かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』 Exit through the gift shop
2011年 07月 20日 |
ゲイジュツはバクハツせずに飛び火するもの。
一アーティストとしてということじゃなく、バンクシーの生き様に人間の在り方を学びたいね。

名前以外のプロフィールやその姿を一切世間に明かしていないイギリス出身のストリート・アーティスト、BANKSY(バンクシー)がドキュメンタリー映画を初監督。



正体不明の謎のアーティスト、バンクシーが映画を手がけ、それがアカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門で見事にノミネートされたというのはとてもセンセーショナル。スターの偽物アルバムを作ったり、博物館に作品を勝手にゲリラ展示したり、パレスチナとイスラエルの分離壁に絵を描いたりという、大胆不敵でこの上なく自由なアーティストであるバンクシーがどんな映画を撮ったのかと興味津々だったのだけど。その自由さはそのまま健在で、全く型にはまらないで、軸がズレていくという、示唆に富む個性的な味わいのドキュメンタリーであった。人をくったようなスタイルがオツ。わくわく楽しかった。

ストレートにバンクシーについての映画じゃなくて、主人公はカメラマン ティエリー・グエッタというところからスタートし、その人物に魅力を感じるのかどうかもよくわからないままに、あれよあれよと転がっていく事態に引き込まれる。慎重な人物ではないけれど、ティエリー・グエッタの情熱は本物だから、無謀さに苦笑いしつつも彼の奮闘を見守り、その幸運な出会いにほほえみ、そして最後には、彼のあまりにものサクセスを通して、この世の中の軽薄さに再び苦笑い。

主体と客体が入れ替わることが面白いなぁと思いながら観ていたのだけど、そもそも二人は共謀しているわけだし。バンクシーについて語るティエリーはまったくもって素直に愚直なほどに自分をさらけ出しているという印象だったのだけど、何しろこの映画の監督は最終的にはバンクシー自身というわけなので、どこまでが作為なのか、インタビューで語られていることは真実なのかもわからない。けれど、その掴みどころの無さこそが魅力になっていて、それを通して物事の別局面が浮かび上がるというやり方が見事なのだ。出来事語りの一つ一つが真実かなんてどうでもよくなるし、全ては実体のない擬い物であるともいえるわけだし。

何を続けるにも資金は必要とはいえ、バンクシーのような自由なアーティストにしてみたら、いたずら紙一重の作品に高値がつくことに滑稽さを感じずにはいられないのだろうと想像できる。迷惑行為であったグラフィティアートの類も、権威者によって価値が認められ、世の中やメディアの注目を浴びると途端にまつり上げられる。そんな世界を揶揄しながらも、真顔で非難するわけじゃなく、だから面白いんじゃんと軽やかに弄んじゃうような感じ。芸術家っていうと昔から苦悩する人が定番だったけど、現代のアーティスト バンクシーはあまりにも柔軟で軽快ではないか。



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by CaeRu_noix | 2011-07-20 12:01 | CINEMAレヴュー | Trackback(3) | Comments(6)
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Commented by minori at 2011-07-20 13:25 x
おひさしぶりでーす。
私もこれ、グイグイ引きこまれてしまって楽しみました。
あんなに大変な思いをし、さらにはつかまる危険までおかしてやってるなんて…と圧倒されましたよー。
確かに主観がかわる不思議な映画でしたね。
Commented by CaeRu_noix at 2011-07-21 09:42
minori さん♪
ゴキゲンヨウ!
面白かったよねー。
これ、東京では当初、もっと早く公開される予定があったのに延期になっていたのです。
渋谷駅構内の岡本太郎の絵に福島の原発らしきものが追加されていた事件などがあったりして、バンクシー映画への興味もより高まったところで、バッチリ楽しめたー。
アートって本来は自由自在なものなのに、この社会の枠組みの中では、所定の手続きをして開催された展覧会などでしか、発表される機会すらもてないものになっているわけで。
つくづくバンクシーのやっていることは多角的に意味深いなぁって思った。
捕まる危険と背中合わせなんて、フィクションのヒーロー映画のようなハラハラの爽快さもあったし。
それが実在の人物のやっていることだから、やっぱりすばらしくエキサイティング。
バンクシーという人物を真っ向から取り上げても十分おもしろいドキュメンタリーになりそうなのに、掴み所のないものにしたところがまたおもしろーい。
Commented by とらねこ at 2011-07-28 23:34 x
かえるさん、こんばんは。
これ、面白かったですねー。見ながら思い出したのは、『マン・オン・ワイヤー』でした。「事実は小説より奇なり」と言いますか、リアルの持つ途方も無いパワーというか。
この二つの作品て、どちらもやりたいことを思いきりやってるところが、なんだか清々しく映ってしまいます。

私の友人はこれを、「今年のベスト」と呼んでました。
その友人は、ロンドンに行った時に、バンクシーの描いたものじゃないか?なんて言いながら、ある壁のアートを写真に納めたらしいのですが、
「この映画を見て、あれはティエリーのだと分かった」なんて言ってました。ティエリーのことを知らなかったらしく。いやいや、私も知らなかったですがw
Commented by CaeRu_noix at 2011-07-29 10:06
とらねこさん♪
おお、私も観ている最中に『マン・オン・ワイヤー』のことを思い出しましたよー。人間の底力に同じように感銘。違法行為と背中合わせの芸術パフォーマンスの瞬間を映像におさめるというのはなんともエキサイティングで感慨深いもの。
バンクシが街でアートをうみ、それをTがカメラにおさめ、その映像でTが映画を試み、という過程全部でバンクシが映画をつくり。捩れた連なり方がそれは面白かった。
ドキュメンタリーって結局はフィクションの一つなのだから、ここまで遊んでくれちゃうと気持ちいいですねー。それでいて、ただ観客をおちょくっているわけではなく、たびたび本質にせまってくれるから、クレバーだなって。
MBWのことは私も知らなかったので、ひょっとしてその存在はこの映画の中だけの架空の人物じゃないのかという疑問さえもちました。ぐぐったら、ちゃんとその人の展覧会レポートなどがあったから、本当にこうやって祀り上げられたのだなーと感心w
Commented by rose_chocolat at 2011-09-09 09:56 x
映画自体が二重三重の意味にも取れて、
そしてそれがまたよくあるドキュメンタリー的に、何かを称賛したりいけないと言うだけの結末じゃなかったですよね。
作ったバンクシー自身も笑えないというか、「それってオレらもだよな」的な余地を残していたところが最高でした。 うまい。
Commented by CaeRu_noix at 2011-09-10 22:48
rose_chocolat さん♪
重層的な構造のものって面白いですよねー。
そもそもアートって・・・というところもいろんな方向からにわか追究ー
ドキュメンタリーというものは実に多様ですけど、アーティストものの場合は確かに称賛モードなものが主流ですね。
うん、これは称賛じゃなくて、むしろ胡散臭さもクローズアップ、それでいてこーんなことをやっちゃうバンクシーを称賛したくなる部分はあって、お主やるなぁ!という感じです。
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