミングな女の子。キャリー・マリガンの魅力がこのジェニーのキャラクターにぴったりハマっていて感情移入せずにはいられない胸キュンな青春ものに仕上がっていたね。

女性ジャーナリストの回想録がベースになっているというリアルが、ニック・ホーンビィの脚本によって青春期のウキウキドキドキ感いっぱいに映像に蘇る。ホーンビィが自作以外の脚本も手がけているとは最近知ったのだけど、皮肉屋でロマンチストなホーンビィ・フレーバーが大いに効いている感触があって、監督が外国人というのは少しも気にならない等身大の瑞々しさ。北欧の監督がみんな英語圏で映画を撮るようになっていることを寂しく思う私もいるのだけど、『幸せになるためのイタリア語講座』のロネ・シェルフィグはいい仕事をしていたよね。キャリーちゃんの抜擢を初めとしてキャスティング・センスも見事で、俳優たちがみんな素晴らしい。ピーター・サースガードは恰幅のいい中年が板につきすぎていてビックリしたけれど、本当にハマり役。両親も先生も人間味も完璧に表現されていて、英国俳優の確かな実力に感心するばかり。

両親と先生たちの存在の確かさは大いなる肝。何しろ原題は「AN EDUCATION」で、僕らの世代の中でその青春の物語が回っているわけではなく、大人たちが存在がとても重要なんだよね。学校と父親による厳格な教育課程の中、大人の彼氏やその友人たちによる新たな教育を受けるという展開が面白いのだ。最初のうちは、退屈な毎日を送っていたジェニーがリッチでゴージャスな大人の世界に足を突っ込んでいく様をサクセスストーリーを眺めるような爽快感をもって見つめていた。でも、これはシンデレラストーリーなんかじゃない。女子の生きる道はオースティンの時代と大して変わっていないのかななんてことも思わされつつ、女子の生き方模索の旅。新しい世界を体験しながら大人の階段を昇る高揚感の後、そこに訪れるヴァージン・ショックっぷりが絶妙。切実にリアルなのにとてもドラマチック。やるなぁ。

これが実話なんだとしたらとてもステキだよね。迷える青春期に身をもった体験によって大切なことに気づけるなんて。みんながこんなふうな経験をできたらいいのにね。気づきの物語、価値観の揺らぎと移り変りを描いた物語って大好きなんだけど、この着地点は全くもって素晴らしい。娘の教育費がかかることに嫌味を言い、趣味としての音楽を認めない偏屈父さんさんが、傷ついた娘にドア越しに話しかけるシーンにはホロリ。生意気な生徒に先生たちの生き方は退屈じゃないかと言われまでしても、ジェニーを見捨てず再出発を支援する教師。教育が大切だなんて、社会ではしょっちゅう言われている文句だけど、抗う若者たちを軌道にのせるって実は簡単なことじゃないんだよね。それでも尚、辛抱強く未来あるワカモノを叱咤し応援する大人たちの思いにうたれる。生まれ変わったらフランス人になんて戯言に嬉しくなる私だけど、そういうことではなくて目の前の道を地道に踏み進んで行くことが大切なことなんだよね。
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by CaeRu_noix | 2010-04-29 18:51 | CINEMAレヴュー | Trackback(5) | Comments(6)
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17Фξ 2009  ơ ġ͡ե ȡ꡼ޥꥬԡɡɥߥ˥ѡ?ɡ ѥޡȥץեåɡ꡼ʡ顦⥢ꥢॺ꡼ۡޥ塼 ӥɡꥹο͵ԥССμDz貽٥ȥ顼 ȤΥ˥åۡӥܤݤĽեࡼӡ82ǥߡޤǤϺʾޡͥޡӿޤ˥Υߥ͡Ȥ줿1961ǯΥɥٳ16ФΥˡʥޥꥬˤϥåեؤܻؤͥˡܰʾ ǯΥ줿ǥåɡʥɡˤȽвġġ      G...... more
Commented by cinema_61 at 2010-04-30 00:01 x
こんばんは。
私も先日見てきました。
英国映画らしくて・・・あの時代の優秀な女子学生の生き方がイキイキと描かれていたと思います。
本当にステキな両親ですね(特に父親)
このような両親に育てられたジェニーは前向きに成長できたのですね~
いつの世も同年齢では女の子のほうが成熟度が早い!あのボーイフレンドくんが可哀相!
「プレシャス」と比べて見るのもいいでしょうか?
Commented by CaeRu_noix at 2010-04-30 00:49
cinema_61 さん♪
英国調な青春ものっていいですねー。
(オースティンの時代頃までのものの方がむしろ多い?)現代の女子映画はあまり多くはない感じなので、そのらしさにとてもキラメキを感じました。
タバコ吸いながらカミュ談議なんて。
アルフレッド・モリナは一瞬スパイダーマンの敵役姿を思い出して困りましたが、そんなのは一瞬で、その偏屈オヤジっぷりが超リアルでしたねー。
強気かと思いきやデイヴィッドにはすぐにまるめこまれちゃう人の良さ。
困ったパパな面も多かったけど、やっぱり愛情のある懐の広い父でした。
ボーイフレンドくんは無下に扱われていてちょっと可哀想でしたね。
まぁ、そうなんです。女の子の方が大人になるのが早いし、年上の男と知り合っちゃったら同い年の男の子なんて子供に思えちゃうんですよねー。
うーん、そんな時代がなつかしい。w

