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かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
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『SOMEWHERE』
2011年 04月 08日 |
音楽がバツグンなのはいつものこと。ガス・ヴァン・サント作品でおなじみのハリス・サヴィデスの撮影もステキ。限りなく透明なパステルトーンの空気が心地よい。

ロサンゼルスのホテル“シャトー・マーモント”で暮らすハリウッドの映画スター、ジョニー・マルコ(スティーヴ・ドーフ)のもとを、ある日、前妻レイラと同居する11歳の娘クレオ(エル・ファニング)が訪れる。



11年前にシネマライズで観た『ヴァージン・スーサイズ』予告の青空を今も忘れられない。あの時以来、ソフィア・コッポラの映画が大好きだ。『マリー・アントワネット』という大作の後、ソフィアが今度はまた小規模な映画を撮りたいと語っていたインタビュー記事のことを憶えている。映画産業の枠の中にある大作を手がけると、きっとただのアーティストではいられず、巨匠コッポラの娘であろうとも疲労困憊する大作業となったのだろう。私は『マリー・アントワネット』もスペシャルに気に入っているものの、有名になるごとにアーティスト性と引き換えに大きな企画に挑戦する監督になることもなく、ソフィアがそういう思いのままに立ち戻ってくれたことがとても嬉しいよ。だから今回は、このゆったりとした日常感に、そこにある物語がミニマルなほどに、何だか妙に感動しちゃって、この淡い色のふわふわした空気の中、気持ちよく浸ってしまった。

『ヴァージン・スーサイズ』が作られた年に生まれた女の子が11歳になっているという計算がちょうどあてはまる。時代は変貌しようとも、みずみずしい少女性は普遍的なきらめきを有するものだということをエル・ファニングをもって実感する。ギブスのサインと共に登場というのからしてめちゃめちゃキュートなんだもん。かつて、スクリーンの中の少女が 「でも先生は13歳の女の子になったことはないでしょ」と言っていたことを思い出しながら、そんなシニカルさもまだ持たない不完全で透明な11歳の少女クレオが、まぎれもなくソフィア・コッポラの世界に絶対的に/不安定に存在していることにときめいてしまうの。エルちゃんの姿はいくつかの映画で目にしてきたけれど、『ドア・イン・ザ・フロア』の娘役が何といっても鮮烈で、あの小さな女の子が寂しさを抱えたまま成長したかのような印象で。11歳の少女でない私は、珍しいものを見るようにしてクレオの可憐さに魅了され、同時に、11歳の少女心をふと思い出して甘酸っぱさにキュンとなる。

スティーヴン・ドーフといえば、2001年シネアミューズでの『セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ』しか思い出せない。と、また10年前頃の渋谷ミニシアターに繋がってしまう。ソフィアの映画はシネマライズとイコールだったというのに、11年後の春、私は郊外シネコンのガラガラの劇場で彼女の新作を観ていた。そんな寂しさも過ぎる。でも、大きめスクリーンの人影まばらなシネコン空間でこんなに静かな淡色の映画を味わうミスマッチ感が、案外と描かれている空虚さにピタリとハマり、ドーフ扮するジョニー・マルコの心もとなさ、やるせなさにすんなり心より添えた。高級ホテルに寝泊りして、自堕落に豪遊するハリウッドスターが感じている空虚さのことなんて、実際は自分が共有できるものじゃないはずなのにね。それがソフィアの感性をもって表現されたなら、特別なセレブの甘ったれな悩みとして鼻についたりはせず、多くの人間が経験したことのある気持ちがそこに見つかるの。イノセントな悩みじゃなくて、甘ったれゆえの現代人病でしかない感傷だからこそ、ぽっかり空虚でたまらないのだ。

アメリカの映画ではよく見かける夜の盛り場ストリップバーでのポールダンスが、デリバリーできちゃうというのからして滑稽でオツな冒頭シークエンス。手の届かないハリウッド大通りのホテル“シャトー・マーモント”のゴージャスさにちょっと親しみをもってしまったのに始まって。やれやれなコミカルさを散りばめながらも、さりげなく自身の思い出エピソードを再現しちゃうことも心憎い。どこかしらに体験が盛り込まれているのだろうと想像はできたのだけど、ホテルのウェイターが弾き語るプレスリーが実体験だと後で知って、素直に感動しちゃったな。そこに見え隠れするコッポラ親子のかつての姿を思ったり、思わなかったり、そんなことすら忘れて、ジョニーとクレオの睦まじい様子をただ見守ってみる。ホテルという舞台が象徴的な映画でありながら、ロードムービーしていたことも嬉しかった。お姫様を連れて空の下の大地をフェラーリで走り抜ける爽やかな解放感。アメリカ映画に求めるものはこれ。けだるさもせつなさもみんな好き。


