かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『パーマネント野ばら』
2010年 06月 03日 |
パーマネントとは永遠のことだけど、パーマは何度も巻き直すわけで。

離婚して故郷の海辺の町に出戻ったなおこは、母・まさ子の営む美容室「パーマネント野ばら」を手伝いながら暮らしていた。



『女の子ものがたり』の記憶もまだ新しいのに、西原理恵子コミックの実写映画化作品がまたお目見えとな。でもね、今回は手ごたえバッチリ。『女の子ものがたり』 の時は、映画全体がしっくり来なくって、後で原作コミックを読んだところ、映画化によって付加されたものが自分の気に入らなかったということを知ったのだった。その世界がしっかりと出来上がっているコミックの映画化は、難しいものだということはたびたび思っていたけれど、今回メガホンをとったのは 『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』『クヒオ大佐』 の吉田大八監督だから 期待はしていたのだった。そして、これは期待通りの面白さを持ち、それでいて予想外のせつない余韻の残る映画で、ガッシリと心を掴まれ、揺さぶられてしまったよ。

『女の子ものがたり』の原作コミックを読んだ時にとりわけ印象深かったのは、主人公の少女のモノローグの台詞のニュアンスがあまりにも変わってしまうということ。そんな私の不満の声を聞いてくれたかのように、監督が映画にモノローグを入れることをあえてしなかったと発言するインタビュー記事を発見して嬉しくなった。西原さんの強烈な言葉のモノローグは漫画だからこそ素晴らしいものであると受け止めて、その代わりに映像ならではの風景や女優の表情によって表現することを模索していったということなのだ。そのことをわかってくれているだけで大分違うよね。小説や漫画の映画化ばっかりの邦画界が悲しいと思いつつも、そうやって映画でできることを追求し、実践してくれるものなら大歓迎。映画の醍醐味しかとここにあり。

西原さんの故郷、高知のロケーションが素晴らしくて、スクリーンに広がる美しい風景に清々しい幸福感。それもつかの間、雄大な自然に負けな強さをもってたくましく生きる女たちのパワー、パンチパーマがしっかり似合っているおばちゃんたちのサバけた賑やかトークに愉快痛快。もともとブラックユーモアを仕立てるのがウマい監督だと思うので、サイバラワール ドの毒のある可笑しみを実写映像化するのもお手のものなのだ。漫画
で描かれた二次元のコミカルな女たちが、程よい具合に生々しさと体温をもってはじけるのだった。夏木マリをはじめとしたエネルギッシュなパンチおばちゃんたちも小池栄子も池脇千鶴もよかったな。悲劇と喜劇の背中合わせのバランス感、甘辛の味付け加減が絶妙。笑いたいような同情したいような微妙に複雑な気持ちで胸がいっぱいになるの。

他の登場人物たちが概ねコメディな存在である中、主人公の菅野キャラは何となく異質な雰囲気を醸し出していて興味深かった。今なお少女の透明なかわいさをもった菅野が演じるなおこが恋人の江口と一緒にいる場面は、パンチおばさんの世界とは異次元のように淡 くスイートな空気に満たされ、本気でオトメチックにロマンチック。この原作は少女漫画かなんかだっけ?と錯覚してしまうほどの胸キュン恋愛パートに案外と心つかまれてしまったりなんかして。そこにハマった 自分だからこそ、物語の結びにはそのせつなさにノックアウト。まさかそういう心の準備はできていなかったんだもの。確かに途中、辻褄の合わない台詞があったりしたんだけど、それが最後に腑に落ちた。疑問や違和感ではなくて、あえて自分が気に入っていた空気感の違いはまさかそういうことかとせつなくなるの。なおこの最後の笑顔は誰に向けられたものであるかということでホッとしながらも、その仕掛けにまいってしまったな。
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by CaeRu_noix | 2010-06-03 23:59 | CINEMAレヴュー | Comments(4)
Commented by ゆるり at 2010-06-11 00:03 x
ラスト近くまできて、その展開に「なんかヤラレタ~」と思いました。そうかぁ、そうやったんやぁと、それまでのシーンを反芻してみたりして。
こういう感覚は久しぶりやったんで、今でも印象に残ってます。
菅野キャラ、ちょっと異質でしたよね?! 個人的好みで、菅野さんのこの雰囲気がちょっと苦手だったんですが、ラストまで見てしまうとそれも大いに納得、それでいいんだ!と思えてしまうから不思議です。
吉田大八作品、段々と好き度が増していく気がします。
Commented by CaeRu_noix at 2010-06-11 11:56
ゆるりさん♪ 
やられましたよねー。
私は菅野さんの恋パートがかなり気にいっていたのですが、理性的には、それにしてもバツイチ子持ちの大人の女の恋愛なのに、まるで少女漫画の主人公の女子高生のような乙女感ではないか!というくすぐったさ、不思議さを感じてもいて。
そんな否定的な違和感とは違う、心地よい奇妙さの謎が、最後に解けたのでした。
菅野さんは昔はそんなに好きじゃなかったけど、これはとてもよかったです。
吉田監督は、腑抜けどもの時から支持してます。
女優の使いかたがすこぶるうまいなーって思います。
Commented by ぺろんぱ at 2010-06-12 21:00 x
こんばんは。
私もラストの何分かでつかまえられました、この映画に。
途中までは、あっちこっちに散らばった感情をどう収拾付けるのかと
思っていたのですが・・・見事に一つになったっていう感じでした。

小池栄子ちゃんと本田博太郎の父娘姿もなかなか良かったですし、第一、二人のキャラがどっちもぶっ飛びモノでした~。
Commented by CaeRu_noix at 2010-06-14 18:56
ぺろんぱ さん♪
クヒオに続き、ご覧になりましたかー。
つかまえられるということなら、私は序盤から結構ハマってたのしんでいたのですが、終盤にそれまでとは違うハートの一部分をぐわっとつかまれたという感じです。
毎度のことながら、ブラックユーモアな味わい、コメディが主の映画なのかなと思って見ていると、物語の妙なひねり方で感情までも回転しちゃうように、ほろりとしたり、切なくなったりするんですよねー。
オチは予想できないのに、後で振り返るときっちり伏線が張られているというのが見事。
小池さんはまったくもってハマり役でしたよね。
おばちゃん達のパワフルさや存在感をより評価する人もいるようですが、私は彼女たち世代のパートがよかったな。
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