かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『しあわせの雨傘』 Potiche
2011年 01月 13日 |
自ら世界を切り開いていくパワフル女王様に拍手喝采。大好きオゾン。

1977年、カトリーヌ・ドヌーヴ扮するスザンヌは雨傘工場の経営者ロベールの妻として裕福な暮らしをしていた。



Ricky リッキー』をついこの前観たばかりなのに、新たなるフランソワ・オゾン監督作をもう観られるなんてしあわせ。それはおフランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴ様あってのことかしら。『8人の女たち』でもフランス映画界の名だたる女優たちを余裕で演出していたオゾンが再びドヌーヴを起用し、そして今度はじっくりたっぷりと女王様をスクリーンで輝かせるの。その手並みは鮮やかなもので、女王ドヌーヴの多様な魅力をめいっぱい披露。去年の初めに生でドヌーヴ様を拝むことができたのだけど、「貫禄」という言葉がぴったりとハマる風格のあるゴージャスな女性だった。そんな迫力の大女優がノビノビとめいっぱい弾けてお茶目な一面を見せてくれるのだから、それはもう楽しくて。"しあわせ"というニホンゴはあまりにも安い言葉に成り下がっているけれど、確かに本作は私たちをちょっとしあわせな気分に浸らせてくれるのだよね。ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷらんらんらん。

邦題は例によってテーマからは外れているけれど、ジャック・ドゥミの『シェルブールの雨傘』にちなんでいることはやっぱり嬉しいの。色鮮やかな傘が画面を彩るというビジュアルの魅力に加え、あの傘屋の娘役ドヌーヴが甦ったようで感慨深い。あのシェルブールの傘屋のムスメさんは、思い人と結ばれること叶わず、経済的に支えてくれる別の人を頼るしかなかったわけだけど。いつもメソメソ悲しげな表情をしていた彼女が、年月を経てしなやかに軽やかにパワーアップ、こんなにたくましいマダムになったようにも思えてくるわけで。そうやってふと女たちの歴史を振り返ってみたくなる。この物語の舞台となっている1977年頃に、そういえばドゥミのパートナー、アニエス・ヴァルダの『歌う女・歌わない女』が作られていることに気づいて。ウーマン・リヴの波の中で生き方を模索してきた女たちのことを思い起こした。こうやって映画は常々、過去を舞台にしているのだけど、そこに描かれていることは決して過去形で括れるものでもなく、21世紀を生きる私たちにも大いに共通するテーマがありありと浮かぶ。ブルジョアジーVSコミュニストの対立にしても、その時代ならではのものでありながら、今に連なる労働問題もあるのだし。喜劇を楽しみながらも、社会と人々、変わりゆくものと変わらないものについて、ふと思いを馳せてしまうのだった。

原作は戯曲だそうで、なるほど舞台劇らしいシチュエーションが多い。それゆえに大筋はくっきりハッキリシンプルなのだけど、熟練名俳優がやり取りする会話の小気味よさ、エスプリが光る。サクセス・ストーリーをそのまままっすぐ物語られても面白みがないのに、大人テイストなユーモアをたっぷり練りこんで、コメディタッチで進められると、自然にのれて頬もゆるみっぱなし。そして、舞台的な場面展開による映像の単純さを補うのは美術・衣装の華やかなる見ごたえ。70年代ファッションもリッチな邸宅のインテリアもどれもこれもステキで目が忙しい。最初は野暮ったいとっくりセーター男に見えたジェレミー・レニエな息子も、芸術家肌を仕事に活かせるようになったなら、最先端のおしゃれマンに見えちゃうのだから不思議。コミカルテイストのジェレミーを見るのはたぶん初めてなのでやけに微笑ましかったな。誰も彼もそれぞれが極端にキャラ立ちしていてとにかく楽しいの。コネタが楽しみどころで、主軸ストーリーは定番と思いきや、途中で2,3の読めない展開もあった。最初はてっきり、ドパルデューと、ドパルデューが・・・と思ってしまったから、オゾンを見くびりすぎだった。こっちの男に失望して、あっちに頼るっていうんじゃ何も変わらないもんね。付随的なお飾りの存在であることから脱し、既得権に胡座をかく偏見に満ちた男には頼らない生き様が潔くてカッコいい。そんなオゾンらしい捻りのある痛快な女性讃歌に仕上がっていたよ。

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「しあわせの雨傘」woman.excite
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by CaeRu_noix | 2011-01-13 23:52 | CINEMAレヴュー | Comments(2)
Commented by rose_chocolat at 2011-01-19 06:11 x
観てきました。
全編にわたってのこだわりの可愛らしさがよかったですね。
>原作は戯曲
てっきりオゾン監督のオリジナルだとばかり思ってました。原作があったんですね。

>付随的なお飾りの存在であることから脱し、既得権に胡座をかく偏見に満ちた男には頼らない生き様
ふわっとした中にもきちんとそこを盛り込んでいるところが、
なるほどーと思いました。
食べてみるとなかなか奥が深いお菓子? のような。 面白かったです。
Commented by CaeRu_noix at 2011-01-19 15:21
rose_chocolat さん♪
かわいい映画でしたよねぇ。
ミュージカルじゃないのにミュージカル映画みたいなオサレ感あふれる作り込みでした。
意外にも原作がちゃんとあるんですよね。
シェルブールなドヌーブ様のために作られた設定と思いきや雨傘工場というのももともとあったものらしい。びっくり。
そうなんですよ。おちゃらけコミカルで終わらず、でも軽やかに説教くさくない楽しさで、女の自立した生き方をテーマにしているのが味わい深く。
さすがだなーと思いました。
ドヌーブならこの役も説得力があるー。
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