かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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Beginners 『人生はビギナーズ』 (マイク・ミルズ)
2012年 02月 10日 |
マイク・ミルズの自伝的映画。



前作『サムサッカー』は非常に楽しみにし過ぎたためか、満足度がやや低くなってしまったのだけど。今回は評判を小耳に挟みながらも期待値を上げすぎず、でも楽しみにしちゃうよねーって感じでね。サムサッカーを基準としたわけじゃないけど、それはしっかりと期待に叶うものだった。全体を通して本作は好感触。お気に入り印。

才能ある著名なアーテイストの自伝ものというのは下手をすれば、悩みごとや悲しみを描けば描くほど、ナイーヴさをアピールすればするほどに嫌味に感じられてしまう危険もあるわけだけど。そこはキャスティングの勝利かな。語り口もユーモアとペイソスがほどよいバランス、さすがにセンスよくチャーミングで。作り手=ラブリーユアンが演じる主人公というのに引っかることはなく、ひたすらユアンでよかったと思うばかり。好感を持つように描かれているはずという割引もせず、オリヴァーみたいな人ならば、マイク・ミルズはやっぱりステキじゃないかと思ってしまうのだ。

ユアンはしっかりアクション劇画タッチもこなせる俳優でありながら、かれこれもういい年なのに、犬っころのようなかわいさを失っていなくて、こういう青春映画風情のPOPな世界にハマるんだよね。出会う彼女はフランス人なメラニー・ロランという設定もポイント。自伝ものはむしろコテコテリアルにするのでなく、フィクションならではのおとぎチックな彩りをもつ方がいい。歳の差も気にならず自然なお似合い感。そして、あまりにも素晴らしいクリストファー・プラマー父。おじいちゃんなのにクローズアップもキマりまくりのカッコいいジェントルマン。アメリカのコメディによくあるような「ゲイ」という要素で笑いを取ることに終始せずに、全てを包括して人間的魅力を見せつけてくれるところにシビレたね。

自分史と父の人生とアメリカ史が照らし合わされながら、過去と現在を行ったり来たりしながら物語られていくスタイルがよかったな。シンプルな日常描写も立体的に多重に響いてくる。その上で、「悲しみの歴史」シリーズだとか、自身の感情や思考がアレンジされイラストに描かれていくという展開が小粋だったな。おそらくマイク・ミルズ本人の手法をそのまま活かしているだけなんだろうけど、そのアーティストの仕事を垣間見ることができるうえに、映像内イラストはビジュアル的にも構成的にも味のあるものだった。ミランダ・ジュライの映画内パフォーマンスもそうだったように。

そんな小技にウキウキしながらも、もっともキュンキュンときてしまったお気に入りシークエンスは躍動感が弾けた時。ローラースケートのまま、アーサーと一緒にストリートを駆け抜け、屋内の廊下もそのまま進んじゃうっていう。イタズラ気分にあふれたその疾走には高揚感マックス。ローラースケートで犬の散歩って最高にステキじゃないの。犬のアーサーのかわいさに言及するとキリがないのだけど、仮に犬がブサイクであったとしても、犬と共にある生活ってめちゃめちゃいいなーと思わせる映画的な運動シークエンスだったよ。もっと長回ししてくれたらなおよかったけどね。

『J・エドガー』は時代のせいで、或いはポジションや生き方のせいで、自分を思いきりさらけ出すことはできなかったようだけど。図らずもその姿を見た後だったから、ハル父さんが人生の終わりにもう一度生を謳歌することに嬉しくなった。自由の国はマッチョの国で悲しみの歴史も色濃くて、あるべき男の姿という抑圧も強いのだろうけど。偏見に負けずにこんな風に自分らしく生きることを取り戻せるってカッコいいよね。こっそりやるという選択肢もありえたかもしれないのに、偽らないという信頼関係が息子との間にあったのだな。そんな人生賛歌をベタベタにすることなく、コミカルポップに仕上げてくれたのが爽快。

(2012/2/4 ファントム・フィルム=クロックワークス) @TOHOシネマズシャンテ(52)

allcinema


ユアン・マクレガー ・・・ オリヴァー
クリストファー・プラマー ・・・ ハル
メラニー・ロラン ・・・ アナ
ゴラン・ヴィシュニック ・・・ アンディ
メアリー・ペイジ・ケラー ・・・ ジョージア
キーガン・ブース ・・・ オリヴァー(少年時代)
カイ・レノックス ・・・ エリオット

監督.脚本:マイク・ミルズ
撮影:カスパー・トゥクセン
美術:シェーン・バレンティーノ
衣装:ジェニファー・ジョンソン
音楽:ロジャー・ネイル、デビッド・プラマー、ブライアン・レイツェル
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