かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『チェチェン・ウォー』
2005年 09月 03日 |
「あんたらジャーナリストは安全な場所から
人権侵害なんて題目を並べるが、これは戦争なんだ。」

そう、これが戦争なんだよな・・・。アクション映画とは違う。
リアルな緊迫感、そこにある戦いの不条理に圧倒される。
これが劇場未公開作品だなんて・・・。
『ノーマンズ・ランド』くらい素晴しい作品だと思えたんだけど。
シニカルさも含め痛烈におもしろかった。



物語は獄中の青年イワンによって、取材に応じる形で語られる。
ロシア軍のイワン軍曹はチェチェンの武装組織の捕虜となった。
誘拐されたイギリス人のジョンとマーガレットが捕虜に加わり、
チェチェンの武装組織はジョンに法外な身代金を要求する。
マーガレットを人質に、ジョンは身代金を持ち帰る約束をする。

VOJNA /  WAR   2002  ロシア
監督.脚本  アレクセイ・バラバーノフ
出演  アレクセル・チャドフ、イアン・ケリー、セルゲイ・ボドロフ・Jr 

英語が話せるために、通訳の役割を果たすイワン。
戦場に慣れていない(平和な文明国の私たちには当然のこと・・)
イギリス人ジョンはゲリラ組織の残虐さを目の当たりにしてもなお、
移動の時には「人権侵害だ」なんてわめく無防備さ。
それは正義感による抵抗心の顕れであっても、その場では
勇敢でもなく、ただの場の空気の読めない軽率なものなんだ。
これがハリウッド映画なら、屈しない主人公の勇気に感動する場面。
でも、それはただの、何もわかっちゃいない平和な国の僕らの甘さ。
ジョンの訴えを当たり障りのない言葉に訳すイワンの機転にホロリ。

身代金が200万ポンドなんてバカげていると憤るイギリス人。
「ドルで交渉すればよかったんだ、奴らはレートを知らない」
というイワンの台詞も印象的。ポンドで金額を決めた不運か。
身代金に相場があるはずはないのに・・。いや、実際はある。
命を救うためのお金は家を売却しても工面できないほどに高額。
それほどに価値のあるはずの人間の命が、戦場ではいとも簡単に
次々と失われていく。その矛盾に息苦しくなってしまう。

法外な身代金を政府が用意してくれることはなかった。
ジョンが訴える記者会見の場で、「ロシア軍の行動は正当化できる?」
と発言する記者。んなこと、今言っている場合じゃないだろー。
今この瞬間を捕虜として穴ぐらで怯えている国民がいても、
国家やジャーナリストは国際社会においての正当性ばかり。
結局はそんなもの?

政府は動かず、TV局が身代金の一部を負担する代わりに、
一部始終をビデオで撮影してほしいとジョンに持ちかける。
背に腹はかえられないとはいえ、契約とはいえ、
命がけの戦場でカメラを回し続けるジョンの姿にはゾッとする。
伝えることは大切だけど、戦争も生も死もネタでしかない?
英語では"撃つ"も"撮る"も"Shoot"と言うだっていう
イワンの言葉が的を射ていて、カメラの暴力性にドキリ。

「戦場で考えるな、考えるなら戦争前だ。」

ジョンは俳優で誘拐されたのはグルジアで「ハムレット」の上演中。
それもまたさりげなくシニカルな設定でグッときた。
「生きるべきか死ぬべきか(To be or not to be) それが問題なのだ」
と悠長に悩んでいるヒマはないんだ。自ら選ぶこともできない。戦場。

戦い方がわからないと嘆くジョンに、「自分で覚えろ」と言うイワン。
自分も兵役につく前は何も知らなかったという。
前半は穏やかで飄々とした青年に感じられたイワンが、
ジョンと共に身代金をもってチェチェンに戻った時には、
機敏に攻撃的に突き進んでいく強靱なソルジャーに変わる。
そこには惚れ惚れしてしまうかっこよささえあり。
それでいて、限られた軍役期間で、普通の若者がここまで
勇猛な兵士に育ち、躊躇なく人を殺せるようになることが悲しい。

人助けで命をかける仲間を見捨てない勇敢なイワンも、
生き残れば、こっちの世界で法的に裁かれてしまうんだ。
この世界の理不尽さにはため息をつくしかない。
修羅場そのものの殺し合いが続いているなんて・・・。

イワンには道を踏み外さずに生きていってほしい。
『ロシアン・ブラザー』のダニーラのようにギャング道には行かないで。
それと、マーガレットの視点の物語も見てみたい。

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終わらないチェチェン紛争の背景/BLOG IN PREPARATION
↑チェチェン紛争の流れがわかりやすくまとめられていて参考になりました。
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by CaeRu_noix | 2005-09-03 23:07 | CINEMAレヴュー | Trackback | Comments(4)
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Commented by Ken-U at 2005-09-08 02:45 x
おじゃまします。記事のリンク、ありがとうございました。

こういうテーマを扱った作品が公開されない現状は嘆かわしい限りです。ルワンダ虐殺を扱った「ホテル・ルワンダ」も未公開で、公開に向けて署名運動がされているようです。その件を連想してしまいました。

商業的に成立しないと判断された結果なんでしょうが、こういったテーマを扱った作品を、消費者は求めてないということなんですよね。面倒なことは排除したいという国民性がそうさせるんでしょう。
Commented by borderline-kanu at 2005-09-08 22:13
こんばんは。記事読んでいたら、すっごい観たくなってきました。
DVDレンタルしてるんですか?近くにレンタル屋がないからチェックできないけど、見つけたときは借ります! カヌ
Commented by CaeRu_noix at 2005-09-09 01:02
Ken-U さん♪
こちらこそ、ありがとうございます。
そうそう。『ホテル・ルワンダ』の件はまさに嘆かわしいですよね。
アカデミー賞ノミネートされたお墨付きの秀作なのに・・・。

日本の映画業界、配給会社の商業主義傾向にもガックリしますし、
それは結局、国民が流行の娯楽作品ばかりを求めるからだ
ということにまたガッカリしてしまいますよね。
シネコンを中心とした映画の興行は絶好調らしいですけどね。
映画は娯楽という位置づけの人が多いのでしょうねぇ。
もはや、国民性なのかなぁ。

とりあえず趣味のついでに地味に草の根
Commented by CaeRu_noix at 2005-09-09 01:08
カヌさん♪
わーい。ご注目ありがとうございます。
私の通っているつたやんにはDVDありました。
巡り会った際には、ぜひカヌさんもご覧になってくださいませー。

ロシアの映画は日本で一握りしか上映されないのがもったいないー。
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