かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『告白』
2010年 06月 15日 |
復讐の復習の時間です。



原作未読。話題のベストセラーはこういうお話のものだったんだ。息もつかせぬ怒涛のエンタメ・ムービー。あっという間に鑑賞時間が過ぎ去ったよ。重く深刻な題材を取り扱った問題作を、語り口はスタイリッシュにテンポよく、その物語世界にグイグイ引きこんで娯楽性いっぱいに見せきってくれるのだからお見事。正攻法にベタに物語られていたのでは、うんざりするか真面目に思考ばかりさせられちゃうかどっちかになってしまったと思う。プロットの面白さにハイに歓喜させられながら、でもやっぱりこのテーマには深遠なものがあるよなぁって最後にはジワリ噛みしめたくなるのだ。

告白という言葉は、かつて中学校では主に異性に好きな気持ちを伝えることをさすものであった。それはやがてコクるなんていう言いまわしに変化したらしい。代わって、告白という表現がされるのは隠していた悪意や罪を吐露することが主になったのだろうか。黒い真実が発表されることを告白と呼ぶことが多いよね。腹の中に蠢いていた黒いものが外に出たら、それは白く洗われるというのか。カトリックの信者であればそれは懺悔室でなされるものかもしれない。自分を咎めない第三者の聖職者や神に告白する清々しさとは大違いの、学校という閉鎖された舞台で繰り広げられる当事者同士の告白合戦の恐ろしさといったらない。ハッキリと相手に告げることを慎みがちな奥ゆかしい日本人だからこそ、覚悟の上でなされる告白はとても残酷に暴力的。コクハクは毒であり蜜の味。

健気に可哀想に見えたり、不気味に見えたりする松先生の存在感が素晴らしい。マンガチックなキャラクターを凝った美術世界で戯れさせるのがお得意の中島監督なのに、教室の雰囲気もそれぞれの中学生の姿もリアリティに満ちていて、その本物感に感心。映像表現的には作りこまれたものなのだけど、これは現代日本の学校社会の一面だよねという感触が魅力。ただそれは、真実が明らかになるごとに現実味が薄れていき、現代社会の縮図ゆえの面白みよりも、虚構ドラマならではの激しい物語展開がエンタメとして楽しいという受け止め方に移行したのだった。ありえないお話に見えてしまうからこそ、気楽に楽しめるというものだけど、この衝撃のストーリーに安堵感を持ってしまうのは味わい方としてはもったいないのかなとも思ったり。

それでもやっぱり身近であるかどうか、リアルか否かに関わらず、復讐というテーマは素晴らしく興味深いものなのだよね。組織対組織の殺し合いにはどうしても理解できない徒労感を感じるのだけど、個人的な憎悪、恨みというのはその思いを実感することができるのだもの。復讐なんてやめるべきという理念を抱きながら、感情的には私刑はむしろありかもと思ってしまったり。現実味がないから物足りないということはなくて、それでもちゃんとテーマが突きつけられているから味わいがある。大人も子どもも、いとも簡単に「ついカッとなって」とか「相手は誰でもよかった」とかささやかな動機で他者を傷つける事件が後を絶たない現代社会。人を傷つけ、人から大切な人を奪うことは、これだけの憎悪を、恨みを買うものなんだよ、っていうことを肝に銘じようぜ、せめてその覚悟のあるものだけが行為に走るべきなのだってこと。それを思い知らせてくれるところが、いいねーって思えるわけなのだ。でもこれ中学生は見ちゃいけないの?道徳の時間に見たらいいのに。せめて大人が実感しようってことね。
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by CaeRu_noix | 2010-06-15 20:13 | CINEMAレヴュー | Comments(6)
Commented by cinema_61 at 2010-06-16 20:38 x
こんばんはかえるさん。
原作読んでいないのですが、映画として見るぶんにはとってもよくできていると思いました。
絶対ありえないと思うけど、あるかもしれない事件の不気味さ。人間の持つ憎悪と復讐心。誰もが心の奥に潜めているものをあぶりだす怖さ!
3人のどこかいびつな母性愛を持った母親、空気の読めない若い男性教師たちと、中学生という自我形成未熟な人間との絡みが絶妙で・・・ある意味楽しめました。
中島監督の手腕と松たか子の存在感ある演技に拍手でした。
Commented by ぺろんぱ at 2010-06-16 20:55 x
こんばんは。
昨日原作を読み終えたのですが、幾つかあった(かと思われた)視点を映画は一つに絞って凝縮して描いてくれていたように感じました。
いい形で映画化されていたと感じました。

