かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ミッドナイト・イン・パリ』 MIDNIGHT IN PARIS (ウディ・アレン)
2012年 05月 30日 |
ロンドン、バルセロナに続いて今度はパリが舞台。



物心ついた時からごく自然にパリに憧れていたひとりとして、無条件でウキウキしてしまう題材なのだけど、ロマンチストなウディ・アレンが紡ぐその世界は期待にかなう魅力的なものだった。幸せな気持ちで満たされる、それはそれは夢心地のファンタスティックなひととき。コール・ポーターの歌声がいつまでもこだまする。

冒頭に連続して映し出される街のショットからして、コテコテの観光名所だらけのいかにもなのばかりで、パリの住民などから見たら気恥ずかしいものでさえあるかもしれないけど、遠い異国からその街を思う自分にとっては、それこそがまさに象徴的なパリのイメージ。訪れずにはいられなかった花の都。そのしっとりと美しい街を、古くからの画家や写真家や小説家も、そして映画作家も描かずにはいられないのだ。

そんな愛しのパリにやってきて初めはお決まりの観光を楽しむ。自分がいまだに訪問を果たしていないロダン美術館や睡蓮の間のあるオランジェリー美術館を羨ましいと思いながら、かつて歩いた路地に思いを馳せる。舞台が自国なら、そんなにすぐさま主人公のアメリカ人に親しみをもったりしないのだろうが、パリに惹かれる迷える主人公ギルには抵抗なく好感をもって共感するのだった。フィアンセの友人ポールの嫌味なインテリぶりや父親のいかにもアメリカ人な右寄りのマッチョさに対峙するギルがとても微笑ましくて。相変わらずのウディ・アレンの分身的主人公だけど、さほどひねくれているわけでもなく、周囲のアメリカンの中では何やらケナゲにも見えるという、オーウェン・ウィルソンの起用は大成功。

現代のパリ観光だけでも大いに楽しいのに、その上マジカルな時間旅行ができてしまうとは。、SFというジャンルの映画ではしょっちゅう起こる過去へのワープだけど、ウディ・アレン映画のそれは格別な味わいがあるから不思議。作りものの映画の中ではどんな奇跡だっておこせるものだけど、ギルを1920年代の芸術家たちの輪の中へ連れて行ったウディの発想にグッとくるばかり。ギルと共に、次々に目の前に登場する著名なアーティストたちの登場に心躍らせる。そんな出会いは心底ステキだと思うし、ギルの憎めない人柄やそこにあるコミカルさが手伝って、展開の都合のよさに抵抗を感じるすきもないまま、魅惑のパリの夜を過ごすのだ。

ウディの映画の中のシニカルなジョークの真髄は、日本語字幕を読む日本人には完璧にはわからないものだとかつて何度か身にしみたものだけど。このたびの主人公のアメリカ人は旅行者なので、そういった壁を意識する必要なく、そこにある物語を我がものとして引き寄せることができるのが嬉しい。知識や思い入れの差がどうであれ、ヘミングウェイやピカソに会えるなんて楽しすぎるし、そんなキャラクターとして描かれていることに興味津々。元からダリの作品は大好きなのだけど、劇中ではサイについて熱く語るというへんてこさを見せてくれたブロディのサルバドール・ダリキャラも実に愉快だったな。未来を知っているギルがブニュエルにアイディアを話すというお茶目な小ネタもウディらしくて。

著名な作家、アーティストたちが名乗るたびにメンバーの豪華さにわくわくする一方で、役名の部分ではなく、その顔ぶれそのものがゴージャスな女優陣もさすがのウディ印。話題のカーラ・ブルーニ出演といい、レイチェル・マクアダムスのような美しいフィアンセがいる上で、マリオン・コティヤールとレア・セドゥに出会ってしまう幸運すぎる主人公。それを以前のようにウディ自身が演じていたとしたら、おいおいと突っ込みを入れてしまいたくなるけど、自身の願望を託してみたという感じで展開されると、何だか微笑ましいんだよね。紙一重なんだけど、鼻につかず嫌味には感じなくて、幸せな気分が持続。このたびのさじ加減は抜群。

感心せずにはいられないのは、1920年代のパリ体験だけでは終わらず、アドリアナが憧れるベルエポックのパリへと更なる時間旅行が体験できること。マキシムでデッサンするロートレックに会えるなんてウキウキが止まらない。と過ぎ去りし黄金時代の輝きにウットリするのもつかの間、人々はそうやってキリなく今よりも昔がよかったと言っているものかもしれないというギルが気づくという帰着はなんて心憎いのだ。人生経験豊富なウディ・アレン監督ゆえに説得力をもって響く粋な結論。そして、ラストにレアたんかよ、というのもご愛嬌。見事にパリで起こる映画の魔法にかかってしまったよ。ワンダフル。

(2012/05/26 ロングライド)

allcinema


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