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I Am Love 『ミラノ、愛に生きる』 Io sono l'amore
2012年 01月 26日 |
2010年米アカデミー賞の衣装デザイン賞に、英国アカデミー賞やゴールデン・グローブの外国語映画賞にもノミネートされたばかりでなく、クエンティン・タランティーノが選ぶ2010年の映画ベスト5にもランクインしていたので気になっていた本作。



改装オープンしたBunkamuraル・シネマの第一弾上映作品に選ばれていて嬉しかった。年末を飾るにふさわしい、芳醇な映画体験のできる素晴らしさで迷わず2011年のマイベストに刻んだよ。

総合芸術である映画の輝きに満ちていた。"ヴィスコンティを彷彿とさせる映像美"などというフレーズを使われると、クラシカルで荘厳な貴族ものを思い浮かべてしまうけど、こちらは大いにモダンで何かがほとばしるかのようにリズミカル。舞台設定は高貴に豪華なのに、ゆったり落ち着いたトーンではなく、だけどもちろんイマドキのラブコメのような軽さとはまるで違う、ゴージャスで格調高いままに現代的に洗練されていることに心踊った。まさにミラノという都市、史ある文化芸術と最先端のファッションが共にあるミラノが一つの象徴になっている映画。

イタリアならではの素材がポイントでありながら、主人公はデレク・ジャーマンのミューズだった、『オルランド』が印象的なティルダ・スウィントン扮するロシア人ということからして、エキゾチックな風合いが織り込まれているのも何とも魅力的。オゾン作品でお馴染みのヨリック・ル・ソーの撮影は大好きなんだけど、これまたよい仕事をしていて、エンマの心情に寄り添いながら流麗に美と官能を映し出していた。そして、その映像美に共鳴しながら、そのきらめきく美を更に際立たせているかのように響くジョン・アダムスの音楽があまりにも素晴らしくて。

見事なゴシック建築の大聖堂の佇まいや、ティルダ・スウィントンが着こなすジル・サンダーのラフ・シモンズが手がけた衣装に目を奪われるのはもちろんだけど、もはやそれを断片的に語りたくなんかない。それは大切な要素ではあるけれど、部分を褒めるのは適切ではない、奏でられたものの総和が素晴らしいのだから。このバランス、ハーモニーにすっかり魅せられる。音楽と映像が融け合って、視覚と聴覚ばかりでなく五感を総動員させてくれるかのよう。ラブストーリーが主軸なのに甘さはなく、終始サスペンスフルな緊張感のままに耽溺もしてしまう不思議な感覚の高揚感がもたらされた。

本当に美味しい料理を味わうことには恍惚感に近いものがあると思っているので、エンマのそんな美味しさとの出会いがそのままシェフへの思いにリンクし、悦びが二重に溢れるという官能の表現にも注目してしまう。メイプルソープの撮る花が官能的であることを思い出しながら、エンマとアントニオの交わりに野に咲く花のカットがさし込まれることにも頷いた。恋の始まりの歓喜は春に花が咲き乱れるかのようだもの。劇中の主人公は美味しい料理を味わった時の悦びと恋愛の高まりが共振し、観客の私は美しい画と音楽と登場人物の感情が一体となって響くその映画に心震わせた。

いくらなんでも息子の友達というのは問題がありすぎ、普通は踏みとどまる理性を発揮するでしょうという思いも過ぎるけれど、頑なに上流階級生活をし続けたマダムだからこそ、いまだかつてない新鮮な歓びに抗ったり器用に自分の気持をコントロールすることができないというのも納得がいくの。そこでタイトルを思い出すのだ。I AM LOVE なの。愛に生きるとは言っていない、そのものなんだよってこと。取り返しのつかないまさかの悲劇が起こり、原因を作った罪悪感にかられて、その恋を断念するのが倫理的には正しいことだと誰もが思う時、「I AM LOVE」のエンマが行動するから、むしろそこに感動する。

息子が不憫だと思うから、直感的にエンマの肩を持つことには迷いが生じるのも事実。それがハウスキーパー・イダの迷いなき行動と娘ベッタの柔和な表情を目にした時に、心に引っかかっていたものが溶け出すの。娘ベッタは自身のマイノリティな恋愛事情を見守ってくれた母の味方。妻として母として上流婦人の役割を通してでしかエンマを見ているのが常だったのであろう男たちと違って、ベッタとイダは一人の女性としてのエンマを理解しているのだということ。イダのあまりにも素早い状況察知と行動にはもはや反射的に感涙してしまうばかりだった。衝動的な恋の是非より何より、静かにそこにある信頼関係に胸をうたれるのだ。

映画なんだよ。文学作品ならば、主人公が恋の相手のどんなところに惹かれたのかが詳しく説明されるのだろうし、不倫の罪悪感に苛まれて苦悩し葛藤するという描写もあるに違いないだろう。だけど、映画はそうじゃなくていいの。まどろっこしく主人公を正当化する必要なんてない。あらすじ的にはあまりにもベタにドラマティック過ぎるメロドラマが、こんなにも流麗にモダンに洗練をもって物語られていることに惚れ惚れするのみなのだ。「I AM LOVE」が体現されていることに。

allcinema

ティルダ・スウィントン ・・・ エンマ
フラヴィオ・パレンティ ・・・ エドアルド(エド)
エドアルド・ガブリエリーニ ・・・ アントニオ
マリサ・ベレンソン ・・・ ローリ
アルバ・ロルヴァケル ・・・ エリザベス(ベッタ)
ピッポ・デルボーノ ・・・ タンクレディ
マリア・パイアーロ ・・・ イダ

監督・原案・脚本: ルカ・グァダニーノ
共同プロデューサー: シルヴィア・ヴェントゥリーニ・フェンディ / キャンディーチェ・ザッカニーノ
脚本: バルバラ・アルベルティ / イヴァン・コトロネーオ / ウォルター・ファサーノ
美術: フランチェスカ・ディ・モットラ
衣装: アントネッラ・カナロッツィ
テーラード・ワードローブ: ジル・サンダー / フェンディ
料理監修: カルロ・クラッコ



MSN産経ニュース
「キャラクターを描こうとする前に、『ごちゃごちゃしたものを見せることができないだろうか』とルカ監督と話し合った。ルキノ・ビスコンティ監督やアルフレド・ヒチコック監督が持っていたDNAを引用し、雰囲気のある映画をモダンな形で作りたいと思った」

毎日新聞
「贅沢で芳醇で、官能的な映画を見たいねという話からこの映画が生まれた。私たちが好きな、ヒチコックやアントニオーニらの現代版を作れないかと」

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