かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『川の底からこんにちは』
2010年 05月 13日 |
しじみはしじみ。あさりやはまぐり、ましてや真珠にはなれないー。

上京して5年の派遣OL佐和子のもとにしじみ工場を営む父親が病に倒れたという知らせが入る。



かーわぁのーそこーっからー、こーんにっちっはー!ってオバチャン達が声を合わせるあの歌がしばらくコダマ。とっても面白かったよ。ありがちのようでありがちじゃない個性。やっぱりぴあフィルムフェスティバルが選んだ才能は信頼できるなって。1年先の『不灯港』に通じるものがあったね。ひねくれぶりが痛快ですらある笑えてホロリな人生劇場。閉塞感漂う今の日本に作られるべくして作られたという手ごたえのある可笑しみザックザクなイマドキ日本映画。邦画はなんとか製作委員会系じゃないやつに限る。

主人公が絶好調の若手実力女優満島ひかりっていうだけで期待値は上がるというものだけど、今回のひかりちゃんの蓮っ葉感もまた素晴らしい。見た目のカワイイ彼女が、自分は「中の下の女」と連呼したら空々しい響きがしてしまいそうなものだけど、佐和子は本当にそういう沈殿したところにいるんだというのがちゃんと説得力をもっているんだよね。これが実際見た目も心底痛々しい主人公だったら眺めているのも居たたまれなくなりそうだけど、素材としてはキュートな彼女なので、観客は心の奥底では安心感を持ち、佐和子のダメダメ人生、中の下っぷりをコメディとして大いに面白がることができちゃうの。

ひねくれた台詞を畳み掛けるように放出するテンポがよくってクスクス笑いが止まらない。笑えるシーンとして書かれているシナリオらしいのに上滑りしているものって時々あるけれど、PPF出身の若手監督は空気が読めるというのか、そういうところの演出がうまいんだよね。満島ひかりはもちろん見事にそれを表現出来ていて、本作は自分好みの可笑しみにあふれていたよ。缶ビールというか缶発泡酒を開けるやいなやグビッと飲むなんて場面の繰り返しで、佐和子のキャラクターが見えてくるなんてところはとても好き。台詞と登場人物の動作の一つ一つがキャラクターを作り上げ、物語を作り上げていっているという感触がとてもいい。

あの歌のインパクトにやられる予告では、しじみ工場の建て直しが物語のメインという印象だったのだけど、実際はそういうわけでもなくて、しょせん中の下の女なんだとやさぐれる佐和子の人生のターニングポイントの物語だったね。道の途中のドラマということで青春ものの味わい。物心ついた時からドラマの世界はサクセス追求と上昇志向にあふれていた感のある我が国だから、主人公が中の下ですって開き直っているという設定はむしろ感動的ですらあった。でも、それでもやっぱり、地の底に沈んだまんまでいいのっていうんじゃなくて、できることをそれなりにがんばろうぜって思いに到達するというところに、やけに心打たれてしまうのだ。イヤミじゃない、無理を強いない応援歌になっているところが心憎いのだ。
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by CaeRu_noix | 2010-05-13 07:05 | CINEMAレヴュー | Comments(4)
Commented by BC at 2010-07-11 21:28 x
かえるさん、こんばんは。

ガムシャラにひたすら頑張るのではなく、
日々の中で今できる事から一つ一つ頑張っていこうとする佐和子の心意気が良かったですね。

ぴあフィルムフェスティバルスカラシップは
既存の型にはまらない独特のセンスで演出する監督を輩出しているようですね。
『不灯港』も『川の底からこんにちは』もシュールな笑いが効いていましたね。
その前の『パーク アンド ラブホテル』は未見だけど、
機会があれば観たいと思いましたよ。
Commented by CaeRu_noix at 2010-07-12 12:53
BC さん♪
そちらでは今これがかかっているんですね。やはりインディペンデント系はフィルムの数がないのか、全国展開がスローペース。でも、そういうものこそに手ごたえがあります。

佐和子キャラはよかったですよねー。明るくひたむきな頑張り屋さんなヒロインとかだと辟易しちゃうんだけど、さわこのやさぐれている中での少しだけ前向きシフトっていいとこついているなと思いました。今の時代にあった感じ。

ぴあFFはまもなく開幕ですー。そして今、国立フィルムセンターでは、歴代のスカラシップ作品が関連上映されているんですよ。昨日の園子温の自転車吐息観たかった。14歳、水の花、運命じゃない人、バーバー吉野あたりまでは観ているのだけど、はじめの頃のは私も未見。にしても素晴らしい顔ぶれですよね。ぴあフェス出身の監督は見逃せない!
Commented by ヒデヨシ at 2010-08-20 14:55 x
この監督、なかなかの演出家ですね。人物造形がなかなかユニークでした。ビールをガブガブ飲ませ続けたり、OLの給湯室での会話や工場のおばちゃんたちがいきなり着替えていたり、お父さんのかつらとか、そのへんの演出に並々ならぬ力を感じます。こういう変な感じの演出は、三木聡がウマイですが、最近増えてますね~。
Commented by CaeRu_noix at 2010-08-20 22:57
ヒデヨシ さん♪
この監督の演出はとてもいいですよねぇー。映画映えするものをわかっているなって。言葉抜きでちょっとした動作の反復で、ワンショットで、人物の人となりが見えてくるっていうのがいいんですよねー。缶ビールをピってあけて素早くそのまま飲むところは、ホントいい。三木監督の場合は映画のシーンとしてというよりは、ただ笑いをうむためにギャグのヒトコマを演出している印象なので、面白いものはあるけどエクセレントだと思ったことはないんですよね。本作の方は突発的なコメディとしてのそれではなくて、人間というものの可笑しみをあぶり出している感じなのがよいのですー。今後も期待ですー。
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