かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『メアリー&マックス』 Mary and Max
2011年 05月 12日 |
大人のための、今年の極上アニメ。
海をこえるもの。

オーストラリアのメルボルンに住む少女メアリーはニューヨーク在住のマックスに手紙を送る。

アヌシー国際アニメーション映画祭最優秀長編映画賞。



おととしの東京国際映画祭で出会って、とても心打たれて大のお気に入りとなった本作『メアリー&マックス』。多くの人に観てほしいと願っていた作品なので、配給されることになったのは本当に嬉しい。アニメ大国ニッポンでは多様なアニメ映画が豊富に上映されてはいるけれど、多くの人のもとに届けられるのは、人気のジャパニメーションとハリウッド製のものばかりだということを常々残念に思っていたから。宣伝規模や上映館数がまったく違うから、もちろんジブリやディズニー作品のように日本中の幅広い人たちに観てもらうことはできないのだろうけれど。それらに匹敵するこの上質のアートアニメーションを、興味をもったみんなにぜひとも劇場体験してもらいたいなぁ。痛く切なくも愛おしい、メアリーとマックスと私たちの住むこの世界の物語、胸を締めつけられるオトナのための極上アニメ。

私はまず映像に心掴まれた。ノスタルジックなモノトーンの風合いに魅せられた。メアリーの住むメルボルンはセピアカラーで、マックスのニューヨークはグレー。そしてそこに唯一映える赤。実写のクラシック映画のモノクロ感とも違うし、セルアニメーションの白黒表現とも違う。スクリーンに浮かび上がるその町並み、家や部屋の中の家具や置物が、CGなどではなくて、すべて手作りのものであることに感銘をうけつつ、細部を見ていくごとに、楽しくて仕方なくなった。粘土細工やいろんな素材のミニチュアの造形物が、奇妙でユーモラスな味わいのある美しさで世界を作っている。いかにもおもちゃのセカイが、丹念なるストップアニメーションの巧妙な技によって、息づいて鼓動しているのだ。5年の歳月をかけて丁寧に作られたというのをきいて驚いたのは後のこと。ただ見入ってしまうだけ。

たっぷり詰まったコネタ、エピソードの一つ一つが面白いのだけど、そのうちにそのブラックユーモアの飛ばしっぷりに大注目。コミカルな風貌の主人公たちは一見ファミリー向けアニメ風味なのに、メアリーとマックスの不運、薄幸と孤独が容赦なく、でも飄々サラリと紹介されていく。あまりにもあっけらかんと辛いコト、痛いコトが語られるので、憐れむよりもそのテンポにのせられてブラックな味わいにニマニマ。ベタではなくて、ひねくれっぷりが小気味いい、センスのきいた面白さ。切り取ってみたら、えらく残酷なことも、映像とテンポのコミカル感で巧い具合にバランスがとられていて。切なくて悲しいけど、でも可笑しい、でもちょっと痛みが尾を引く、でも何やら後で温かいものが広がる。愛嬌あるクレイちゃんが演じているからアンハッピーのドギツサが軽減されて受け止めやすいともいえるし、そのユーモア攻勢を利用することで容赦ないアンハッピー漬けを実現しているともいえるのだけど。とにかく、ユーモアとペーソスとが複雑にからみ合って絶妙。

正義のヒーローが大活躍したり、健気なお姫ちゃんがやがて幸せを掴んだりするアニメに馴染んでいる私たちは、もしかしてメアリーとマックスがハッピーな色に包まれないことに、いたたまれない気持ちになったりするかもしれないけれど。(それ以前にそもそも、ハンディキャップとコンプレックスをもつ不恰好な風貌の不憫な主人公というのがひょっとして受け容れ難いというのもあるのかもしれないけれど。)安易なやり方で幸運を招いたりはせずに、こんなしっぺ返しもあるということをきちんと描いているところがスゴイなって思った。そこらへんはとても真なるエピソード。それでいて絶望の淵に追いやるばかりではなくて、悲しみの海で溺れそうになるところでは何とか救い上げてくれる。その一筋の温もりがとても沁みるのだ。不完全なかたちとはいえ、修復できてよかったねって。かけがえのない友達との対等な関係を取り戻すことができて。哀愁にみち満ちたメアリーとマックスの人生だけどその交わりにはやっぱりあたたかな気持ちになるんだよ。


 国宝級なり! アダム・エリオット プロフィール、フィルムグラフィー、作風・スタイル!/海から始まる!?


