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「ポルトガル映画祭2010」 
2010年 10月 16日 |
「ポルトガル映画祭2010 マノエル・ド・オリヴィエラとポルトガル映画の巨匠たち」 @東京国立近代美術館フィルムセンター の鑑賞メモ
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今年は、ペドロ・コスタが新作を引っさげて来日し、旧作の特集上映の機会も既にあったり、長老巨匠オリヴェイラの新作が2本も公開されたりと、ポルトガルづいていましたが、日本とポルトガルの修好通商条約締結150周年ということもあって、このような極めつけの充実した映画祭も開催され。

オリヴェイラの未見作をスクリーン鑑賞できたのも収穫だったけれど、今までほとんど何も知らなかったジョアン・セーザル・モンテイロ監督という鬼才監督の映画を体験できたことは自分にとっては大いなる歓びでした。素晴らしい企画に感謝。

ポルトガルという国、その文化も大好きで、私はリスボンとその周辺の街にしか行ったことがないのだけど、今年は何度もその旅情を思い起こすことになりました。また行きたいなー。ポルトガルな映画ももっと観たいし。


このたびの鑑賞作↓


<<マノエル・ド・オリヴェイラ >>

・『アニキ・ボボ』 Aniki Bobo 1942

撮影:アントニオ・メンデス 
出演:ナシメント・フェルナンデス、フェルナンダ・マトス、オラシオ・シルヴァ 
  オリヴェイラの長篇デビュー作。陽光降り注ぐポルトの街を舞台に、躍動するアナーキーな少年少女たちを縦横無尽に活写してネオレアリズモの先駆的作品と見なされる。「アニキ・ボボ」とは警官・泥棒という遊びの名前。

躍動感いっぱいのみずみずしいデビュー作。あのオリヴェイラ長老も最初はこんなに爽やかな映画を撮っていたのだなぁって。一緒にアニキ!ボボ!と掛け声をかけたくなる。いたずらな子供時代はどこの国も同じで微笑ましくて楽しい一作。


・『春の劇』 Acto de Primavera 1963

出演:ニコラウ・ヌネス・ダ・シルヴァ、エルメリンダ・ピレシュ、マリア・マダレーナ 
 16世紀に書かれたテキストに基づいて山村クラリェで上演されるキリスト受難劇の記録。

面白い試み。舞台演劇と映画との演出、表現の違いについてしばしば考える機会のあったたことを思い出しながら。限られたスペースのステージとは異なる空間で俳優でない人々が演劇をする様をカメラでとらえることで見出されるものとは。それもキリストの物語。始まりと終わりが特に刺激的。


・『過去と現在 昔の恋、今の恋』 O Passado e o Presente 1972

撮影:アカシオ・ド・アルメイダ 
出演:マリア・ド・サイセット、マヌエラ・ド・フレイタス、ペドロ・ピニェイ
 ヴィンセンテ・サンチェスの同名戯曲を監督が自ら映画用に翻案。『フランシスカ』に至る「挫折した愛の四部作」の第一部にあたる。現在の夫に心を開かず、事故死した最初の夫への想いを募らせる妻ヴァンダを中心に、過去と現在、死者と生者の間を交差する奇妙な愛が描かれる。

ブルジョワの香りの上質さを感じさせながらも滑稽な愛憎劇。定番な感じでもあり、個性的に奇天烈でもあり、見ごたえ満点、面白かった。主人公に寄り添っているのじゃなく、シニカルな鋭い視点を持ちつつ、万事を楽しみ包括しながら見据えている感じが気持ちイイのです。


・『カニバイシュ』 Os Canibais 1988

撮影:マリオ・バローゾ 
出演:ルイス・ミゲル・シントラ、レオノール・シルヴェイラ、ディオゴ・ドーリア 
 『過去と現在』から音楽を担当してきたジョアン・パエスとともに作られたオペラ・ブッファ映画。厳かに進行する貴族たちの晩餐会は、やがて、タイトルが予告する驚愕の食人場面へ。

始終ゴージャスな音楽と共に物語が展開するオペラ・ブッファ。舞台美術も音楽も芸術的に高尚なテイストなのに、そのストーリーはとんでもないへんてこな方向へ走っていくのだからおもしろくてしょうがない。なかなかこういうことができる人はいないよなぁと感無量。


<<ジョアン・セーザル・モンテイロ>>    
   
・『黄色い家の記憶』 Recordacoes da Casa Amarela 1989

撮影:ジョゼ・アントニオ・ルレイロ
出演:ジョアン・セーザル・モンテイロ、マヌエラ・ド・フレイタス、ルイ・フルタード
 強烈な存在感で見る者を魅了してやまない痩身の中年男デウス(神)をモンテイロが愉快に自作自演した「ジョアン・ド・デウス」シリーズの第一作。

自ら主演をして滑稽な振る舞いを繰り返し、全裸の老体をもさらけ出すその芸術家としての姿勢に脱帽。節々はふざけているようにも見え、それでいて神々しい崇高さが画面にみなぎっている。その個性に夢中。クラリネット。


