かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』 Vengeance 復仇
2010年 05月 20日 |
ジョニー・トーが料理するヌーヴェル・シノワはウマすぎる。鋭いのに優雅な語り口と熱いドラマに感動。

パリで「ル・フレール」というレストランを営むコステロは、マカオで暮らす娘とその家族が悲劇にあったためにその地へ降り立った。



ネオ香港ノワールの名手ジョニー・トーの映画にフランスの人気スター、ジョニー・アリディが出演という新たな企画は期待以上のものだった。香港が中国に返還されて以降、香港映画界で活躍してきた監督たちも自由に映画が撮りづらくなったということだけど、こうやってジョニー・トーは一部を外国に託して新しいものを実現させながらも、香港、マカオをまたにかけ、お馴染みの俳優たちとの絶妙なコラボレーションをまた見せてくれるのだ。志を一つにする者たちは国境を越えて友情で結ばれるという物語を紡ぎながら、映画に対する真摯な取り組みも国境を越えて結実することを鮮やかに示すジョニー・トーは本当にカッコいいよ。

優れた映画というのはいったい何が違うのだろうということをつい考察したくなってしまう。復讐のドラマ、ギャングのガン・アクションが見せ場の映画は無数にあれど、あまりのめりこむことのできないものもあれば、映画の始まりからグッと心をワシヅカミにされたまま息をのんで見入ってしまう映画がある。ジョニー・トーの映画はもちろん後者に属し、常日頃はギャングものやガン・アクションものに関心が薄めであるはずの私の心もガッツリと持っていかれてしまうのだ。いったい何がどう違うのだろう。脚本もその見せ方・演出も巧みなんだよね。倫理道徳を持ち込むなら悪しきものであるはずの復讐の遂行が、あえて正当化されるわけでもないまま、だけどそうせずにはいられない必然のものとして魂をもつ。

シルヴィー・テステューが出演していることを嬉しく思ったのもつかの間、平穏に暮らす一家が唐突に惨劇に見舞われて心は凍りつく。こちらの心の準備ができる前から、鮮やかに衝撃的に映画は核心に迫るのだ。何が悪であるのかという状況把握をする必要もないままに、ただ緊迫した恐怖とショックに包まれて、我が思いの進む道がすぐさま見えてくる。これから始まる復讐の物語に乗り出し、その成功とカタルシスを待ち望んでしまう。背景をクドクドと説明することなどはせず、僅かなシークエンスでミニマムに、それでいてパワフルにシャープに見せきってくれるジョニー・トーのお手並みに冒頭から感嘆。平行して描写される中華料理円卓に女を押し倒すサイモン・ヤムの強引なキスシーンの異様さも何だかすごいし。

型を楽しみながら鑑賞した様式美の『エグザイル』よりも、そういったことを意識することなく男たちが繰り広げるドラマにのめり込んでしまった本作はより素晴らしいと感じた。不慣れな土地に単身で乗り込んできたジョニー・アリディが醸し出す哀切もいいんだよね。始まりは多額の報酬目当ての契約に過ぎなかったのに、次第に存在を認め合い同志として信頼関係が培われるという、男たちの絆の物語に胸を打たれないはずはないじゃないか。加えて、危険を冒してボスに抗戦することさえ無意味になるのではないかという現実がコステロの抱える患いによって差し出されるというのに。命の危険を覚悟の上で、頑なに約束を守ることを潔しとする男たちの生き様のカッコよさったらないよ。極上の決戦シーンが巨大なキューブ型の紙の塊を転がしながら繰り広げられるというオリジナリティも見事。心得ているよね。これぞ、映画だなって。
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by CaeRu_noix | 2010-05-20 17:43 | CINEMAレヴュー | Comments(6)
Commented by acine at 2010-05-20 21:34
かえるさん、おひさしぶりですー!
そうなんですよ。ありそうでなさそうなこの展開。
いつものトーさん流セオリーに基づいて作ってるだけなのに、
何でこんなに見入ってしまうんでしょう?
冒頭の銃弾の鋭さから、がっちり心掴まれますよね。
私も、今回おフランス人キャスト入ってどうなるのよ?と
心配してたんだけど、自然に馴染んでましたよね。
そして、すごくエンタメ性も高く、見やすいタイプでビックリしました。
しかし、あの紙の塊シーン。みんな大真面目で、ちょっとぷぷぷ!でした(笑)。
しかし、ありそうで、誰もやってないシーンですよね。
トー先生はとてもアカデミックな紳士的な人でしたよ。
Commented by BC at 2010-05-21 01:07 x
かえるさん、お久しぶりです。

