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Le Gamin au vélo 『少年と自転車』(ダルデンヌ)
2012年 04月 19日 |
The Kid with a Bike
第64回カンヌ国際映画祭でグランプリ受賞。安定のジャン=ピエール・ダルデンヌ&リュック・ダルデンヌ兄弟の新作はこの春の目玉の1本。




ヨーロッパ映画を観た際に常々感心するとともに関心をもつのは、血縁にとらわれない家族関係がごくごく普通に育まれていること。時には貧しい国で生まれた親のない子どもを家族に迎え入れたりしていている設定の物語と向きあったのも一度や二度のことではないし。社会制度、風習にしろ個人の思想にしろ、わが国との違いに感じ考えさせられることが何度となくあった。

本作の感想の中に、サマンサは出来すぎといえるほどに「いい人」過ぎるのではないかというようなものを見かけた。そもそも縁故でもないよその子どもの親代わりになるということが、日本人の感覚では並外れた善良な行為に見えるかもしれない。

確かに、自分は決して彼女と同じように行動することはできないだろうと思う。いえ、だからこそ、彼女の葛藤の末の決断に心打たれるのだ。自分には到底できないことだけど、それができ過ぎたことだとは思わない。そして、自身の行動として可能かどうかは別として、映画の観客が、「それはありえない」と思うより「そうありたい」と思うものであってほしいと願うのだった。

天使のサマンサも、圧倒的に志の高い善人というのではないた。ただ、遭遇した出来事を運命的なものかもしれないと受け入れて、目の前のこと一つ一つのよりよき道を模索しながら、ゆっくりと進んでいく誠実な人。養子縁組はもちろん無理だけど、週末だけの里親ならばやっていけるかもしれないと踏み出した。他者という存在は予想以上に理解不能なもので、幾度も困難に突き当たるけれど、迷い葛藤しながらも、大人としての潔いふるまいを見せてくれたサマンサ。

母性という一言では総括したくないけれど、彼女のパートナーのおとなげない発言を思うにつけ、いたいけな子どもを守ってあげたいという気持ちは、男性よりも本能的に女性の心に芽生えるものなのかなって。もしかして同性の大人から見ると、12歳の少年というのはもはや甘やかす年齢じゃないと直感的に思えるのものなのかもしれない。微妙な年代なのだけど、まだまだ突き放してはいけない、か弱き子どもだということから目をそらせないのは女性。

父親に見捨てられても、彼を信じて求め続けるケナゲなシリルを救ってあげられたならと思うでしょう。愛情不足で不安定な子どもシリルはとにかく危なっかしいし、時にはサマンサの善意を踏みにじるようなことをするのだけれど。終始ハラハラさせられながらも、とにかく彼女の思いが実を結んでほしいと祈るように見守るばかりだった。

エンディングの頃はいつもよりも冷静な気持ちのままだったのだけど。ダルデンヌ兄弟の映画は概ね一貫したテーマが感じられ、いつもスリリングで意外性があって、ズシンと心に響く。そんなパターンに自分は慣れすぎてしまったかな、と今回は思えたほどに、終盤の成り行きは幾分予想の範疇にはまり込み過ぎていた感じがした。というわけで、ラストのインパクトと余韻に関しては今作は少なめ。それなのにやっぱり、他の映画は観たそばから忘れていくのに、自転車で颯爽と駆けるシリルとサマンサの姿が色濃く心に焼き付いているのだ。


 ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督インタビュー/映画と。
2002年の来日時、日本の青少年問題担当の裁判官から父親に捨てられて施設に預けられ、やがて暴力団に入り殺人を犯した男の話 を聞いたことがきっかけ。そのように施設に預けられた少年が殺人者の運命をたどらないためにはどうすればよいのか?というところから本作の物語が紡がれたということを知ってしまうと、殊更にシリルとサマンサの笑顔が輝いて思い出されるなー。

(2012/3/31 ビターズエンド) @Bunkamura ル・シネマ

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