かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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チェコ映画 『白痴の帰郷』
2005年 09月 09日 |
愛嬌満点のフランチシェクに心温まるー。
物語のあらすじは何てことはなくて、軽いコメディという雰囲気。
だけど、そこにあるヒューマン・ドラマの味わいがじんわり響く。

ドストエフスキーの「白痴」の現代翻案。



年の瀬、療養所で暮らしていたフランチシェクは親戚を尋ねて町にやって来る。
行きの列車の中でアンナに出逢い、カフェでエミルとオルガに遭遇。
偶然に出会った彼らと時を過ごす初対面のフランチシェクだけは、
彼らの隠された複雑な関係をすべて知ってしまっていた。

Na'vrat idiota  1999  
監督.脚本 サシャ・ゲデオン

フランチシェク・・・パヴェル・リシュカ
アンナ  ・・・   アンナ・ガイスレロヴァー
オルガ  ・・・   タチアナ・ヴィルヘルモヴァー
エミル   ・・・  イジー・ラングマイエル
ロベルト ・・・  イジー・マハーチェク

サシャ・ゲデオン監督はヨーロッパで期待される映像作家の一人だそう。
アンナ・ガイスレロヴァーはチェコのNO1人気女優で 『ジェラリ』 も主演。
タチアナ・ヴィルヘルモヴァーは続くNO2女優。
2000年度チェコライオン賞などを受賞。

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これは冬に観たかったなー。スケートリンクや雪景色が印象的。
凍てつく寒さを感じつつ、まもない年越しの賑わいで高揚感も押し寄せる。
年の瀬独特のわくわくムードの中、戸惑うフランチシェクのおとぼけぶりや
マイペースさが醸し出す空気感がミョーに愛おしい。

彼らの交錯する恋路は深刻で困ったことになっているんだけど、
慌てて取り繕うフランチシェクの姿越しにそれが描写されると、
当事者達には苦しい恋であることは知りつつ、気まずさが笑いを誘う。
エミルの家での食事の場面は最高のシチュエーションだった。
何も知らない母の言葉の攻撃力は厳しくて、おかしさがにじみ出る。
きょうだいの恋人、恋人のきょうだいというのはそりゃあ危険この上なし。

そんな気まずさを笑いながらも、1人すべてを知っていて、
コトを荒立てないよう対応するフランチシェクの思いに釘付け。
時には嘘をつきつつ、一生懸命に取り繕う姿に心を掴まれる。
普通に世間ずれした人間ならば、先々のことを考えて、
彼らの裏切り行為を問題視して、荷担はしないかもしれないし、
或いは、揉め事に巻き込まれたくはないと距離を置くものかも。

だけど、フランチシェクは、自身の立場の損得勘定などはせず、
目の前の出来事に翻弄されるばかりの純粋な人間なのだ。
賢く立ち回れない、計算もできない、嘘もつく、ウスノロくん。
そして、誤解を解く術もなく、「IDIOTA!」と罵倒されてしまうんだ。
バカなのかもしれない、損には違いない。

でも、その善意にのみに満たされた振る舞いと清らかな心には
感動せずにはいられない。それは同情心などではない。
自分が打算的でひねくれているから、そんな姿にハッとさせられるだけ。
Atok14が変換してくれない「白痴」という言葉にこめられているものは?
バカにされない人間になろうとするばかりだった私の胸が痛んだ。

後先のことだとか、正しさだとか、そんなことはいいじゃない。
それは愚直であり、ただの弱さであるのだとしても崇高だと思う。
誰もがそのようにはできないし、みんながこうでは社会は成り立たない。
だけど、その純粋な心の美しさに気づくことが貴重だと思える。
癒されるとはこういうことかな。

白痴の帰郷。
療養所に閉じこめられていたのでは生まれないドラマ。
白痴の白は、降り積もる雪のように、私たちの荒んだ心に染みる。

(2005チェコ映画祭/東京都写真美術館ホール)
--
パヴェル・リシュカって、フェレに似ていないかなー?と
その表情や挙動に注視し過ぎたのも、共感要因だったかも。

おとぼけオーギュスタンを思い出したり。
そのピュアさへの感動加減にはヴェラ・ドレイクもだぶった。

黒澤の作品も観てみたいなー。
いや、それよりもドストエフスキーを読めよっ

パヴェル・リシュカとアンナ・ガイスレロヴァーは
シュバンクマイエルの新作 『Si'leni'』 にも出ているらしい。
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by CaeRu_noix | 2005-09-09 23:11 | CINEMAレヴュー | Trackback(1) | Comments(2)
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Tracked from 映画とはずがたり at 2005-11-01 15:10
タイトル : おとぼけオーギュスタン
フランスのコメディものって、笑いのツボが違うヤツだと、 最後まで観てて、けっこー辛いっ!ものがある。 これも、ちょっとヤバい分類に入るかも知れないが、 ツッコミどころは意外と満載!で、 若手のお笑いツッコミ芸人を目指す人のための 「ツッコミ芸人養成用教材....... more
Commented by 伽羅 at 2005-11-01 15:11 x
初めまして!
ご挨拶がてら、TBさせていただきました!
Commented by CaeRu_noix at 2005-11-02 00:26
伽羅さん♪
はじめましてー。
『おとぼけオーギュスタン』は私も観に行きましたよー。
ちょっとゆるかったけど、ラストのウサギを追っかけるシーンにじーんときました。
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