この作品は当初はアラン・ドロン主演のフィルム・ノワールとして準備されていたけど、
ドロンが脚本を気に入らず、出演を取りやめたので、
ジョニー・アリディになったそうです。
アラン・ドロンだと華やかさのほうが勝ってしまう気もするので、
いぶし銀な哀切さを醸し出せるジョニー・アリディで良かったと私は思いました。

私もガン・アクションものには関心が薄めだし、
『エグザイル』もノレなかったので、この作品はあまり期待していなかったけど、
画の構図は美しかったし、ユーモアのある場面もあり、
ジョニー・トー監督の真摯な取り組みと良い意味での遊び心が効いていて楽しめました。
Commented by CaeRu_noix at 2010-05-21 08:41
acine さん♪
おひさしぶりです、めるしー、さゔぁ?
あらすじそのものは定番なのに、なーんでこんなにワクワク魅了されちゃうんでしょうねー。
同じようなお話のハリウッド映画を観るとハマれなくて退屈しがちな私なのに。
『ブレイキング・ニュース』なんかもそうだったけど、冒頭シークエンスの銃撃戦が大迫力で秀逸で、最初にしっかと心掴まれるんですよねー。
映画をわかっているよなーっていうお見事な導入。
フランス贔屓の私には楽しみな企画でしたが、純粋な香港アクション好き系トー監督支持者からみたら、どうなんだっていうキャスティングですよね。
それが軒並み好評のようで嬉しい限りですー。
銃撃戦場面というありふれたものをどんな風に見せるかが大事なわけですが、その点がもうトーさん、冴え過ぎ!
あの四角い紙の塊を私も転がしてみたーい。
ユーモアもいっばいで楽しかったですー。
監督のお話を生で聴けたなんてよかったですねー。
Commented by CaeRu_noix at 2010-05-21 09:03
BC  さん♪
おひさしぶりです。ごきげんYO!
そうそう、最初はアラン・ドロン主演でという話だったそうですね。
最近のドロンはどんな感じだったか、思い浮かべられないのですが、うん、ジョニー・アリディでよかったなぁって思います。
ドロンさんはあれこれ注文つけそうな気がするんでw、監督のやり方を尊重するアリディがベターかと。
ルコントの『列車に乗った男』が大好きな私だし。
アリディの愁あるシブさがとてもハマってたなぁと。
いつものトー組がフランス人と友情を紡ぐなんて運びは新鮮でワクワク。
私はエグザイルはよかったんだけど、エレクションなんかはあまり好きじゃなかったかな。
でも、これはバランスよく的確な面白さが詰まってました。
で面白いっていえるだけじゃなく、美学を持った高い完成度だから、シビれるんですよねー。
Commented by la-panda at 2011-02-08 04:22
お久しぶりです〜
この映画を観てすっかりジョニートーの世界に惚れてしまい、色々と観始めているところです。
「エグザイル」は何度も観たくなるユルさが好きですが、この映画の方がドラマがありましたね。
アランドロンで観てみたかったのですが、確かに彼だといろいろ注文つけそうだ(笑)
ある意味主役は殺し屋3人みたいな感じだし、良い意味で配役のバランスがとれてて良かったのかもしれないですね。

実は先ほど「エレクション2」を観て、なんだか眠れなくなってしまって、こんな時間にコメントしてしまいました(笑)
暴力描写とか半端無くて怖かったけど、美学の貫き度、ラストの独特の余韻とかはさすがでした。
しかし黒社会シリーズを見るのは覚悟がいります(笑)
夜中にお邪魔しました〜。
Commented by CaeRu_noix at 2011-02-09 09:09
la-panda さん♪
お久しぶりですー。コメントありがとうございます。
いやー、惚れますよね、ジョニー・トーの世界。
私もジョニー・トーを観るようになったのは、ブログを初めてからなんだけど、以来いつも追っかけてますー。
エグザイルも本作も素晴らしくいいですよねぇ。
私はエグザイルはそんなに好きな方ではなかったんだけど、先日日本で劇場公開されなかった2の方もまとめて観られる特集上映があった際にはいそいそとでかけてしまいました。
黒社会のはちょっと怖い感じ・・・。
本作は、女コドモの前では銃撃をやらなかったりとか、あるところで節度があるので好きだったり。
アラン・ドロンは今どんな感じでしたっけ?今ならアリディの方が合うような気がしました。うん。
トー映画は激烈なのに、優雅に描写する感じがホント魅力的なんですよねぇー。
祭り!楽しんでくださーい。
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