かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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Melancholia 『メランコリア』(ラース・フォン・トリアー)
2012年 02月 24日 |
うつ病を患っていたラース・フォン・トリアーがメランコリアというタイトルの映画を撮ったというのは、実に自虐的というかおちゃめというか、いずれにせよトリアーらしくて微笑んでしまったのだけど。



だけど、いくらそれもまたトリアーらしいからといって、失言によってカンヌ国際映画祭を永久追放されてしまったというのは遺憾でならなかった。主演のキルスティン・ダンストに女優賞が授与されたことには救われたにしても。そんなふうに物議を醸したことも印象深いのだけど、それがクライマックスでは決してなくて、待ちに待ったその映画体験は極上のものであったよ。期待通りにトリアーらしさにあふれていて、最近の作品の中では一番の手ごたえをもてたお気に入り感。

結婚式の場面の不穏さにまずはグイグイと引き込まれた。ドグマ作品の『セレブレーション』のことを思い出しながら。ステランの息子が出演していることは鑑賞前に知り得たはずなんだけどすっかり忘れていて、冒頭にこのイケメン花婿さんは誰?と前のめりになった。TVドラマ出演等でとっくに人気俳優だということをつゆ知らず、遅ればせながらもステラン親子にトリアー作品の中で出会えたことは嬉しいな。ステキな正統派イケメンとして非の打ち所のなさをもってスクリーンに登場した新郎が、あれよあれよという間に器の小ささを垣間見せてくれて、やがてあっけなく去っていくんだからもう、私はまんまとトリアーのペースにハマったという感じ。

なんだか皆それぞれに少しずつ病んでいるかのようで、祝宴の場なのに波風が立ちまくり、心はザワザワしながらも、これぞトリアーという不穏さにわくわくしてしまったりして。彼らのささやかな奇行は、常軌を逸脱しているとまでは思えず、そんな振る舞いと精神状態はトリアーワールドでは大いにリアルでもあり。第一部が「ジャスティン」で第二部が「クレア」という構成によるメランコリーの移り変わりも興味深くて、初めは妹を支えていたはずの姉が不安定になっていくとはね。シャルロットのメランコリアは前作『アンチクライスト』でも描かれていたわけだけど、あちらはクレイジーさが暴走しすぎてややいただけなかったりもした。それが今回は音楽と映像のおかげが、惑星の魔力を浴びるようなファンタジー感が充満していて、幻想的な美しさにどっぷり浸れるのだった。

ロケーションの素晴らしさも格別で、精神が不安定になりながらも馬を走らせる姉妹の姿の優雅さが好き。奇妙な行動がむしろ輝きを帯びていくというのがたまらない。「オフィーリア」をモチーフに、夜の光の中、肌をさらけ出してゆったりと仰向けになるキルスティンの肢体の美しさといったら。ウツな人たちをもってして、こんな芸術表現が成り立つなんて。SFの世界ではしょっちゅう地球は破滅の危機に至るけど、愚かな人類の住む星の運命としてそれは絵空事ではないのかもしれなくて。そのたびに人々は知恵を絞り勇敢に闘い、この生命を守り抜くというハリウッド映画にはもう飽きているから。こんなふうに人々は為すすべもないはずだし、終末はただメランコリックに美しいに違いない。ラースとともにそれを夢見るよ。


(2012/2/17 ブロードメディア) @TOHOシネマズ

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