かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『先生を流産させる会』(内藤瑛亮)
2012年 06月 17日 |
あまりにもおぞましい実事件が劇映画となって、公開前から話題騒然。



それゆえに注目度も高く、一日一回のレイトショー上映ではおさまりきらないほどに劇場は連日満席だったよう。ショッキングな実話は題材として魅力はあろうが、それを手がけるのにはおそらくある種の覚悟が必要で、世間に厳しい目で見られてしまうものだろう。問題作に取り組む以上はいいものを作ってほしいと、ただの観客の自分ですら思ってしまうわけだけど、そこは本当に評判に違わず見ごたえあり。ドキドキ引き込まれっぱなしの1時間。

え?うさぎの赤ちゃんを?!という衝撃的な導入。女の子っていうのはうさぎが大好きなんだよ。女の子は赤ちゃんをいたわる生きもののはずだよ。そう思っていた私は、冒頭から咀嚼できない異物感を見出した。もはや彼女のことは理解できないのかもしれないと半ば悟る。同性として、思春期のその心境には歩み寄れるものがあるのかもしれないという思いは初っ端に挫かれた。これはフィクション、これは道徳的なヒューマンドラマなどではないという表明のように。

何が彼女をそうさせるのかを探らずにはいられないのだけど、いっこうにミヅキの人となり、彼女の背景が見えてこない。彼女は所詮、まだ未熟な中学生で、家庭環境か何かが彼女の心の闇を作り出していただとか、お決まりのパターンに従って、彼女を分析して理解を示したいと、心のどこかで思っていたのが肩透かしを食らう。それゆえに、ホラー映画並みの戦慄に、ゾッとする恐怖に襲われるのだった。実際のところ、通り魔的殺人鬼に襲われるより、毎日顔を合わせている教え子にこんなことをされる方が何倍も怖いもの。

平常時なら、いたらない生徒を何とか改心させられないものかと教育者としてがんばることもできるかもしれないけど、母体の健康とお腹の子どものことが何よりも大事な時はさすがに、とっととこんな学校からは離れようと思うはず。それなのに、サワコ先生はとことん戦うから圧倒させられるばかり。その揺るぎない強さから目が離せない。怖い、痛い。がんばれ。この架空の世界では、あんなダメージを受けてまでも弱音を吐かず、教育することを放棄しない女戦士がここに!リアリティを突き抜け、サワコ先生のまっすぐさに胸が熱くなる。

実事件が男子生徒であるところ、この映画化では女子に設定がかえられた以上、女子中学生ならではの生態、心の機微を描いてほしいと最初はたぶん思っていた。フタをあけてみたら、本作はそんな類のものでなかったけれど、イメージしていたものと違うからこそ、スリリングで面白くもあった。コンパクトに1時間にまとめたことが功を奏し、実に切れ味がよく、見どころがギュッと詰まった仕上がりだったと思う。デリケートな題材なので、女子的にはうんたらとかそこを追究しようとすればキリはないけれど、内藤流のこの切りクチ、しかと楽しめたよ。
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