もっと刺激を求めたい心持ちの時なら、ちょっと退屈に思えたかもしれない緩やかな場面描写の連続なんだけど、3月の震災とその後感じてしまう不穏さで、心が疲れていたこともあってか、この空気感がとても心地良かったんだな。家にいるのに「帰りたい」と無意識に思うことが時々あった。SOMEWHERE のことを想っていたのかもしれないね。

「SOMEWHERE」 Woman.excite >> サムウェア

SOMEWHERE 公式HP
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村尾泰郎(音楽/映画ライター)  ストイックなサントラから浮かび上がる、ハードボイルドな心象風景
今回サントラのスコアを手掛けているのは、ソフィアのパートナー、トーマス・マーズが在籍するフランスのバンド、フェニックスで、本作では初めてインストのスコアを提供しているが、曲というより音響効果に近いミニマルなナンバーばかり。そんななか、タイトルとエンディグで流れる「Love Like a Sunset Part I」と「Part 2」は、彼らのアルバム『ヴォルフガング・アマデウス・フェニックス』に収録されたナンバーだ。ソフィアは、この曲のイメージでスコアを書いて欲しい、とトーマスに依頼したらしい。
 いっぽう、双子ダンサーのダンス・シーンで流れるフー・ファイターズ「My Hero」やエイメリー「1 Thing」。あるいはクレオのスケート・シーンでかかるグウェン・ステファニー「Cool」など、ほとんどの曲は物語で実際に使われている曲として流されている。とくに印象的なのは、ホテルのウェイター、ロムロがギターで弾き語るエルヴィス・プレスリーの「TeddyBear」だ。ロムロは実際にホテルで働いていて、ソフィアは幼い頃、この歌を彼に歌ってもらったことがあった。そうやって、できるだけ自然な雰囲気で音楽が使われているのが本作の特徴だが、唯一、音楽が前面に出されるのが、ジョニーとクレオがプールで仲良く遊ぶシーンに流れるストロークス「I'll Try Anything Once」だ。このナイーヴな曲と、エンド・ロールでブライアン・フェリーが歌う失恋ソング「Smoke Gets in Your Eyes(煙が目にしみる)」がサントラの要だろう。この2曲を通じて浮かんでくるのは、何か大切なモノを失った男=ジョニーのセンチメンタルな想い。それをこれまでよりもストイックなサウンドで表現したサントラには、どこかハードボイルドなメロウさが滲んでいる。
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by CaeRu_noix | 2011-04-08 23:58 | CINEMAレヴュー | Comments(8)
Commented by KLY at 2011-04-09 00:15 x
正直言うとちょっと冗長的に過ぎる前半だとは思いました。それだけ主人公の空虚な心の在り方を描いていたということなのだろうけど。ただもう私としては父と娘の何気ない自然な交流に、男としての夢を見てしまいました。私は子供はいないけれど、父親になったのなら、自分の娘とこんな風に過ごせたらどれだけ幸せだろうなと。それだけでもう満足です。
Commented by CaeRu_noix at 2011-04-09 00:25
KLY さん♪
こういうタイプの映画は冗長と言われがちなのはまぁ仕方ないです。
私はこれでゼンゼンいいよって思っているんですけどね。
自分の場合、ロマコメだの何だのの、やたら滑舌よくて口数の多いアメリカンガールが主人公の活力みなぎるアメリカ製映画にうんざりしてしまう口なので、眠気を誘うほどにまったりゆったりした空気が妙にツボでしたー。
父と多感な少女期の娘の関係性って、とっても難しい気がしますよね・・・。
日本の照れ屋な父なら、娘とコミュニケーションとることも遠慮してしまいそうだし。
でも、ここではラブリークレオのほどよいコミット加減で、ステキな親子のふれあい模様を見せてもらいー。
本当に自然で何気ない感じがよかったですよねー。
微笑ましくてかわいくってたまらーんって感じ。
満足していただけて何よりー。
Commented by rose_chocolat at 2011-04-10 08:27 x
かえるさぁぁぁん。
聞いてよー。

実は昨日わかったことなんですが、楽天ブログはTB受信機能を廃止することにしたんだって。
4月11日からです。
なのでこれからはこちらからは送れるのですが、お相手から送っていただいたTBがつかないということになります。
しかも猶予はたったの3日間(→ありえん)ということで、今、楽天映画ブロガーさんたちはパニくってます。

