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『イヴ・サンローラン』 YSL L'amour fou
2011年 04月 22日 |
「モードは商売人の手渡ってしまった」のであるなら尚更に。
つくり出してきたものがより輝いてみえる。
イヴ・サンローランに興味がある人も、イヴ・サンローランに興味がない人も。

20世紀のファッション業界をリードして2002年の引退まで第一線で活躍し、2008年に亡くなった世界的デザイナー、イヴ・サン=ローランの輝かしい実績とその裏に隠された素顔を追うドキュメンタリー。



若い時代の映像を見ると、イヴ・サンローランはナイーヴでステキなジェントルマンだったんだね。d0029596_21222311.jpgモードの帝王と呼ばれる業界の大物というと、もっと気どった自信家タイプをイメージしてしまうところなのに。一昨年、去年と三作の映画を通じてその生き様を垣間見たココ・シャネルがやり手のビジネス・ウーマンでもあったから、それに比べて、サンローランはひたすら芸術家たるデザイナーなんだなという印象が残る。オートクチュールの高級服のデザイナーなんて少しも身近ではなかったのだけど、こうやってその生前の素顔を見せてもらったなら、華々しきセレブリティとしてより何より、繊細なアーティストであったことに興味と好感をもった。

アートとモードが共にあるというのが嬉しかった。私にとっては、美術と服飾は括りが重なるものでもあるのだけど、一般的には、この日本の消費者レベルなどではたぶんあまり関係はなくて、世の中のおしゃれ大好き・ファッション命の人たちが、同じように美術に関心をもっているわけではないことは多い。業界の作り手・売り手側にしたって、実用のファッションはアートの同一線上で展開されたりはしていないだろうし。それがトップデザイナー、サンローランの手にかかると、美しいものを愛し、美しいものを生み出す、一連のものとしてただ美が追求されていることに気づかされる。モンドリアンがドレスに生まれ変わったその時にワクワクしてしまう。モロッコのマラケシュを気に入って、そのエスニックな味がデザインに反映されるというくだりも好き。

個人的には、そのようなアーティストの生き様に迫るせっかくのドキュメンタリーなのだから、サンローランのモードの香りが充満する斬新なつくり込みをしてくれてもよかったのにと思う部分もあった。良くも悪くも、サンローランの公私のパートナーであったピエール・ベルジェ氏のインタビューが軸となっていることが、創作される映像作品の自由さを抑えてしまっているように感じられた。ベルジェ氏の意思・意向があったからこそ、このドキュメンタリーが撮られることになったのであろうから、そこを誠実に映し出すことが最重要だったのだろうけれど。パートナーのインタヴューを聞き、記録映像を見る、という場面ごとの断片が、もっと刺激的に心に訴えるまとまったものとして紡がれてほしかった。

そんな物足りなさも覚えつつ、そうやってベルジュ氏のサンローランへの思いに心寄り添い続けることには、静かな感動があった。偏見かもしれないけれど、華やかな業界の住人には、交際相手をとっかえひっかえという人も多い気がするから、二人がパートナーとして半世紀を歩んできたというのは本当にステキなことだと思えるから。いくつもの二人の思い出が微笑ましく眩しい。多くの困難や苦悩もあったのだろうけど、今こうやって振り返ると、デザイナーとして成功をおさめながら、愛と絆を守りぬいたなんてただスゴイなぁって。二人が過ごした邸宅の趣きがまた素晴らしく、とりわけノルマンディーの家の佇まいには息をのんだ。それでいて、優雅に暮らすばかりじゃなく、エイズ撲滅運動やゲイの権利獲得のために尽力してきたということも印象深い。今や美術品コレクションはオークションで散り散りになっても、ベルジュと共にあったサンローランが生み出し培ってきたものは美しくそこにあり続ける。

(東京日仏学院にて鑑賞)d0029596_21263452.jpg


今週末見るべき映画「イヴ・サンローラン」-エキサイトイズム


「イヴ・サンローラン」展
4月27日(水)~5月20日(金) 10:00~18:30 (日祝休 )
文化コスチュームギャラリー(文化学園F館3階)

「サンローラン アートのある暮らし」展
4月20日(水)~ 5月28日(土)11:00~19:00 (日祝休館 )
メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランス(銀座7- 7- 4)
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by CaeRu_noix | 2011-04-22 21:15 | CINEMAレヴュー | Trackback(4) | Comments(4)
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Commented by rose_chocolat at 2011-05-05 07:17 x
ファッションのこと、美術品のこと、生き方のこと、一粒で2度も3度もいろんな側面が味わえて、興味深い作品でしたね。
そうそう、モンドリアンなんて、今考えてもやっぱり斬新だし、
そういうことを生み出せるサンローランはやっぱり天が創った人物・・・ と、改めて感心します。
そしてそれを支え続けることができたベルジュ。
2人の信頼とか、絆の強さも素晴らしいものでした。 男女だってここまで深く愛することができる人はそうそういないでしょうし。
Commented by CaeRu_noix at 2011-05-07 08:33
rose_chocolat さん♪
亡くなってからこんなに感心中関心がわきたったなんてゴメンなさいですが、ホントに興味深くてステキな天才デザイナーでしたねー。
ゴーギャンがタヒチに惚れたり、メアリー・ブレアが中南米の色彩感覚に魅せられて作品に影響したのと同様に、イヴがモロッコに入れこんでそれをデザインに取り入れたなんてくだりも好きだったり。
美術品のデザインを使うというのは、小物がやったら著作権問題になりそうで、逆に実践されづらい感じて、モンドリアンがワンピになっちゃうのはとにかく楽しかったし。

ベルジュ氏との絆も素晴らしいですよね。ずっと順風満帆だったわけではないんだろうけど、でもずっとパートナーだったなんてー。
サンローラン展もぜひ行きたいなぁと。
Commented by kaka_o00o2 at 2011-05-18 15:44
ドキュメンタリーって実際の話なんだけど、
作り手の気持ち次第で、全然違う感じになるんでしょうね。
イヴ・サンローランの歴代のデザインが見たくてパンフレットを買ったら、
少ししか載ってなかったので、そういう方向の映画じゃなかったんだな〜と思って。
イヴ・サンローラン展をあわせて見れたらいいんだろうな。
私はミーハーなのでミックが出てくるとかワクワクしちゃいました。
Commented by CaeRu_noix at 2011-05-19 08:31
kaka_o00o2 さん♪
ドキュメンタリーも基本的にはフィクション作品と同じですよねー。
本質、客観性を追求したものもあるかと思うけど、大抵は描きたい部分が描きたい方向性で描かれるー。
モノで比較すると、デザインしたものよりも、コレクションした美術品をより重要視してる感じでした。
私ももうちょっと歴代のデザインされたお洋服の一つ一つ、ショーの映像をじっくりたっぷり見たかったなー。
セレブな有名人の登場にはウキウキしますよねー。
私はドヌーヴ様の登場にわくわく。
昼顔とか、サンローランが衣装を担当した映画を改めてみたくなりー。
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