かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『127時間』 127 Hours
2011年 06月 21日 |
ジャンルではくくれないこと。



このシンプルなシチュエーションでよく見せきったものだ。ダニー・ボイルは、型にはまらずに多様なタイプの作品に挑んでいるのが素晴らしいよね。肉体的にも精神的にも痛くて苦しい場面が大半なのに、ボイルカラーのアクティヴ感が弾けていてよかったな。そして、ジェームズ・フランコもこれまでの認識以上に、実にフレキシブルで豊かな表現力をもつよい俳優だと大いに感心。ダニー・ボイルが撮るなら、イギリス俳優でしょうと思っていた私なのに、ボイル×フランコのタッグが改めて嬉しくなった。

極限状態のスリルや危機一髪のサヴァイヴァルは娯楽映画で見慣れているけれど、やっぱりアクション映画と同じような心持ちで向き合うことはできないものだよね。架空のヒーローなんかじゃない、実在の人物の実体験をなぞっているわけだから、それは臨場感いっぱいでめっぽうスリリング。この映画は1時間半強で終わるはずだし、劇中の彼がこの状態なのも全部で127時間程、ということが最初からわかっているのに。断崖の隙間で腕を挟まれ動けなくなるという土壇場の切迫感はあまりにも凄まじいのだ。

救助の見込みもないまま時間だけが過ぎるという状況がしんどいので、不死身のヒーローものなんて好きじゃないくせに、どうぞここからアクション映画に転調しクリフハンガーしてくれよ、とさえ願ってしまった。もちろん、そういう方向性のものじゃないからこそ、映画化された意義があるのだけれどね。アクション娯楽ならば、何らかの幸運と主人公ヒーローの持ち前の能力がうまく作用して、爽快に危機を脱出することになっただろうに。ラッキーが天から降ってはこない、現実の過酷さに身震いするばかりなんだけど、だからこその味わいが肝。

ブルー・ジョン・キャニオンの絶景が素晴らしくて、雄大な景色を独り占めする歓びに共感もしながら、さすがにこんな所での単独行動は怖いと思ってしまうもの。何でも1人でできるアーロン・ラルストンゆえに、孤独な事故に遭遇ということにもなるけれど、知恵と身体能力と根性を兼ね備えた彼だからこそ、乗り越えることができたわけで。自然の脅威のもとで、一個の人間の無力さを思い知ると同時に、冷静に対処することを放棄しないアーロンの聡明さと逞しさに心の底から感動した。

「生きる」がテーマになっている映画はかねがね大好きだけど、どちらかというと何気ない日常・生の営みという局面を見つめることに興味のある私は、こんなにハラハラドキドキ・スレスレのサヴァイヴァルなんてあえて追求したくはないと思っていた。それが死に瀕して、これまでの人生や自身の生き方を見つめなおすという場面で、別ものではないのかもしれないと思い当たった。スリリングであろうが穏やかであろうが、生きるうえで、きらめくものや大切にすべきことは基本的には変わらないのかなって。


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by CaeRu_noix | 2011-06-21 19:47 | CINEMAレヴュー | Comments(10)
Commented by acine at 2011-06-21 20:43
ホント、ダニー・ボイルはいろんなタイプOKな人ですね。
だけど、ものすごくヴィヴィッドなダニー風味はいつも効いて
いるという・・・。
私も、ダニー映画で、ジェームズ・フランコ?と思ってたけど、
こんなアメリカの大自然が舞台、体温高そうで、テンション高いアメリカ人
俳優じゃないと、ダメだったでしょうね~。
ジェームズは、”ミルク”の時、いい俳優だなーと思ったけど、
今回もテンション高く、淡々と、最後には人相変わって、
立派に役目を果たしてましたね。
こんな一人芝居しかも身動きとれないなんて、一体どんな
風に撮ってるのかなー?と思ってました。結果的には予定調和
なんだろうけど、ヴィヴィッドに上手く見せるもんだなーと思いました。
ダニーらしく小作品っぽい感じも好感が持てました。
Commented by CaeRu_noix at 2011-06-22 01:06
acine さん♪
ダニー・ボイル、万能ですよねぇー。
得意なのは大まかにこのライン的なのはあると思いますけど、ゾンビも宇宙もヒューマンもやっちゃいますからねぇ。
イギリスならではの陰りのある感じが常というイメージだったのに、今回は徹底的にアメリカーンにアドベンチャーしていたので、へぇーって思いました。
さすがにコレはユアンやキリアンだとハマらない感じですもんねぇ。
でも、嫌味なほどに頑強マッチョくん系でもなくて、フランコくんはナイスキャスティングでありました!
そうそう、ミルクの時のジェームズはすんごいよかったですよねー。
あと、私は『バレエ・カンパニー』のシェフなボーイフレンドっぷりがすごく気に入っていて。
どちらかというとナイーヴ青年キャラが定番だった気がするので、今回のアクティヴ冒険家な姿にも驚き。

物語の顛末は大雑把に言ったら二種類しかないわけだけど、実にうまく見せてくれましたよねー。
やー、ミニマム舞台でこの濃さっていうのは素晴らしいです、ホント。
ダニー・ボイルは裏切らないー
Commented at 2011-06-22 09:39 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by maru♪ at 2011-06-23 01:09 x
こんばんわ~★

これ良かったですよね!
"生きる"とか"生かされる"ってことを、こんなに押し付けがましくなく描けるのはスゴイ!
ジェームズ・フランコはそんなに注目していた俳優さんではなかったのですが、
この演技は良かったです! ほぼ一人芝居頑張りましたね!