おお、実は私、本作の後に『プレシャス』を観たのですよ。(シャンテで連続)
で、先生の地道な教育あってこその成長っていう共通のものを見いだせた感じです。
ルックスも知性も格段に違った二人の16歳なんだけど、彼女たちの成長に必要なものって基本的な部分は同じっていうところにしみじみ。
Commented by ぺろんぱ at 2010-05-16 13:05 x
 こんにちは。
原題を「何だか味気ないなぁ」なんて思っていたのですが、鑑賞後は「結構深い」と感じた私です。

辛辣な言葉を投げつけてしまったあの先生を訪れた時の二人の会話も良かったです。

キャリー・マリガンがとにかく魅力的で!(*^_^*)
ハイトーンじゃない声も素敵だったです。
Commented by CaeRu_noix at 2010-05-18 00:33
ぺろんぱさん♪
そうなんですよ。まるで魅力的に感じられない原題。
か、同じく見終わった時にはなるほど納得しました。
相変わらず、邦題は的はずれなんだけど。
日本語でいう教育という言葉よりその英語の方が意味が多義的で深いかなとも思えたり。
そうそう、先生宅を訪ねたシーンはとてもよかったですよねー。
見捨てない先生の心意気にうるる。
キャリー・マリガンはデシャネルちゃん同様日本人ウケもよいみたいですが、どっちかというとキャリーの魅力にはより強く心つかまれた感じ。
それぞれのキャストがステキに印象的でしたよねー。
Commented by minori at 2010-11-29 21:25 x
かえるさん、おひさしぶりー。
図書館で借りた『An Education』どっぷり楽しませてもらったので
かえるさんの感想を伺いに参った次第です。
「やっぱり失敗しないとわからないのかもね」
という台詞が昨日私と友人の間で飛び交ったのですが、
このエデュケーションというタイトルがずっしりくる映画でした。
色んな意味での教育。この子は頭がよかったからまだ救いようが
あったけど、これでずるずると苦労してしまう人だっているかも、ですよね。や、そういう人の方が多いのかも?
私たち海外組は割とそういう挫折に当たる確率が多いのか、
よく色んな失敗談を聞いてあるいています。勿論私だってたくさんあるし、そういう意味で彼女はこの時期でよかった!お父さんがノックしてくれてよかった、先生がお茶を入れてくれてよかった、と他人事ながらほっこりしました(笑)

ブリティッシュの発音も美しく、雰囲気も素敵で魅力的な映画でしたわー。
Commented by CaeRu_noix at 2010-11-30 09:06
minori さん♪
わぁ、おひさしぶりー。
今年はぜんぜんレヴュー書けてないんだけど、辛うじてこの頃はポツポツと。
今年の一般公開映画の中でも印象的な一作。
邦題は例によって、そこを前面には出していないのでアレなんですが、そう、エデュケーションというものの大切さが身にしみますー。
でもそうそう、失敗しないとわからないってのはつらいっす。
この方はこうやってこの時に思い知り悟って、よい進み方ができて羨ましい限りで、大抵は取り返しのつかないもの・・・。
こんなに大人びたハイソな日常は自分にはなかったといえ、ハイティーンの頃勉強等の大切さをわからずにヘラヘラ遊びほうけていた感のある自分は、こういうの観ちゃうと、自身を振り返ってため息が出ますわ。ああ、失敗って。
17歳の分岐点のやり直しはもうできないけど、でもこれからの道を見据えて、minori ちゃんもよく学んでくださーい。
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