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by CaeRu_noix | 2011-05-12 18:54 | CINEMAレヴュー | Trackback(4) | Comments(6)
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Tracked from LOVE Cinemas.. at 2011-05-12 22:03
タイトル : メアリー&マックス
第76回アカデミー賞短編アニメ賞を受賞したアダム・エリオット監督の長編デビュー作。ひょんなことから文通を始めたオーストラリアに住む少女とニューヨークに住むアスペルがー症候群の中年男。彼ら2人の20年以上にも渡る交流を描いたクレイアニメーションだ。フィリップ・シーモア・ホフマン、トニ・コレット、エリック・バナといった豪華な声優陣が揃った。... more
Tracked from ノラネコの呑んで観るシネマ at 2011-05-14 18:45
タイトル : メアリー&マックス・・・・・評価額1750円
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Tracked from よしなしごと at 2011-05-17 23:30
タイトル : 映画:メアリー&マックス
 どんな映画か全然知らなかったんですが、ツイッターやネットでの評判がすこぶるいいので観に行くことに。と言うわけで今回の記事はメアリー&マックスです。... more
Tracked from だらだら無気力ブログ at 2011-07-11 00:36
タイトル : メアリー&マックス
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Commented by KLY at 2011-05-12 22:10 x
素晴らしい作品でした。
今まで見たクレイアニメの中で1番だと思います。
お互いに孤独を知る者同士、その孤独は綺麗ごとではなくならないのだけれど、でも世界中に1人ぐらいは自分を解ってくれる人がいるはずだって言ってくれてるかのようです。
切ないラストの中だけれども、仰るように不完全な修復でも切れかけた糸がまた繋がったことに胸が熱くなりました。
Commented by CaeRu_noix at 2011-05-13 10:12
KLY さん♪
クレイさん史上ベストのクレイアニメですか!
粘土ものでいったら、わたし的にもダントツべすとかな。
ウォレスとグルミットなんかも好きだけど。
今回の再鑑賞は、SGA屋んと一緒だっのです。
西新宿のチケットショップで「メアリー&マッスル」の表記を見つけたあの日。

今でも書いた言葉でやり取りすることが大好きな(若者のケータイ依存症をせめることはできないネット依存症の)私はかつて中高生の頃、文通大好き少女だったので、遠くの友達と手紙で交流する楽しさは大いにわかるし。
人づきあいが苦手でも、手紙ならじっくりマイペースで自分を伝えることができるんですよね。
辛い印象が強いという人もいるようだけど、私としては救われた感が残るのですー。
Commented by KLY at 2011-05-13 22:59 x
あらま伍一くんと一緒だったんですか。
彼ちょいちょい東京出てきてますよね。私もそれこそ粘土じゃないけどストップモーションアニメ『ファンタスティックMr.FOX』で一緒になったことがあります。(笑)

手紙の良いところはマイペースでせかされないところですよね。その点ネットはダイレクトだけどもスピードが要求されているようにも感じます。
表面上は辛いですが、でもそれだけではあのラストの心の衝撃は説明がつかないのです。誤解を恐れずに言うのなら、彼の死は仕方がない、それが寿命だったのだから、でもあの手紙はそれを越えてなお、魂の一体感を感じさせるし、第一メアリーは泣きながら凄く嬉しかったように見えたし。

多分例によってあんまりヒットはしないんだろうと思うんですが、こういう作品大事にしないと未来ないですよ。
Commented by CaeRu_noix at 2011-05-14 10:11
 KLY さん♪
すがやんは何だかしょっちゅう上京してますよねーw
首都圏在住者同士でもバッタリ遭遇しない人とは全然しないのに、まさか都内ミニシアターで会っちゃうなんて面白いですねー。
(去年シネパトスで『コップアウト』を観た時、KLYさんっぽい人とすれ違ったことならあり)

手紙は自分が納得のいくまでじっくり書いて仕上げてから出せるのがいいですよね。
Eメールも場合によってはそういう使い方ができるのですが、日常的には電話の代替ツール、即日連絡のための手段になっているかも。
インターネットを始めたばかりの頃は、何人かのメル友がいて、文通ちっくなやり取りをしていた時期もあったんですけどね。
今だとネットで知り合った人とは、そういうDMよりか、ブログとかSNSとかツイッターとか公開の場でコミュニケーションをとる方が断然多くなり。

マックスの結末はショッキングに悲痛でありましたよね。
でもそれゆえに、無念さも残るからこそ胸に響くし、その後メアリーがわかること/サイゴに二人は友情を取り戻すことができたことに、大いに救われるのでした。

大ヒットとはいかないでしょうけど、見た人には好評ですよね。
ちゃんと届いてほしいー。
Commented by ノラネコ at 2011-05-14 18:47 x
三度観ましたが、わかっていてもラストは泣けてしまう。
何とも作り手の愛に溢れた、素晴らしい作品でした。
子供のころに、雑誌の紹介コーナーを使って海外の人と文通したのを思い出したな。
20年どころか2年も続かなかったけど(笑
Commented by CaeRu_noix at 2011-05-15 00:02
ノラネコ さん♪
おお、三回鑑賞されましたかー。素晴らしいー。
何度観てもうちのめされますよねー。うるっときますよねー。
私の場合は結構、細かい部分は忘れていたので新鮮な気持ちでコネタを楽しめたりしましたー。
アダム・エリオットがゲイであるとか今回初めて知り得て、映画祭の鑑賞時は作り手の背景等に興味はそんなにもたなかったのですけど、今回はアダム・エリオットの表現手法、思いにグッときましたー。
さすが、ノラネコさんは海外の人と文通してたんですね。私は日本語で日本人同士でしかやったことがなかったなぁ。
8歳でも外国の人に手紙がかけちゃう英語圏がちょっとうらやましかったり。
文通続けるって実は簡単なことじゃないですよねー。メアリーとマックスだからこそー
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