水の映像が良かったです。
音楽もかっこよかった♪

希望の持てる、ちょっとファンタジックなラストも好きでした~
Commented by CaeRu_noix at 2011-06-24 08:44
きおっきーさん♪
お久しぶりですー。コメありがとー。
ブログの感想は基本的には映画を観た人が読むものと思っているし、ましてやコメント欄はそんなに気にしていただかなくて大丈夫でしょうー。
映画サイトの紹介コピーなんかの方がどんだけネタバレしてるかって感じ。
私も具体的な表現で場面描写することは避けますけど、これから観る人に先入観を与えないレヴュー、語らいなんて不可能ですからねぇ。

お恥ずかしながら、私はこのアーロンの壮絶体験のことを映画ではじめて知った感じですが、これって当時日本
でニュースになってましたっけね?
アメリカではみなさんご存じなんでしょうかね?
(だとしたら、映画の面白みは少し減りますよね。)
そっか、そんなドキュメンタリーもやってたんですねー。
映画以上に?面白いものだったとは素晴らしい。
うん、確かにホント、人間について普遍的に受けとめたいとも思いつつ、凡人ならあんなふうに乗り越えることは難しいですよね。
彼だからこそ、というのは大いに感じます。
普通ならトラウマになってもう1人で山になんて行かないって思いそうなものなのに、かわらずにパワフルに生きているんですよね。
すごいなー。
Commented by CaeRu_noix at 2011-06-24 10:02
maru♪ さん♪
よかったですねー。
ダニー・ボイルはよい仕事をするなぁって。

ジェームズ・フランコ、今までのイメージとは違うタイプの役を見事にこなして、このままだと、またスパイダーマン映画系のオファーがいっぱいきそうで心配ですw

水が印象的な映画ってたくさんあると思うのですが、わりとその美しさを静のイメージで表現するものが多い印象で(主にアート映画系)、ボイルはこれをスタイリッシュに躍動感をもって表現してくれるから、彼ならではだなぁって。
『ミリオンズ』のポップ感にみちた水の到来のことも思い出しー。

127時間の実体験という切実なリアルだからこそ、ファンタジーの効果も絶大でー
Commented by cinema_61 at 2011-06-25 21:59 x
こんばんは。
実話をこんなにドラマティックに映画化するダニー・ボイル監督に脱帽です。最後までハラハラドキドキで・・・・・。
最後に腕を切る場面は痛みが伝わってくるようでした。
一人芝居のジェームズ・フランコがオスカー候補にあがったのも納得です。私はドラマ「ディーン」のときからのファンですが、「ミルク」もよかったけど、今回はぶっちぎりの主演ですものね。多才で勉強家の彼の今後に期待大。
Commented by CaeRu_noix at 2011-06-26 12:18
cinema_61 さん♪
お久しぶりでーす。
ダニー・ボイルさすがでしたよねー。
実話の逼迫したハラハラ状態を再現しつつ、回想、空想、幻想シーンでファンタジックな表現もしてくれ、その両方でとてもドラマティックなものがうまれてましたよねー。
実話ものの映画化で主演俳優が賞をとったりするのって、大概著名人な本人にそっくりモノマネというのがパターンでしたが、この映画に関しては純然たる演技が評価されたんですよね。
ジェームズ・フランコ素晴らしいです。
今後も楽しみですねー。
Commented by rose_chocolat at 2011-07-03 03:05 x
今思うと、『スラム・・』も同じように、リズムで持って行くような映画だったんだけど、
私はあれは題材がちょっとダメだったんですよね。 あの境遇の人たちを売り物にしているような気がして。
(今回のこの設定ならよさがわかるっていうのも現金な感じもするのですが。 苦笑)

あの水の描写ですね。 ボイル監督の真骨頂なのかなとも思いました。
Commented by CaeRu_noix at 2011-07-04 08:38
rose_chocolat さん♪
ダニー・ボイル作品はリズミカルな運びのもの多いですね。
スラムドッグもまたある種の悲しい境遇をポップに物語っているのがよかったなぁと。
インドのスラムの人たちのことを売り物にしているような印象は私はもたなかったけど、そういう嫌な感じがあったとしてと、無関心に比べたら素晴らしいなと。
インド舞台でアカデミー賞というのは快挙です。
私は『ミリオンズ』が大好きでー。
水に希望なシーンはミリオンズを思い出し。
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