私は映画記事だけは別のblogに作ることにしましたので、これからはそちらで書いた記事か、旧い日記へのTBは、楽天のコピー記事をお送りすることになります。
よかったら新しい方で今後ともよろしくお願いしますね。

しかしほんとありえんですわ・・・。
Commented by CaeRu_noix at 2011-04-10 23:54
rose_chocolat さん♪
ブログのお引越しお疲れ様でしたー。仕事早い!
楽天ってブログはサービスの一つという感じでしたもんね。
仕様、レイアウトが苦手目な感じだったり、一時期、楽天ブログにアクセスするとブラウザが固まるというトラブルにあっていたり(それはブラウザをバージョンアップしたら治ったけど)、個人的にはroseさんブログが楽天じゃなくなるのはやや嬉しいですw
人の苦労も知らずに勝手なこといってごめんなさいー。
ブログはシンプルな方がいいっす。ほんと。(自分のはもちろん人のもw)
私もブログの引越を考えたこと、二度ほどあるけど、エクスポートがうまくいかず断念しちゃった。
今の私は、トラックバック受信しないとかって別にいいじゃん?くらいに思えるけどw 記事下部に広告が入るようになったのが本当に嫌で嫌でー。
ならお金払えばいいんだけど、アドバンスにするほどブログに力いれてないしなーとそのまんま。
熱く、すぐ行動できるroseさんは素晴らしいですー。
がんばってください!もちろんこれからもよろしくですー。
Commented by rose_chocolat at 2011-04-11 05:27 x
むはは(笑)
なんかかえるさんらしくていいなあ~

>個人的にはroseさんブログが楽天じゃなくなるのはやや嬉しいですw
>人の苦労も知らずに勝手なこといってごめんなさいー。
あ、いえいえ、前々から楽天ブログは実に使い勝手が悪いねと、ひろちゃんと話してました。 
とにかく他のブログさんでは当たり前なことが全然できてなくてね。
初心者向けではあるけど。
でもブログ始める時って今よりももっともっと無知識だった私(!)なので、どこで開設したらいいかとかそんなの考えないもん。

エキブロも考えて、以前トライしたことがあったんですけど、
ID取得にものすごく難儀だったのが思い出されて止めました(笑)
>記事下部に広告が入るようになったのが本当に嫌で嫌でー。
gooブログは広告の表示・非表示が選べるようになってました。
これはいいことですよね。

まあ、今まで通り? だらだらと続くことになるのでしょうかねえ・・・。
よろしくお願いします。
Commented by CaeRu_noix at 2011-04-12 00:27
rose_chocolat さん♪
むはは♪ 社交辞令は言えないものでー。
無料で使ってるのに、文句たらたらなユーザーもどうなんだろうって感じなので、潔くおひっこしするのが一番よいですよねー。
電気は選べないけど、ブログは選べるんだーw
ブログを始める前はさすがにどこがいいかなんてわからないですもんね。
検索してリサーチ、比較はしてみたけれど、結局は使い始めてみないとその差はわからない。
半年以上たってから、あそこはあの機能がいいなぁとわかってきた感じ。
そういえば、始める半年前くらいは、ブログやるなら、はてなかなーって思ってたのに、そのことをすっかり忘れていて、エキブロではじめてしまったんだった。
広告大嫌い。それがあるから、ありがたく無料なんだけどさー。
あ、gooは記事本文中に絵文字が使えるのが逆にうざいです。
コメントに一つ二つ入れるくらいならかわいいけど(かえるマークはね)、映画のレヴューとかにいちいちハートマークとか入ってるのが私は苦手でー。
と好き嫌いが多くて、すみません。そんな私なので、ひっそりー。
roseさん、来てくれてありがとうーw よろ
Commented by ヒデヨシ at 2011-04-17 18:56 x
ジョニーとクレオがプールで戯れるシーン、そこで流れる音楽よかったなぁ。ストロークス「I'll Try Anything Once」という曲なんですね。
ソフィア・コッポラの感性が響いてくるいい映画でしたね。
こういう葛藤や対立ではなく、寄り添うような映画、好きです。
Commented by CaeRu_noix at 2011-04-18 08:31
ヒデヨシさん♪
プールのシークエンスはすごくステキでしたよねー。
ソフィアの映画はホントにいつも
選曲のセンスがよくって。
今作はいわゆる曲が流れない、ちょっとした音が入るのみの静かな場面も多かったので、その分メロディのある音楽が流れる時は思いっきり効果的で、心に響きましたよね。
残念ながら、サントラが発売されてないそうですがー。
セレブには共感できんという声もきかれるのですが、そういう境遇の身近さは関係なくスッと寄り添わせてくれるものがありますよね。
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