・『ラスト・ダイビング』 O Ultimo Mergulho 1992

撮影:ドミニク・シャピュイ
出演:ファビアンヌ・バーブ、ディニス・ネト・ジョルジ、エンリケ・カント・イ・カストロ
 死を想い波止場で淋しげにたたずむ青年に、老人が声をかける。ネオン煌めく夜のリスボンで繰り広げられる歌と踊り、酒と官能の宴。

リスボンを歩いた思い出も手伝ってか至福映画でありました。これが一番気に入ったかな。可笑しみのヒダの間から見える生の輝きのステキさったら。彼女-エスペランサの映し方に感嘆。最後のひまわり畑シーンも素晴らしすぎて。


・『神の結婚』 As Bodas de Deus 1999

監督・脚本:ジョアン・セーザル・モンテイロ
撮影:マリオ・バローゾ
出演:ジョアン・セーザル・モンテイロ、リタ・ドゥラン、ジョアナ・アゼヴェド
 「ジョアン・ド・デウス」シリーズの最終作。「神の使い」から突如巨万の富を与えられたデウスは、それ幸いとばかりに自分の欲望を解禁する。

都合により、順番どおりに見られなかったのは残念だったけれど先に観たこちらにも楽しませていただいた。(三部作の二作目が見られないのが寂しい。)芸術的にエロスを描いているという風でもなく、下世話にスケベ行動を描写しているのに何もかもも意味深で格調高く感じられる妙。


<<パウロ・ローシャ>>

・『恋の浮島』 A Ilha dos Amores 1982

撮影:岡崎宏三、アカシオ・ド・アルメイダ、エルソ・ロック
出演:ルイス・ミゲル・シントラ、クララ・ジュアナ、三田佳子
 14年の歳月をかけて作られた日本?ポルトガル合作映画。日本で暮らした作家ヴェンセスラウ・ド・モラエス(1854-1929)の波瀾の生涯を描く。

微妙なへんてこ感もあったけれど、和洋折衷な美術など作りこまれた独特の映像表現は好きなので面白く鑑賞。少し長さを感じてしまったけれど。モラエスのことを知ることができたり。

『青い年』 Os Verdes Anos と『新しい人生』 Mudar de Vida が見られなかったのがとても残念。


<<アントニオ・レイス、マルガリーダ・コルデイロ>>

・『トラス・オス・モンテス』 Tras-os-Montes

撮影:アカシオ・ド・アルメイダ 
出演:トラス・オス・モンテスの住民たち
 ポルトガル現代詩を代表するアントニオ・レイスが、マルガリーダ・コルデイロと共に作った初長篇。

その土地の風景の美しさ、素朴な住民たち。ナチュラルな描写が続くかと思ったら、ひょいと幻想の世界へ誘われたり。さすがの詩人の映画。その映画の世界の中にずっといたい、ロバと少年が見えなくなるまでずっと見ていたいって思える心地よいひと時。


ミゲル・ゴメス作品も観られなかったのだけど、こちらは是非巡回上映の時に観たいなぁと。

---
フィルムセンターのシステムは映画祭向きではなくて、上映開始時刻が遅れる1日もあったりして、そのたびにせめて整理券制にすればいいのにと思ったり、並んで待つことにへとへとになったりもしましたが、映画の内容は充実したもので何よりでした。映画の味わいを損ない気味だった大音量イビキ事件には苛立ちましたけれど。

通常ラインの配給によるヨーロッパ映画の日本公開事情状況が芳しくないので、こんな趣向の映画祭にはとにかく感謝するのみ。おぶりがーど。
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by CaeRu_noix | 2010-10-16 08:00 | CINEMAレヴュー | Trackback | Comments(2)
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Commented by ゆるり at 2010-10-18 18:24 x
恋の浮島!
おそらく25年位前に、名画座で観た映画のタイトルが
やっと今日、わかりました。あの映画なんやったんかなぁ~と
ずっと気になってただけに嬉しいです! ありがとうございます。

正直、この映画についてはあんまり覚えてないんですが、
(三田佳子さん、全く記憶にないです)不思議な作品だったような。
>微妙なへんてこ感
確かにそれだけは、記憶に残ってます(笑)

オリヴェイラ監督初期の作品が、12月(遅!)には神戸でも
観られるようなので、楽しみにしています♪
Commented by CaeRu_noix at 2010-10-19 09:50
ゆるり さん♪
コメントありがとうございます。
おお、恋の浮島をご覧になっているんですねー。
これはそう、ロードショー公開されてるんですよね。
お恥ずかしながら、自分はこの映画のことこれまで知りませんでした。今でこそ、こういう映画の面白みは感じられるのですが、その当時に見てたら、なんじゃこりゃて思ったに違いありませんー。
みたよしこ出てましたねー。
何にせよ、ポルトガルとの合作があったとは今更ながら喜ばしくー。

オリヴェイラ初期作品、お楽しみあれー。
モンテイロさんもステキなので上映ありましたら、ぜひどうぞー。
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