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『奇跡』
2011年 06月 17日 |
ささやかな日常のきらめきに心うたれるのは、大震災の後だから余計にそうなのかもしれないね。
是枝監督の映画はまたしても私の心をワシヅカミ。

両親の離婚により、小学6年生の航一は鹿児島の母の実家で、4年生の弟・龍之介は父と福岡で、離れ離れで暮らすようになり・・。
そして、九州新幹線全線開通の日。



"奇跡"という言葉は気軽には使いたくないと思っていた。滅多なことでは使えない特別な響きをもっているその言葉を。そして、映画という自由自在の創作物の中であっても、いとも簡単に「奇跡」をおこしてほしくはないと思っていた。だから、「奇跡」という壮大なタイトルにはじめは身構えるも、是枝監督はやっぱりちゃんと心得てくれているんだとすぐにわかってリラックス。その言葉は無邪気な子ども達の口から発せられ、従来の意味を超えてキラキラと輝いていた。自分も昔、願いごとを叶えるために、友達と一緒にありとあらゆる形のおまじないや願懸けをしたことを思い出しながら。彼らのTHE奇跡大作戦をワクワクしながら見守ったよ。

子どもが主人公の映画なんて、ちょっとズルくてあざといよ、ということになりかねないのに、是枝監督は今回もその得意分野でそつなくさりげなく、活き活きとした子どもたちの素晴らしさを映画に凝縮してくれた。そこにいるのは、大人の書いた台本を暗記した演技のウマい子役というんじゃない、等身大の腕白坊主なんだもの。小4とか小6の男の子なんて、本当は生意気で小憎らしいものだったりするんだろうけど、ここではもうひたすら、まえだまえだ兄弟たちの元気いっぱい素朴な姿にまいってしまった。それがカメラの前で作られた虚構のものというのではなく、子どもたちのエッセンスをちゃんと捉えているからなのだろう。スクリーンで弾ける子どもたちの瑞々しさ、キラキラの生命力に感動せずにはいられなくて、大いに涙腺が刺激されてしまった。

事前に入念に書き込んだ台本を完璧になぞった芝居、というのもそれはそれで一つの優れた見ごたえのある作品だと思うけど、私は是枝監督が作り上げるナチュラルな空気が本当に大好き。もっと起伏のあるストーリーを求める人もいるだろうけれど、下手に事件事故や人の生き死にをてんこ盛りにした過剰ドラマチックものよりも、こういったなにげない日常の中のささやかな物語というものに私はむしろ感銘を受けずにはいられない。学校の授業シーンに登場した谷川俊太郎の詩「生きる」の主題が象徴的にこの映画に重なってくる。"いま生きているということ それはミニスカート それはプラネタリウム それはヨハン・シュトラウス・・・" なんてことのない名詞の連なりこそが、私たちにとっての「生きる」そのものなのだよね。

学校に行ったり、仕事に行ったり、ご飯を作って食べて、歌ったり絵を描いたり泳いだり。日常にキラキラがたくさん詰まっている。平凡な生活をあたたかな眼差しで見つめながらも、生真面目な堅実さだけを美徳としているわけではないおおらかさにもグッとくるの。扶養家族がいるのに仕事やめちゃうミュージシャンなオダジョーパパは決して模範的な父親ではないけれど、ちゃんと自分の人生を生きていて、大人として飾らずにイイコト言うんだよな。奇跡計画のための仮病作戦を叱って抑えることなく、応援してくれる先生やおじいちゃんがいてくれることに胸が熱くなる。こうやって子どもたちが見守られ、セカイが回っていくならもう言うことなしだ。願いごとを言わなかったコウイチくんが、自分だけの願望よりもセカイを気にかけたという最後の告白はもうたまらない。奇跡なんていうものはそうそうおこりはしないけど、セカイがこうやってあるのは奇跡的に素晴らしいのだと思うばかり。


監督・脚本:是枝裕和
出演:前田航基/前田旺志郎/大塚寧々/オダギリジョー/夏川結衣/阿部寛/長澤まさみ/原田芳雄/樹木希林/橋爪功


「奇跡」 >>
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by CaeRu_noix | 2011-06-17 07:10 | CINEMAレヴュー | Comments(2)
Commented by at 2011-07-08 11:57 x
遅まきながら見てきました。私も涙腺を大いに刺激されましたが、それが気持ちいい映画と気持ち悪い映画(作り手の泣かそうという意図にはまって泣かされる映画)がありますね。昔、松竹の松本清張ものがそうで、以来、涙を売り物にする映画は敬遠してるんですが、これは気持ちよく泣きました。
Commented by CaeRu_noix at 2011-07-10 01:17
雄 さん♪
涙腺しげきされましたよねぇ。可哀想なエピソードに泣くというパターンじゃなく、ちょっとしたことにふと気付かされてつい感銘を受けるという感じなので、とても気持よく涙を流すことができますよね。
いわゆる泣ける映画を求める人たちの気持ちは全くわからないけど、結果的にいえば、泣けるほどの感銘を自分に与えてくれる映画はやはり格別。
私もよくあるお涙頂戴ものは敬遠してしまいます。子ども主人公というのは基本的に反則だと思うわけで。
なのに、やっぱり是枝監督は、そんな偏見も憂慮もふわりふわりと吹き飛ばしてくれるから、嬉しくなってしまいます。
松竹映画はコテコテな感じでしたね。
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