>大人が実感

大人がブレてちゃ道も何も示せませんよね。
コトの是非は更なる熟考を要すとしても、これだけハッキリと勇気ある
提言をしてくれた原作者の湊さん、そしてそれを映画という(良い意味
で)派手にスパークする見せ方で世に知らしめてくれた中島監督に、
拍手をおくりたい気持ちです。

松さんにの演技には唸らされました。凄いですね。
Commented by CaeRu_noix at 2010-06-17 09:02
cinema_61 さん♪ 
いや~、面白かったですよねー。
映画観ていてあっという間に時間が過ぎたというのは、96時間と本作くらいしかないかも。
それだど、後で何も残らないということになりかねないのですが、こちらはテーマが興味深いのでエンタメなりにも後を引くものがありますよね。
全体を通してみるといかにも虚構なありえない話なんですが、エピソードのかけらそれぞれはとてもリアルでクラスメートの挙動は全くもって本物な感じで感嘆。
こういう内容のが大ヒットするわが国もどうかと思いますが、TV主導じゃない映画なのはよかです。
人間・失格という堂本ズが出でたドラマを思い出したけど。
Commented by CaeRu_noix at 2010-06-17 09:38
ぺろんぱ さん♪
原作読まれましたかー。
そういえば私も図書館で予約を以前してたんですが、大人気作のようでなかなかじゅんばんがまわってきません。
映画の記憶が薄れた頃に読める方が私はいいかな。
告白という切り口ってそもそも小説向きですよね。
映像ドラマにすると告白者と受け手の描き方が難しくなる感じ。
小説なら告白を聞くのは読者でいいところが。
ても、本映画はそのへんをうまく配置したように感じられました。
小説を先に読んだ人には当然不満点はありそうですが。

中島監督って社会的、道徳的テーマそのものにこだわりはないように思えるので、それが逆に上から目線の説教くさい映画にはならなくてよいのかなと。
ヒューマンドラマにしろ、サスペンスにしろ、原作小説の語り口そのままに脚本化、映像化されたものが多い中、こういう作り込み方で映画力を見せてくれたのはあっぱれ。
教訓的なものは前面には出てないので皆が考えさせられるわけじゃないだろうけど、人を殺めるとはこんな地獄をみることだってことは実感してほしいなりー。
岡田くんにきづかなかったよー。
Commented by kaka_o00o2 at 2010-06-17 16:40
かえるさん
私も観ました。面白かったな〜。面白がりながらも、ふと考えちゃったり。
いつもと違うんだけど、結局とても中島監督らしい映画に思えました。
友達が中島監督の毒々しい色は、もうあんまり観たくないなあというので、
いろいろ話したうえで、でも結局中島監督だなあって感じなのよ。
って言ったら、やっぱ観ない!って言われました。もったいないな〜観た方がいいのに。
あと、原作を先に読んだ知り合いは、映画の方が面白いって言ってました。
Commented by CaeRu_noix at 2010-06-18 00:40
kaka さん♪
面白かったですねー。ひたすらドキドキぞぞっと。
でも、そう、ついつい思考に誘われてしまうのです。
校内暴力、体罰とずっとずっと昔から教師VS生徒の戦いは繰り広げられてきましたが、21世紀はこういうことと向きあわねばなのだなぁと。

今回はいつものようにハデハデカラフルな映像世界じゃなかったですねー。
その毒々しさが見たくないだけなら、今回のクール映像は全然OKですよねー。
ほうほう。小説を先に読んだ人は、どんな映画化作品でも大概、不満点がでちゃうものって思ってましが、映画の方が面白いといわしめるとは素晴らしい。
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