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『少年は残酷な弓を射る』 We Need to Talk About Kevin (リン・ラムジー)
2012年 07月 17日 |
イギリスの女性監督というのは、



あまり列挙はできないけれど、私の場合、まず思い浮かぶのはサリー・ポッターで、その次にはリン・ラムジーがくる。サリー・ポッターのこの前の映画は日本で配給されなかったことを残念に思いながら、リン・ラムジーの方の長編は3作とも日本で公開されているという事実が何だか嬉しい。『ボクと空と麦畑』は今よりもずっと地味なラインナップだったイメフォで観たし、『モーヴァン』はちょっとオシャレな女子映画の趣があって、当時はイメージがぴったりだったシネマライズで観たことを憶えている。少年や若い女性をセンシティブに描いたラムジーが歳を重ね、今や母親を主人公に据えたものを撮り、私はそれを日比谷で、かつてとは違う客層の中で観るのだった。

今作は母親主人公の物語なので、前作までの青春もののように痛くせつない詩情がほとばしるという感触ではないだろうと思ってはいたけど。スリルと恐怖に満ちたサスペンス色の強いこのプロットでなお、繊細にエモーショナル、残酷であるがゆえに美しさを帯びるラムジーならではのタッチは健在であった。アメリカ舞台のものだとすぐにはわからなかったほどにヨーロッパ映画のたたずまいで。映像だけをスタイリッシュに仕上げるとそれは時に軽薄だという批判を招いたりもするのだけど、この不穏な物語においては、主人公エヴァの揺れ動く心情にマッチしたリズムで印象的な画で紡がれていて、ラムジーのセンスが巧みに発揮されていた。嫌悪感と隣り合わせの恐怖に怯えながら、謎とスリルをしっかり堪能。

残虐な暴力行為が描かれたものはいくらでもあるけれど、それが通り魔的であれば、半ばその恐さを場当たり的に娯楽として受け止めることができる。ところが、その対象が我が子であるというのはあまりにも強烈で揺るぎないものではないか。こうなったことには親に一因があるのではと省みざるを得ないし、どうすればいいのかと悩んでは途方に暮れ、逃げることはできないという底なしの恐怖に襲われる。全面的に被害者面できる物事の方がどんなに楽であろうか。世間一般には、子どもの素行の悪さは家庭に原因があると思われることが常だけど、そんなことは一概に言えないと、フィクションであるとはいえ、子を持つ親の苦労を顧みる。血を分けた我が息子の得体のしれなさに戦慄するって極上のスリラー。

スコットランドを撮ってこそのリン・ラムジーと思っていた部分もあり、アメリカ舞台の本作にはやはり骨の髄まで馴染んだ感じはなかったけど、その異邦人的な居心地の定まらなさは不穏スリラーにはちょうどよかったのかもしれない。その異物感の塊と化したエズラ・ミラーくんはこのバランスの中で絶妙にあやしく際立っていた。We can't help but talk about KEVIN. ケヴィンは一体どのような心持ちであったのだろうかと語らいたくなるし、危なくて不気味で色気あるケヴィンを体現した新鋭エズラくんについて何か言わずにはいられない。弓を買い与えられた場面で観客がその事件を見越してしまう邦題の無粋さを残念に思うも、リン・ラムジー×ティルダ・スウィントン×エズラ・ミラーが放つ弓矢は鮮やかに的を射たといえるでしょう。

(2012/06/30 クロックワークス)@TOHOシネマズシャンテ

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