かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ツリー・オブ・ライフ』 The Tree of Life
2011年 08月 20日 |
テレンス・マリックの前作『ニュー・ワールド』のラスト・カットの木がとてもとても印象的で心に残るものだったから、その次の監督作が『ツリー・オブ・ライフ』であるということにまず肯かずにはいられなかった。



そんな連なりに、テーマの一貫性を感じて、テレンス・マリックが見据える世界にすんなりと身を任せ、漂いながら150分の旅を耽溺した。本国アメリカでの封切りは4館のみだったという本作が、わが国では全国で200を超えるスクリーン数でスタートなんて、テレンス・マリックがつくる映画に何も興味もない人が、なんじゃこりゃと不平不満と批判を撒き散らすという結果をうんでしまうことには悲しい気持ちもあるけれど。個人的にはそれよりも、壮大なる映像詩をシネコンの設備で見られることが嬉しい。


余談だけど、『ツリー・オブ・ライフ』の映像を浴びながら、時間空間旅行をしていたら思い出したことがあった。日本の学校教育課程では、まず身近なものにスポットをあて、それから順を追って広範囲のことを学んでいくその順序を替えるべきなんじゃないかということを考えたことがある。小学校の社会科ではまず市について、次の学年で県について、その後に日本、そして世界についてを学習したし、理科もあらゆる学科でも大体そういう進み方。

まず自分がいて、家族がいて、学校や地域社会があって、という捉え方じゃなくて、宇宙が生まれ、地球が生まれ、生命が誕生し、人類に進化して、ずっと後に国という枠ができたのであり、そうしてこうしてちっぽけな今の僕らがいるんだよ、という見方をまず身につけるべきなんじゃないかと私は思ったんだ。実際のところ、小学校低学年でビッグバンというわけにはいかないだろうし、愛国心を養いたい国としては、世界より先に内側にまず日本があるという意識づけをさせる教育を進めたいのかもしれないので、現実的ではない考えなのだろうけれど。


そういうこともあって、50年代の家族の物語が主軸のフィクションの映画で、ネイチャー・ドキュメンタリーのように、宇宙まで遡り、太古からの地球のいきものを映し出すという、一般的には異色と思われるこの構成を、私はすんなりと受け止めたし、その清らかな美しさに魅せられるばかりだった。映画では、なかなかそれらが共に描写されることはないけれど、世界の見方の一つを思えばごく自然なことだと私は感じられたし、テレンス・マリックならばそういうアプローチをして当然と思えるし、こんな映像とテーマの紡ぎ方に歓喜すらしたよ。

そして、その上でじっくりと回想される50年代の子供時代のジャック・オブライエンの家族のドラマ。カメラワークが実に繊細にジャックの不安な心を表してして、スリリングにも切なさを覚えつつ、一緒に彼の記憶を辿った。カメラワークゆえか、囁きモノローグのせいか、ファザコン/マザコン心理描写が印象的なソクーロフの『ファザー、ザン』や『マザー、サン』を思い出したり、タルコフスキーの映画のことも連想した。それらと同様に、ジャックにとって、心の痛むこともたくさんあったけれど、水は清らかで光は眩くて、思い出はかけがえのない美しいものなのだ。

父性とそれに対する畏れは個人的なものでもあり、アメリカの特徴的なものでもあり、万国共通の普遍的なものでもあり、興味深いものだった。当時は怖い父親だったけれど、大人になった今なら、社会で生きる父の焦りや葛藤をわかってあげられる。ガラス張りの高層ビルで佇むショーン・ペンのシークエンスはどちらかといえば不評なようだけど、父の年齢を超えた息子が回想するというシチュエーション・目線が大事なんだと思う。思い出の中の母の姿が、それはもう儚げで美しくて映画的でステキだった。

天地創造においてなど、キリスト教と科学は相容れないものだと認識しているけれど、哲学の先生であるマリックの世界観においては、一方を否定するということもなく、穏やかに大らかにそれを語ってくれていた気がする。神の存在を信じる云々ではなくて、母が言っていた、生きていく上で愛を大切にしなさいという教えは素晴らしいものだと思うし。人間が傲慢になり過ぎないように、大いなるもの・力を信仰することもたぶん必要だと思うし。父が言うような処世術も必要な世知辛い社会を知っているからこそ。

歴史になかなか学ぼうとしない人類の未来に不安を覚える21世紀、マリックの世界に浸る時間は幸福でした。

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by CaeRu_noix | 2011-08-20 07:20 | CINEMAレヴュー | Comments(4)
Commented by cinema_61 at 2011-08-22 22:32 x
こんばんは。
とっても解かりやすく解説していただき、有難うございます。
感動をどう表現していいかわからなかったので・・・・・。
科学と宗教の融合!それをテレンス・マリック監督が、素晴らしい音楽と映像で表現してくれたのですね。
アメリカはやはり父親が権威を持っているのでしょうね。
でも、頑固な父親役のブラピが好演していましたね~
先日、彼の煌めくような時期の映画「セブンイヤーズ・イン・チベット」をTVで観た後だったので、いい歳の取り方しているなぁ~と思いました。
Commented by CaeRu_noix at 2011-08-23 12:58
cinema_61 さん♪
ありがとうございます。
わはは。カイセツなんてものではなく、私の勝手なシンクロ・感銘ポイントを述べているに過ぎないのですが、共感してもらえたなら嬉しい限りですー。

この世界には胡散くさくてアヤしい組織団体も多いからか、いわゆる宗教にしても、エコロジーの運動なんかにしても、斜めに見られがちな題材ではありますが、マリックの真摯な姿勢には私はとても感動しました。
美しい音楽とダイナミックな映像効果でとても楽しいヒトトキでした。

父の存在がなんとも興味深かったですよね。
善良であることより何より社会的な成功を重要視するのって、今の日本にもはびこっている気がするので、いろんな意味でハラハラしましたし。

ヒースで見たかったという思いもありますが、ブラピパパ好演してました。
大スターなのに、マリック先生のような監督の映画に主演する志が素晴らしいなぁとしみじみ。
セブンイヤーズの頃から、そういうセンスがありましたもんね。
Commented by rose_chocolat at 2011-09-08 07:05 x
なんだかね。 これ、どこがどうという風に私はうまく言えないのですが、
ポイントを的確に教えてくれてありがとう。
これは子どもにも観てもらいたいなと思いました。
子どもにとって親というものは絶対的なものだし時には嫌なものだと思うけど、
それでも否定しきれないんですよね。

そしてブラピは、様々な役を受け入れる懐が深いですよね。今度の新作(TIFFのCL作?)も楽しみですね。
Commented by CaeRu_noix at 2011-09-09 01:42
rose_chocolat さん♪
これ、どういう映画だとかってちゃんと理路整然とは語れないですよね・・・。
おお、これを見たティーンズはどういう感想をもつんでしょうねぇ?
親の存在を物語る映画としては表現が抽象的で観念的で、わかってもらいにくいような気もしないこともないのですがw いろんなタイプの映画を観て、感性を磨くことは意味有りと思うので、そんな機会があったらいいですね。
未成年の頃は、親についてとかくあれこれ思うものですが、全部ひっくるめて自分があると、やがて悟ってくるのでしょうけどね。

ブラピはいろんな役を受け入れるというか、監督がギリアムやフィンチャーやガイリッチーやコーエン兄弟やタランティーノならキレキャラもアホキャラも喜んでやるよーっていう役どころは選ばないけど、監督は選ぶよー的なスタンスがさすがだなーと思うのであります。
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