かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『モールス』 Let Me In
2011年 08月 12日 |
孤独な吸血鬼は哲学しないのかなぁ?という疑問を忘れさせてくれる好リメイク。



『ぼくのエリ 200歳の少女』を観たのはついこないだのことのような気がするのに、同じ物語なのにもかかわらずしっかり楽しめたみたい。雰囲気あるヨーロッパ映画を節操無くリメイクしまくるハリウッドの姿勢には反感をもっているけれど、かねがねヨーロッパもの贔屓の私であるけれど、出来上がったものの感想としてはかなりいい手ごたえであった。巧みなリメイク作品。

ストーリーは忠実になぞられているようだけど、そればかりでなく、オリジナルに比べずいぶんとクッキリわかりやすくなっている印象。いつもだったら、わかりやすいことをよいとは思わないのだけれど、本作に関しては、一つ一つの場面で描かれていることがより明確になったことで、この物語全体の説得力が強まったともいえる。

本当は描写が明確ではない方が、作品としては美しく味わいを持つと思えるのだけど、何しろこの物語そのものがしっくりといかなかった私にとっては好ましいリメイク。わかりやすくなったといっても、やたらに説明的になったということではなくて、静かに映像で見せていくスタイルはかわらず、北欧テイストを損なわない詩的なしっとり感が尊重されているのはよかったな。夜のライティングが美しくて、映像の質感がかなり好みだったんだけど、これって撮影が『ブライト・スター』と同じではないか。グレッグ・フレイザー、グッジョブ。

しっくりこない物語というのは、ぼくのエリの綱渡りな生き方を見ていると、そんなので100年200年暮らし続けるのは無理じゃないかとどうしても思えてしまうというのがまずあって。狩りに協力してくれる人がいないと獲物も得づらいし、警察に捕まる危険も迫るから現代では無理がありすぎるなぁと。
そもそも吸血鬼はどのくらいの頻度で生き血を必要とするものなのかと知りたくなって、でも欠乏しても餓死したりはしないのかよくわからないけど、いずれにせよ無謀さが気になるのだった。そうやって生き延びてきたことを知ったら、驚きつつも切なくなるところのはずなのに・・・。

彼女はずっと12歳の外見をしたままで、永遠に生き延びて、そのために人間の命をいくつも犠牲にしなくてはならないとしたら、協力者も早いうちに限界を感じてしまうものじゃないかな。というかそういう生きるしかない孤独な吸血鬼自身は、自分が生きることに罪悪感をもったりしないのだろうか。吸血鬼は哲学しないのか。人間の姿をしている間は人間のように思考して、自身の存在理由を問わないのだろうか。なんてことがついつい気になってしまったの。いつもなら、いちいちゾンビやヴァンパイアは他の種族を滅ぼしてでも本能的に生き延びようとするものだと素直に思えるはずなのに、エリには引っ掛かりをもってしまった頭の硬い私だったの。

という引っ掛かりが本リメイクの方が減少していたのがとりあえず吉。やはり無理があるよなぁ、と思いそうになるところで、激烈な血みどろシーンが登場して、そのインパクトにそのまま気持ちがいってしまった感じ。血を吸うアビーはものすごく恐ろしい生き物になっていて、エリの情緒が台無しと思いつつ、そこまで怪物化してくれる方が私にはしっくり。でも、あんな姿を見ちゃったら、やっぱり怖くて仕方なくなる。オスカーがエキセントリックなエリに惹かれる気持ちに心寄り添えなかったのに比べ、オーウェンがアビーに惹かれるのには共感できたものの(でもクロエちゃんのキャスティングがそれほどいいとは思わなかった)、あの獰猛さを目にしたら恐怖で近寄れなくならないものかと。そう思う部分はあったのだけど、ビジュアル的には面白かった。

オリジナルの素晴らしさあってこそなんだけど、設定そのものが自分には受け入れづらい部分もあるゆえ、腑に落ちない点に目をつぶり別の咀嚼の仕方を気楽に探せたのがよかったかな。

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by CaeRu_noix | 2011-08-12 09:16 | CINEMAレヴュー | Comments(2)
Commented by ノラネコ at 2011-08-13 23:04 x
ヴァンパイアという存在の根源的な部分を突っ込んできましたね。
そこまで追求されると流石に辛いかと(笑
私はオリジナルもとても好きなのですが、映画表現としては引っかかった部分が多々あり・・・。
本作はオリジナルの映画としての作劇上の問題点を洗い出し、キッチリとアンサーを与えたという感じでした。
同じ事を描いてはいるけど、方法論はまるで異なるという、リメイクとしてはお手本の様な一本だと思います。
ただアメリカ映画なので当然なんですが、比喩的な表現がアメリカ人観客限定になっているところがあり、それが日本での評価が本国ほどにならない一つの理由かと。
Commented by CaeRu_noix at 2011-08-14 12:22
ノラネコ さん♪
ヴァンパイアの思いって、それまでの吸血鬼映画では気にしなかったんですけど、ぼくのエリではすごく気になってしまい・・。
もっと獣性だけが前面に出ていれば、本能的に血を欲して生きてるんだろうなと思えるんですけど、エリやアビーのように平常時は少女の姿で思いつめた表情をしているのを見ると、自分の存在意義を問うたりしないのかなぁと思わされー。
現代人間社会で長年生きていたら、本を読んだり、映画を見たりする機会もありそうだけど、彼女は吸血鬼映画を見てないかなーとかw
そんなこんなが自分的にはすごくネックでー

とそんな引っ掛かりをもつ私にもしっくり楽しめるナイスリメイク作品でした。

アメリカならではといえば、ノラネコさんのレヴューを読んで、「悪」という概念にこだわっていたことを思い出しました。(オリジナルではそういう表現がありましたっけ?)
自分はそういう枠では観ていなかったので、劇中の主人公が「悪」という言葉を使うのは意外ですらあり、そこがアメリカのスタンダードかーって。
ニューメキシコにこんなに雪が降る地域があるのかと思ったら、核開発研究の地だと後で知り、アメリカならではの要素も興味深いですねー。
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